【絵本 よあけ】~夕暮れに夜明けの灯をともす
【並べて楽しい絵本の世界】
自然の中に行きたいな、
子どもの頃に見たような夜明けが見たいな
そんな気持ちで、今朝はこの絵本を手に取りました。
この絵本にただよう静かさが時々必要になります。
------福音館書店サイトより------
山に囲まれた湖の畔、暗く静かな夜明け前。おじいさんと孫が眠っています。沈みかけた丸い月は湖面にうつり、そよ風の立てるさざ波にゆらめきます。
やがて水面にもやが立ち、カエルのとびこむ音、鳥が鳴きかわす声が聞こえるようになると、おじいさんは孫を起こします。
夜中から薄明、そして朝へ……。刻々と変わっていく夜明けのうつろいゆく風景を、やわらかな色調で描きだします。
絵本をながめる人に静かな高揚感をもたらしてくれる1冊。
生きていくのに必要な、「大切な感覚」を何かで確認したくなる時があります。それは、音だったり匂いだったり。ことばだったり。
この絵本に描かれているものは、とてもシンプルなもの。
おじいさんと孫という登場人物も人間関係の中では、実にシンプルで大切なもの。
昔話の中には、よくおじいさんが登場します。
おじいさんは智慧の象徴としてもよく登場し、若者を導きます。
「賢者」はたいていおじいさんですよね。
寡黙で、凛としていて、やさしい。守ってくれる存在。
自分の中に住むそんな「おじいさん」に時々あいたくなって、この本を開きます。
私がまだ若くて、とんがっていて自分の未熟さにモンモンとしていたころに、そんなおじいさんに出会いました
ひげをたくわえていて、白いシャツに蝶ネクタイをしめて、夜の街でシェイカーを振っていました。お昼頃に起きて、当時やっていた私の店でサンドイッチとコーヒーの食事をするのが彼の習慣でした。いつもボロボロの本か新聞を手にしていました。時折、紙片になにかを書きつけていたりして、興味を惹かれましたが、なぜか何を書いているのか聞くことがためらわれました。
いつものブランチが終わると、二駅ほど散歩して、夕闇の訪れる頃、彼のお店の看板に灯が灯ります。
私は自分の店を閉めると必ず、おじいさんの店に通うようになりました。
普段は軽い冗談やダジャレしか口にしない彼の店は、いつもお客様でいっぱい。でも時折、その人にとってとても大切なことをつぶやいてくれます。
そうして彼=おじいさんの店は60年間続きました。
訪れる客は二世代におよび、彼の亡き後常連の客たちによって、今も営業を続けています。おばあさんになった私も、週に一度彼の店の看板を灯しに通っています。
電車にゆられ、看板に灯をいれるために。
電車に乗って暮れてゆく景色をながめながら、この本のことを思い出すのです。
生きていくのに必要な、「大切な感覚」
とてもシンプルな智慧。
そんな小さなものを、この本は思い出させてくれます。
絵本の中のおじいさんは、微笑みをたたえています。
私もそんなおじいさんになれるでしょうか?
蝶ネクタイのマスターは、得意なダジャレで、漕ぎ出す勇気をくれるでしょうか、空の上から。
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