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気付かないうちに、台湾最恐?心霊スポットを歩いていた夜の話

<牛肉麺絵日記 40/100杯目>台湾牛肉麺店100軒めぐり40日目。すごく怖かった夜のお話。

台湾滞在当時(2013年)、私はスマートフォンを持たずにシンプルな携帯電話を使用していました。調べ物は滞在先のパソコンを使っていたので特に問題はなく、グーグルに頼らない外国での町歩きは、不便ながらも道に迷うと思わぬ発見をしたり、ひっそりと営業している古いレストランを見つけて入ってみると、凄く温かかったり。でも、注意しないと気付かぬ内に、良からぬ道を歩いている事があるのです。

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最近日本では、怪談話や怪奇現象を取り扱った書籍や映像がすごく人気の様ですが、台湾でも怪談は人気だそうで、大手の書店で怪奇もの特設コーナーが出来る程盛り上がっているようです。私も子供の時は”ムー”の愛読者で、夏場はTVショー”あなたの知らない世界”や”2時のワイドショー”の怪奇現象特集を楽しみに見ていました。残念ながら自分には霊感というものが無い、というか無いと信じているので、ただ怖がって楽しんでいるだけのいち怪談ファンです。最近は北野誠さんの怪談話の録画動画などを楽しく見ています。

1年程前、面白そうな怪談動画を探していると、二人の松竹芸人・松原タニシさんと華井二等兵さんの、台湾・台北怪奇スポット動画配信の録画を見つけ、その映像がめっちゃ怖くて何度も観ました。深夜の火葬場で、”姿がない鈴の音色”のチリンチリンに追いかけられ、”めっちゃ怖い・めっちゃ怖い”と呟きながら逃げまどい、近くのトンネルに走り込む。ものすごく怖い動画です。

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最初の数回はその動画を普通に観ていたのですが、何度か観ているうちに、なんとなくその場所に・・行った事がある・・ような気がしてきました。ネットで調べてみると、その動画の撮影場所は・・・あの夜歩いた・あの山沿いの道でした・・。

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<地図の説明>左上・滞在先台湾芸術村と最寄駅公館站。右下・一駅先の萬隆站。右端真ん中・地下鉄辛亥駅辛亥トンネル(重要)。上真ん中・台湾大学。その下雷記小吃店(牛肉麺を食べた店)。歩いて山をぐるっと回る所要時間4−5時間ーーーーー

牛肉麺屋さん巡り40日目。2013年5月10日 夕方5時。(台湾・台北)
夕方、滞在先の最寄駅・公館站から萬隆站に向かって歩き始めた。台湾での牛肉麺店100店巡りも今日で40軒目。すでに40軒回ると、近場を闇雲にただぶらぶら歩き回っているだけでは、中々まだ入った事が無いお店に出会わない。

萬隆站に向かって歩いていると左手に山が見える。そんなに大きな山では無いが、簡単に登って”山向こう”へ超えれる程小さくはない。この山が台北の街を分断している様だ。山の向こう側を歩いてみようかなと何度か思った事はあるが、お店が少なそうなので、”山向こう”をまだ歩いた事が無い。

『山向こうには何があるの?』以前一度滞在先のスタッフに聞いた事がある『何も無いし、車通り多くて危ないから行ったらあかんよ。』彼女はそう答えた。

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萬隆站を超えて大通りを進んでいくと、そこそこお店が並ぶエリアに入るが、この界隈で見つけた牛肉麺店は全部既に訪れた。そのまま真っ直ぐ進むと大きな交差点に出る。交差点をまっすぐ進むと大きな病院があり、賑わう街に出る。右側も賑わっている。左に進むと・・”山の向こう側” 

『今日は”山の向こう側”へ行ってみようかな。いくら店が少ないエリアでも、牛肉麺店の1軒や2軒は見つかるやろう・・・。』

左を選び、”山向こう”に向かって歩く。歩き始めてしばらくは道沿いにお店が並ぶが牛肉麺店が見つからない。そのままどんどん先に進んだ。

夕方7半時過ぎ

30分程歩くと、だんだんお店が少なくなった。外を歩く人は殆どいない。そのまま進むと地下鉄MRT”辛亥駅”があった。駅を越えた先はかなり暗く、飲食店は無さそうだ。仕方ないから電車に乗ろうと駅に入った。

乗車カードを出そうとポケットを弄りながら駅の改札へ向かう途中、なんとなく駅構内備え付けの地図を観た。一駅先の六張犁站も、次の駅大安站もお店が多いエリアだ。どちらにしようか考えながら・・なんとなく現在地・辛亥駅の位置をその地図で確認する。辛亥駅前を越えてそのまま進むと”トンネル”があり、そのトンネルの向こう側に”台湾大学”がある事に気がついた。”山をぐるっと回って滞在先に戻る道”であり、それ程距離はなさそうだ。

『歩いてみようかな・・トンネル抜けた先に、お店が有るかもしれんしね。』電車でさっと繁華街に行く事に、少々未練を残しながら駅を出て、トンネルに向かって歩き出した。

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夜8時過ぎ

進めば進むほど道はどんどん暗くなり、やがて山沿いの細い側道となった。道はぬかるんでいて滑る。トンネルは想像していたよりもかなり遠く感じた。30メートルほど先に、ぼんやりと古いお店に”電気”がついているのが見えたので、牛肉麺店だったらいいなぁと淡い期待をしながら進んだ。けれど、古びた材木店と檳榔(びんろう)のお店だった。

