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【インタビュー】kumagusu 『処夏神経』リリース - 井上Y・山﨑熊蔵

はじめに

kumagusuと出会ったとき、彼ら4人は幼馴染だということを知った。人生には何かしら運命のようなものが働き、限られた人間としか出会うことができないが、その中で出会った4人が4人とも違う楽器を弾けるなんて、なんて理想的なバンドだろうと思った。
スペースキーを押せば1500人の役割を1人が担当できる現代であっても、1人の人間が1度に演奏できる楽器は基本的には1つで、身体を使った「演奏」という行為はいつどの音が鳴るか約束されていない偶然性を孕み、個性的としか言いようの無い精度で再現される。

音楽は常にバラバラなものが組み合わさって出来ていて、それは各パートだけでなく、ドラムの各パーツ、弦楽器の弦とフレット、モノフォニック楽器においての音階などもそうだと言える。それら「縦軸のバラバラ」と、時間という「横軸のバラバラ」が同時に存在している。それを奏者が単一で鳴らしたり同時に鳴らしたり、組み合わせたり順番を変えたりタイミングを変えたり、鳴らさなかったりする。

演奏は常にバラバラなものを組み立てる作業で、演奏される音楽とは「在る」わけではなく「現れる」ものだ。DAWのようにグリッドがあるわけでも、オーケストラのように指揮者がいるわけでもないが「いつ、その音が鳴る(鳴らない)」という決め事を、メンバー全員が膝を突き合わせて話し合い、練習を重ねて演奏することによって「現れる」のだ。

バンドというものがいつまでも無くならないのはそこにロマンがあるからで、つまり自分達で音楽を作り、切り分け、分割された役割を遂行し、それらが組み合わさって再び音楽が立ち現れるあの瞬間が何よりも神秘的で興奮するからだ。その、約束が果たされるようなカタルシスは生演奏であっても打ち込みであっても同じな気がするが、バンドにはその約束が「果たされない」偶然性のカタルシスがあり、自分1人では実現できない迫力と喜びがある。
kumagusuの演奏を観る度にその事を思い出す。

奏者が増えても100が200になる訳ではなく、1人の担う割合が変わるだけという、ある種デジタル的な冷徹さを持ったバンドスタイルの中で、1人が1人の仕事に徹すること、1人以上のことをしないことは、決して消極策や未熟さなどではなく100の中の純度と密度をいかに上げられるかというストイックな精神性の為せる技である。
しかしそれは、見えている天井のスレスレを狙う、終わりのあるゲームだとも言えるだろう。だからこそ彼らは昨年新たに5人目のメンバーに、ハードコアパンクバンドGranuleでギターとサックスを担当していた富烈(プエル)をサックスプレイヤーとして加えた。彼もまた古くからの友人でありメンバーとも旧知の仲だという。
新生kumagusuはコロナ禍の2020年を修行に充て、既存曲の内側を満たす素材を変え、各々の担う割合をほんの少しずつ変えて自らを刷新した。

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左からモジャ(Ba)、山﨑熊蔵(Gt)、井上Y(Vo/Gt)、富烈(Sax)、鈴木UFO(Dr)

今年の3月に深夜のライブハウスに集まり、無観客で行われたライブを全て収めた作品『処夏神経』を私たちのレーベルJolt! Recordingsからデジタルとカセットでリリースする。
カセットは限定100本。ジャケットが2種類あり、限定版は限定50本。購入はお早めにどうぞ。

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『処夏神経』通常版


写真 2021-06-29 2 37 14

『処夏神経』限定版


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さて、こんな真面目なリード文で導入する必要があったのか全く分からない仕上がりになっている今回のインタビュー。いや放談と言う他ない。本題の周りをグルグル回っているうちにそちらの方が盛り上がってしまい、一切この『処夏神経』という作品についての補助線にはならないかもしれない。と分かっているのに気合いの2万8千字。何が気合いって文字起こしがだ!お疲れ竹山君。

長いですが、最後までお楽しみいただけたら幸いです。

人物紹介

インタビュイー
kumagusu ・・・井上Y(Gt/Vo)、山﨑熊蔵(Gt)

インタビュアー
Klan Aileen / Jolt! Recordings ・・・澁谷亮、竹山隆大


1. kumagusuとKlan Aileenそれぞれの周辺シーンとそこにいるバンドについて

澁谷「よろしくお願いします」
一同「よろしくお願いしまーす」
山﨑熊蔵(以下山﨑)「雑談と言っても何話したらいいのかな」
澁谷「雑談つっていきなり雑談始めるのもアレだから、話すとしたら何だろうな」
竹山「まあ、作品について...」
井上Y(以下井上)「なんで録ったのかっていうことだよね」
澁谷「コロナでライブ出来ないってことで、結局去年どのバンドもそれらしい答えは出せずにいたわけじゃない」
井上「右往左往してたよね」
澁谷「ライブハウスがヒーヒー言ってみたいな、それでなんかやってみるかって感じだよね」
井上「うん、去年の夏ぐらいにkumagusuでミーティングをやって、サックスが入ったから」
澁谷「そうだね!」
竹山「加入っていつだっけ?」
井上「去年の7月か8月くらいかな。加入した後にいきなり音源制作は難しい印象があって、既存曲にサックスアレンジ入れてそれをライブ盤として販売しようと去年の夏には決めててみんなにはそれをやりたいっていうのは伝えてたんだよね。それで年末に澁谷君から「ライブ音源録らない?」っていう誘いが来たから」
澁谷「あ、俺から言ったんだっけ?」
井上「そうだよ笑」
竹山「まっちゃん発端だったんだ笑」
澁谷「そうかそうか笑」
一同「笑」
井上「でも元々録音をお願いしようとは思っていて、ちょうど誘いが来たからしめしめと思って笑 それで「ライブ動画を撮るから一緒にやってよ」ってお願いして」
山﨑「本当に偶然良いタイミングで繋がったと思う」
澁谷「俺たまにそういうの当てにいくことあるんだよね笑 去年Anisakisと帯化とクランでやるイベントが決まって、「ここで帯化のアルバム出たら面白いんじゃないかな」と思って声かけたら「作りたいと思ってたんです」みたいな。それで録ったりした」

正常

コロナ直前のタイミングでのイベント『正常』
Klan Aileenはこれ以来ライブを行なっていない

帯化は2020年2月に1st 『擬似縁側型ステルス』
5月に2nd『河原結社』というハイペースでアルバムをリリース


Anisakisも2020年4月に4年ぶりとなる3rd『大いなる』をリリースした


山﨑「俺たちはPOSSEっていうイベントをやってて、一昨年とかは普通に開催していたんだけどコロナ禍になってこういう状況でどうやっていこうかっていうのをPOSSEメンバーの片岡フグリ君と藤原忠とSPOILMANのカシマさんと」
澁谷「SPOILMANかっこいいよね」
井上「めちゃめちゃかっこいい」
山﨑「そのメンバーで座談会をやって「このコロナ禍でどうやっていくか」っていうのを発表してたり、実際イベント出来ないということになってコンピレーションアルバム出したんですよ。そういう活動を去年はやってたり」
澁谷「そのコンピって宅録じゃなかった?」
山﨑「基本的には宅録ですね」
井上「当時、感染予防についてうるさく言われてたからスタジオ入らずに宅録オンリーで作ってみましょうみたいな感じで縛ってやってみたんだよね」

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中止となったPOSSE2020 フライヤー(イラストも井上Yによる)

POSSE参加アーティストによるコンピレーションアルバム『POSSE2020』

澁谷「カシマさんてPOSSEでも中枢にいるんだ」
井上「そうそう」
竹山「宅録だけどバンドで曲作ったの?」
井上「やり方はお任せなんだけど、基本スタジオには入らないという縛りで、録るにしてもMTRとかで録ったやつを回してデータ積み重ねて作るっていうイメージ」
竹山「Taiko Super Kicksも同じやり方でやってたよね」
澁谷「『ありあけ』ね」

Taiko Super Kicksがコロナ禍にカセットリリースした『ありあけ』


井上「実際kumagusuの音源は時間無くて完全俺一人でやっちゃったんだけど」
山﨑「kumagusu名義だけど、実質Y君のソロ作だよね。あの曲をkumagusuでやったりとかはないですね」
井上「SPOILMANとかThe KeeleyとかちゃんとMTR回して作るっていうやり方でやってたね」
澁谷「バンド形態で?」
井上「そうそう」
竹山「それってドラム録れるの?」
井上「ドラムね、どうやって録ったんだろうね」
竹山「え、生音で録れてるの?」
井上「録れてる録れてる」
竹山「すごいね」
澁谷「はっはっは、そうなんだ」


