今あの時に戻ったら。⑤〜合気道〜
前回の結びで、すぐやるとか言っておいて、結局2ヶ月が過ぎてしまいました。申し訳ない。
さて、気を取り直して戻りたいシリーズ第5回目始めます。
私は常日頃から妄想をしている。よく妄想するシチュエーションがタイムリープモノであるのだが、詳しいことは第一回に記載しているので参考にしていただきたい。
ルールだけおさらいしておきます。
今回のリープ先は13年前。
2回続けて中学1年の時のことでございます。
何故こんなにも中学時代に戻ることが多いのかというのは、単純にバカだからでございます。
やらかしたことが多いのです。
それが青春の醍醐味でもあるから、まあいいんだけどね。
さて、本題に入るとしましょう。
タイトルにある通り、合気道に関する話です。
みなさんは覚えているだろうか、学生時代体育の授業で柔道の授業があったことを。
クソ寒い体育館に集められ、緑色の柔らか畳の上で思春期の男子がもみくちゃになるアレだ。
袈裟固めや横四方固めなどの寝技を学び、将来別の畳の上で女性と一戦交える妄想をするのである。
柔道は特に嫌いな授業の一つだった。
いや、この出来事をきっかけに嫌いになったのかもしれない。
中学1年の時からさらに遡ること三年。
私は近所の道場で合気道を習っていた。
親の意向で護身術を習わせたいとのことで、野球の合間を縫って土曜日に道場に通っていたのだ。
ボクシングや空手など打撃系ではなく、相手の力を利用するカウンターの技に重きを置いた武術が合気道。柔道に似ているが、こちらから仕掛けることはせず、あくまで相手始動なのが違いだ。
2年くらいやっていたので、それなりに帯の色も変わっていったが、師範も厳しいし痛いのは嫌いなので、とりあえずもしもの時のために続けていた、そんな感じだった。
日本武道館で大会にも出たことがある。
アーティストのライブや大学の入学式卒業式で訪れたこともあるが、あの場の本来の用途の上でしっかり武術に勤しんだのはいい経験だったと思う。
こんな私でも一応中学受験もしたので、小6に上がるタイミングでスケジュールの都合上やめざるを得なかった訳だが、基本はしっかりと身に付いてはいたと思う。
ただやめた時、もしもの時に発揮するレベルには至っていなかったので、また通い直さなければもう合気術を使うことはないとも思っていた。
しかし、突如として使うときは訪れる、、
中学に上がる時か後追いかだったかは覚えていないが、体育で柔道の授業があるので、みんな道着を買わされる。
小学校までに何かしらの武術を習っていた連中や兄貴のお下がりがあるやつ以外は買うことになるが、私は持っていたし、まだ着れる身長だったので昔のを持って行っていた。
するとやはり友人からは
『何故持っているのか?』
当たり前の質問がとぶ。
そのときは別に隠してもいなかったので、
小学生の頃合気道を習っていたとみんなに話した。
合気道はガキの間ではメジャーな武術ではないため、そんなに深掘りはされなかったから、私自身も気に留めていなかった。
柔道の授業が始まり、ほとんどの連中は受け身から素人なので基礎の基礎から教わることになる。
イケてる奴らは技の掛け方くらいは知ってたりするが、相手を無闇に傷つけかねないやり方なので、そういったところも含めての概念からのスタートだった。
授業が進んでいくうちに教わる技も増え、
体格の良い奴らはダイナミックな組手をしていたりと、体育の先生がクソ怖かったこともあり、普通の柔道の授業がなんの滞りもなく進んでいった。
そしてある授業で事件が起こるのだ。
私の学校は体育の授業だけ、2クラス合同で行う。
先生が組手をストップさせ、隣のクラスも含め、1番体格の良かったS君を呼んで、模擬練習を行うとアナウンスがあった。
S君は中1にしてはとんでもなく体格が良く、強面だがめちゃくちゃ心優しいやつで、サッカー部だったが、とにかくなんのスポーツをやらせてもピカイチだった。
そんなS君を畳に寝かせ、ある技をこれから教えるとのことだった。
ただその前に柔道ではないが似た技が別の武術に存在すると言い放った。
悪い予感がした。
『お〜い、この中で合気道やってたやついるかぁ〜?』
早速悪い予感が的中だ。
やったことがない、黙して逃れるはずだったが、合気道をやっていたことはクラスの友人は知っているので、皆ちらちらとこちらを見てくるのだ。痛恨の極み。
渋々挙手。みんなの前に出されることになった。
うつ伏せになっているS君の左脇に座らされ、
『その状態から合気道の1番簡単な絞めやってくれ。』
とのことなので、私は合気道で相手が伏せた際に最後の残心で行う、"一教"という抑えを行った。
残心とは、相手が反撃してこないように最後の警戒をする技なのだが、1番簡単な基本技だったので、言われた通りそうしたのだ。
しかし、、、、、
『おぉい、なんだその技。おいS、抜け出してみろ』
そう言われると軽い私に抑えたれてただけのSが、
『あ、はい』
ブルンっ
と私を引っぺがし技を一瞬にして解いた。
一同、え?何この時間?という感じだった。
何やってんだよお前w
そんな奴もいた。
追い打ちをかけるように先生が、
『お前本当に合気道やってたのかぁ?
戻っていいぞ』
と。
あのみんなの元に戻る時、赤面物だ。
とんでもなく恥ずかしかった。
ただ前に出されて笑い物にされただけの時間だった。
今となっては、飲みの場の笑い話になる時もあるが、後悔をしているのには理由がある。
実は先述した"一教"という技には上位互換が存在する。
全て基本的な残心技に該当するのだが、一教から五教まであり、一教はほぼ抑え技だが、二教から五教までが絞め技となる。
絞め技としての強さや難易度で数字が上がっていく仕組みだが、これらは全て基本技だ。
私はこれらを全てできた。
たしかに一教は実用性があまりない抑え技に近い技で、絞めてはいない。でも!!
あなたは"1番簡単な技をやれ"と
そう言ったじゃあないか。
私は従っただけだ。
もう少し強い絞め技もある、そう言いたかったが、あの笑われていた雰囲気の中ではおちゃらけることしかできなかった。
ムキになっているとも思われたくなかった。
それは合気道か?
先生のその問いにしっかり返答するべきだった。
『これも合気道ですけど、もう少し強い技でもいいんですか?
S、ごめん、少し強くするわ!』
これが言えていれば、しっかり絞め技を披露することができたのに。
柔道が嫌いになることもなければ、あんなに恥ずかしい思いをせずにいたかもしれないのに
もしかしたら大人になった今、護身術に再び興じることができていたかもしれないのに。
勇気を持って言えてればなぁ、、
まぁ、
あの時に戻れたら
の話だけどね。
それではまた次回。
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