交通量が多い幹線沿い。檳榔店がよくありそうなシチュエーションではある。でもその檳榔店では珍しく、切り花を売っていた。『こんな所で花買うかね?・・』さして気にせず先に進むと、ふわっと”お線香”の香りが漂ってきた。

目を凝らして先を見ると、遠くに人が沢山見えた。薄ら暗い明かりが、ぼーっと山ぎわの”何かしらの建物”を照らしている。

『お寺さんか・・なるほどね。だからお花売ってたんや・・』参拝者が多い寺院のようで、結構な人数の2グループが列を作って順番待ちをしている。『人気のお寺発見!』心でそう呟いた。

人が沢山いたので嬉しくなって、足取り軽くその”寺院”に向かって歩く。 『しかし・・暗いお寺さんやなぁ・・・』暗くて寺の建物がよく見えない。しかしその時、なんとなく”寺院にしては平べったくて長い”様な気がした。

せっかくだから私も参拝していこうと思い、軽く笑みを浮かべながらその列に加わると、年配の男性に”ギロッ”と睨まれた。”えっ?” 

列の先では棺桶がピカピカ光っていた。

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そこでやっと、ここが寺院ではなく”葬儀場”だという事に気がつき、そっと列から離れてぎゅっと両親指を握りしめて、『すいません・すいません』と頭をさげながら隣のグループ人の列を横切り、”トンネル”に向かって小走りで向かったものの・・・その先に見えるトンネルも又”暗くて薄気味悪い”。一瞬引き返そうかと迷ったけれど、もう一度”葬儀の邪魔”はしたく無い。仕方なくトンネルを選び、小走りで駆け込んだ。

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トンネルの歩道は狭くて薄暗く、歩行者は一人も歩いていない。想像していたより長い。途中に上がり道と下り道を繋ぐ連絡通路があり、ぬかるんでいる。『せめて他に歩いてる人がいたらなぁ・・・』 なかなか出口が見えない気がした。

トンネルもそろそろ後半に差し掛かる時、向かい側の歩道を人が歩いているのが見えたのでホッとした。すると途端にトンネルごときにビビる自分に恥ずかしさ感じ、嫌気がさした。

向かい側の歩道を、私の逆方向に向かって歩く”か細い女の人”は、買い物用の荷車らしきものを持っていて・・歩きにくそうに、ゆっくりゆっくり歩いていた。『このトンネル長くて歩きにくいから気の毒だな』と思った。

『あの女の人、トンネル抜けた先が葬儀場って知ってるんやろうか・・・』

トンネル内は交通量が多い割に、ひっそりとしていた。

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夜9時前

トンネルを抜けて幹線道路沿いを台湾大学に向かって歩く。トンネルから大学までは、想像していたより距離があり、お店らしきものは一切なかった。”仕方ないからこのまま新台北まで歩くか・・”新台北は深夜営業のお店が多い。すると、暗い幹線沿いに一軒の古い飲食店が明かりをつけていた。

メニューを見ると、牛肉麺があった。年配の店主は一度”ギロッ”とこちらを見て、大きな中華包丁で店に入る様に促した。恐る恐る狭い店内に入り、席に着いた。雷記小吃店かなり古いお店の様だ。

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席に着き、ヘラヘラと弱々しい声で”牛肉麺”を注文した。他にお客さんはいない。歩道にも二卓の客席があり、なぜか歩道真ん中に洗い物ができるシンクがある。どうやって水を引いているのだろうか・・飲食業が長いので少々気になった。店内厨房にはお肉用のグリラーがあり、チャーシュー・ソーセージ・鴨肉・野菜がゴロゴロと並べられている。よくみると結構美味しそうだ。店主さんは淡々と無表情で麺を調理し、器に盛り終わると軽く笑みを浮かべて麺を運んでくれた。

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スープは少し甘めでしっかりと濃い味付け。お肉はゼラチン質が柔らかく心地よい。薄めのスライスでも物足りなさは感じない。軽く漢方の香り。麺は細麺で柔らかめ。青菜もしっかり乗っている。下町食堂のホッとする味。次の日の仕込みをする店主さんに会釈して、お店を出た。

次の日の朝

『山の向こう歩いたらあかんよ』と教えてくれた滞在先の女性スタッフにオフィスで会った。彼女は忙しそうにパソコンの画面を覗き込んでいた。忙しそうなので邪魔をしない様に、やんわり昨晩の”葬儀場”での話をした。

『で、トンネル歩いた?・・・』

『歩いたよ』

『ははっ・・で、女のオバケ見たとか?・ははっ・・白い服の・・・。あそこ・・よく出るんよねぇ・・・ははっ』

”トンネルのオバケ  ?・・・白い服の女 ?オバケの事聞いてないし。あの女人の服・・何色やったっけ・・・”

『ははっ・・見てないよ。』

彼女は一度チラッと私を見てニヤッと笑みを浮かべると、また忙しそうにパソコンを覗き込み・・・データをパチパチ打ち込み始めた。

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