2. SPOILMAN

澁谷「そういえばSPOILMANのカシマさんからセカンドアルバムのコメント下さいって連絡が来て」
井上「俺も来たよ」
澁谷「じゃあ一緒に載るんだろうな」
井上「なんて書いた?」
澁谷「俺のは長いよ」
井上「長いのか。俺は7、8行かな」
山﨑「俺も書いたよ」
澁谷「あ、山ちゃんも書いたの!?」
山﨑「うん」
井上「お前らもコクられてたの!?みたいな感じだな笑」
一同「笑」
山﨑「四方八方にコクってんだな〜」
澁谷「なんだよ~、俺だけかと思ったよ~」
井上「なんて書いたの、今、言っちゃう?」
澁谷「ラブレター発表会笑 誰からやる?」
井上「じゃあ澁谷君からで」
澁谷「俺か..」

91年の3月にデイヴィッドヨウとカートコバーンが神社の階段を転げ落ちた「入れ替わってるー!?」世界線からやってきたバンドSPOILMAN。
もしくはそこからパラレルした世界の匿名のニルヴァーナ。
スポークンワードとメロディの境界線を綱渡り、ギリギリメロディの側に落ちたまま寝てしまっている間に寝言で「チャリの鍵が無い!」みたいなことを叫んでるヴォーカルにジャストで合わせてくる瞬発力と動体視力を持ったリズム隊がいるこんな変なバンドを聴くと自分の見聞の狭さを思い知らされます。澁谷亮(Klan Aileen)

一同「お〜」
澁谷「何の会だよ!」
井上「じゃ次山ちゃん」

「俺はSPOILMANのライブの後に3人の着ていたTシャツを絞りカクテルにして飲んだことがある。それはそれは、鉄剤大さじ1、レモン果汁小さじ2、塩小さじ1、アンモニア小さじ半分というようなまるでSPOILMANとしか言いようのない味だった。
生活というのは斯くも重たく厳しい。
油断すると鬱の波に飲み込まれあっと言う間に沈んでっちまう。
そのために鍛えておこう。と、腕立てをし、腹筋をし、日々闘うことも大事だが、時には「ぬいぐるみと一緒に寝ようよ!」とか「いい匂いの石鹸作っちゃったぁ♪」とか「スカイプ飲みしよーよ♪」というのが大切だとこのアルバムは教えてくれる」山崎熊蔵(kumagusu)

一同「お〜」

山﨑「じゃ最後Y君」

「2020年の正月、SPOILMANの初ライブを目撃した。それから1年と少しの間に、バンドのスタイルや表現はメキメキと構築されていき、そして今、確実に1つの到達点にいることがよく分かる作品が発表された。
この圧倒的なスピード感に、おれは現代のヒーロー誕生をみている。SPOILMANは新しいヒーローだから、アルバムが最高なんて当たり前のことだ。全てが御託になってしまうのでこのコメントは燃やしてからアルバムを聴いてほしい」井上Y(kumagusu)

澁谷「1番真面目だな」

澁谷「いや〜俺の勘は間違ってなかったな!彼らって1枚目が出た時にジャンルで言ったらメロコアとかとも同じ軸で語れる感じしなかった?」
井上「あ~、メロコアかぁ...」
山﨑「メロコアは思い付かなかったけどな~。そんなにメロディックな感じしないよね笑」
澁谷「うん、じゃないよね。今思うと全然違うわ。俺が間違ってた」
竹山「撤回早っ笑」
一同「笑」
井上「ファーストアルバムの感じとか初回のライブ見た時の感覚とかひたすら「ヒリヒリしてる」だったんだけど、セカンドアルバムでそことも違う所にいったのはすごいな」
山﨑「本当自分たちのやり方を見つけた感というか余裕が広がった感じあります。「SPOILMANになってきたんだな」って感じがした。」
井上「カメラマンの白岩さんが54-71が好きで当時からライブ行ってたらしいんだけど、SPOILMANの映像撮った時に「54-71を変な感じだけど思い出した」って言ってて、ちょっと分かる気がする」
澁谷「確かにちょっと分かるね。ひたすらタイトなリズム隊でさ、あの人達すごくない?」
井上「うん、すごいね」
竹山「54-71みたいにミドルテンポでタイトな感じなの?」
澁谷「あー、それよりはもっと速くてロックっぽい感じだよね」
山﨑「54-71はギターほとんど排除するような形だからベースとドラムで成り立ってる世界観だけど、SPOILMANはもっとギターをラウドに鳴らしてタイトでスティーヴ・アルビニの感じ」
竹山「あー、なるほど」
山﨑「だけどShellacのモノマネでもないという」

1st 『BODY』(2020)

2nd『Solid Green』(2021)


3. Pretty Three


澁谷「SPOILMANも録りたいなぁ、録らせてくんないかなぁ」
井上「松山君さ(澁谷の旧姓)、あ、澁谷君さ、、もう松山君でいっか。めんどくさくてさ笑」
澁谷「いいっすいいっす、どっちでもいいっす。この前富烈君が言ってた「マッシヴ(松澁)さん」いいなと思ってるんだよね笑」
一同「笑」
井上「マッシヴさんに録ってもらいたいのはSPOILMANと、あと仲良いPretty Threeっていうバンド録って欲しいんよね」
澁谷「あ、Pretty Three名前だけ知ってる。かっこいいんだ?」
井上「かっこいいね」
山﨑「常に喧嘩してるし技術的にはヘタウマなバンドなんですけど、めちゃくちゃ面白いです」
澁谷「へぇ!」
山﨑「デモみたいな作品はあるんだけど、ちゃんとしたアルバムで残してなくて。俺らのレーベル(無呼吸ファンクラブ)で出そうっていう話があったんだけど、いかんせん3人がミーティングすると常に喧嘩しちゃうから笑」
澁谷「珍しいな笑」
井上「去年くらいに「もうライブ出来ないかも」って言って活動休止みたいになったんだけど、その理由が、河原で呑んでる時にラップバトルやっててマジ喧嘩になっちゃったんだって笑」
一同「笑」
井上「殴り合いの喧嘩して休止になっちゃった笑」
澁谷「ビーフやってる間にカチンときちゃったんだ笑」
井上「昔はドラムが「ギターのお前はモテてムカつく」って言って脱退しちゃったりね。すごく最高だから笑」
一同「笑」
山﨑「率直にね、バカなんですよ」
井上「でもめちゃめちゃかっこいいんだよね」
山﨑「かっこいいんだよね。80年代のハードコアとかの中でも変なオルタナバンドっているじゃないですか。そういうバンドがライブしたら当時こんな感じだったのかなって思いましたね。荒いんだけど、この荒さって他には無いなっていうか。俺らよりも長くやってるんだけど、荒さを保ってる」
井上「地元のグルーヴみたいなのあるじゃない?上手くなってみんなでカッチリ合わせるって感じじゃなくて、感覚的にバーンって出せるみたいな良さがずっとあってすごいかっこいいんだよ」
澁谷「その感覚ずっとあるのすごいね」
竹山「続いてるのがすごい笑」
山﨑「ライブとかもね平均点が無いっていうか空振りかホームランかみたいな」

Babera Records主催 コンピレーションアルバム
『verbena (for john and sarah)』収録”GINZA SEX”

ヴェルヴェッツの1stを丸ごとカバーしている作品。


井上「Pretty Threeは本当にJolt!で録って欲しい」
澁谷「マジ?俺そんなノコノコ行って「録らせてくれませんか?」って言って大丈夫な感じ?」
井上「全然大丈夫だと思う」
澁谷「確かにライブ盤はシリーズにしたくて。ライブ盤似合いそうなんだよね?」
井上「いや超似合いそう」
山﨑「絶対似合うと思う」


4. kumagusuとKlan Aileenが出会った経緯

山﨑「なんかね、Klan Aileenって昔のイメージとちょっと違って。俺タナソーのイベントで恵比寿BaticaでNOWEARMANとやってる時に見に行ったことがあって」
澁谷「あれ見てたんだ、あれ大失敗だったんだよな笑」
竹山「最悪のライブだったよ笑」
山﨑「だから正直Klan Aileenそんなに刺さらなかった笑」
井上「それはどういうライブだったの?」
山﨑「結構サイケな感じでやってた気がするけど」
澁谷「サイケだったのかな~、、全てのボタンを掛け違えたみたいなライブだったんだよな」
山﨑「The Sign MagazineとかSnoozerとかそういうイベントじゃないですか。そういうのが好きな人たちが集まってるみたいな。俺はSnoozerとかタナソー読んでなかったから知らなかったし、NOWERAMANと今度対バンするからそれの宣伝を含めてフライヤー配れたらいいなみたいな。でもBaticaって結構特殊な場所じゃないですか。いわゆるライブハウスっていう所じゃないし、終わったら配ろうかなと思ったらみんなそんな感じじゃなくてクラブだから帰らないんですよ。みんなずっと溜まってるし「長いなこれ」と思ったんだけど、「来たからには配らないと」っていう根性で階段のとこで配ってたんだよ」
澁谷「へー!あそこですれ違ってたんだ!」
山﨑「多分そうかもしれないね。でも誰も貰ってくれなかった笑 結構傷ついた笑」
一同「笑」
山﨑「でも印象良かったのはタナソーがすれ違った時に貰ってくれたの。だから俺の中でタナソーはプラス笑」
澁谷「はっはっは、タナソーはフライヤーもらうんだな笑」
山﨑「ありがとうございますって笑 その時にKlan Aileenを見てるんだけど、NOWEARMANが目当てだったってのもあるし印象は正直無かったですね」
井上「何年くらい?」
澁谷「2015年?」
井上「セカンドアルバム(『Klan Aileen』)出る前?」
澁谷「そうそう、前」
竹山「Baticaの前にMilkywayでワンマンやったんだよね?」
澁谷「あー!ワンマンじゃない。NOWEARMANとフロアライブやったんだよ」
竹山「それだ!そのライブがすごい良くて、タナソーも観に来てて激褒めしてくれてDJの西村さんとやってるBaticaの二人会に呼ばれたんだよ。で、その時の勢いのままいったら大コケしたんだよね」
一同「笑」

