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社会を知りたい③資本主義が終わる?私たちはどうなっていく?

社会を知りたい②の続き。今回読んだ本はこちら。

前回は日本経済の現状とその打開策、AIによる技術的失業に対しての政策としてどんなものがあるかをまとめた。今回は来たるAIによる経済がどう社会を変えていくか、私たちはどうなっていくか?について。

要点は、2045年頃を予想として、私たちの仕事は一部を除き、ほぼすべての仕事を機械が担う純粋機械化経済が来る。そして、その打開策として、ベーシックシンカム(BI)という手段が有力である。

純粋機械化経済が来る

現在の経済では労働力(人)が機械を扱い、生産するシステムになっている(労働者+機械⇒生産)。だから、今はどれだけ高性能な機械があっても、同時に人がいなければ生産力が上がらない。

ただ、汎用AIが入ると機械自体が労働力となり、そして機械が機械を作り出していく、生産力に上限が無い(機械+増えた機械⇒生産、生産…)システムになっていく。機械は自己の判断から、労働力として新たに機械を生み出していくことが可能になり、労働力としての人が機械へと全面的に置き換わった社会を純粋機械化社会という。そして、著者はこの社会システムを変えるほどの汎用AIの性質から、次のGPT(※社会を知りたい②参照)となるのはほぼ汎用AIだろうとしている。

加えて、このような影響の大きなGPTが生まれると、その技術を導入した国とそうでない国の間に大きなGDP格差が起きる。だから日本としても、早い段階で汎用AIを取り入れなければ国は衰退していくことになる。ラッダイト運動のような思想が大きくなることも考えられるけど、そうでなければ汎用AI導入は既定路線ではないだろうか。

資本主義経済が終わる

そのように純粋機械化経済が訪れると、どうなるか。まず、労働者がいなくなるので資本家が労働者を雇い、労働者が機械を使って商品を生産するような経済である現在の資本主義経済がシステムとして終わりを迎える。その後は新しい形の資本主義がくるか別の体制になるかはわからないが、人が機械へと置き換わるので、人が労働から解放される「脱労働化社会」が来る

そうして訪れた脱労働化社会では、労働によってに収入がほぼ得られない社会でもあるため、汎用AIを所有する資本家と、労働者の間で所得格差が広がっていく(現状でも、トマ・ピケティの論では緩やかに広がっている状態だと言う ※下記参照)。じゃあ、そうなったら労働者はどう生きていけばいいのだろうか?

現状、手段として考えられるものには「生活保護」「社会主義経済」「ベーシックインカム(BI)」などがある。

(※ フランスの経済学者トマ・ピケティ。格差論について調べた彼は過去200年に遡る研究から『資本収益率(r)>経済成長率(g)』となることを見つけた。つまり、資本家が土地や機械などの何かを生み出すものにする投資の利益「資本収益率」が、経済が良くなってもらえる給料が上がる「経済成長率」よりも高くなる。これにより、徐々に労働者と資本家の格差は広がっていく。)

様々な社会体制

1つ目は現在も使われている生活保護。ただ、生活保護には資力調査という、生活保護の対象になるかどうかの調査があり、このコストが莫大にかかる。例えば、年収がゼロでも資産が2000万円ある人は保護が必要か、兄弟に3000万円の資産を持つ人は直ちに保護する必要があるか。その兄弟と一緒に住んでいる場合、縁が切れている場合…という複雑な調査になるため、コストがかかってしまう。

2つ目は社会主義経済。民間企業を国営企業にし、中央集権的に管理して計画経済を行う社会。簡単に言うと、企業を国のものにして、国が物の生産量や値段を決める仕組み。

中央としての政府が全国の市場を管理するこのスタイルは、ソ連で実際に運用されたもの(ソ連型社会主義)。ソ連でうまくいかなかった大きな理由は、計画経済が現場にいない人が指示を出していくようなもので、刻々と移り変わる現場に対応できなかった。現場で起きたことに即応できるようであればいいんだけど、汎用AIも人と全く同じ感性を持てるわけではないので、予測としても難しい。

他の社会主義の形としては。全員が国営企業の株券等を持つことで、全員が資本家になるというクーポン型市場社会主義も理論上考えられているけど、配当によるバラつきがでること、それ以前にこれらの社会主義経済は、現在の資本家が国営化をそもそも受け入れないという可能性がある。

ベーシックインカム(BI)という選択

3つ目はベーシックインカム(BI)。国民配当とも訳されるBIは、国から直接国民すべてに、最低限の生活費を給付するというもの。選別的に給付する生活保護に比べて、一括でみんなに給付するので行政コストが割安になる(給付についての事務手続きがあるのでコストはなくならないけど)。ただし、個人の生活に関わるものをひっくるめて支援する生活保護に比べ、医療や介護等の障害支援に費用がかかる人に対しては、今まで通りの社会保障制度が別に必要となる。

BIについての問題として財政コストの問題がよく取り上げられるが、財政は増税を行って確保することで解決する。増税と聞くと拒否感のある自分達だけど、結局そうして増税されたお金が自分達に給付されるので、戻ってくることになる。納税額が多い人は相対的に負担が大きくなるが、現在の生活保護に比べて行政コストがかからない分、社会保障としては実質的に安くなり、現実的な方法論だとしている。


本書の要約としては大体ここまで。他にも書ききれなかったものや、詳しく説明できなかったところもあるけど、興味があれば読んでみて欲しいと思う。おすすめの本。

感想 → 社会を知りたい④

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