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【インタビュー】 Burgh 『Live Performance』 リリース - オオウチソウ・ヤマシタシゲキ

はじめに

 Burghのライブアルバム「Live Performance」をリリースしました。限定100本のカセットはレーベル分が既に完売し、残りは下記の取扱店でのみ購入可能です。
3LA(東京)
Sone Records(浜松)
File-Under Records(名古屋) Flake Records(大阪)
Tobira Records(兵庫)


 ファンの方々は、ここに収められているものがBurghの全てではないことをご存知かと思います。僕が実際にライブで観て強烈に印象に残っている、空間を叩き折るような「酩酊」のイントロや、行き止まりにぶつかり続けるように半ばやけっぱちで演奏される「Homosexual」、原曲より遥かにテンポが速く、いつ瓦解するのかハラハラするような「Cult Pop」、そして名曲「ケーススタディ」その全てがここにはありません。もったいない。
しかしこれらの、Hysteric Picnic時代に残した曲が2016年のライブで演奏されなかったのも必然だったのだと今回の話を聞くと分かります。そういう意味で『Live Performance』には確かに彼らのアティテュードとやり方が収められています。
会場内で速度の違う風がぶつかり合うように音が跳ね返り、その無限の加算を遂行するように黙々と演奏するヤマシタシゲキ、キクチダイスケ、オオスミケンセイ、その中心で「ただ、それでは足りない」と叫ぶオオウチソウを観て我々は恐れ、ただ吹かれ、恍惚としました。それはきっとレコードを100dBのボリュームで再生したとて、追体験することは出来ないでしょう。

この機会に彼らの歴史を聞いてみたいと思い、インタビューを行いました。全員が1988年生まれの世代で友人でもあるため、インタビューというよりも対談に近いものになりましたが、お楽しみいただけたら幸いです。

人物紹介

インタビュイー
Burgh・・・オオウチソウ(Vo/Gt)、ヤマシタシゲキ(Gt)

インタビュアー
Klan Aileen・・・澁谷亮、竹山隆大


結成初期

澁谷「活動期間中に根掘り葉掘り聞かれるようなインタビューはあった?結成のいきさつとか」
オオウチ「いやあんまり、インタビュー自体そんなにやってない」
ヤマシタ「なんか岩井俊二監督好きですか?みたいな…」
オオウチ「岩井俊二監督好きですか?って聞かれて、いや別に好きじゃないですっていうのとかはあったけど笑」
ヤマシタ「あれが一番根掘り葉掘りだったかもしれない」
澁・竹「笑」
澁谷「いい機会だからそういうの全部聞いて残したいなと思って。俺らも知らないし」
オオウチ「うん」
澁谷「2011年に始まったのは2人でだよね。そもそも2人っていつから知り合いなんだっけ?」
ヤマシタ「いつからで言ったら中学からだね」
オオウチ「やり始めたのって2010年?」
ヤマシタ「ライブとかをやり出したのは11年で、スタジオには2010年から入ってたかも、大学卒業するのと同時くらいに」
澁谷「そうか、そのくらいの年齢だよね2010年って。俺らが上京したのも2010年だから」
竹山「そうだ。バンドは在学中にはやらなかったってこと?」
オオウチ「俺が2010年に半年留学してて。2人で始めた時のきっかけというか、留学先で体験したことが日本に帰ってきてからやりたいことに影響したっていうのはあって、ニューヨークだったんだけど、」
澁谷「ニューヨークなんだ!それは1人で行ってたの?」
オオウチ「うん、留学は一人で」

