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客観と主観のギャップを埋めていく(サロメ出演者紹介④佐藤天衣)

 今週末、獣の仕業という劇団で「サロメ」というオスカー・ワイルド原作の演劇をします。ひとりでも多くの人に見ていただきたく、出演する俳優たちの紹介をします。五十音順で行きます。
 第三回雑賀玲衣はこちら▼

 第四回は佐藤天衣。サトウアマイと読みます。砂糖が甘いからサトウアマイ。嘘みたいですが、本当の理由だそうです。

 今回の座組の中では、一番最近出会ったのが佐藤天衣です。4年前。流行り病が始まったのがその直後くらいでしたでしょうか。
 獣の仕業は兎団という劇団さんと親交が深いのですが、彼女が兎団所属になったこともあり、それ以来ご縁が続いております。

 最初に出会ったときの率直な印象を書くと「自分に自信がなさそうな俳優さんだなあ」です。俳優をやっている方って多かれ少なかれどこかしらに「ここは私自信ありまっせ」というポイントを持っているものだと思うのですが彼女にはどうもそういうところがなかなか見つけられずにいました。
 いやいや私なんて……とおっしゃる方も、謙虚さゆえの発言だったりして、どこかに自信や誇りを持っているものなのですが、探っても探ってもでてこない。最初は「うまく隠しているのかな?」と思い頑張って探してみたのですが見つからない。どうやら本当になさそうだなと観念したのが二年前くらいです。これはこれで珍しいタイプです。

 演技をするとき。
 自分がこういうことをしているぞという認識と、それを見た相手が演技を受け取ったときの認識のギャップが少なければ少ないほど、その人はいい俳優なのだ。
 そう、教えてもらったことがあります。

 自分が悲しい演技をしているときに嬉しい演技だと受け取られたりしたらギャップだし、ボリューム50くらいの嬉しいを表現しようとしているのに100嬉しいだと受け取られたらそれもまたギャップです。
 この「主観と客観のギャップの少なさが俳優の巧さ」という指標のひとつを私はとても信じています。

 それを発展させると「自分の俳優としてのレベルは100くらい」だと思っている人が、実際はレベル120ですよというのもやはりギャップで、よろしくないわけです。

 そういうわけで、佐藤天衣との付き合いは「いやいや、あなたお芝居上手ですよ」と伝え続けた履歴とほぼイコールでした。
 なかなか信じて貰えていないのですが、今回満を持して獣に客演してもらうことになりましたのでいよいよ本当に信じてもらわなければなりません。

 今回佐藤天衣が演じているのは「フィリポ」
 妃ヘロディアがヘロデの妻になる前に結婚していた男性であり、ヘロデの兄でもある人物です。預言者ヨカナーンが王ヘロデと妃ヘロディアの婚姻に反対したのは、ヘロデとフィリポが血を分けた兄弟であったからというのがありました。
 フィリポは記録上存在する人物なのですが、ワイルドの「サロメ」では存在が触れられるのみで本人は登場しません。獣の仕業サロメでフィリポを役として追加したのは一番大きな脚色点のひとつでもあります。
 そのため良くも悪くも読解が自由な役なのですが、持ち前の読解力で見事に演じてくれています。対となる登場人物はヘロデの前の妻であるファサエリスを演じる小林龍二。よく主演を演じる小林龍二と助演同士でパートナーって大変だろうなと思ったのすが、直感的に「ふたりはうまくやってくれそう」と思いペアにしました。

 佐藤さん、すごく体が効くんですよ。ダンス公演にも出演されていて、非常にキレのある身体をしています。小林と佐藤、お互いがお互いの先生のように関わり合う様子をイチ演出家として嬉しく思っていました。

 また、個人の素材の魅力は「悲壮感」です。普段からなんとなく憂いがあって影があって。しかも陰陽どちらの芝居もできる素地があってシームレスに切り替えられるという点も個性的です。そんな中サロメでは悲壮感を強く前面に出してもらっています。
 これだけ感情的なアウトプットをするのは本人としては挑戦したことのない領域だったそうですが、いやいや全然できてますよ、というか、ずっと出来ると思ってましたよ。このギャップも稽古を通じて埋めてくださったなと思っています。

 なんとも個性的な、パフォーマー佐藤天衣をご覧ください。
 大変才能に溢れた方です。
 
 今週上演。ぜひ見届けてください。


獣の仕業 第十五回公演「サロメ」

[■■■, ■■■, Lema Sabachthani?]

2/23(金祝) 20:00
2/24(土) 14:00/19:00
2/25(日) 13:00/18:00※生配信回
会場:シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京・王子神谷)

劇場チケット予約

  • 劇場チケット:2,500円

  • 劇場+紙脚本付チケット:3,000円

  • 上演時間:約95分

  • 受付開始・開場は開演30分前

  • 未就学児童入場不可

  • 舞台上で水を使用する演出が一部あります。意図的に観客席に水をかけることはありませんが、お席によっては飛沫がかかる可能性があります。ご了承ください

配信チケット購入

【配信での観劇購入(生配信+アーカイブ視聴)】

  • 販売期間:1/7(日)20:00~3/24(日)23:59

  • 配信期間:2/25(日)18:00~3/25(月)23:59

  • 応援キャスト指定でのご予約をご希望の方は「備考」欄へのご記入をお願いいたします

作=オスカー・ワイルド
翻訳=森鴎外
脚色・演出=立夏

出演=

  • サロメ(ユダヤの王女 ヘロディアの娘)…雑賀玲衣

  • ヘロデ(ユダヤの王、サロメの義父)…手塚優希

  • ヘロデの穢れ ファサエリス(ヘロデの先妻)…小林龍二

  • ヘロディア(ヘロデの後妻、サロメの母)…柳橋龍(兎団)

  • ヘロディアの穢れ フィリポ(ヘロディアの先夫、ヘロデの兄、サロメの実父)…佐藤天衣(兎団)

  • ナアマン(首斬役)…古川ゆかり

  • ヨカナーン(預言者、イエスの洗礼者)…きえる

スタッフ=

  • 舞台監督:小林龍二

  • 照明:寺田香織

  • 音響:新直人(salty rock/零'sRecord)

  • 撮影・配信:U-3

  • 衣装:きえる

  • 写真撮影:加藤春日

  • 宣伝美術:立夏

  • 制作:手塚優希

会場=

シアター・バビロンの流れのほとりにて

〒114-0003 東京都北区豊島7-26-19

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