写真 (2)

Klan Aileenが不定期で開催していたフロアライブ企画『Floor』の2回目(2015年)写真はNOWEARMAN

写真 (1)

同日の我々。奥にタナソー氏の姿も確認出来る。

山﨑「だから俺の中でのイメージがタナソー側というか。俺らはSnoozerからの影響無かったからあんまり関係の無い人達って思ったんですよ。そこからこうやって付き合いがあるって思うと不思議な気分になりますね」
澁谷「いやぁ、山ちゃんからは多分そう思われてるだろうなと思ってた。「kumagusuとKlan Aileenってなんでつるんでるんだろう」って山ちゃんは多分思ってるだろうなって笑」
一同「笑」
山﨑「本当に不思議なのよ」
井上「俺の印象も最初のミュージックビデオで上げてたあの...」
澁谷「Astroride?」
井上「あ、そうそう。大学の時の音楽サークルの友達が「これがめちゃめちゃ良い」って話しててそこで知ったんだよね」
澁谷「そうなんだ!恥ずかしいねぇ~」
井上「で、それの印象があったから、あの曲俺は全然かっこいいと思うんだけど、その後こういう形で知り合ったのは確かに不思議な感じはあるっていう」

はいはい貼りますよ。


澁谷「そもそも、たまたまライブで一緒になったんだよね?」
山﨑「新宿Nine Spicesで藤原忠君がブッキングの仕事をまだやってた時で」
竹山「5kaiとかも出てた?」
山﨑「そう、5kaiとノイカシですね」
井上「あの日面白かったなぁ。5kai、ノイカシ、クラン、kumagusuで。”Ultra Main Culture”っていうタイトルで4バンドの括りで「定期的にやろうよ」って話はしてて、忠側から「今回はKlan Aileenに声をかけました」って言われてそこでカチ合ったという」

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2バンドが初めて共演したイベント『Ultra Main Culture』


山﨑「リハやってたら前の方で松山くんがボーっと見てて、リハ終わったら「良かったっす」って言われて」
竹山「俺もタバコから戻ったらまっちゃんが(「早く来い」のジェスチャーで)「kumagusuめっちゃかっこいい!」って言ってて笑」
澁谷「いやぁ、めっちゃかっこよかったよ」
山﨑「普通ライブ終わってからそういうノリがあったりするけど、リハの時点でそんな感じだったから良い気分になった笑」
一同「笑」
井上「あの日、ライブ終わって話してる時に竹山君がみんなに話しかけてて。会話の中でちょっと沈黙が起こると「仕事何やってるんですか?」って毎回聞いててそれが良かった笑」
澁谷「話題に困る度に笑」
竹山「恥ずぅ〜笑」
一同「笑」
澁谷「 あの日のことは自分でもZineに書いたんだけど」
井上「あ、俺見たよ」
山﨑「読みました読みました」

澁谷「もう「温泉街っていう曲やりまーす」って時点で「タイトル良いな」と思ってたらマジで良い曲かかってきたから「すげえバンドだ!」と思ったんだよね」
井上「君島さん(ツバメスタジオのエンジニア)にも話してくれたっていうエピソードがあったけど、ちょうどその時には君島さんと『夜盤』のレコーディングの話進めてて」

kumagusu 『夜盤』(2019)

澁谷「そうそう。その日はたまたま君島さんも見に来てて「今日出るkumagusuって知ってますか?彼らかっこよくないですか」って話したら「知ってる、カッコ良いよね。今度僕録るよ」って言われて「えー!マジですか!」みたいな」
山﨑「あの日は楽しかったですね。もう3、4年前くらいになるのかな。あのライブの後に急にお近づきになった感じあるからね。一緒にライブやったり吉祥寺のNEPOでツーマンやったり」
井上「山ちゃんには言ってなかったけど、そのNEPOでやった時の告知用で撮ったkumagusuとクランが並んでる写真が、"kumagusu"でググるとアー写として出てくる」
一同「笑」
澁谷「 AIも結局頭悪いよね」
山﨑「スプリット懐かしいですねー。池袋のペンタで録ったんだよね」
井上「ペンタで録ってその後中華料理屋で呑んでっていう流れだったね」
澁谷「スプリット楽しかったよねー。俺はね、好きになったバンドにはちゃんとドンドンいく感じ」

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スプリット作品『Kkluamnaagiulseuen』記念写真


5. Jolt! Recordingsの運営姿勢

山﨑「Jolt!からはこれ何本目なんですか?」
澁谷「6本目」
井上「クランのやつ抜いて他のバンドは何バンドいるの?」
澁谷「BurghOKSThe Octopuskumagusu


