劇場 / 又吉直樹 レビュー

中学時代の同級生と2人で立ち上げた劇団で脚本を書いている永田と、その彼女である沙希の恋愛青春小説であり、人間の内面を描く普遍的な小説でもある。

主人公の永田が自意識過剰で自己中心的で自尊心の塊で卑屈で、一人で部屋で読んでいると鬱屈としてくる。周りの人間は世間と折り合いをつけながらいい塩梅で生きているのに、永田と沙希だけが純粋で必死で。読んでいて苦しくて息が詰まるような作品だった。

自分が二十歳ぐらいのときに世の中に対して感じていたことが描かれていて、永田ほどではないにしても若い頃は窮屈な生き方をしていたなとしみじみと共感。妬みや嫉妬、根拠のない自信、誰かのちょっとした言動に一喜一憂。こうしたことは大なり小なり若い頃に誰しもが経験していることだろう。自分は他の人とは違う何者かだと勘違いをしていて、そうした心の奥底が見事に言語化されていて思わず共感してしまうのだ。

傑作です。

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