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至高の人「平野レミ」について語りたい!①

昨年逝去された「和田誠」

 昨年、2019年は、逝去するいわゆる「大物」が多い年だった。と思うが、ここ数年は"例年のように"という感じかもしれない。個人的な好き嫌いは別にして、ちょっと挙げると、ジャニー喜多川、堺屋太一、ドナルド・キーン、田辺聖子、梅原猛、池内紀、内田裕也、萩原健一、遠藤ミチロウ、モンキー・パンチ、小池一夫、京マチ子、八千草薫、……そして私にとっては何より橋本治。

 同じ2019年に売れた書籍の中で、もっとも販売部数が多かったのは、一昨年亡くなった樹木希林の『一切なりゆき 樹木希林のことば』(文春新書)だったらしい(ちなみに刊行は2018年末)。正直、樹木希林ってそんなに人気だったの? と驚いたし、生前一冊も明らかに意志あって出さなかった人の本を出してしまって、故人の遺志は大丈夫なの? とも思った(何冊か出た樹木希林の本を一冊も読んでいないので、事情は知らない。買ったは買ったが、入院した祖母にあげるためだった。案外そういう需要だったのかもしれない)。とはいえ、確かに書店に行けば、いまや「追悼コーナー」とでも言うべき一角が、ほぼ常設されているように思う。

 逆に、昨年亡くなった方の書店展開を考えると、書店員や編集者に好きな人がいっぱいいそうなのに、全然盛り上がらなかったな……という人として、橋本治と「和田誠」がいる。和田誠も多彩な方で、そのイラストを目にしたことがない人はいないと言っていいだろう。

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 もっとも、両者とも特集ムックなども出たし、復刊もされたし、こんなもんかなという気もする。

和田誠の妻「平野レミ」のあまりに美しいスピーチ

 私の知り合いに編集者の方がいて、橋本治を偲ぶ会に参加されたそうだ。その方に聞いた話では、妹さんが泣かれていたらしい。橋本治は結婚せず、子どももいなかったが、妹さんと仲が良いことは、いち読者としても本から伝わってきていた。

 さて、一方の和田誠は「第93回キネマ旬報 特別賞」に選ばれ、先日授賞式が行われたらしい。その授賞式に、妻である「平野レミ」が登壇し、スピーチをしたと報じられた。あの「料理愛好家」として愛される平野レミだ。そのスピーチを見た私は、思わず感涙してしまった。

 (和田誠は)私が10時ごろまでずーっと寝ていると、お茶を持ってきて、「はい、お母さんお茶ですよ」って言って。私に「起きろ、起きろ」って絶対に言わないのね。優しいんですよ、すごく優しいの。もう、すべてに優しいの。だから、あんまりにね、優しい人と結婚しちゃったからね、あとがつらいですよね。あれが嫌なことがいっぱいあって、あんなこともあった、こんな嫌なこともあったって思ったら、こんなに悲しくないんですけどね。いま私は本当に悲しくて悲しくて、本当につらいんですよ。(動画3:11~3:40)

 故人の受賞式の場で、こんなに率直に思いを述べるスピーチを聞いたことがない。お礼を述べて、天国で喜んでいると思います、と言うのがだいたいだろう。「優しかった」とか、「悲しくてつらい」とか、言う人はそうそういないだろう。
 でも、聞いたら、和田誠が本当に素晴らしい人だったこと、平野レミが本当に愛していたことが、どんな祝辞よりもストレートに伝わってくる。

 和田誠についても、平野レミについても、私はそれほど詳しく知っているわけではない。それでも、二人とも好きだったし、いくつか本なども読んでいる。
 有名な話だが、既に名を成していた和田誠が、テレビやラジオに出演していた平野レミを見て一目ぼれし、久米宏やディレクターの伝手をたどって会い、1週間後に結婚したそうだ。

 ここでぜひ「平野レミ」の素晴らしさについて語ってみたい。(つづく)


 
 

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