20240319

 尼崎連続殺人事件の真相を追ったノンフィクション、一橋文哉『モンスター』(講談社)を読んだ。一九九八年から二〇一一年にかけて八人が死亡し、少なくとも三人、実際には十人近くが失踪した犯罪史に残る凶悪犯罪の首謀者とされる角田美代子。彼女は兵庫県警の留置所で逮捕された一年後の一二年一二月に〝自殺〟してしまい、彼女自身によって事件が語られることはなかった。この不可解な死に疑問を抱きつつ、著者は関係者への取材を重ねるうちに事件の裏に見え隠れする暴力団組織の元幹部の男の存在を突き止める。平和な一家に入り込み、彼らを暴力とヒエラルキーで徹底的に服従させて全財産を根こそぎ奪うという「北九州連続殺人事件」と似通った様相を見せているのはなぜか、その共通点を繋ぐ暴力団幹部の男、そして警察。彼女は本当に自殺だったのか? 凶悪犯罪の裏に潜むさらに深い闇。まさにドラマのような話だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?