20240506

 ついに連休最終日。わたしには関係がないが、TLが悲嘆に溢れていた。文學界5月号掲載の市川沙央「オフィーリア23号」を読んだ。一九世紀の『性と性格』で知られるオーストリアの思想家オットー・ヴァイニンガーを研究する女性が、彼氏の主宰する劇団で三島由紀夫の『憂国』の麗子を演じる。その過程で母に暴力を振るう医院長の父と、医者になることを宿命づけられた兄、父と兄に従順な母との家庭内の問題、フェミニズムの勉強会で知り合った女生との浮気、部屋に飾っていたオフィーリアのパズルとその思い出など、彼女が内面に抱える様々な側面や思想と、女性差別の問題を複雑に絡めて書かれている。 昨年の文學界新人賞受賞作『ハンチバック』で芥川賞を受賞し、一気に時の人になった彼女だが、前作同様、今作も一筋縄ではいかない作風で、社会問題に対する意識も高いのだなと改めて感じた。しかも、社会正義に対する疑問や、勧善懲悪でない物語展開など、小説で書かれる意味をしっかり彼女自身が理解していると思う。

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