Hysteric Picnic 以前に実験的に制作していた最初期の音源

竹山「向こうのローカルシーンで見て影響受けたバンドがいたとか?」
オオウチ「いや、特定のと言うよりは、ニューヨークだからイギリスのバンドとかも演奏しに来てたりもしたし」
澁谷「ムードとかが」
オオウチ「そうムードが。それこそCBGBとかって、今は跡形もないけどやっぱりあの界隈の雰囲気は残ってて」
澁谷「あぁ。2010年てもうDeath By Audioとかあったんだっけ?」
オオウチ「Death By Audioってなんだっけ」
澁谷「エフェクター工房なんだけどその中にライブもできる場所があってみたいな、あれはブルックリンかな?」
オオウチ「ブルックリンか、多分あったのかもしれないけどその頃はまだ知らなかったな。時期的にいうと、Beach Fossilsがデビューアルバム出した頃で」
澁・竹「Captured Tracksか〜!」
オオウチ「その辺が盛り上がり始めた時に、ニューヨークのレコード屋でもガンガンプッシュされてて知ったりとか」
澁谷「じゃあ絶妙に日本に入ってくるより早かったんだね?」
オオウチ「そうだね。東京だとBig Loveとかには置いていたかもしれないけど。何年か前に潰れちゃったんだけどマンハッタンで一番影響力のあるレコード屋でOther Musicっていうお店があって」
澁谷「坂本(慎太郎)さんのとか出してるよね」
オオウチ「そうそう、そこのレコード屋で色々知ったんだよね。売れる前にAnimal Collectiveの人が働いてたり」
澁・竹「へー!」
オオウチ「とても追いきれないくらいライブやってるからとりあえずレーベルで絞って面白そうなライブ観に行ったり。Sacred Bonesとか。それまではやっぱり聴くのは60・70年代のバンドとかが多かったから、この時、わからないけど得体の知れない何かが生まれようとしている、今ここ、みたいな感覚を浴びまくって。それが音楽をやる上でかなり影響した。」
澁谷「日本にいた時からギター弾いたりとかはあったんだよね?」
オオウチ「それは普通にやってたよ。それこそ高校生の頃からジョジョ(ヤマシタの呼び名)と一緒にバンドもやってたし、全然ポップなやつだったんだけど」
澁谷「ジョジョはその頃何してたの?」
ヤマシタ「今言ってた前のバンドが終わって」
オオウチ「留学中も一応休止ってことで残してて、帰ってきてから1、2回ライブもやったんだけど、ただやっぱり自分のやりたいことが変わってるなっていうのがあって、それでそのバンドは止めて、2010年には2人でHysteric Picnicの原型みたいなのを始めたっていう感じ」
ヤマシタ「前のバンドが、割と歌モノのバンドで、良くも悪くも色んな要素がごちゃごちゃしてたのを、彼が帰ってきた影響もあってもうちょっと特化したやつをやりたいってなって」
オオウチ「そのバンドは高2くらいからやってて、シューゲイザーとかそういう感じもあったんだよね。ギター3人いたり。でもBurghのときみたいにセッションで作った曲もあってそういう曲はもっとポストパンクっぽかったりもしたんだけど、けどそれだけじゃ無かったから」
澁谷「留学中は向こうで演奏とか出来たの?」
オオウチ「一応ね、メンバー募集したりして」
澁谷「へぇ!同年代の白人とかが来るの?」
オオウチ「そうそう。楽器は持って行ってなかったから、安いアコースティックギターを向こうで買って、エレキはスタジオで借りて。よく行ってたブルックリンのスタジオはレンタルのギターとベースが両方とも木目のGuildで、さすがだなと思った。」
竹山「めちゃくちゃ良い時期のニューヨークじゃない?アメリカのインディーが面白くて」
澁谷「そうだよね。良いバンドがいっぱい出てきてた頃だよ。
それを持って帰って大学卒業くらいにHysteric Picnicを始めると」
オオウチ「そうだね」
澁谷「珍しくない?笑 バンドって自由な若者がやるものじゃないの?」
オオウチ・ヤマシタ「確かに笑」

