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父とのおわかれ

傍らに辿り着いたとき
殆んどの父はすでにその場を去り
最後の一人がしずかに寝息を
たてていた

寝息は折々に乱れ
ときに大きく顔を歪ませながら
内なる燈が細くゆれるさまを
味わっていた

最後の父は口数少なく
もうすべてを語り終えてしまったかのように
虚無をも映す顔つきで
じっとその身を堪えていた

先にこの場を去った父たちは
どの辺りを歩いていったのだろうか?
最後に残った父の眼は
どの辺りを見ていたのだろうか?

声をかけ手を握るも
もうどこまでも父は独りで
ときに口に水を含みながら
その身の碧く流れるままにいた

やがて 眼を見開き 息を震わせ
およそ三十分の荒波を越えて
父は一つの肉体に戻った

自らの燈の最後の一火まで
そのからだのすべてに味わい尽くして
七十五年の彷徨を終えたのだ



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