【2022年に読んで良かった本10冊&読書リスト132冊】

毎年恒例、読書リストの共有をさせていただきます。
今年は132冊読み、沢山の素晴らしい本に出会うことができました。
読んでよかった本の基準としては、人生観や企業経営に関する考え方を大きく変えてくれた本を10冊選んでおります。 
来年も良い本に出会えますように!🙏


カント『永遠平和のために』

最近のニュースを見ていると、アメリカの弱体化、国連常任理事国の機能不全、中国がロシアと同様に独裁者の一存で戦争を起こせる状態になっていることなど世界の不安定化が進む材料が日々刻々と積み上げられてきていることに陰惨たる気持ちになります。
人類は極端な独裁者や国家が平和を乱すことが無いように、国際法や同盟の仕組みを整えてきたわけですが、ウクライナ戦争によって、「覚悟を決めた」独裁者の手にかかればそうした仕組みはいとも簡単に破壊されてしまうことが示されてしまいました。
そのような時代において、今後人類がこれまでとは異なる仕組みによっていかに平和を取り戻すのかが問われています。
カントは18世紀に国際法や国際連合の基盤となるような思想を打ち出しました。
当時は帝国主義真っ盛りの時代、欧米各国が欲望のままに他国を侵略していた時代ですから、夢物語で荒唐無稽だと思われたはずです。
しかし、200年の時を経て現実のものとなったそれらの思想は束の間ではあったものの、半世紀ほどの平和を人類にもたらしました。
この人類の歴史を見ると、カントのように世界を平和にするための努力を決して怠ってはいけない、未来への希望を捨ててはいけないと思わされます。


ジェフ・ホーキンス『脳は世界をどう見ているか』

脳という「物質」が精神や意志という捉えどころのない「非物質」であり深淵なものをどのように生成しているのか、についての仮説を説明した本です。
仮説であるためもちろん証明されたものではないのですが、物理的に観察できる現象から導き出されているため非常に納得感があります。
一方で、以下のように我々が普段意思というものに対して持っている統一性、深淵性のイメージに直感的に反する主張であるため、俄には受け入れがたいものを感じます。

  • 人間と他の動物を隔てる高度な知的能力は厚さ2.5mm、広さナプキン1枚ほどにすぎない新皮質によって生み出されている

  • 人間の意志を統一的に管理する機能が脳にあるわけではなく、新皮質の各コラムの動きにより多数決のような形で意思の統一がなされている

  • 新皮質はそれぞれ代替可能なコラムの集合体であり、各コラムは他のコラムの代わりの機能を果たすことが可能である

これらの仮説の直観的な受け入れがたさと確らしさの捻れのような感覚がもはや神秘的であり、この本の魅力であるとも言えます。
副読本としては乾 敏郎『脳の大統一理論 自由エネルギー原理とはなにか』がおすすめです。


成田悠輔『22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』

各所で話題の成田悠輔さんの本です。
内容としては、SNSを使ったポピュリズムや日本のシルバーデモクラシーに絶望している著者が新しい民主主義の形を提案する、というものです。
人々が発信するテキストデータだけでなく、体温や心拍といった生体データも収集し、個別の政策に対する快・不快を判断することで政策決定を行う、データ駆動・アルゴリズム型の政治にあり方を提案しています。
このような「民主主義をアップデートしよう」的な主張は個人的にかなり関心が高く、関連書籍が出るとだいたい読むようにしています。
日本における過去の系譜を辿ると、東浩紀『一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル』、鈴木健『なめらかな社会とその敵』が特に有名で、両方ともとても面白い本です。
この2冊が著された時代背景的に東さんや鈴木健さんはWeb2.0的なテクノロジーを前提にしている一方で、成田さんはビッグデータを前提としており、テクノロジーの進化は思想に影響を与えるのだということが読み取れます。興味がある方は是非関連書籍も含めて一気読みをお勧めします。
この本の内容自体はすぐに実現が難しいと思いますが、一方で、カントが『永遠平和のために』で提唱した国際秩序の枠組みが2世紀近くを経て国際連盟という形で結実したように、社会制度は過去の思想家の先見に多分に影響を受けるものだと思います。
という意味では、今すぐに社会を変える力はないが、将来的には大いに変えうる可能性がある一冊だと思いました。


ベン・ホロウィッツ『WHO ARE YOU』

起業してすぐの時期にも1度読んだことがあり、その時はあまり刺さらなかったのですが再読してびっくりするくらい刺さりました…。
書籍の内容が参考になるかどうかは知識・経験や自分が置かれた状況によって大きく左右されますね。
特に刺さったのは以下の内容です。(原著からの引用ではなく、多少の改変・要約をしています)