澁谷「卒業後は就職したんだよね?」
オオウチ「いや、ジョジョはしたけど俺はしてないんだよね」
ヤマシタ「1st EP作るときのジャケどうするみたいな電話を会社の近くのコンビニまで行ってやってた笑」
竹山「電話できない会社なの?笑」
ヤマシタ「いやなんか、家庭の事情っぽい内容なら廊下で出来るけど、明らかに「ジャケットがー」っていうのは」
全員「笑」
ヤマシタ「今思えばバンドやってるって言えばよかったなとか」
澁谷「メール無かったの?笑」
ヤマシタ「電話した方が早い内容だったんだよね」
澁谷「1st EPはセルフタイトルのやつだよね?ジャケットどれだっけ」
オオウチ「女の人がマスクしてるやつ」
澁谷「あれか」
オオウチ「活動始めて2か月くらいでバーって作ったやつで、今思うとそれも確固たるコンセプトがあるわけではなく、曲調としてはまだポップさが残ってたりしてた」
澁谷「もう1枚のEPの『Cult Pops』は俺も持ってて、日本の歌謡曲っぽいムードと言うかUFO Clubみたいな雰囲気とポストパンクが混ざったような感じだったけど、ソウ君の言うポップさってそういうポップさってこと?」
オオウチ「そうだね、1枚目作った後に次のEPを作ろうとして、それが結局この前Call And Responseから未発表音源として出たやつなんだけど」
澁谷「そうなんだ!?」
オオウチ「そう、当時は出さなかったんだよね。1st EP作った後にやっぱりこれはポップ過ぎるなと思って次は完全にポップさを排除したような、甘さの全くないストイックなやつを作ろうと思って、音も全体が歪んでたり。で出来上がった時にちょっとこれは….もっとポップさが...(笑)」
全員「笑」
オオウチ「やり過ぎたなと思って笑」
澁谷「去年Call And Responseから出たのは当時作ったまんまなんだよね?」
オオウチ「そのまま。去年聴き返した時、これ一番良くね?って」
澁谷「笑」
オオウチ「だから『Cult Pops』とかは今聴くとポップさが中途半端かなと思う。もっと2nd EPくらい振り切ってた方が今の気分でも聴けるものだったと思う。上手くバランスが取れてない」
澁谷「俺も大衆性を捨てきれない人間なので、1枚も売れないようなやつ作りたいって思うんだけどいざそういうのが出来上がるともっとフックが欲しいなと思う」
オオウチ「『Cult Pops』はサウンド面だけじゃなくて曲の構成もAメロ、Bメロ、サビみたいな。だからHysteric Picnicやる前のバンドの音楽性を1番引き継いでると思う。やっぱりルーツとして聴いてきた音楽がそういう歌モノで、歌謡曲とかは実はそこまで聴いてこなかったんだけど、60年代の日本のフォークっぽいのとか好きで聴いてたから歌モノ作るってなったときにそういうのが出た。」
澁谷「60年代だとどのバンドが好き?」
オオウチ「そうだな...やっぱり1番好きだと思えるのははっぴぃえんどかな」
澁・竹「はっぴぃえんど!?」
澁谷「はっぴぃえんどが出てくるとは思わなかった。イギリスとかも込みの質問したつもりだった笑」
竹山「意外」
オオウチ「多分日本語に乗せたポップな歌物ってなると」
澁谷「そうか、ずっと日本語で歌ってるもんね。そこはこだわりがあったの?」
オオウチ「日本語にはこだわってた。サードEP以降は無意識的にそういうこだわりは無くなっていったんだけど、その頃はまだそういうのが残ってた」
澁谷「次のEP『Impersonal』くらいからはもう日本語か英語か分からないような音節になってるもんね」
オオウチ「うん。メロディも別にポップどうこうではないようなものになっていったし」


4人編成期

澁谷「海外のレーベルから出るっていう話が出たのはどのあたりの出来事?佐久間(CVN)さんも出してるレーベルからだっていう話だったけど」
竹山「そうなんだ?」
オオウチ「それはアメリカのLiving Tapesっていうレーベルで基本インダストリアルみたいなところだったんだけど。その(出さなかった)2nd EPが結構SuicideとかJesus And Mary Chainとかを引き合いに出されるような雰囲気だったから、歌はあるけど、たぶんコールドウェイヴ的なくくりで気に入ってくれたんだと思う。それで出そうってなったんだけど、結局その話は流れちゃって出なかった。それをこの間Call and Responseから10年越しにリリースさせてもらったという流れ。」
澁谷「この頃ライブはやってた?」
オオウチ「最初はとにかく音源を作りたかったからライブはやらずとりあえず出して、それを見つけてくれたCall And Responseのイアンとかが声かけてくれてライブやり始めるんだけど、その時はリズムマシンじゃなくてカセットテープを流しながらやってた。そこにベースも入ってて」
竹山「カセットを流しながらやってたの?笑」
ヤマシタ「ステージの真ん中に置いて」

