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脳とカラダがよろこぶ調和力ごはん

「脳とカラダがよろこぶ調和力ごはん」木津龍馬 ワニブックス 2011年6刊

本書、国際中医師の資格を持つ著者により東洋医学の観点から作られた料理のレシピが盛り込まれた書籍となっております。

ちなみに中医師とは中国の伝統医学である中医学を実践する医師のことで、中華人民共和国や台湾、アメリカ合衆国などにおける国家資格でもあります。

なかでも台湾の中医師試験は合格率1~2%と言われており、西洋医学の国家試験以上に難関といえるかもしれません。

日本ではあまりメジャーではない中医学、東洋医学ですが、1883(明治16)年、医師の資格が 西洋医学を学んだ者のみに与えられることとなり、こうした医学は禁じられることこそありませんでしが、徐々に衰退に向かい、現代では見る影もありません。

現在、我々が主に接する西洋医学と呼ばれる医療は投薬や手術といった方法で、体の悪い部分に直接アプローチして治療してゆくのが特徴です。

これに対し、東洋医学は、食事や運動などの生活習慣を通じて、体の不調を内側から根本的に解消してゆく治療法といわれています。

どちらが良い悪いというものではありませんが、西洋医学は比較的、短い期間で治療できるという良さがあり、東洋医学は治療に時間がかかるものの、体への負担がかかりにくいという長所があげられます。

明治時代、当時、まだ衛生状態も悪く、変乱や戦争が身近であり、西洋列強に追い越せ、追いつけの日本が西洋医学を国策として取り入れていったことは十分にうなづけます。

しかし、西洋医学一辺倒の現代の医療を見る限りでは、ある種の限界が見られることも現実です。

東洋、西洋の両方の視点から、自身の健康を見つめることは決して無駄なことではないと考えており、様々な書をあたってきましたが、どうしてもその筋の専門家が記しているので、論旨は東西のいずれか一方の偏りがあったり、難解なものが多かったのも事実です。

また、代替医療と呼称される東洋医学、伝統医学の世界は玉石混交で、オカルティックな内容も含まれるため、万人にすすめられる良書は多くありませんでした。

しかし、本書は「食」をテーマに東洋医学のエッセンスである陰陽論がわかりやすく解説されており、料理のレシピとともに自分自身で伝統医学の世界も味わうことが出来るので、「食」や「健康」について改めて見直してみようという方には本当にお勧めです。

著者の木津龍馬さんには以前、何度かお会いする機会があり、直接、食や健康に関する話を伺うことが出来たのですが、Tシャツにダメージジーンズ、無精ひげをたくわえ、その風貌はストリートミュージシャンといった方が相応しいかのうようでした。(実際にギターも滅茶苦茶、上手かった!)

初めて会った時は、当時、20代であった自分とそう年齢が離れているわけでもなく、煙草を吸いながら、食や健康について語る著者をかなり怪しんだものですが、トップアスリートのトレーナーなどもやっていたようで、事務所にお邪魔した際には草刈民代(バレエダンサー)が来ており、本当に凄い人なんだなあ、と改めて思いました。

また、以前は相当なヤンチャもしてきた不良少年だったんだろうなあ、という事が話の端々から感じ取れ、何故か無性に嬉しくなったことを思い出しました。

ただ、本書においては、そんなことは微塵も感じさせず、「食」と「生命」に対する著者の真摯な姿勢が一貫して記されています。

なお、著者は、食事とは食材という命をいただく儀式とも語っています。

・豆乳クリームシチュー
・里芋とイカと鮭のコロッケ
・バナナと小豆の甘煮かけ

等々、手に入れやすい食材で簡単にできるレシピがいくつも紹介されていますので、忙しい主婦の方、外食に偏りがちな独身の方も気軽に取り組めるのではないでしょうか。

小さなお子様のいるお父さん、お母さんも必見です!

食を通じて世の中を変えていく、啓蒙の書として自分は読みました。

興味の湧いた方はどうか、ご一読ください。


「美食を芸術の域まで高める条件、それは唯一、人の心を感動させることだ。そして、人の心を感動させることが出来るのは、人の心だけなのだ。材料や技術だけでは駄目だっ!!」  海原雄山








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