竹山「4バンド目」
井上「OKSはあれか」
澁谷「君島さんと岡田さん(EXTRUDERS)とのやつ」
山﨑「全部基準としては松山君が気に入ったバンドって感じ?」
澁谷「うん」
山﨑「それってどうやって出会ってる?対バンですか?」
澁谷「主に対バン。探しには行ってないから。出会うべくして出会ったバンドだから必然性があるというか」
井上「その方が良いよね」
澁谷「うん、この人は出会うべくして出会ったんだなって実感があるからやれるというかさ。全く知らない人に声かけても、結局向こうもそんなに熱量無いんだよね」
山﨑「結局レーベルってそれしかないですよね。自分が見て「うちから出したい!」って熱量が湧かないとね。作品を出すって結構な熱量だもんね」
澁谷「なんかさ、Y君って世代的にミニ四駆ってやった?」
井上「ミニ四駆やったけど、中途半端に終わっちゃったな」
山﨑「俺も中途半端で肉抜きとか何も分からないでガンガンやって悪趣味な感じになってた」
澁谷「ミニ四駆って家庭用のサーキットあったの覚えてる?」
竹山「俺んちあったわ、1回転するやつ笑」
井・山「懐かしい笑」
澁谷「あれ小学生でも元箱に入れたらわりかし持ち運べたじゃん。で、友達の家持って行って友達もサーキット持ってたら合体させることが出来たのね。そういう遊びやらなかった?」
竹山「やらなかったな~」
井上「それ結構良い小学生だよ」
澁谷「そういう遊びをしてたんだけど、俺完全にそのノリでレーベルやってんのよね」
一同「笑」
井上「でもそれに近い感覚はすごい分かるよ」
竹山「コース広げようみたいなね」
澁谷「俺これ持っていくからお前これ持ってきてよ!みたいな。で、あいつん家で合体させようぜ!みたいな笑」
竹山「全員工具箱にミニ四駆入れてね笑」
澁谷「そうそう笑」
山﨑「本当そんな感じだよね。コース広げようぜだよね。そのコースがね...いずれでっかい輪になったら...」
澁谷「それはちょっと何言ってるかわからないけど笑」
一同「笑」
井上「それで言ったら、小学校の時、自分でマンガ書かなかった?」
澁谷「マンガねー、買って貰えなかったんだよね。マンガとかゲームとか。ジャンプとか普通に読んでる奴いたじゃない?」
井上「俺はジャンプは読まなかったな~」
澁谷「ジャンプ、サンデー、マガジンあって全部読んでる奴いたじゃん」
井上「いたいた、それブルジョワでしょ?」
澁谷「あれブルジョワだったのか~。なんか知らないけど当たり前のように3つとも読んでるみたいな奴いたじゃん。漠然と羨ましいと思ってたし、ジャンプに載ったマンガっていずれはまとまってコミックっていうのになるんだって本屋に行って気付くわけ」
竹山「あー分かる分かる」
澁谷「で、「えー!こんな世界があったのか!」ってワクワクして、でもワクワクしてるだけでこれが欲しいから買ってって言う勇気が無かったというか、どうせダメだろうなって感じだった」
井上「いや、そこまで世界のことが見えてるのはすごいよ。俺は小3から小4にかけて自由帳にマンガ書いてたんだけど」
澁谷「いや、そっちの方がすごくない?笑 無いなら作ろうってことでしょ?」
井上「そうそう、俺は”鼻くそ君”っていうマンガとか書いてたんだけど。勝手に連載に追われてるから」
一同「笑」
井上「宿題とかやってる場合じゃないのよ。これは明日までに書き終えないとって」
澁谷「連載落とせないぞって笑」
井上「でも、これが作品になってパッケージされて世に出るなんて意識は全然なくて、多分みんなこういう事をやってるんだろうなって思ってて」
澁谷「あ~、そういうルールを順守するのが楽しいみたいな」
山﨑「今もやってること同じだよ」
井上「そうそう、結局マンガだったりミニ四駆のサーキット繋げてだったり今も同じっていうイメージ」
山﨑「俺は今もマンガ書いてますけど、小学生の時からマンガとか絵描くのが好きで、本が作りたかったんですよね。自分のオリジナル本に憧れてて」
澁谷「それは分かる」
山﨑「小学生の時は自由帳に書いたものをビリビリ破ってホッチキスで留めたりさ」
井上「俺でいうところの『忍者の秘密』でしょ?」
澁谷「知らねー!」
一同「笑」
井上「『忍者の秘密』っていう忍者のことがいっぱい書いてある小2の時の作品で」
山﨑「俺もオリジナルキャラクターあったわ。”ヨシノリクラゲ”っていう。俺本名がヨシノリだから、”ヨシノリクラゲ”と”ヨシノリタコ”っていうのでマンガ書いて一冊の本にしてたわ」
井上「それもう無いの?」
山﨑「無いと思う。どっかやっちゃってると思うよ。母親が最悪の断捨離魔なんで」
澁谷「断捨離魔か~。今も読みたい?」
山﨑「読みたいですよ。小学生の自分なんて別人じゃん。別人だけど繋がってるから、自分のルーツを見直すみたいな感じで読みたいですよね」
澁谷「俺も学級文庫でオリジナル作りましょうみたいなのあったな」
竹山「あー、あったよね笑」
澁谷「学級文庫に自分で作った絵本を追加していきましょうっていうのがあって、とにかく人と違うものが作りたくて「カキクケコ」で出来た人を作ったのね」
一同「ん?」
澁谷「カタカナの”カキクケコ”の文字が組み合わさって人になってるみたいな」
井上「アヴァンギャルドだね~」
澁谷「その設定を再現しただけで満足しちゃって、ストーリーとか何もないから、1ページ目以降は中身がゼロみたいな本を作っちゃって学級文庫に並んじゃって、でも不思議なことに興味を持って誰かが読むわけじゃん笑」
一同「笑」
井上「好事家がいたのね笑」
澁谷「絶対にこんなの誰も読むやついないだろうと思ってるのに、なんか読む奴いるじゃん。「読まないでくれー」って思ってた記憶しかない」
山﨑「俺も小学生の時に自分でオリジナリティ出したいっていう芽生えがあって、卒業文集で、他はなんか「なんとかが楽しかった」とか「みんなと別れて悲しい」とか書いたりするじゃん。でも俺は小学校5年生の時の文化祭っていうのがあるんだけど、「ドリームフェスティバル」っていう名前の」
澁谷「マリファナやってんの?笑」
一同「笑」
山﨑「まぁ、ガキなんてみんなマリファナやってるようなもんだよ。で、「ドリームフェスティバル」がつまんなかったっていうことを書いたわけよ」
竹山「小学生で反体制だったのね」
山﨑「そうそう、アンチですよ。そしたら先生に怒られて負けじと二回三回と書いたらそれでも怒られて、すごい泣いた覚えがあってさ」
井上「山ちゃんはね、すごく早熟なんだよ」
澁谷「反体制として?」
山﨑「サブカルチャーの芽生えが人より早かったと思う」
井上「だって小学校の時にナンバーガールのCDを予約して買ってたんだよ」
澁・竹「やーべーっ!」
山﨑「俺サブカルチャーの芽生えが小5ぐらいなんですよ」
井上「早すぎるよね?」
澁谷「早すぎる」
山﨑「小5くらいに赤塚不二夫とかすごいハマって、親に古本屋に連れてってもらって昔のもの読んだりとか。小6の時に”くるり”を聴き出してすごい好きになったんですよ。で、くるり関連でナンバガとかを知って。テレ東のカウントダウンTVっていう番組があって、それがインディーズなんかもランキングの中で流れてくるんですね。その時にナンバガの”NUM-AMI-DUBTZ”っていうPVがすごく気になったの。でTSUTAYAで借りて聴いてナンバガ好きになって、その時に『NUM-HEAVYMETALLIC』っていうアルバム出してて、Quick Japanで向井秀徳の特集をしてたんですよ。ちょっと高かったけどQuick Japan買ったら、Quick Japanは結構サブカルなことが多いじゃないですか。そこからサブカルチャーが広がっていったって感じですね」
澁谷「知る由もないワードだわ!Quick Japanなんて」
井上「だって小6なんて鼻くそほじってるぐらいしかなかったもん」
竹山「チン毛が生えた生えないとか言ってね」
澁谷「コロコロコミックの中のどっかにパンツが描かれてないか探してた時代だわ」
一同「笑」
井上「山ちゃんが今まで出会った人の中で一番トップで早熟だと思うよ」
竹山「誰かが好きだったとかじゃなく?自分で?」
山﨑「そうそう」
井上「無いよね?そんなこと?」
竹山「ナチュラルボーンでなんだ」
山﨑「根本敬っていうガロ出身で悪趣味系とか鬼畜系とか言われるマンガを書いてるヘタウマの人がいるんですけど、俺はその人のマンガがすごい好きで、今神保町の美学校ってところで講師をやっていて、俺そこに通ってマンガ書いたりしてるんですよ。その根本さんのマンガもいつ頃読み始めたのかなと思って自分の歴史をさらってみたら、最初に読んだのが『学ぶ』っていう単行本でその復刻版を読んだんだなって気付いて、それの初版が2003年とかだったかな。俺13歳なんですよ。中1なんですよ。中1で俺は結構コアなマンガ読んでたんだなって笑」
澁・竹「やーばっ」
井上「山ちゃんの実家に行くと山ちゃんの部屋ってお母さんとか全然入ってくる感じで、そこにエロ本が普通に山積みされてるの」
澁・竹山「笑」
井上「それ見た時カルチャーショックで」
竹山「やっぱ隠すもんね」
井上「そうそう」
澁谷「いつ行ったの?」
井上「俺が行ったのは大学1、2年の時で」
竹山「大学1年の頃にエロ本が山積みになってるんだ笑」
山﨑「でもY君ちも俺カルチャーショックだったわ。Y君ちお父さんが今蕎麦屋の先生なんだっけ?」
井上「そう、俺の親父は蕎麦打ちを教えてるっていうよくわからないニッチな職業をしている」
澁・竹「笑」
山﨑「でもY君のお父さん元々はコピーライターをやってたんだよね。だからかやっぱり書籍の量がすごくて、お父さんの書斎があって本がズラーっと並んでてその中にサブカルチャーに通じてる本がいっぱいあって、そういう部分で言えばY君もナチュラルボーン的な部分は持ってると思う」
井上「よくわからないけどこの本面白いよって友達にすすめる感じだった気がする。でも山ちゃんの小6で自発的に予約するっていうのないんだよね。俺は家にある本を読むけど、これがどこで連載されてるのかとか...」
澁谷「それは審美眼がないと無理じゃん」
井上「そうそう、まぁ面白いと思って読むんだよ。よく分からないものが家にあるっていうつもりで読むんだけど、これが現実として買えるものとしてあるっていう所に結びつかないというか、ちゃんと予約して買うってヤバイなって」
澁谷「予約して買うはヤバイよ笑」
竹山「まだバスの乗り方もよく分からなかったわ笑」
山﨑「それこそ54-71のCDを地元の小さくやってるCD屋さんで注文して2、3か月くらいかけて取り寄せてた」
竹山「店員さんに話しかけるのがすごいわ笑」
山﨑「まぁ、おばちゃんだったから。ある時おばちゃんに「あんたの頼むものはマニアックだからさ」って言われて、俺そこで初めて「俺マニアックなんだ」と思ったんだよね笑 あの時ってまだメジャーとインディーズってすごくかけ離れてたと思うんですよ。俺この間ビックリしたのが、地元帰って、駅前にでかいヨーカドーがあるんですけど、ヨーカドーの3階にいつの間にかブックオフが出来てたんですね。CDコーナー見てたら、普通にFaustのファーストとかセカンドとかそういう系が置いてあって、「これ中学とか高校の時に地元に出来てたら狂喜乱舞だな」と思ったの。でも、今こういう差が無くなってるのかなと思って。どうでもいいみたいになってるのかなっていう。サブスクで聴けちゃうしCDとかも売れないし、その差がどうでもよくなってるというか。昔だったらこういうマニアックなCDだったりレコード持ってる人すごいみたいな感じだったけど」
澁谷「それってファウストを聴いてる人がブックオフに売りに来てるっていうことだよね」
山﨑「でもブックオフはネットとか出来てて流れてきてるからさ。別に流山のブックオフで全部集めたわけじゃないと思うから。でも本当俺はそこの差がなくなってる気がした。「流山でそんなことがあり得るんだ」って思っちゃったもん」
澁谷「この前の千葉雅也さんの話じゃないけどさ、「歴史が終わった後の音楽」って言ってたじゃんか。あれがすごいしっくり来て、「確かにもう終わってんだよな」と思ったよね」
井上「それ現時点でってこと?」
竹山「そうそう。Official髭男dismの”Cry Baby”って曲があってさ、東京リベンジャーズっていうアニメ観てたら内容よりオープニングの方に興味がいっちゃって。「なんだこの曲」と思ってたらほぼ同じタイミングで千葉雅也さんがその曲について「歴史が一旦終わったあとの新しい音楽」みたいなことをつぶやいててしっくり来たんだよね」