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2人期でのライブ。
カセットMTRを真ん中に置いて再生していた。

澁谷「何かリズムマシンとの差別化の意識があったの?」
オオウチ「いや、最初リズムマシンでやったんだけど単純にベースが欲しいなって。Suicideとかも2人いるけど片方棒立ちで再生ボタン押すだけみたいな、あぁいうのも一周してカッコ良いなって思えるようになったというか」
竹山「メンバーを入れようとはならなかったの?」
オオウチ「その頃はまだならなかった。」
澁谷「だけど入れるじゃない?それは心境の変化があった?」
オオウチ「『Cult Pops』を出した後くらいにバンド編成でやり始めたね」
澁谷「音源を再現するには生ドラムとベースが必要だったってこと?」
オオウチ「再現っていうよりは2人でやれる限界というか、その時点で二人でやりたいことはもうやり切ったなって思ったから、次なにやろうかってなったときにバンドでやってみようって」
澁谷「新たに入った2人も全然知らない人を入れたわけじゃないんだよね?」
オオウチ「もうずっと友達で、キクチは高校からの同級生で、ドラムのケンセイに関してはHysteric Picnicの前のバンドでもドラム叩いてもらってた」
竹山「そうなんだ」
澁谷「全然違う話なんだけど高校の頃って俺とかまだ音楽的な趣味固まってないから色々混ぜこぜで聴いてたんだけど2人も普通にそういうの聴いてた?我々だとバンプ、アジカン、エルレガーデンとか。」
オオウチ「色々聴いてたけど、高校生の頃とかに聴いてたもので深い意味で影響受けてるバンドはきっとスーパーカーで、二人ともめちゃめちゃ聴いてた。彼らのラストライブでは人生で初めて「チケットください」って紙に書いて立つのをやったし。奇跡的に譲ってくれる人がいたから観れて。そしたらとにかく音でかいし、ラストライブなのにMC一切なかったりして、衝撃的だった。彼らの一切媚びないスタイルがすごくかっこよかった。あとその中で言うとエルレを通ってない。前に会って話したときそういう話したかもだけど、俺ニルヴァーナを全然通ってなくて」
澁谷「それはデカいな。だってニルヴァーナってサビあるじゃん」
竹山「笑 一曲の中でてっぺんまでもっていくかどうか」
オオウチ「分かりやすくてっぺんまで持っていくっていうのを2人ともそんなにどハマりしたことがないかもしれない。思い返してみると、特にギターの好みが俺らは合っていて、いわゆるディストーションとかファズで歪ませて、轟音みたいな、そういうのは別に嫌いじゃないんだけど自分たちのやりたいことじゃなくて。それよりはクリーンなんだけど強く弾いたときに歪むギターの音が好きで、でそれはギターだけじゃなくてベースとかドラムが合わさったときもそういうサウンドの方が好きなんだよね。タッチが分かるというか」
ヤマシタ「音の塊で塗り潰すっていうよりかは、ちゃんと6本ある弦がグシャグシャになってるのが分かるというか」
