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3時間半で国際的常識人になれる ゆげ塾の速修戦後史 欧米編

『3時間半で国際的常識人になれる ゆげ塾の速修戦後史 欧米編』 ゆげ塾 2017年5月刊  ディスカヴァー・トゥエンティワン

本書、帯の「受験生だけのものにしておくにはもったいない!センター試験9割得点を確約する世界史専門塾が書いたしびれるほど面白い戦後史講義」に惹かれ、手に取りました。

国際的常識人になれるかどうか、定かではありませんが、短時間で戦後史のエッセンスを味わえ、読みやすかったこともあり、読後、娘や家内にも薦めてみた次第です。

大学受験の際、社会科の選択科目には世界史を選んだのですが、30年近くたつと驚くほど、当時の記憶は薄れ、多くのことを忘れてしまっていることに愕然とします。

学びなおしのため、歴史書は定期的に読み返すようにしているのですが、しかし、何度、学んでも歴史というものは、尽きない魅力があり、都度、新し気づきもあることから、やめられないんですよね。

本書からもまた、新たな知識を仕入れることができました。

本書の構成ですが、前半は冷戦前夜からの国際関係史、後半は各国史と成っております。

特にこの後半の各国史が大変、面白く興味深く読めました。

この各国史、アメリカから始まり、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、ドイツ、ソ連、ポーランド、ルーマニア、アルバニア、ユーゴスラビアと続いてくゆくのですが、アルバニアが欧州一の最貧国となった理由であったり、イタリアが高級ブランドを生み出せた要因など、教科書では知ることのできなかったことも、知ることが出来ました。

ちなみにアルバニアは、ソ連、中国以上にガチガチの共産主義国家で、西側諸国はもちろん、ソ連、中国とも敵対し、周辺諸国との国交も断絶し、鎖国状態だったそうです。

アルバニア全土にコンクリートの防御陣を建造し、所かまわず、国土に地雷を埋めまくっていたというのだから、常軌を逸しています。

その結果、自国民が農業、牧畜を頑張ろうにも家畜の足を地雷が吹っ飛ばしてゆくというのだから悲惨です。

その後、東欧革命の波が押し寄せ、自由主義国家となったものの、国民の半数以上がネズミ講にはまり、その30%が破産してしまうという結末へ。

他にもソ連史では、「ハゲふさの法則」という奇妙な法則が図像入りで披露されており、思わず笑ってしまいました。

この法則はソ連指導者の頭髪量の軌跡を示しており、

レーニン(ハゲ)→スターリン(ふさふさ)→フルシチョフ(ハゲ)→ブレジネフ(ふさふさ)→アンドロポフ(ハゲ)→チェルネンコ(ふさふさ)→ゴルバチョフ(ハゲ)→エリツィン(ふさふさ)→プーチン(ハゲ)と、ロシアとなった現在もこの法則は保たれています。

さすが、世界史専門塾が作っただけであり、どのページも飽きさせることなく、軽妙に分かりやすく現代史が解説されておりました。

HPを確認した所、この世界史専門塾は講師一人の個人塾で、塾生の9割がセンター試験で9割以上をとり、早慶・国立大に毎年、合格するという驚異の実績を残しておりました。

授業内容、カリキュラムも大変、ユニークで授業料もその日ごとの日払い制なので、やる気のない生徒は次々とやめてゆき、日本で最も生徒がやめる塾ともうたっておりました。

入塾学年も不問で中には中学生から通う子もいるとのことでした。

座学だけでなく、先生や生徒同士のディスカッション、論述などの演習をはじめ、縄跳びや野外授業まであり、文化史の授業では、フルカラーのテキストで実際に芸術作品を観たり、音楽は実際に聴き、文学はその作品のあらすじと書かれた時代背景にまで言及し、生徒と議論するそうです。

思わず一度、受講してみたくなりました。

この塾の卒業生たち、ほんとうに世界史が好きでたまらないということが、HPに掲載されていた体験記から、ビシバシ伝わってきて、きっといい授業がおこなわれているんだろうなあ、ということが容易に推測できました。

また、「世界史をしっかり修得する事は、政治学・経済学・法学・社会学などの基礎を修得することです。これは、大学での学問を豊かに実らせます」と記されてもおりましたが、全くその通りだと思いました。

私自身、大学だけでなく、社会に出てからも、世界史を通して学んだ知識は自己の人生を歩んでいくにあたり、有用な財産であったと実感しております。

なお、本書、ゆげ塾の卒業生である大学生を中心に執筆されたそうで、大したもんだなと思いました。

今、まさに激動に揺れるウクライナ、核の使用も含め、今後、予断を許しません。

現代の世界情勢を読み解く上でも、近現代史、特に戦後史は必須の知識です。

本書、各国史などは国によっては、物足りない部分もありましたが、大まかな戦後史の構造が一気につかめる点においては、有益な書といえるでしょう。

歴史にさほど興味がない、普段のニュースに関心が持てないという方にこそ、一読を勧めたい本でもありました。

ロシア、ウクライナに留まらない、より大きな変乱、戦乱がまもなくやってくると予感しております。

その際、一助となるのが、表層的な情報、報道に惑わされることのない歴史観に基づいた判断、行動だと考えるからです。

そして、下手なドラマや映画を見るよりも、実際にあった歴史的な史実、人物の歩み、本当に面白いので、知らなかったらもったいないですよ!ということを多くの人に知ってもらえたら、何よりです。

日本人が歴史上残した最大の業績は、世界を支配していた西洋人が「不敗の半神」ではない事を示した点である(アーノルド・J・トインビー)














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