澁谷「全てがアーカイブされて並列になっててそこにランダムアクセスしてるような音楽だから、何かと地続きになってて「これの次にこれ」っていうのじゃなくって、アーカイブを全部見渡した上でこことこことここって恣意的にアクセスしてるっていうことを指してるんだと思うんだけど」
井上「その曲を聴いてないからなんとも言えないけど、でもそうなるだろうなっていう感じはあるよね」
山﨑「バンドだろうがなんだろうがこれからのアーティストの人たちって多分全部そうなっていくと思いますよ」
井上「過去からどこでも切り取れるって話だよね」
澁谷「そうそう。何と何を組み合わせるでしかないというか」
山﨑「組み合わせもそうだし、「私はこれが好き」でしかないっていう」
澁谷「そうだよね、好みの発表みたいな」
山﨑「そこに対して何がすごいとか偉いとかないと思う。この時代があってこれが現れたっていういわゆる歴史のすごさっていうのがどんどん無くなっていくから、そこはつまんなくもなるし面白いとも言えるというか、自分が好きなものを探せばそこに居ればハッピーっていうだけだね」
井上「いやでも面白いで良いんじゃない?特に民族音楽とかそうだけど、それって今に始まったことじゃなくてさ、民族音楽を上手いことバンドサウンドに取り入れようっていう試みってずっとあったじゃん。でもやっぱり民族音楽の方がかっけーなって思ったりすることの方が多いし、それはそれで良いけど正義になるっていうか100%勝利するってなかなか難しいんじゃないかな」
竹山「クラシックや民族音楽の時代からしたら俺らが歴史の後の人間かもね」
井上「そうだね、多分分断みたいなのは普通にあったと思う。それがサブスクとかデータ配信とかわかりやすく出てきて断言出来るレベルになったのが今っていうだけであって、「音源」っていうレコードなりCDなりが出た時点で少なからずそういうのがあると思うんだよね」
竹山「なるほどな~」
澁谷「著作権って”著作”って言ってるけど、要は”楽譜”ってことでしょ?」
井上「そうだね。でももうそんなのヒップホップのサンプリングとかで骨までしゃぶられてるしさ笑」
一同「笑」
山﨑「それで思うけどさぁ...」
竹山「絶対終わんないよね!笑」
澁谷「絶対終わんない笑 そもそもライブ盤を出すって話だよね!?笑」
竹山「Y君、タバコ1本巻いていい?」
井上「いいよいいよ。ちょっと休憩しようか。いやでも山ちゃんのその意見だけ聞いとこう」
山﨑「別に大したことじゃないけど、2010年代に生まれた子供達が10代とかになるとロックが好きとか言うじゃん。そして、例えば50年代からロックをさかのぼりたいっていう子がいちいちCDとかレコード買ってたら大変だよ。だからサブスクっていうのは必然的なモノだと思うんですけどね。俺らの苦労はなんだったのってちょっと思うけど、でもそれは当たり前のことだと思う」
井上「YouTube出てきた時とかね、きっとそうだよ」
澁谷「おーい!良いよなー!タバコが吸えてよー!タバコが吸える人生で良いよなー!」
一同「笑」

6. 小休憩

~一服中~
澁谷「もう57分も回してますよ」
山﨑「楽しいもん。クランと話すのも久々だし、コロナ禍だから色々溜まってたんだよ」
井上「毎回竹山君立ち合い?」
竹山「そうだね。Burghの時The Octopusの時もいたね。ちょいちょい横槍として笑」


澁谷「思い出したように笑」
井上「The Octopusの時そうだったよね笑」
竹山「まっちゃんがすごい仲良かったし、当時からずっと付き合いがあったからね」
井上「あのインタビュー面白かったな~」
澁谷「和泉君のやつ面白かった?」
井上「面白かったよ」
澁谷「面白かったでしょ?あれ面白かったんだよなー」
井上「ちゃんとアカデミックなアート素養のある人なんだね」
澁谷「多分」
井上「美大?」
澁谷「美大ではないんだけど美術部」
井上「美術部か。バスキアの話とか出てたね」
竹山「そうそう。うちに画家のエゴンシーレのポスターを飾ってるんだけど、うちに入って来た瞬間に「あれ?これ誰だっけ?」って言ってた。あ、分かるんだと思って」
井上「へぇ〜。もう今あんまりやってないんだ?」
竹山「出来ないって言ってたね。出て来ないって。あの時は天才だったって」
井上「そういう時あるよね」
竹山「鹿児島で近所迷惑を考えなかったっていうのもあると思うんだよな」
井上「確かに家で気にせず音出せるかどうかってデカいかもね」
山﨑「環境は人によって合ってる合わないあるよね」
井上「隣に山塚アイ住んでたらマジで最悪って思うもんね」
一同「笑」
山﨑「山塚アイがいくら面白くても隣に住んでたら最悪だよ」
井上「完全に苦情入れるわな」
一同「笑」
山﨑「奇声が止まないんですけどって。どんなサブカルに素養のある人でも隣に山塚アイ住んでたら苦情入れるよ。そういう真実はあるよね」
井上「山塚アイが風呂場で叫ぶやつとか見てて、これ面白いけど隣に住んでたら嫌だわって」
一同「笑」


山﨑「面白いけど近い人だったら最悪だなって事実は考えないとダメだと思う」
竹山「まぁ、近い人だけ考えればいいよね」
井上「作品として受け取る側は別に見なくていいんだよね」
山﨑「「山塚アイこんなことやってるけど、隣にいたら迷惑じゃありませんか!?」って言う必要はないって」
井上「そう、発信する必要はないんだよね。実際なった時には苦情入れるけど笑 今そういうとこの発言がデカいやつが多いって話だよね」
山﨑「本当だよ。余計なこと言いすぎるやつが多いんだよ」

~一服戻り~

澁谷「今ベランダですごい良い話してたね..」
井上「これまとまる?」
澁谷「まとまるまとまる。大体いつもこんな感じだよ」
竹山「そうだね。話に脈絡ないんだよ」
澁谷「これを文字起こしするのはめちゃくちゃ大変だけどね笑」
井上「起承転結ないもんね」
澁谷「どっから話すかな。仕切り直しで」
竹山「そもそも作品の話を一切してないんだけど笑」
一同「笑」
澁谷「SPOILMANとPretty Threeをひとしきり話した後に小学校時代の話で40分使ってるから。でも馴れ初めはちょっと話せたから良かったよね。はいじゃあここから!」
井上「まず3月に録った時のことをね」
澁谷「まだタイトルすら言ってないから!」
一同「笑」


7. アルバム『処夏神経』について


澁谷「ライブ盤なんだけど、ただの"kumagusuライブ"みたいな名前ではないんですよ。ちゃんとタイトルを考えて付けてある。これはY君から言った方が良い?それとも俺紹介が良い?」
井上「松山君紹介が良いな」
澁谷「じゃあ、タイトルを紹介させてもらうと『処夏神経』っていうちゃんとしたタイトルが付いているんだけどこれは理由があるんだよね」
井上「うん、『処夏神経』はもともと小石清っていう写真家がいて、戦前かな戦後かな?当時からアヴァンギャルドな写真撮ってる人で若くして死んじゃった写真家で、写真集が『初夏神経』っていう普通の”初夏”で、英題が”Early Summer Nervus”っていうタイトルが付いててそれがすごいかっこよくて。なんか良いなと思ってて、今回アルバム録った後にずっとタイトルどうしようって考えてた時に、久しぶりに小石清のこと思い出して最初はタイトルそのまま”初”を猛暑の”暑”に変えて出そうとしてたんだけど、それに対して松山君が「”処”は「家にいる」みたいな意味合いがあるらしいよ。それがコロナ禍とかで合うんじゃないか」っていう話をしてくれて、確かにそれで『処夏神経』ってかっこいいねって話でそっちに変えたっていう」

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小石清『初夏神経』


竹山「確かに”処”って自分の中に留めるみたいな雰囲気あるよね」
井上「内向的なイメージあるよね。だから、松山先輩案がね」
澁谷「松山先輩案でいえば、ジャケットでちょっと揉めたんだよね笑」
井上「ジャケット揉めたね笑 最初は過去作のイラスト的なやつをもう一回出そうと思ってて、正直新規でやろうと思ってもあんまり良いのが思いつかなくて、過去作でも良いっちゃ良いかと思って松山先輩に出したら、「オッケー」って返事が来て、1週間くらい経ってから「入稿用にピクセルが何×何で渡して欲しい」っていう連絡が来て、「それじゃ送るわ」って送ったタイミングで、「やっぱり変えない?」って返事が来て」
一同「笑」

