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吹奏楽作品世界遺産100

『吹奏楽作品世界遺産100』 伊藤康英、鈴木英史、滝澤尚哉 (2024年3月)音楽之友社

副題には「後世に受け継がれゆく不朽の名曲たち」とあり、世界の音楽家・演奏家たちの意見をもとに選ばれた吹奏楽の重要レパートリーが解説やスコア、周辺エピソードを交え、紹介されていた。

初めて知ったのだが、吹奏楽曲には民謡が数多く用いられており、本書で掲載されていた曲のスコアにも歌詞の記されているものが散見され、大いに驚いた。

以前、自衛隊音楽隊の委嘱曲に歌詞を提供させて頂いたことがあり、吹奏楽の中では希なケースであったと思っていたのだが、吹奏楽の歴史からみると、どうやら、そうではなかったようだ。

また、本書、挿入されている著者よる鼎談、コラムも読み応えがあり、面白かった!

目次は以下の通りで、是非とも聴いてみたくなった曲は「ディオニソスの祭り」と「リンカンシャーの花束」

ディオニソスはギリシャ神話に登場する酒と狂乱の神。酒好きとしてもこれは外せない。「リンカンシャーの花束」は合唱もあり、歌詞も掲載されていたことより、俄然、興味が湧いた。

目次

第1章 吹奏楽の新約聖書(11曲)
第2章 20世紀・戦後の世界遺産(34曲)
第3章 21世紀・そして未来遺産(19曲)
第4章 多彩な世界遺産(26曲)
第5章 邦人作品の世界遺産(10曲)

そして、最も印象に残ったのは本書に記されていた次の文だった。

「なぜほとんどの作曲家が吹奏楽を冷遇するのだろう。吹奏楽は、管弦楽より豊かな木管楽器群をもち、人間の声に近い。とにかくサクソフォーンは管楽器のなかで最も表現力豊かだ。そして一連の金管楽器群も揃えている。これまでのどんな媒体も匹敵できないほど深く感情的な表現を生み出す演奏形態として、吹奏楽は無比の物だと思う」

吹奏楽が冷遇されているという事実があるとするならば、しかし、それは一体、何故なのだろうか。疑問は尽きない。

「人はさまざまであって、さまざまである事こそ、人が人であり、世の中が世の中である所以なのだろう」團伊玖磨








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