20240712

 川上未映子『夏物語』(文春文庫)を読了。突然、豊胸手術をすると言い出した姉・巻子と姪の緑子との思い出を綴った一部と、AID(人工授精)を受けようかと葛藤する中で母になること、子どもを産むということはどういうことなのかAIDで生まれた善百合子ら当事者と向き合いつつ決意に至るまでを描く二部。まさに『乳と卵』の問題意識を長篇化した作品。夏の暑い時に感じる身体の嫌悪感や酒のつまみに食べるジャッキーカルパスなど細やかな描写が自分の感覚ととても共感できるところがあった。一部はそうした夏休みの思い出感が出ていて面白かったが、やはり二部は後半で反出生主義の議論も出てきて個人的に賛同できるところとそうでない部分の乖離が続く感じだった。

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