澁谷「Big Muffとかだともう「1つの音」になっちゃうしね。2人のギターの音に関しては明らかにフェティシズムがあるなと感じてたよ。ニルヴァーナの話でいえばSonic YouthとかPixiesは?」
オオウチ「うーん当時はあんまりかな」
ヤマシタ「スマパンとかに比べれば好きだけど、なんか違うみたいな感じだった当時は。逆に今の方がソニックユースとかピクシーズは好き」
澁谷「確かにBurghってアメリカのバンドの影響をほとんど感じない。スーサイドくらいで、あとは、ストゥージズとかは?」
オオウチ「ストゥージズは好きだけどそんなでもないな、影響で言ったら全然受けてない。それよりはTelevisionとかTalking Headsとか」
澁・竹「そうか!」
オオウチ「ギターが単音で組み合わさったときの格好良さが、追求したいことではあった。テレヴィジョンってやっぱ全員上手いと思うんだけど、ベースもドラムも。トム・ヴァーレインも歌いながらギター単音でちゃんと弾いてて。全員のスキルがちゃんとした上で組み合わさって、アンサンブルもありつつ勢いもあって、なかなか他のバンドにないというか。あれってリズム隊が上手くないとできない。だから、話戻るとメンバーを探すってなった時に上手くて趣味の合う人が周りにいれば誘ってたかもしれないけど、周りにうまくて趣味の合う人がいなかったから」
澁谷「いないよね笑」
オオウチ「だったらもうとことん下手で良いから、それこそキクチなんてベース触ったこともなかったし、ドラムのケンセイもスタイルとしては色んなのに対応できるっていうよりは8ビートをバカみたいにずっと」
全員「バカみたいにって」
オオウチ「野性的に笑 ストレートに愚直に同じリズムを」
澁谷「ケンセイ君はBurghに入って「こう叩け」って言われてああいうドラムになったっていうより元々ああいうドラムを叩いてたの?」
オオウチ「元々ストレート寄りではあるけどそれをさらに特化させたっていう感じ」
澁谷「最初スタンディングでフロアとスネアだけでやってたよね?」
オオウチ「模索してる段階の時は試験的にやってた。元々2人でリズムマシンに合わせてやってていきなり人力でやるってなった時に、人間ではあるけど機械みたいに叩いて欲しいと思っても、まだ人間味がちょっと強かった。その時にもっと機械的に叩いてくれって言ってもやっぱり出来なくて最初は」
ヤマシタ「ナチスみたいだな笑」
澁谷「早く捨てろ人間性を笑」
オオウチ「だったらハットとかもういいから、フロアとスネアだけで直線的で機械的で」
竹山「均一な」
オオウチ「そうそう」
澁谷「ハットって癖出るもんね。切れて欲しい所が伸びたり、ノリに癖が出る」
オオウチ「ケンセイも最初強弱が出ちゃって、強弱出さずに速く叩けって言っても最初は出来なかった。それが段々叩けるようになって、これなら座っても良いねって」
澁谷「合格だと」
竹山「笑」
ヤマシタ「人格が無くなって」

