アーティストとZINEとお金について

若手のアーティストを中心としたVOCA展という展覧会を見てきた。

会場をまわって、最後にたどり着くのはミュージアムショップだ。今回は出展者それぞれの作品が売られていた。といっても、絵画そのものが売られているのではなく、作品集みたいな本が売られている。

ショップ内をぐるぐるとまわるうちに、ふとあることに気づいた。

ここで売られている作品集の多くは、出版社でしっかりお金をかけて作っているというよりは、どうにも手作り感が強いというか、これは僕が作っているZINEやリトルプレスと呼ぶべきものではないのか?

実際、タイトルにZINEと銘打った作品集もあった。また、出版社を通した作品集ではあったけれど、その出版社がかなりの小規模なんて言うものもあった。

なんだか急に親近感を覚える。現代アーティストというとなんだか常人と違う近寄りがたそうなイメージでいたけれど、なんだ、アンタたちも作品発表の場としてZINEを作るのか。それなら同好の士じゃないか。

美術や写真のアーティストが自分の作品をZINEにして発表・販売するというケースはかなり多いし、知り合いにもそういう人がいる。そういう人たちがあそこに出展してるのかな、と考えると、なんだか急に親近感を覚える。

そして親近感を覚えると同時に気になるのが懐事情だ。

若手アーティストはいったいどうやってお金を得ているんだ?

よくアート作品がとんでもない額で取引されるのが話題になるけれど、若手のアーティストでも結構な額で取引されるのか? そもそも絵ってそんなに売れるのか?

そして、ZINEを売るということは、これらの活動の何かの足しになったりするのだろうか。

同じZINEの作り手だからなんとなくわかってしまう。このクオリティのZINEをこの値段で売ったら、おそらく売り上げはこのくらいだから……。なんてことが。

となると、「アートのZINEを売って生活費を稼ぐ」ためには、とにかくバカ売れしないといけない。

バカ売れするためには、大規模な即売イベントのような、バカ売れできるだけの集客力を持つ販売場所が必要だ。

アート系のZINEが販売できそうな大規模なイベントというと、TABFとかデザインフェスタとかあの辺だろうか。もちろん、年にそう何度もない。

よそ様の懐事情を探ろうだなんて、我ながらなかなか失礼なことを考えてる気もする。だけど、アーティストの経済事情ってなかなか耳にしないし、なんだかアートでお金の話はタブーな気もするからこそ、逆に気になってしまうのだ。

そもそも、アートの値段とはいったい何なのだ? どの絵が高くてどの絵が安いが素人でも簡単にわかるんだったら、鑑定士なんて職業はいらないのだ。値段はついているんだけど、その値段の根拠が素人にはよくわからない。だからこそ逆に、アートとお金の関係が気になってしまう。アーティストは、どうやってアートをお金に換えてるんだ? と。

そしてこの「どうやって作品を売ってお金に換えるか」問題はまわりまわって自分のようなもの書き、要はクリエイターと呼ばれるすべてに人に共通する事柄なんだと思う。

だからこそ、ZINEやリトルプレスという文化をもっと育てていかなければいけなのである。アーティストだのクリエイターだのと呼ばれる人たちが、作品を発表し、なおかつ換金できる媒体として。

と同時に、ZINEを売る場所がが単にモノとお金をやり取りする場ではなく、アートやエンタメを育む場所として成長していかなければいけないのだ。

アートやエンタメを育みつつ、それをお金に換える。ZINEという媒体にはその可能性があると思う。

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