画像9

『処夏神経』の最初のジャケット案

澁谷「俺の言い分を聞いてもらうと笑 これまでのkumagusuと同じって感じがしたんだよね」
井上「それ言ってもらってなんか分かる気がした。「kumagusu新しいの出してビックリさせたいんだよね」って言ってくれて、「確かにビックリさせてぇな」って思ったっていう」
澁谷「そうそう。kumagusuって良いんだけどビックリしたことはないんだよ。「俺はkumagusuでビックリしたいんだ!なんかアイデア出してくれ!」っていう話をして、考えてもらったんだよね。で、グラフィック系のやつを何案か出してもらって吟味してるくらいの時期に、Y君が迂闊にも昔描いたイラストをTwitterに上げてたんだよ」
井上「あれね、その場で書いてたの」
澁谷「え!そうなの!?あの日描いてたの?」
井上「そうそう。最近落書きを日課にしようと思って書いてたやつなの」
澁谷「その時上がってたイラストは、『ツィゴイネルワイゼン』っていう映画のDVDジャケットをイラスト化したやつを上げてて、「これめっちゃ良いな」って思ってたの。「これジャケットでも良いな」ってうっすら思ってたの笑 で、その1週間後くらいにYくん的に「これかな~」って選出されたグラフィック案が送られて来て。尊重して「わかりました、これで納品しますね」って返事したものの一応言ってみるかと思って、「俺はこれ(ツィゴイネルワイゼンのイラスト)の方が良いと思う!kumagusuにすごく似合ってると思うんだ!」ということで笑」
井上「あの時、俺携帯横に置いてパソコンで作業して10分とか20分とか目を離してて、パッと見たら松山君から5件くらいLINEが来てて、「絶対これが良い!」「絶対これが良い!」「絶対これが良い!」っていうのが連呼されてて笑」
澁谷「躁になっちゃって笑」
山﨑「酔っ払ってたの?」
澁谷「酔っ払ってないんだよ。シラフで。『ツィゴイネルワイゼン』のイラストをJolt!のフォーマットにハメ込んだ時にバシッとハマって見えたから、「よし!絶対これだ!Y君もこれが良いって言うに違いない!」って笑」
井上「で、俺が「ナシで!」って送ったら「えーーーーーーー!」って笑」
澁谷「タケヤンにも聞いたのよ。俺たまにこうやって躁状態になることを自覚してるから、第三者の冷静な意見は大事にしようって思ってタケヤンに投げたら、「おー!ツィゴイネルワイゼンじゃん」って来て、「だろ!?良いだろ!?」って言ったら、「でも俺はグラフィックの方が良いかな」って言われてそっちでも「えーーーーーーーー!」」
竹山「あまりにもツィゴイネルワイゼン過ぎて笑」
井上「完全にただのツィゴイネルワイゼンだった笑」
竹山「それで俺はじゃあダメ元で鈴木清順に直接連絡して「ジャケットに使えそうな絵を提供してもらえませんか?」って聞こうと思って調べたんだけど亡くなってた」
井上「3年前に亡くなってるんだよね」
竹山「亡くなってた~と思って」
井上「鈴木清順、90歳くらいになって結婚してるからね」
澁・竹「マジ!?」
澁谷「絶倫じゃん。すげ~。それで、Y君的には「これは断固としてナシ」って言われちゃったからシュンとして、「このグラフィックのやつも正規盤として作りますけども、ただラジオ会員向けに限定ジャケットとしてツィゴイネルワイゼンバージョンを作ってもいいですか?」って聞いたら、「まあ、それなら」っていうことで」
竹山「あ、そういうことなんだ!」
澁谷「そう!なので今回は晴れてジャケットが2種類あります!これを聞いているあなたたちは幸運にもですね、このツィゴイネルワイゼンバージョンのカセットを手に入れることが出来る立場にいるということです」(その後、Y君の許可を頂き、普通に販売出来るようになりました)
竹山「なるほどね!まっちゃんが作りたくて作ったのね!笑」
澁谷「そうです!笑」
一同「笑」
井上「本当はもう1つあったんだよね。蕎麦猪口が浮いてるっていうジャケットもあって」
澁谷「あー!あった!あれも良かった!」
竹山「俺はあれが良いと思ったんだけど!」
澁谷「あれヒプノシスっぽくて良かった」
井上「そうヒプノシスっぽい。見てたら気持ち悪くなってきちゃってやめようと思ったんだよね」
澁谷「あれこそビックリしたけどな~。kumagusuがあれ出してきたら」

画像12

『処夏神経』ジャケットボツ案「蕎麦猪口」



(ラジオを録る前にY君がツィゴイネルワイゼンが最も好きな映画で、ぜひそれについて話そうと目論んでいた一同)
山﨑「大体なんでツィゴイネルワイゼンの落書きなんかしてたの?」
澁・竹「お!」
井上「ツィゴイネルワイゼンが一番好きな映画なんだよ」
竹山「ちょっと待ってちょっと待って笑 このライブ盤いつ録ったかとかさ笑」
一同「笑」
井上「早漏感出ちゃったね笑 ちょっとドピュッってなっちゃったね」
山﨑「まずそっちをやらなきゃね笑 ツィゴイネルワイゼンの話かな~と思ったんだけど笑」


8. 収録時の雰囲気

澁谷「実は今年の3月に晴れ豆でライブを録ってたんだよね」
井上「深夜ね」
澁谷「そう!楽しかった」
井上「録り始めたのって何時くらいだっけ?深夜12時くらい?」
澁谷「俺用事あった帰りだったから22時くらいに晴れ豆で合流してセッティングして24時くらいから録り始めたんだよね」
竹山「俺も2,3日前にまっちゃんから「タケヤンって今、夜中に動くとマズイ?」ってLINEが来て、う〜〜〜ん、マズイね......みたいな笑」
一同「笑」
澁谷「ってのでタケヤンは来れなかったんだけど、あの日はキャンプみたいで楽しかったね〜」
井・山「キャンプだったねー」
竹山「ふぇ〜〜〜ん」
井上「今回カセットに収録してるやつは基本的に1発録りで録ったやつなんだけど、録音自体はその場で2回録ったんだよね」
澁谷「セットリストを2回しやったよね」
竹山「そうなんだ? そもそもは映像の為だよね?」
井上「そう、そもそもサックス奏者が入ったからこうなってますよっていうプロモーションのために撮るっていう映像ありきで考えてて、1回目を録って聴いて「ここらへんちょっと直したいよね」っていう話を酒呑みながらして、割とみんな酒を結構呑んで酔っ払った後に2回目を撮って、結果2回目の方が全部良かったって感じだったね」
竹山「そんこともあるんだ酒呑んでやって良かったって」
澁谷「オールナイトで予約してあるって状況で俺が合流出来るのが1番早くて21時半頃だったのね。で、kumagusuが入り時間すごい早く入ろうとしてたから、「6時間も7時間も待ってたら絶対疲れるから、俺と同じ入り時間で良いよ」って言ったんだけど、「いや、俺達は18時半からやる!」って笑」
一同「笑」
竹山「オールナイトで!?早すぎるよ~笑」
澁谷「それで俺着いてセッティング終わって「よし1テイク目やろうか!」ってなった時にはもうみんなグロッキーになってて笑」
一同「笑」
澁谷「「ほらな!」って思ったんだけど、1回目やり終わってプレイバックするじゃん。「あ~、ここちょっとミスったな~」とか酒呑みながらみんなで話して良い感じにリラックスしてる中で、Yくんが小声でニヤニヤしながら「もう1回やんない?」みたいな笑 そういうノリが生じてやったから良かったんだよね」
山﨑「正直ミスは2回目の酒呑んでリラックスしてる時の方が多かったんだけど、でもライブ感あるのはやっぱり2回目だったね」
竹山「あーそれはあるよね往往にして」
井上「本当は松山君と同じタイミングで入ってセッティングした方が良かったんだけど、結局やっぱ動画のセッティングがあるから俺達がいないとしょうがないんだよね。そこに立つ人がいないと」
澁谷「そうだよね動画あるとね。kumagusuは18時半入りの24時スタートで2テイク目、3時とか4時だったよね笑」
井上「もう疲れ切ってた」
山﨑「タバコもめっちゃ吸ってて」
竹山「すーごいじゃん笑 昔のオールナイトニッポンみたいな笑」
井上「当日何本録りみたいな笑」
澁谷「謎の”最後”みたいな。酒も入って泣きの1回みたいな謎のテンションあったよね」
井上「新しく入ったサックスのプエル君は2回目録る時すーげぇ酔っ払ってて”夜はアルカリ”って曲録る時に、ベロベロで「俺はこの新しいフレーズを吹きてぇと思ってる」って主張して来てて、「録り始める前にちょっと吹いてみ」って言って「ピぇ〜」とか吹いてもらって、「でもこの箇所プエル君、もう別のフレーズ決めてたよ」って言ったら、「あれぇ?そっかぁ、じゃあやめとくかぁー!」って言うから「今回はやめときな」ってなだめて録ったのが今作っていう笑」
一同「笑」
澁谷「サックス良いよね~、kumagusuにハマってる」
山﨑「プエル君がいてくれて曲に深みが出たよね」
澁谷「管楽器ってやっぱ盛り上がるよね」
井上「管楽器は良いよね」
山﨑「今、『夜盤』聴くとちょっと物足りない感じする」
竹山「特にどの曲が盛り上がる?」
山﨑「俺は個人的に”彷徨”って曲が。逆にもうここでサックス来ないと「なんかおかしいな」って耳になっちゃてるみたいで。ほとんどの曲がギターとかそんなにアレンジせずにサックスのせてるから、「ここでサックス来ないと!」って気分になっちゃってる」
井上「すごい分かる」
竹山「サックスのために割かれた小節があるの?」
井・山「無いね」
澁谷「無いよね?既存曲の隙間に入ってる」
井上「そう、それですごい時間かかっちゃって、去年7,8月以降はそれのアレンジで割かれちゃった」
山﨑「今もやってるっちゃやってるけど」
竹山「サックス入って劇的に何が変わったとかある?なんで入れたかったのかとか」
井上「新しさというか新鮮味が欲しいという感じ。削って削ってやれる事っていろんな形はあるとは思うけど、自分なりにやれる事って今の段階で結構やったなと思って新しい要素が欲しいっていうのが1番大きかったかな。プエル君のアレンジ自体が無理矢理主張してサックスのせるっていうよりは、「ここにこうのせた方が奥行きが出る」とかそういう考えでやってくれるから」
澁谷「かなり調和してるよね。調和させる人って感じ。だからこそそこは遠慮がちに感じる部分もあって、サックスなんだからもっと壊し屋的な部分があっても良いなとは思う」
竹山「確かにね」
井上「それはね、やるべきなのはきっと新曲の方なんだよね」
澁谷「そうだよね。サックスありきで書いた曲は多分そうなるんだろうなっていう気はしてる」
山﨑「まぁ、出来上がってるものをぶち壊そうって気分にはなかなかなれないのかね」
竹山「そうね、寄り添う感じで」
井上「寄り添いもさ、サックスをリファレンス的に出来るバンドって案外いないもんだなと思って。バンド形式でサックス入ってるってKing Kruleとかいるけど」
澁谷「King Kruleってよりは(Miles Davisの)『Bitches Brew』とかの方が近い気がすんだよな」
井上「あー。案外いないんだよね、こういう感じにまとめたら良いよねって参考に出来るバンドって」
竹山「そもそもサックスってアナログで音量めっちゃデカいじゃん。”圧”というよりは”通る”じゃん」
井上「そうそう。主張がやっぱ強いんだよね。ボーカルよりデカいのが1つ入ってきたって感じだよね」
竹山「そうだよね。それを混ぜ込むってすごい考えるよね」
澁谷「確かに。サックスとボーカルってなかなか共存してないよね」
山﨑「結構ボーカルに近いけども、ボーカルとウワモノの間みたいな特異な存在で、諸刃の剣みたいな」
井上「既存曲はどうしてもボーカルメロディに対して後乗せでどうしようかってなっちゃうから、今アレンジしてるやつはもっと壊していきたいよね。サックスがメロディ先行してる所にボーカルが後乗せでいくとかも全然アリだと思うし」
澁谷「それはすごい楽しみだ」
山﨑「本当に1音鳴らすだけでも存在感あるもんね」
澁谷「タケヤン聴いてないんだっけ?」
竹山「...聴いてない....多分送られてない.....?」
一同「笑」
澁谷「いや送ったろ!笑」
竹山「さっきタバコ吸ってる間にLINE調べたら、来てたね...」
澁谷「だろ!笑」
一同「笑」
竹山「来てたんだよな~!」
井上「まぁ、せっかくだから動画で見てよ」