4人編成の初期ライブ。
ドラムがスタンディング。

オオウチ「バンド編成で、テレヴィジョンみたいに全員スキルがあって甘さのないリズムでっていうのも追求したい理想としてあったんだけどそれはスキル的に無理だったし、かといってスタジオミュージシャンみたいな人を入れるのも絶対違うし、下手で良いから、カッコ良いと思うものを共有出来る人間と、ベースで言ったらルート弾きで良いから」
澁谷「俺キクチ君のベース上手いなって思いながら聴いてたんだけど、彼も自分のこだわりとかがあるわけじゃなく、人格を奪われた人間の1人なの?笑」
オオウチ「そうかもしれない笑 それこそジザメリってベースの1、2弦張ってなかったんでしょ?そんな感じで。1、2弦なんてBurghで使ったこと無いし。とはいえルート弾きだから誰でもいいというわけではなくて、彼はそういうラフでかっこいいベースに対する勘がしっかりあった。」
澁谷「じゃあやっぱ2人のフェティシズムが反映されたサウンドだったんだね。2人っていうかソウ君?」
オオウチ「いや2人だよ、やっぱりギターがデカいから」
澁谷「もう一個思ったのはさ、ドラムを機械的に叩いて欲しいっていうのは、元々リズムマシンでやってたのを再現するために生まれた要求だったの?それとも元々そういうドラムが好きだったの?」
オオウチ「それは多分後者だと思う。いろいろ音楽聴いてる時も、このドラム動きありすぎだなとか、この強弱邪魔だな、惜しいなというか、このドラムもっと機械的だったらカッコ良いのになとか思ってたよ。逆に下手ゆえに単調になってるドラムの方がカッコ良いなって思ったり」
澁谷「単調なドラムって機械的だよね。女の子のドラムとかめちゃくちゃ抑揚無いけど機械的だよね」
オオウチ「それこそヴェルヴェッツのドラムなんてめちゃくちゃカッコ良いと思う」
澁谷「モーリン・タッカーね。」
オオウチ「意識したわけじゃないんだけどやっぱりバンドの美学としてアマチュアイズムみたいなのはあって、上手くなっちゃいけないみたいな。ヴェルヴェッツのカッコ良さってやっぱドラム...」
澁谷「そう思うんだ?凄いな」
オオウチ「ギターも下手ではないんだけど音作り含めて決して上手くはないし、それがあのルー・リードの曲とか歌い方と合ってるからすっごいカッコ良いと思う。んだけど俺は凄く残念なのは、ルー・リードがソロになったときにサポートミュージシャンでみんな上手い人入れちゃって。そうなるともう興味がなくなっちゃって。
バンドって最初は上手さじゃなくて友達だから始めてさ、それが何年か経ってソングライターの人がソロになって周りを上手い人で固めた時に一気にカッコ良さが無くなるみたいな。そこは自分の好みとして揺るがない所だと思う」
澁谷「そこがあの人偉いよね。あの人誰だっけ、Soft Machineの」
竹山「ロバート・ワイアット?」
澁谷「ロバート・ワイアット。あの人別に埋めてないよね?周りを上手い人で」
竹山「あーでもジャズミュージシャンとか入れてたよ。けどその人達が得意なことをやらせてはいない。ドラムだったらドン・・タンッとか笑」
ヤマシタ「やっぱ人格否定大事なんだな笑」
澁谷「やっぱり上手くても意味ないんだよね...」
オオウチ「そう上手くても意味ない。邪魔でしかない」
澁谷「上手さって画一化されてるというか、特に日本だと上手いドラムってフォームとかノリとか全部一緒なんだよね。逆にジョジョは自分のルーツエリック・クラプトンだって言ってたけど..」
竹山「そうなの!?笑」
ヤマシタ「胸を張って言えるけど」
澁谷「確かにソウ君のギターってそんなに歪んでなかったけど、ジョジョのギターに関しては結構歪んでて、リバーヴ込みで暴れてる感じがあったんだけどそれはジョジョ個人のこだわり?」
ヤマシタ「Burghの時のギターは歪んでてもそれってリバーブとアンプのボリュームマックスにしてる歪みなんだけど、単音とかギターソロっぽいフレーズの時はRAT踏んでっていう感じ。それは確かに自分の中でフィットする歪ませ方ではあった。一音一音分かる」
オオウチ「歪みを使う曲ってどんどん減ってったよね?」
ヤマシタ「減ってった。最終的に無くて良いなくらい」
