急増する不登校について考える
今回は、このところ、何かとニュースで耳にすることの多い「不登校」に関してです。
先に、お伝えしておくと、この配信を通して、何かまとまった考えが私の中にあるわけではないですし、当然、こんな解決策があるよといったことをお伝えもできないです。
あくまでも、実際に目にしたことや耳にしたこと、身の回りの出来事を中心に、それに関して思ったことの断片を、皆さんと共有していければと思っています。
ニュースから感じる国の焦り
まず今回、不登校を取り上げようと思った直接的なきっかけは、文科省の補正予算に関するニュースでした。不登校・いじめ対策を今年度の補正予算に盛り込みますというニュースがあったんです。
元々、予算をつけますという話はあったのですが、それを来年度予算から前倒しして今年度の補正予算に入れますという動きになっているらしく、そこにこの問題に対する国の焦りのようなものを感じました。
では、その予算をもとに、どのような対策を打とうと考えているかというと、
学校にスクールカウンセラーを確実に配置し、生徒や児童からの相談に応じる時間を増やす
学校内に児童生徒が一息つけるような居場所となるような部屋を整備する
タブレット端末に日々心身の健康状態を管理できるようなアプリを導入
といったところのようです。
正直、国としてもおそらく、これをやったら大丈夫だという確固たる信念があるわけではなく、やれるところから、なんとかして手をつけていかないといけない状況だと考えているのでしょう。
いったいどれくらいの小中学生が不登校なの?
ここで、今現在、どれぐらいの児童生徒が不登校状態になっているのかを確認していきます。
最新のデータは、令和4年度、つまり昨年度のものとなります。 それを見ると、小学生と中学生の合計で約30万人ほどが不登校の状態だという調査結果が出ています。内訳を見ますと、小学生が10万人強で、中学生が20万人弱。トータルで約30万です。
傾向としては、小学生の低学年から高学年に向かって人数が増えていき、ピークが中学校の2~3年生ぐらいです。
不登校生徒が中学生で20万人弱。その数だけ聞いてもピンと来ないと思います。割合にすると、すべての中学生のだいたい6%。100人いたら6人ぐらいが不登校の状態です。1クラス33人とすると、100人だと3クラスできるわけですから、1クラスに2人ずつ不登校の生徒がいるということになります。
そう考えると、「結構多いな…」と感じます。同時に、肌感的にも、漏れ聞こえてくるウワサ話的にも、たしかにそれぐらいになりそうだなとも思います。これが今の中学生の実態なのでしょう。
長期でみたときの変化
この数字、今までどのように変化してきたかについても見てみます。実は、データのある2000年から2015年ぐらいまでは、ほとんど変化がなありませんでした。小学生と中学生の不登校者が合わせて約15万人弱のところで推移していました。それが、2016年ぐらいをターニングポイントに急に増え始めます。
ここ数年は、コロナ禍もあった関係でさらに角度が急になり、2015年までずっと15万人弱で来ていたところから大体2倍である30万人程度になってしまっているという状況です。
不登校の急増、本当の要因はなんだろう?
ちょっと話は戻ります。冒頭に、文科省が不登校といじめの対策に補正予算を盛り込みますという話を書きましたけれども、不登校といじめをセットにして考えるのは若干誤解を招くと思っています。
文科省の上記の調査結果には、不登校の要因調査も結果が出ています。学校に対して調査をしているんですね。それを見ると、小学校と中学校のいずれについても、半数以上が、その原因は「無気力」や「不安」といった、あくまでも本人の気質的な部分でそのような状態になっているというのです。
いじめですとか、学校の先生との関係ですとか、学業や進路といった要因によって不登校になっているわけではない、というのが文科省の調査に表れています。
しかしながら、一方で、別の観点から見た調査もあります。
滋賀県のフリースクールの団体が行った調査です。先ほどの文科省の調査はその対象が学校でした。対して、こちらの調査は、不登校のご本人とそのご家族を対象としています。
こちらの報告書を見ると、学校に行きづらいと思ったきっかけの上位の回答は、先生のことだったり、友達関係だったり、あるいは、学校がそもそも合わないとか、具体的な身体の不調症状などが上位にあげられています。
もしかすると、児童生徒ひとりひとりの不登校の裏にある要因は、見方によって、あるいは、立場によって、変わるのかもしれない。そう思わずにはいられません。
また、文科省調査のなかで、コロナ禍をきっかけに不登校が増えたのには明確な理由がひとつあります。それは、感染回避のための長期欠席も不登校の理由として加えた点です。カウントの方針が変わっているので、その部分は、たしかに影響があります。
ただ、その内訳を見てみると、コロナの感染回避のための欠席を抜いたところで、不登校者の数が急増している傾向というのは変わりません。コロナの影響を考慮したとしても、不登校傾向は増えているのです。
コロナ禍の不登校への影響、外国ではどうなの?
今年の9月、イギリスの新聞にある記事が載りました。イギリスでもかなり不登校者が増えているというのです。
変化が見られたのはやはりコロナ前後とのことで、全体的な欠席率はコロナ前に比べて大体5割増し、 そして、年間通して10%以上の授業を欠席する長期的欠席はコロナ前に比べて、今、倍以上になっており、こちらも、非常に大きな社会問題になっているそうです。
イギリスに限って言うと、そうした欠席者は、いわゆる社会経済的に恵まれてない層の子どもが多いようです。したがって対策も、本人に対しての対策だけではなく、その家庭も含めた包括的な対策が必要だという方向で、イギリスでは動いているようです。
もしかしたら、イギリス以外の国でも、こうした傾向が見られているのではないか。あくまでも仮説にはなりますが、個人的にはそう思っています。
最後に
冒頭でお伝えした通り、これに対して、こんな良いアイデアがあるよといったことはまったくないのです。ないのですけれど、なんとなく感じるのは、こうした傾向は、今後、一気に解決するのは難しいのかなということ。学校が絶対的なものではなくなりつつあるように感じています。
だからこそ、学校以外の集まれるような場、あるいは、オンライン等で学びを継続できるような環境を、今後整えていかないといけないのかなと、ぼんやりと考えてるところです。
先日、滋賀県の東近江市長が、「フリースクールを増やすということは国家の根幹を崩しかねない」といった主旨の発言をして炎上していました。むしろフリースクールのような場を今後増やしていかないと、こぼれ落ちていってしまう児童や生徒は増えていくと思いますし、そうした対策こそ必要になってくるんじゃないかと思っています。
大変難しい問題で、すぐに良い解決策が見つかる問題では決してありません。しかし、重要度から言えば、この国の今後を占うよう重くて緊急性の高い問題だと思っています。これからも、引き続き追いかけていきたいと思っています。
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