12/2022
空一面をおおう朝の曇りの透白肌から
淡墨色の粒子が降りそそぎ
街はしずかに薄眼をあけて雨をまつ
*
重く湿りきったからだから
少しずつ すこしずつ
水の粒子が泡となって浮きあがる
粟立つ肌と 解かれる臓腑
*
エネルギーの不足を解消するために
源から沸き起こる刻を待つ
できあいを汲み取ってくるのではなく
枯れた砂地に沁みだしてくるのを待つ
あてもなく空を眺めながら
しずかに待つ
*
夜明け前の弁当を拵える音のとなりで
食べ終えた食事たちの跡を片づける
湯栓をひねる水のあたたかさが身体に沁みとおり
積み重ねられた器たちがほっと一息をつく
*
わたしがのんびりとからだを休めている間に
少年は必死で善後策を考えていた
わたしがもういいと思ったその傍らで
少年は苛まれ からだを強張らせていた
こめかみに疼く痛みのなかに
少年の苦しみが見え隠れしている
*
陽のひかりがあたたかい
夜露の残る大地に射し込む朝のひかりが
街の色をあざやかに映し出す
*
筋肉が張り詰めることで 筋張する
精神を切り詰めることで 緊張する
筋肉をほぐし 精神をやすめ
からだの張りをやわらげる
*
重力が大きく感じられる よく晴れた今日の朝
頭部はいつもの1・5倍
身体はいつもの1・2倍
一日をかけて全身の重力の鎖を解きほぐし
すこし浮かんでしまうくらいのからだになる
*
歩こうという意思が 夜明けの空に昇ってくる
いっとき奥深く沈み込んでいた宵闇の時間を
もううまく思い出すことができない
*
川面にゆれるさざなみ
川辺にそよぐ葦
うすく透きとおった青空
ちいさな粒子のちいさな瞬き
肌に感じるちいさな粟立ち
*
散歩のあとのからだが
うすくひろく波立っている
寄せる波は
佳き力をもたらし
返す波は
悪しき毒を持ち去らんことを