オオウチ「セットリストによっては..」
ヤマシタ「RAT持ってってない。本当に1番あれば良かったのはリバーブだけ」
澁谷「かっけぇ」
ヤマシタ「クリーンでデカい音を軸にしちゃうと歪ませると引っ込んじゃうんだよね」
澁谷「痩せちゃうよね。クリーンが1番音像デカいんだよね」
竹山「灰野(敬二)さんも自分の手のストロークで音圧出すって言ってたよね」
澁谷「言ってた。ディレイとかディストーションは結局分散してるだけだからって。」
オオウチ「アルバムで歪ませてる曲って何曲かしかないよね」
ヤマシタ「通しで歪ませてる曲は無い。「トゥナイト」の間奏とか「Cult Pop」の最後の方くらい」
オオウチ「歪んで聴こえるのって強く弾いた時のアタックの破裂音みたいなのが歪んで聴こえるだけで、それはタッチの強弱でコントロール出来るから」
ヤマシタ「意識したのはスナップ効かせないっていう。普通に撫でるようにストロークするんじゃなくて全部の弦とピックが垂直に当たるように...」
澁谷「それ灰野さんも全くおんなじこと言ってた笑」
ヤマシタ「灰野さんと同じ境地に笑 自分の考えに自信が持てた」
オオウチ「今の話と繋がるんだけど、デイヴ・フリッドマンみたいな音が理想で、ピークを超えた時に歪む音像を常に求めてたというか。だからちゃんとしたライブハウスよりもフロアライブでミニアンプにちっちゃなスピーカーとミキサーでやると全員でガッとやったときに凄い歪んで聴こえる。ちゃんと音が分離せずに。そういう方が好きだった。
前にモノラルが好きだっていう話したじゃない?あれもそういう話だと思うんだけどああいうものの方がバンドサウンドとしてカッコ良い。だからボーカルとかも録音するときに叫ぶところで歪むくらいに設定して、そこが気持ち良いと思ってやってたんだけど。でもそれがずっと課題でもあってBurghの活動の後半とかになるとちょっとデカめのライブハウスでやることが増えてきて、やっぱそういうところでやると目指してる音が出せない」
澁谷「どういう点で出ない?外音?」
オオウチ「外音だね。全員の音が澄んで聴こえる。自分らが普段スタジオでやってる音とはまったく別物だし、そこを解決するのが課題だった。まだそういえば名前出してなかったけどNUMBER GIRLも1つリファレンスとしてあって、彼らってフェスとかのデカいステージでも狭い範囲に密集して演ってて、そうすると多分全員で鳴らした時に歪む感じが出るんだと思う」
澁谷「その演奏全体が歪むっていう感覚は独特だね。録音の話なら分かるんだけど、ソウ君のだとテープサチュレーション現実でも起これみたいな感覚だから」
オオウチ「客として海外のバンドの来日とか見に行っても音源はグシャってしてるのに生で聴くと全然カッコよくないこととかよくあって。狭いとこで観たら絶対カッコ良いんだろうなって思ったり多々あるし。」
澁谷「海外の人って以外と外音小さいよね。ジョンスペの前座やった時とか今まで観たライブで1番外音小さかったよ笑」
オオウチ「あー。俺らはそれが出来なくて、録音するときとかエンジニアの人とかあとライブハウスのPAの人とかにも、「もっとアンプの音下げてこっちで上げるから」って何回も何回も毎回言われるんだけど笑」
澁谷「笑」
オオウチ「毎回言い合いになるの笑」
澁谷「対バンしたときもPAの人とケンカしてたもんね」
オオウチ「「ボーカルのマイクにも入っちゃうからやめた方が良いですよ」って活動の最初から最後までずーっと言われ続けた笑 それこそ4枚目のEP『Impersonal』のレコーディングの時とか初めてバンド形態で録音するっていう時、ブース分けて録音しようとしたんだけど、やっぱりダメで。全員が同じ部屋でいっせーのせでやらないと普段気持ち良いと思ってる部分が出ない」
澁谷「じゃあ作品になってるのは実際にブースやめて1つの部屋で録ったやつ?」
オオウチ「そう。ブース分けてやるってなったときも、もうやる前からこれじゃダメだろうなとは思ってたんだけど笑 やっぱダメで。一つの部屋で音が回ってるくらいの状態の方が勢いも出せるし、レコーディングもライブも」

