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放課後


学園祭が近づき
準備も大詰めになってきた頃、
彼と私はだいぶ話すようになっていた。

彼の当時の彼女は嫉妬が激しかったため、
恨まれない程度に仲良くしていた。

ある日の放課後、
どんな流れだったかは全く覚えてないけれど
2人でカラオケに行くことになった。

彼女にバレないか不安で仕方なかったが、
カラオケの個室に入ってしまえば
そんな気持ちはすぐどこかに消え去った。

だが、それと同時に新しい気持ちが芽生えた。

〝緊張〟だった。
彼氏以外の男子と2人でカラオケなんて
もちろん行ったことはなかったし
学校外で彼と過ごすのも初めてだったのだ。

そんな私の緊張をよそに
彼は歌い出した。

特に上手くも下手でもない彼の歌のおかげで
私は少しリラックスすることができた。
歌っていれば会話をする必要もなかったし、
気まずくなる時間は生まれずに済んだ。

私たちはそれから
みんなにバレないように
特に彼の彼女にはバレないように
カラオケに行くようになった。

そして、学園祭の少し前。
彼がカラオケ帰りに
「彼女と別れようと思う」と言い出した。

原因は彼女の嫉妬、束縛、浮気。
当然だと思った。
その日の夜、彼は彼女に別れを告げた。

それから毎日
彼と私は一緒に帰るようになった。
でも、まだただ仲のいい友達だった。

学園祭当日になった。
私が責任者をしていた仮装部門は
2位というとても悔しい結果に終わった。

その日の放課後は
2人でラーメン屋に行った。
たわいもない会話をしながら
醤油ラーメンと餃子を頬張った。

帰り道、
「色々手伝ってくれてありがとね」
と私は彼にお礼を言った。

すると彼は

「俺は何もしてないよ。
あと、俺は

うちのクラスが1番だったと思うよ。」

と言った。

普段は馬鹿にしてくる彼が発した
突然の褒め言葉にとても驚いた。
そして、
あからさまに顔が赤くなるくらい嬉しかった。

それまでは何とも思ってなかった
自転車を引く彼の姿が、
その日はずっとかっこよく見えた。


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