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【第十二話】長男が児相の一時保護から帰ってきた話

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児童相談所に、子供を一時保護してもらった話

前回の話にも書いた通り、長男の一時保護解除は、面会した翌日ということだったが、世の中は新型コロナで大騒ぎ中。

そのため、長男との面会が近くなったある日、児相から電話があり「コロナのこともあるので、即帰宅にしましょう」と言われた。

こちらとしては長男が早く帰ってくるに越したことはない。それに面会した翌日の帰宅ってのも嫌だったし、ちょうど良かった。

ちなみに、面会した翌日の帰宅の理由を児相の担当者に聞いてみたところ、「いきなり帰宅すると、環境が激変して子供がショックを受けて夜泣きするから、心の準備をさせるため」と言われた。(正直、あまり釈然としない理由だった…笑)

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▲子供が夜泣きするから…という理由はちょっと釈然としない

そんなこんなで長男が帰宅する日。
児相から、とある場所へ来るよう住所を言われた。いくつかある児相の一時保護所なんだそうで、「信頼できる親にだけ場所を教えてるけど、この場所は絶対秘密にしてね」と3~4回念押しされた。

1月末の一時保護から長男はその施設で過ごしていたらしい。僕としてはどこかの児童相談所併設の一時保護所にいるもんだと思っていた。

教えてもらった一時保護所をGoogleストリートビューで調べてみると、住宅街の中にひっそりあった。何かの施設ということはわかるものの、看板などは一切出ておらず、外から中の様子はわからないようになっている。

当然、Googleマップなどにも一切情報は登録されていないので、児相の人から教えてもらわないと絶対にわからない場所だなぁと思った。

児相の人いわく、まれに一時保護になった子供を取り返そうと乗り込んでくる親もいるそうなので、こういった施設の場所は絶対に明かせないのだろう。

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▲一時保護所は、住宅街の中にひっそりある感じ※写真はイメージ

一時保護所には車で向かった。
駐車場に車を停めると、施設の中から遊んでいる子供たちの声が聞こえた。息子も遊んでいるのだろうか…と思いながら施設の中へ。

施設内は、殺風景な感じ。まったくと言っていいほど装飾はなく、出入り口には職員の詰め所があり、出入りの管理は超厳重なようだ。

玄関に見覚えのある息子の靴。
靴を見て「あぁ、今日で長男が帰ってくるんだ…」と実感した。この2ヶ月どうしていただろうか、ダマすように警察署に置いてきたこと、妻の閉鎖病棟への入院生活など様々なことが頭をよぎった。

出迎えてくれた職員の方に面接室に通された。面接室には児相の担当者と心理士はいたが、息子の姿はなし。「今、お昼寝をしているので、先にこれまでの生活についてお話しますね」と言われた。

少しして一時保護所で長男の面倒を見てくれた職員の方がやってきた。雰囲気的には保育園の先生、という感じの優しそうな中年女性。これまでの長男の様子について教えてくれた。

■一時保護中の長男の様子
・いつもニコニコしていて、優しく良い子
・周りの子供や職員からも人気があり、可愛がられていた
・職員が「ママの具合が悪いから治るまでここにいてね」と説明すると「うん!」と返事をしていた
・ただし、時おり「うちにかえる!」と泣いていた
・野菜が苦手だったが食べられるようになってきた
・最近は戦隊モノや仮面ライダーにハマっている
・ブロックで戦隊モノの銃?を作って、何かと戦っていることがある、あまり見ると恥ずかしがって隠れてしまう様が非常に可愛い

さみしい思いをしていたようだが、一時保護所の方にとても良くしてもらったようだ。辛い思いをさせてしまったが、良い場所で過ごせて本当に良かった。本当に感謝しかない。

そして戦隊モノや仮面ライダーにハマったとは…なんか成長を感じる。僕も勉強してみよう笑

話を30分ほどした後にお昼寝から目覚めた長男がやってきた。

背が伸びたし、髪も伸びた。それに肌の色が黒い!たくさん外で遊ばせてもらったのだろう。夏休みの子供みたいにコンガリ焼けていた。

長男は、どこか戸惑っている様だったが、すぐに駆け寄ってきてギュッとしてくれた。妻も喜んで涙を流していた。妻も色々辛かっただろう…帰ってきてくれて本当に良かった。僕も涙が流れた。

施設を出る際、多くの職員の方が見送り。本当に良くしてもらえたんだなぁ…と改めて実感した。一時保護所の皆様、改めてありがとうございました。

帰り道、長男にたくさん話しかけた。
肯定の場合は「うん」、否定の場合は「ちがうってばー」「やだってばー」という感じで答えてくれた。会話が成り立つ感じもすごい成長。

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▲帰りの車の中では、長男とたくさん会話した

一時保護は、非常に辛い経験だった。
もう二度としたくない。一時保護という制度によって救われた部分はある。預かってもらったから妻は治療を受けられた、と言っても過言ではないだろう。

でも、僕は言葉もちゃんと喋れない長男をダマすように警察署に置いてきた。僕の残酷な選択は長男をどれだけ傷つけただろうか…

一時保護所では良くしてもらえたようだが、長男は途方もないさびしさを味わっただろう。本当にごめん。

児相の人からは「罪悪感を感じる必要はない、奥さんの治療のため避けられなかったし帰ってきたんだから」と言ってもらえるが、僕の罪悪感は消えない。長男にはこのような辛い思いを二度とさせたくない。

長男が帰ってきてくれてうれしいけど、辛い気持ちもある感じ。ただ、これまで以上に子供たちのことを大切にしたい、とも思った。

つづく。

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