  • 誠実さ・善良さ・正直さは文化への長期的な投資になる・長期的に取引したいと思われる企業になれる・短期的に業績を落とすことがあっても追求すべきである

  • 企業文化はリーダーの感性を反省させたものでなければならない、どんな文化の方針を掲げてもリーダーがそれを習慣にできなければ意味がない

  • リーダーシップの大原則:全ての人には好かれない。みんなに好かれようとしても良いことはない。ただ自分らしくいることが重要。

  • ビジネスには3つの意思決定スタイルがある:1.敵か味方か、2.全員参加、3.みんなの意見を聞いて私が決める
    →ビジネスでは3.のスタイルがたいてい一番うまくいく、スピードと情報量のバランスがとれた意思決定がされやすい

僕自身が「良い・善い」と思うことに対して嘘をつかず、仮に短期的な業績と天秤にかかった場合でも必ずより善くある方を選ぼうと強く思いました。また、そのことが社内や社会からの信頼を 醸成し、長期的な業績向上につながると考えるようになりました。


中室牧子・津川友介『原因と結果の経済学』

因果推論の入門本としてとてもおすすめの一冊です。
A/Bテスト(ランダム化比較試験)、DID(差の差分法)について実例ベースで紹介されていて、どのような場合に適用して良いかがわかります。
社内でもデータスキル向上の入り口として社員におすすめしています。


ダン・ヒース『上流思考』

問題が起こる前に原因を解消し、そもそも問題を起こらないようにするために必要なことが書かれた本です。
細かい内容は省きますが、この本に書いてあった内容に関連して経営者として今の自分が最も考えなければならないと思ったのは上流思考的な問題解消と評価のバランスです。
問題が発生する前、すなわち上流での問題解決は問題が発生する前にアクションがとられるため、潜在的なインパクトは非常に巨大である一方で基本的にはアクションの結果自体は目に見えず、目立ちません。
一方で、下流での対応、すなわち問題が発生した後での対応はわかりやすく、目立ちやすいので賞賛の対象になりやすいです。
僕自身も思い当たる節が沢山あるのですが、緊急のアクシデントに対応した後に大きな達成感を感じたり、関係者を賞賛したくなった経験は誰しもあると思います。
緊急対応は究極的にはゼロにはできないため、緊急対応への賞賛は引き続きあってしかるべきだと思います。
一方で、未然の善、すなわち重大なアクシデントが起こる前に防いだことをいかに証明し、評価していくかということは当社の評価制度上最も大きなトピックの一つだと感じています。


ジョン・マグレッタ『エッセンシャル版 マイケル・ポーターの競争戦略』

ポーターの『競争戦略』と言えばかなり重厚な本ですが、エッセンシャル版を発見したため読んでみました。
企業が戦略を立てる根本的な意味の話に加えて、ファイブフォース、バリューチェーン分析、トレードオフ分析といった超有名な戦略フレームワークに関する解説がなされています。
率直に言ってかなり濃密な内容で、事業戦略に関わる本の内容は基本的にポーターの主張の焼き直し or 拡張であることを再認識させられました。
楠木建『ストーリーとしての競争戦略』に出てくる「戦略ストーリーマップ」という概念は楠さんオリジナルのものだと思っていましたが、実はポーターが考案した「システム・マップ」というフレームワークの拡張版であることがわかりました。


中野剛志『奇跡の社会科学』

『TPP亡国論』で有名になった中野剛志氏の最新の著作です。
マックス・ウェーバー、トクヴィル、ポランニーなど社会学・政治学において必読とも言える著作を残している学者たちの思想の一端を短時間で知ることができる本です。
作者の脚色・解釈も多分に入っているとは思いますが、上記の学者たちが残した予言・学説によって現代社会の多くの物事が説明できてしまうことに驚きます。


リチャード・ランガム『善と悪のパラドックス』

『病原菌・銃・鉄』『サピエンス全史』などごグローバル人類史系の書籍が出るとつい読んでしまう僕です。読み物として面白いんですよね。
ゴリラやチンパンジーなど遺伝子的には人類に近い霊長類は、時として凶暴化し、仲間同士で殺し合いをすることで知られています。
また、過去に人類と同時代を生きていたネアンデルタール人は身体能力や知力の面では人類に勝っていたと言われていますが、協調性については大きく劣っていたと見られています。
本書では、なぜ人類だけが高い協調性を獲得するに至ったのかについて、興味深い仮説が提示されています。
500ページ弱とかなり分厚い本ですが、是非。


加藤洋平『成人発達理論による能力の成長』

仕事の場において、「成長」という言葉ってよく使われますよね。
「成長」は案件へのアサイン、評価、評判など仕事において重要な意思決定に使われる概念ですが、一方でどうやったら成長できるのか、そもそもどのような変化を「成長」と呼ぶのかという定義がかなり曖昧です。
これほど重要性と曖昧さを兼ね備えた概念は他には無いのではないでしょうか。
そうした「成長」という概念を解きほぐし、何を「成長」と呼ぶのか、「成長」はどのように発生するのかを実証的な研究をベースに記述したのがこの本です。
自分が成長したい方、誰かを成長させたい方、成長という概念を深掘りしたい方におすすめです。


読書リスト132冊

最後に、読書リストを公開します!


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