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受け身を取れれば痛くない(サロメ出演者紹介⑤手塚優希)

 本日2/25まで、獣の仕業という劇団で「サロメ」というオスカー・ワイルド原作の演劇を上演しています。ひとりでも多くの人に見ていただきたく、出演する俳優たちの紹介をします。五十音順で行きます。
 第四回佐藤天衣はこちら▼

 第五回は手塚優希。一緒に芝居を作っている期間が最も長いメンバーの一人です。主演もできるし助演もできる。シリアスもできるしコメディもできる。台本芝居も即興芝居もできる。多種多様な芝居に精通しています。

 そのため魅力も数多くあるのですが、今回のサロメ上演においてどれかを選ぶとしたらやはり何といってもその「受け身の巧さ」でしょうか。
 ここで言う受け身というのは格闘技分野の体術としての受け身ではなく、精神的な受け身のことを指します。

 たとえば芝居中で先生が叱られる生徒の役を演じるとします。そのシーンについて観客も生徒側の気持ちに共感してもらい一緒に悲しくなったりむかついたりしてほしい時には、叱られる側の正とのリアクションは本当に悲しそうな、つまり「可哀そうに見える」リアクションが求められやすいです。
 しかし叱られている間に生徒が先生に気づかれないようにこっそり早弁をするなど、叱られている状態自体に笑いを引き起こしたいシーンの時には、叱られているときのリアクションが「可哀そうに見えない」ことが重要になることがあります。
 この「可哀そうに見えないこと」を「受け身が巧い」とたとえるそうです。

 ソースがないのですが、どうやら格闘技から派生したお笑いの用語のようです。罰ゲームを受けた芸人がちいさなこえで「痛っ…」とか「あっつ…」とリアクションしてしまうと、心配になって笑うような気持ちになりにくいかもしれないですよね。痛がるリアクションを笑いにつなげること自体に懸念が示される流れはありつつも、本来可哀そうな状況が可哀そうに見えない技術(あるいは可哀そうに見える可能性を減らす技術)というのは以前から確かに存在するのです。
 それが手塚の使いこなす「受け身の巧さ」です。
 
 インプロショーで優勝できなくても、別にかわいそうじゃなくて、なんならファンは手塚がまた優勝を逃すことを期待していたりもする。それは手塚の負けというアクティビティがエンタメとして、つまり人に見せるものとしてちゃんとショーアップされているからだと思います。これ、誰にでもできることじゃなくて、技術の他にも本人の雰囲気に似合うかどうかも大切だと感じています。本人自体の性格よりも大事なのは、板上で表現されるキャラクター性との相性なんじゃないかと睨んでいます。
 同じようなことが台本芝居にも言えて、私から見て板の上の手塚って全然かわいそうじゃないんですよ。受け身が巧いから、見てて全然痛くない。これは見てる人にもとても意味があることです。しっかり負け切らないといけない登場人物がいる作品ってそれなりにあって、そういうときは一家に一台手塚ですよ。オファーお待ちしております。

撮影:加藤春日

 そんな手塚がサロメで演じる役はユダヤの王「ヘロデ」。
 ワイルドの原作ではシンプルに「王」と称されますが、王国を分割した領土を任され統治している人物なので、今で言うと県知事くらいの立場でしょうか。四分領太守とも称されます。
「ユダヤ古代誌」に記されていることによれば、先の妻ファサエリスがいる身でありながらヘロディアに惹かれ結婚を申し出たそうです。しかもヘロディアにもすでに夫がいました。ヘロデの兄、フィリポです。ヨカナーンが「近親婚」と表現するこの関係は、サロメの物語の重要な軸を担っています。
 そんな権力の強いはずの王が、受け身を取る……?
 さて、どういうことでしょうか。
 
 あと、台詞量はとにかく凄まじいものがあります。
 手塚史上最大台詞量の手塚を見たい方にもオススメです。
 
 劇場上演は本日2月25日まで。配信やDVDの予約受付もございます。
 ぜひ劇場で、配信で、あるいはDVDで、見届けてください。


獣の仕業 第十五回公演「サロメ」

[■■■, ■■■, Lema Sabachthani?]

2/23(金祝) 20:00
2/24(土) 14:00/19:00
2/25(日) 13:00/18:00※生配信回
会場:シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京・王子神谷)

劇場チケット予約

  • 劇場チケット:2,500円

  • 劇場+紙脚本付チケット:3,000円

劇団メール(swz@live.jp)メールにてお名前・ご観劇日時・枚数をご連絡ください。

  • 上演時間:約95分

  • 受付開始・開場は開演30分前

  • 未就学児童入場不可

  • 舞台上で水を使用する演出が一部あります。意図的に観客席に水をかけることはありませんが、お席によっては飛沫がかかる可能性があります。ご了承ください

配信チケット購入

【配信での観劇購入(生配信+アーカイブ視聴)】

  • 販売期間:1/7(日)20:00~3/24(日)23:59

  • 配信期間:2/25(日)18:00~3/25(月)23:59

  • 応援キャスト指定でのご予約をご希望の方は「備考」欄へのご記入をお願いいたします

DVD予約注文(初回特典予約~3/31)

  • ≪DVD特典≫

    • 獣の仕業による全編副音声コメンタリー

    • 上演台本PDF

    • 初回特典限定ブロマイド付属

作=オスカー・ワイルド
翻訳=森鴎外
脚色・演出=立夏

出演=

  • サロメ(ユダヤの王女 ヘロディアの娘)…雑賀玲衣

  • ヘロデ(ユダヤの王、サロメの義父)…手塚優希

  • ヘロデの穢れ ファサエリス(ヘロデの先妻)…小林龍二

  • ヘロディア(ヘロデの後妻、サロメの母)…柳橋龍(兎団)

  • ヘロディアの穢れ フィリポ(ヘロディアの先夫、ヘロデの兄、サロメの実父)…佐藤天衣(兎団)

  • ナアマン(首斬役)…古川ゆかり

  • ヨカナーン(預言者、イエスの洗礼者)…きえる

スタッフ=

  • 舞台監督:小林龍二

  • 照明:寺田香織

  • 音響:新直人(salty rock/零'sRecord)

  • 撮影・配信:U-3

  • 衣装:きえる

  • 写真撮影:加藤春日

  • 宣伝美術:立夏

  • 制作:手塚優希

会場=

シアター・バビロンの流れのほとりにて

〒114-0003 東京都北区豊島7-26-19

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