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Salesforceのインパクトとサステナビリティ政策

Salesforceは、巨大グローバル企業でありながら、サステナビリティ政策(持続可能な社会づくりに関する政策)において、とても大胆な企業です。そのなかでも脱炭素に関する取り組みは、環境的、社会的な「インパクト」を生むことを強く意識したものになっています。

企業のサステナビリティ政策において「インパクト」の考え方がどのように採り入れられているのかを示す例として、同社の取り組みをご紹介しましょう。​

「ビジョン」を大胆に掲げる


「自社の」カーボンニュートラル実現に向けた目標を掲げる企業は多く見られますが、Salesforceは「世界的な気候変動問題の解決」を最上位のビジョンとして掲げています。
具体的にはパリ協定で合意された、「世界全体の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて1.5°Cに抑える」という努力目標を、自社のサステナビリティ政策の目標としています。

ちなみに、Salesforce自身は、バリューチェーン全体でのネット排出量ゼロ、事業におけるエネルギーの100%再生エネルギー由来化を既に実現しています。

Salesforceが掲げるような公益的で壮大な「ビジョン」から自社の活動を考えていく逆算的(バックキャスティング)なアプローチは、「インパクト思考」の根幹にあるものです。

ビジョンから、粒度の高い「プロジェクト」への分類・整理

上記の野心的なビジョンを達成するためには、多面的な活動が必要です。
ただし「できることから始めよう」と性急に手近な活動に着手しても、ビジョン実現は不可能です。まずは、少し粒度の高い「プロジェクト」たちに分類、整理することが必要です。
それぞれのプロジェクトには目的・目標も設定します。このプロセスは、当社が「インパクトデザイン」と呼ぶものの一部です。

具体的には、Salesforceは、

① Carbon removal(カーボンリムーバル:炭素除去)
② Emissions reduction(炭素排出削減)
➂ Trillion trees & ecosystem restoration(森林・生態系の回復)
④ Education & mobilization(他者の教育と巻き込み)
⑤ Innovation(革新)
⑥ Policy & regulations(政策・規制)

Salesforce Climate Action Plan

を粒度の高いプロジェクトとして分類しています。

他社との協働、他者を巻き込む事業設計

壮大なビジョンを実現するために、企業1社でできることは限られています。ちなみに、企業に限らず、私がかつて在籍した国際協力機構(JICA)などの公的機関であっても、単体でできることには限度があります。
インパクトを実現するためには「変化の波及」を起こす必要があり、そのためには、誰をビジョン達成のためのパートナーと位置づけ、どのように働きかけ、巻き込んでいくかの事業設計が必須です。

この点からも、Salesforceにおいてサステナビリティ政策を担っている人は、自社顧客や他社の巻き込みを計画に効果的に採り入れていることから、「インパクト」の考え方を熟知してインパクトデザインを行っているなと感じます。  


今回は、Salesforceのサステナビリティ政策が、「インパクト思考」を巧みに活用し、具体的な施策に落とし込まれていることをご紹介しました。

「自社でマテリアリティ(重要課題)を設定したけれど、次に何をすべきかわからない」という企業は多くいらっしゃるのではないでしょうか?Salesforeceのように、「インパクト」の考え方を用いると、次の一歩が見えるかもしれません。


筆者のTwitterでは、インパクトに関する企業の取り組みを紹介していますので、よろしければご覧ください。


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