20240328

 雲の多い天気で少し肌寒い一日になった。夜からは雨も降った。『さよなら、マエストロ~父と私のアパッシオナート~』と『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』の最終回を観て思ったことは、もはや現在における家族制度では多様性には対応できない、ということだった。そんなことは恐らくずっと前からそうだったのだろうが、グローバル化やジェンダーの問題がネットの普及以降急激に浸透し、一般化したことによってそれが特殊なことではないとある程度理解されるようになった証左ではないか。
 『さよなら、マエストロ』では、西島秀俊演じる夏目俊平と石田ゆり子演じる夏目志帆が最終的に離婚して家族という法制度から離脱しながらも前向きに生きていく選択をする。娘である響とも父と娘ではなく、一人の指揮者とバイオリニストという音楽家として向き合うことで五年という家族として止まっていた歳月を再び動かすことになった。ただ、リアリズムという点において、五年も指揮棒を振らなかった俊平がどうやって暮らしていたのか、志帆にしても結婚以来離れていたアートをやって郊外の離れにアトリエを構えられるほどの収入が得られるとは到底考えられないなど、いろいろと現実的な解決策としては疑問が残った。そういう意味では、『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』は極めてリアリズムを追求していたと思う。原田泰造演じる沖田誠が外部から他者としてやってくる中島颯太演じるゲイの五十嵐大地と出会うことで己の価値観を少しずつアップデートしていく初回の流れから、五十嵐の実父、相島一之演じる真一郎に対して大地の恋人の東啓介演じる砂川円との結婚を説得する他者として振舞う最後まで丁寧に描かれていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?