保護者が子どもにうまく関わるための専門家サポートの重要性

2024年7月9日 11:50

はじめに

自閉スペクトラム症（ASD）のある子どもを育てる保護者にとって、日常のコミュニケーションや行動調整は大きな挑戦です。専門家が保護者にサポートを提供することで、親子関係の質が向上し、子どもの発達に大きな効果が期待できます。本記事では、保護者の介入がどのように子どもの発達を助けるのか、具体的な研究結果を交えて解説します。

親主導の介入の効果

多くの研究（Deb et al.,2020;Oono et al.,2013など）が、保護者が子どもとの関わり方を学び、実践することが、ASDの子どもの発達に良い影響を与えることを示しています。例えば、メタアナリシスでは、ペアレントトレーニングが親子の相互性の向上、子どもの言語理解の改善、自閉症の重症度の減少などの効果があり、保護者のストレス軽減にも有効であることが報告されています。

専門家のサポートの役割

研究( Kasari et al,2010)によれば、介入の効果は単に保護者が参加するだけでなく、その質が重要であることが示されています。保護者の関与の質が、子どものアウトカムに重要な影響を与えることが示されています。特に、関与の質が高いほど、親子の共同的かかわり（joint engagement）が増加し、子供が物に集中する時間が減少することが確認されました保護者が子どもと効果的に関わるためには、専門家のサポートが不可欠です。専門家は、具体的な関わり方を伝え、実践の中でフィードバックを提供します。例えば、保護者がお子さんの行動を観察し、適切なタイミングで関与する方法を学ぶことで、親子のコミュニケーションがよりスムーズになります。親主導の介入は、専門家が直接介入する場合に比べて、お子さんが学んだスキルを家庭や他の環境に一般化しやすいという利点があります。例えば、保護者が学んだスキルを日常の遊びや日課に組み込むことで、お子さんは新しいスキルをより自然な形で学び、使用することが期待できます。

保護者のストレスとサポート

研究(Cheng et al.,2023;Deb et al.,2020)によると、ペアレントトレーニングは保護者自身のストレス軽減にも役立つ可能性があります。その一方で、他の研究(Kasari et al,2010)では、介入の過程で保護者が過度にストレスを感じることも指摘されています。例えば、介入が複雑で実施が難しい場合、保護者はプログラムで学んだことを忠実に遂行し続けることが難しく、ストレスが増加する可能性があります。また、介入が日常生活にうまく適合しない場合、保護者はストレスを感じやすくなる可能性があります。そのため、専門家のサポートを得て、保護者自身のストレスレベルを見極めつつ、お子さんに関わっていくことが重要です。こどもとかぞくのサポートルームKNOTでは、保護者のストレスケアのためのカウンセリングも実施しています。

まとめ

保護者が子どもにうまく関わるためには、専門家のサポートが欠かせません。保護者主導の介入は、子どもの発達を促進し、親子関係をさらに良くする有効な方法です。専門家と協力しながら、日常の関わり方を工夫することで、お子さんの未来をより良いものにしていきましょう。

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Deb, S. S., Retzer, A., Roy, M., Acharya, R., Limbu, B., & Roy, A. (2020). The effectiveness of parent training for children with autism spectrum disorder: a systematic review and meta-analyses. BMC psychiatry, 20(1), 583. https://doi.org/10.1186/s12888-020-02973-7
Oono, I. P., Honey, E. J., & McConachie, H. (2013). Parent-mediated early intervention for young children with autism spectrum disorders (ASD). The Cochrane database of systematic reviews, (4), CD009774. https://doi.org/10.1002/14651858.CD009774.pub2
Cheng, W. M., Smith, T. B., Butler, M., Taylor, T. M., & Clayton, D. (2023). Effects of Parent-Implemented Interventions on Outcomes of Children with Autism: A Meta-Analysis. Journal of autism and developmental disorders, 53(11), 4147–4163. https://doi.org/10.1007/s10803-022-05688-8
Connie Kasari, Amanda C. Gulsrud, Connie Wong, Susan Kwon, Jill Locke, “Randomized Controlled Caregiver Mediated Joint Engagement Intervention for Toddlers with Autism”, Journal of Autism and Developmental Disorders, 2010.

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