9. 映像作品『処夏神経』について


澁谷「動画は、何曲で曲目は何?」
井上「6曲で、サブスク解禁する曲目と同じにしてて、”海まで”、”夜はアルカリ”、”芝浜”、”有意義”、”エッセイ”、”たばこを”っていう曲目だね」
澁谷「ほ~、”精進”、”温泉街”、”あなたの主張”なし?」
井上「なし」
澁谷「それはじゃあ音源だけでってことね」
竹山「”あなたの主張”が1番サックス入りやすそうだけどね」
山﨑「好きに吹けるよね」
井上「まぁでも、そこフィーチャーして行き続けてもしょうがないし」
山﨑「あれだけフューチャーされても仕方ないというのもあって、確かにあの曲はずっとやってるんだけど、あれはkumagusuのハードコアみたいなもので、実際ハードコアな部分から削って削ってkumagusuの曲が出来てるよね」
澁谷「あれはすごい初期の曲だろうなっていうのは分かる、ナンバーガールとか好きだった頃なんだろうなっていう感じ」
井上「最初期だね。俺がデモを作った時の1番最初の曲。あれを持って行って山ちゃんをドラムで誘ってベースは別の大学の友達誘って「やってみよう」ってやったんだけど」
澁谷「山ちゃん最初ドラムだったの?笑」
井上「そう、最初あの曲はまとまらなくて一旦ナシになって、何曲か作った後に山ちゃんがギターになってから「あの曲、Televisionの”Marquee Moon”とかDoorsの”Light My Fire”みたいに弾き倒したら面白いんじゃないか」っていう話になってまとまったっていう」
澁谷「でもそれにはUFO君のドラムが必要じゃない?」
井上「そうだね。UFOさんのドラムありき」
澁谷「UFO君どのタイミングで入ったの?」
井上「バンド組んで半年くらいで入ったんじゃないかな」
澁谷「山ちゃんと入れ替わる感じ?」
井上「そうそう」
山﨑「俺はドラムは体力ないんで無理だった笑 向いないやって思った。ちょうどその頃は色んな楽器出来たらモテるだろうなと思って笑」
一同「笑」
井上「Princeになりたかったんだよ笑」
山﨑「そういう下心でやったら意外と難しいなって気付いて、「ダメだこりゃ~」って笑 1番最初にライブやったのが三軒茶屋のHeaven's Doorっていう所で、最後の会計の時店長に「もっと練習しなきゃな!」って言われて」
澁谷「クソだな笑」
一同「笑」
山﨑「いやでも、「ごもっともでございます」って気分だった笑 でも俺らが1番お客連れてきたのよね大学の友達とか。そうじゃなかったらもっとボロクソ言われただろうなってくらいの演奏だったんですよ笑 kumagusuのデビューライブは最悪ですよ。そっから俺は「ドラム嫌だ」ってなって、「ギターが良いです」って」
澁谷「ずっとギターはやってたの?」
山﨑「本当はギターから始めて、ずっとやってた」
井上「山ちゃんはもう昔から(速弾きのジェスチャーで)ピロピロピロピロみたいなの弾いてたのよ」
山﨑「ギターはずっと真面目に練習してたの。教則本とか見たりして。それで普通に弾けてたけども、ドラム誘われたからさっきも言ったようにドラムモテるんじゃないかと思って。バンドやりたい時期だったんですよ。オリジナルバンドとか自分でやりたかったけど出来なかった時期で、だったら普通にバンド入ろうかなと思って「ギターにするわ」ってなってそっからずっと続いてるっていう」
澁谷「そっちの方が楽しいと思うわ。想像つかないもん。山ちゃんがドラムって笑」
井上「結構ね、ちょこざいな動きする笑」
一同「笑」
澁谷「意外と小賢しい笑」
山﨑「結局イメージに技術が付いてきてないっていう典型的な下手くそですよ」
井上「大学1年生の俺なんてドラムで「トゥルルル」ってやってくれたら、「うわー!上手い!」って思っちゃうから「山崎君ドラム叩けるんだ!」って思っちゃって笑」
山﨑「お互いレベル低かったんだよ」

