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GoogleがAI創薬で新会社|海外ニュース

こんにちは。製薬業界向けニュース解説メディアAnswersNewsの亀田です。

本日は、グーグルの親会社である米アルファベットがAI創薬を担う新会社「Isomorphic Labs」をイギリスに設立したーーという海外のニュースを紹介します。

設立のきっかけは、同じくアルファベット傘下の英DeepMind(ディープマインド)社が昨年末に発表し、今年の夏にソースコードなどを公表したタンパク質の立体構造を予測するAIシステム「AlphaFold2」。Isomorphic LabsのCEOには、DeepMindCEOのデミス・ハサビス氏が就任しました。

(新会社設立を記したハサビスCEOのブログ)

DeepMindといえば、囲碁AI「AlphaGo(アルファ碁)」で知られる企業。AIブームの火付け役となった2015年の「AIがプロ棋士を打ち負かした」というニュースを覚えている方も多いでしょう。

AlphaFold2は、「タンパク質の折りたたみ問題」という、生物学の50年来の大きな課題に対するソリューションとして注目を集めた技術で、アミノ酸配列からタンパク質の立体構造を原子レベルの精度で予測することができます。

DeepMindは、欧州バイオインフォマティクス研究所(EMBL-EBI)とともに、ヒトのプロテオーム(ヒトに発現する全てのタンパク質:~2万個)と、大腸菌や熱帯熱マラリア原虫など20の生物のプロテオームのタンパク質構造全35万個を網羅したオープンアクセスのデータベース「AlphaFold DB」を開設。データベースを広く公開することで科学研究を加速させたいといい、実際に非営利組織のDNDi(Drugs for Neglected Diseases initiative)が”顧みられない病気(マラリアなど)”に対する治療薬の研究で活用しているようです。

(データベースのアクセス先。今後定期的に更新する予定とのこと)

今回、あえてAI創薬を手掛ける新会社を立ち上げたアルファベット。ハサビスCEOのブログなどにその明確な理由は記されていませんが、そのミッションについて、ホームページに次のように書かれています。

We are reimagining the entire drug discovery process from first principles with an AI-first approach, to model and understand some of the fundamental mechanisms of life.

AIファーストのアプローチでドラッグ・ディスカバリーのプロセス全体を第一原理から「reimagining(再構築、再び想像するなどの意味)するーー。ハサビス氏らは複雑な生物学的現象の予測・生成モデルの構築にAIがますます利用されるようになると考えています。

新会社の社名に用いられるIsomorphicは「同形」という意味を持ちます。ハサビス氏はブログに「生物学は非常に複雑で動的な情報処理システムと考えられ、両者には同形のマッピングがあるのではないか」と書いており、AIの応用先としての生物学のポテンシャルに期待しているよう。同社は今後、製薬企業などと連携するとしており、同時にDeepMindとのコラボレーションも進めていくようです。

眼科領域などにも挑戦

アルファベットは、2015年にスピンアウトした米子会社「ベリリー・ライフサイエンシズ」でライフサイエンス事業を手掛けています。

昨年8月には参天製薬と「眼科デバイス」「技術ソリューション」の開発・商業化を行う合弁会社「Twenty Twenty Therapeutics」を設立しました。AnswersNewsでは、合弁を発表した2月に解説記事を公開しています。

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(AnswersNewsの20年2月の記事より)

ベリリーは、医療機器の開発や機械学習、画像処理などのグーグルの技術を活用し、仏サノフィ武田薬品工業といった国内外の製薬企業と組んで研究開発を進めています。「ベースラインプラットフォーム」として知られる臨床試験システムも持っており、上記の図表の一番下にあるように大塚製薬など4社とその強化にも取り組んでいます。今年8月にも、臨床研究ソフトウェアを開発するSignalPathを買収しました。

AI創薬を手掛ける新会社Isomorphic Labsが今後業界とどのようなコラボレーションをしていくのか。これから数年間の動きが注目されます。