10. 『処夏神経』録音裏話

澁谷「終わんねーなー!これ」
井上「ちょっとまとめる方向で考えよう」
山﨑「ちゃんと司会者いないとヤバイね。1番言いたいのはツィゴイネルワイゼンの話題と....」
澁谷「ツィゴイネルワイゼン笑」
井上「ツィゴイネルワイゼン別に良いでしょ笑 めっちゃ副産物じゃん笑」
竹山「俺聴いてないし当日その場にいなかったからフラットに話聞いてるんだけど、この作品の話が全部置き去りにされてんのよ笑」
一同「笑」
山﨑「いや~、でももうそれでも良い気がするけどな~笑」
竹山「俺はこれを録った時の空気感が知りたいのよ」
山﨑「空気感。さっき言った通りだよ。まずね、晴れ豆のもてなし感がお茶とかお菓子あったりとかすごい嬉しかったですね笑」
竹山「あ、ケータリングがあったんだ!サトシ(晴れ豆PA)いたの?」
澁谷「サトシいたよ。サトシがいたからすごい助かった」
山﨑「三浦さん(元晴れ豆スタッフ)とかも来てくれたしね」
澁谷「俺いつもの自前の機材持って行こうかと思ったんだけど、せっかく90年代のMidasの卓があるって言うから、「それ使ってみるか」と思って事前にマニュアルとか読んで調べて当日分かんないことあったら聞こうみたいな感じで。結局配線は全部やってもらって、サトシがいたからあのスピードで終わったっていうのがある」
井上「良かったな~。いなかったら?」
澁谷「いなかったら使い物になってないと思う笑 ただね、晴れ豆、オーディオインターフェイスっていう、マイクとかのアナログ信号をパソコンに取り込むための機材がないのね。で俺が自分で持ち込んだインターフェースが8ch分しかないのね。マイク1本につき1chって考えてくれれば良いんだけど、8chしか無いって事はマイク8本しか立てられないってことで。それか、もっと多いマイクを立てるけど全部で8chにまとめなきゃいけない。そういう制約があって、ドラムに立てた4本を2chにまとめてっていうやり方でやったんだけど、あれはなかなか緊張感があった。ミスったら取り返し付かないから」
井上「結果良かったんじゃない?めちゃめちゃ良かったと思うよ。下手に調整出来るよりは緊張感あって良かったと思う」
澁谷「退路絶たれた方が良い場合もあるよね」
竹山「失敗するのってどういう事なの?」
澁谷「何かが聴こえないとか」
井上「逆にデカすぎるとかだよね」
竹山「あ、そうか。2chにまとめてるからか」
澁谷「そうそう。録音の前にミックスしとかなきゃいけないっていう」
井上「EQで削ろうと思っても他も削られちゃうし」
竹山「そうか、個別で出来ないんだ」
井上「あれはすごく良かったと思う」
澁谷「うん、スリルがあって良かった。だけど1ヶ所見誤った部分があって俺のインターフェイスが、なんて言えば良いかな、「デジタルクリップを起こす」って表現するんだけど、普通はレベルオーバーの入力が来ても歪むだけなのね。だけど俺のインターフェイスって「バチッ」っていうデジタルっぽい歪み、グリッチノイズみたいな割れ方するのね。で、Y君の声量を見誤って”海まで”の1番声デカい所でデジタルクリップを起こしてんのね」
井上「本当?全然気付かなかった」
澁谷「なら良かった笑 録音ってミックスで細かく調整したい時のために全てをバラで録ってるみたいなとこあるんだけど、UFO君なんて既にミックス出来てるドラマーじゃん?だから別にマイク1本でも録れるんだよ。kumagusuも後から細々言うバンドじゃないから、そういうバンドの時はあの手法は全然やれる」
井上「当日プレイバックして聴き直ししたじゃない。あれとかもすごい良かったよね」
澁谷「箱のメインスピーカーでプレイバックして「これは良いものが出来た」って感じがしたよね」
竹山「寝ながら?笑」
澁谷「まぁ、寝てる人もいた笑」
井上「呑みながらね」
竹山「良いね~」
澁谷「でもまぁめちゃくちゃ疲れてたけどね笑 「どう?車で聴くようにMP3で書き出す?」って聞いたら「いや、今日はもう聴かない...」って笑」
一同「笑」
井上「聴いても意味がないって笑 それで後日改めて”あなたの主張”聴いてたら「やたら後半がボヤボヤするな~」と思って松山君に「これやたら後半だけボヤボヤしてるんだけど、なんかリバーブとかかけてる?ちょっと調整して欲しいんだけど」って連絡したら、「録ってる時テンション上がって俺がアンビエンスマイク上げてたんだったわ~」って返事が来て笑」
一同「笑」

録音豆知識

録音対象物に触れるくらい近く立てるマイクを「オンマイク」と言う。それよりも離して置くマイクを「オフマイクと言い、例えばドラム全体など、より広範囲で複数の対象物を集音する用途で立てる。
オフマイクの中でも対象物からより遠く(特に定義はないが2m以上とか)に立てるマイクは「ルームマイク」や「アンビエンスマイク」と呼ばれ、音の輪郭よりも残響を集音する用途で立てられる。ミックスに混ぜるとリヴァーブ感、残響感が出てくる。


澁谷「録りながら「これはもっとアンビエンスマイク上げた方が絶対良いでしょ!」と思ってドンドン上げてたのね」
一同「笑」
澁谷「それでどんどんボワボワになってる事にちゃんとY君が気付いたんだよね。「これリバーブかけてないよね?」って。で、「ミックスでリバーブとかはかけてないです。ただ、当日、アンビエンスマイクをリアルタイムでドンドン上げてました」っていうのは伝えました笑 「じゃあそれだわ~」って」
一同「笑」


澁谷「後なんかあったかな~」
竹山「まだまだあると思うよ笑」
井上「まだいっぱいあるよね笑」
澁谷「1テイク目はなんだかんだで固くて。2テイク目やって、2テイク目は1テイク目の反動でみんなすごい楽しそうだったのが伝わってきて、曲が終わるごとにY君が「...100点じゃね...?」って言ってたよね」
一同「笑」
竹山「毎回?笑」
澁谷「毎回笑「...100点じゃね?」っていうのが毎回マイクに入って残ってて、「これ面白いから映像に残しましょうよ」っていう話をみんなでしてたんだけど、結局あれどうなったの?」
井上「却下だね笑」
澁谷「えーーー!却下したの笑」
一同「笑」
山崎「こういうのは恥ずかしがるタイプだからね」
澁谷「じゃあラジオ限定で「...100点じゃね?」音源出そうかな」
井上「あ、それは全然いいよ。やってくださいよ」
澁谷「ラジオなんだから途中で曲挟んでも良いしね」
井上「俺も「...100点じゃね?」のところ聴き返したんだけど、俺以外みんな冷静なんだよね」
澁谷「あーそうそう!Y君が「...100点じゃね?」って言ったら、山ちゃんがすかさず「いや、俺ミスった」、プエル君が「いやー、俺もちょっとミスった」みたいな笑」
井上「モジャが「いや~、まぁ~」みたいな」
澁谷「Y君以外みんな怪訝な顔してるのよ笑」
山崎「でもそんなもんだよ笑」
竹山「あるよね。演奏全体聴いてる人はそう思うんだけど、プレイヤー目線からすると満足出来ないっていう」
井上「特に歌ってると細かいニュアンスって分からないんだよね」
澁谷「分からないね。気持ち良く歌えちゃってる時ほど、実は周り聴こえてなかったりするからね」
竹山「周りがちゃんとしてると気持ち良く歌えるっていう必然性もね」
井上「でもね、やっぱり確実に2テイク目の方が良かったよ」
山崎「まぁそれならそれで良いか笑 自分達はプレイヤーとしての演奏しか考えてないから」
井上「そうだよね。「...100点じゃね?」って言った後に、みんな「いやぁ~」って笑 「100点って言ってるのに!!!」みたいな笑」
一同「笑」
澁谷「メンバー1人も乗っからずに、遠くで俺が笑ってるっていう笑」
一同「笑」
竹山「でも、ドラムのUFO君は鉄壁だもんね」
澁谷「完璧ってこと?」
竹山「そうそう」
井上「でもUFOさんもね、全然ミスるよ」
澁谷「そうなんだ!自分に厳しいタイプなの?「今の俺ダメだったわ」とかそういう感じ?」
井上「なんだろ、バンドアンサンブルとして一定水準以上のものが録れたら、「もうこれでいいんじゃない」っていうタイプなんだけど」
澁谷「あー確かに!手放すタイミングが早いっていうのはあるかもしれないUFO君」
井上「でも個人プレーとして「これはなかったな」っていう時に関しては言うよね」
澁谷「バンマスってY君なの?」
井上「まぁ、一応そうだね。でもアンサンブルのことについては俺よりみんなで話しようって感じかな」


11.最後に

澁谷「最初はオープンリールで録ろうっていう話もあったんだよね」
井上「あったね~。遠い昔の話だよね笑」
澁谷「君島さんから貰ったオープンリールをせっかく直して動くようになったからさ、あれが映像に写ってたらそれもそれで良いじゃん。説得力あるというか」
井上「当日のマイクのチャンネル数的にオープンリールきつかった?」
澁谷「いや、イケた。チャンネル数は8chで同じなんだよ。イケたんだけどアナログだからそれこそ取返しがつかないテープノイズ的なのが懸念される」
井上「『処夏神経』が売れたら第2弾でやれば良いよ。買ってくださいっていう感じで」
澁谷「あ、それか自分たちでやれば良いのか。クランで」
竹山「そうね」
井上「良いね。クランのオープンリールライブ盤、楽しみ。.......それじゃ、一服しますか」
澁谷「あ〜良いよなぁ〜」


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kumagusu 『処夏神経』

1. 海まで
2. 夜はアルカリ
3. 温泉街
4. 芝浜
5. 有意義
6.エッセイ
7. たばこを
8. 彷徨
9. 精進
10. あなたの主張

カセット 通常版(Ltd.100)  ¥1,500
カセット 限定版 (Ltd.50)   ¥2,000
デジタル  ¥700

Jolt! Recordings(JOLT-6)


最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回のインタビューの模様は「第70回 Klan Aileen Radio - ゲスト 井上Y・山﨑熊蔵(kumagusu)」の内容を文字起こししたものです。
私たちの活動に興味が湧いた方は是非ご視聴ください。
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