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『Impersonal』リリースパーティーでの写真。
ある古着屋でオオウチが目をつけていたSONYのTシャツを後日偶然キクチが購入していた。

澁谷「さっき話してくれた通り実際に出てる音はそこまで歪んでないし、あくまでも一音一音弦が弾かれてるのが分かる感じだと。でも実際のライブはめちゃくちゃ音デカかったじゃない?観てる側としたらもうウォールオブサウンドと言ってもいいくらい。そのギャップが所謂ポストパンクバンドっぽくない感じがして面白かったんだよね。ハードコアパンクの要素というか明らかに制御不能になってる部分とかあったから」
オオウチ「そこは譲れないところで、制御できるようになっちゃったら自分たちがカッコ良いと思ってるものじゃなくなっちゃうから、PAの人からこっちで上げるからアンプ下げてって言われても」
澁谷「揉めてたもんね笑」
オオウチ「よく揉める笑 PA側の言い分としてはボーカルのマイクにかぶっちゃったりっていう。でもうちらとしてはそこを犠牲にしてでもアンプは下げずにそれ聴きながらやるってやらないと、さっき言ってた制御不能になるところまで持っていけない」
澁谷「アンプのボリューム10は絶対っていうルールでやってるバンドにアンプのボリューム下げろって言ってもやりようないよね。ボリューム4とか5じゃ同じ音出ないんだから」
オオウチ「そこを分かってくれる人が少なかった」
ヤマシタ「ほぼほぼいなかったよ笑」
オオウチ「とにかくギターが聴こえて欲しかった。ギターが核になってて中心だから、ギターに合わせて他の楽器を合わせる。ギターだけは絶対犠牲に出来ないから、だから場所によってはギターに合わせられるだけのベースアンプのパワーが無かったりしたし、ボーカルが全然聴こえなくなってもギターは絶対に下げないっていうスタンスでやってた」
澁谷「それは二本とも?ソウ君のギターもジョジョのギターも」
オオウチ「うん、まぁでも俺のはそんな。こっち(ヤマシタ)のは絶対」
澁谷「しかも、それをバンマスが1人で指示してるんじゃなくて、メンバー全員が「いいからギターを上げてくれ」ってPAに楯突いてるのが感動的ですらあった」
ヤマシタ「ハイがどんだけ出るか」
澁谷「ハイへのこだわりあったよね笑」
ヤマシタ「俺のアンプはボリュームとハイがマックスでミドルとローがほぼゼロ。高音だけをみんなに届けて」
全員「笑」
オオウチ「ちょっとへたってるアンプとかだとハイが物足りなくなって」
澁谷「一緒にやった時も会場備え付けのアンプがシルバーフェイス(Fender社のアンプ「ツインリバーブ」のヴィンテージモデル)で、「これじゃダメだ」って言って当日その場でブラックフェイス(同アンプの現行モデル)借りて来てたもんね」
ヤマシタ「近くのスタジオNOAHから転がして笑」
澁谷「あの汗だくになってるジョジョ見てあぁもう今日は負けたなって思った笑」
全員「笑」
澁谷「録らせてもらった「ゲゼルシャフト」とか凄まじいハイじゃん。ハイしかないよ。ボーカル録る時、息吸うだけでメーター振り切れてたからね笑「めまい」も「ゲゼルシャフト」に合わせてくれって言ってきたからさすがだなと思ったよね」
竹山「そもそもなんでハイを増幅した音にしようと思ったの?」
ヤマシタ「それが気持ち良いから」
竹山「なんかギタリストのモデルがいたとかじゃなく?」
ヤマシタ「あぁ、そうじゃなく」
澁谷「聴いてる音源からの影響は?」
ヤマシタ「それもジャキジャキしたハイ寄りの音源が圧倒的に好きだけど、でもそれを目指してって言うよりは実際に演ってく中でリバーブとかも込みで異常なハイが回ってるのが心地良いなっていう」
澁・竹「笑」
オオウチ「そこもアマチュアイズムとも繋がってて音が整えば整うほどカッコよくなくなっちゃう」
澁谷「さっきのデカい場所だとやりにくいっていう話も同じだよね。普段は出してる音と跳ね返ってる音を同時に聴いてるわけじゃない。その二層のレイヤーが100:100じゃないと気持ち良くないっていうのはあるよね。デカいとこだと出してる音しか聴こえないし」
オオウチ「そうなんだよね」
澁谷「だから跳ね返りとか回りっていうホントに制御出来ない部分を聴いてたんでしょ」
オオウチ「そうだね。そこはバンド体制になってからより増幅された部分で、2人の時はいくらギターが盛り上がってもリズムマシンはそのままだから。ドラムがいてベースがいてそれがどんどん走ってテンポが速くなって」
澁谷「人格を奪われたあの2人のリズム隊はヤバかったよ」
オオウチ「笑」
澁谷「俺の周りのミュージシャンはクラッシュシンバルが嫌いな人が一定数いて、面白いなと思うんだけどドラムの金物に対するこだわりとかある?」
オオウチ「それは特にないかな、ハットに強弱を付けないっていうの以外はクラッシュも普通に入りそうな場所に入ってたし。逆にクランはクラッシュにこだわりある?音源聴いたときにそれこそデイヴ・フリッドマン的な響きを金物に感じたんだけど」
澁谷「いやー、特に。タケヤンの癖がそのまま録れてるっていう感じ。ミックスは逆にクラッシュをいかに下げるかみたいなところある」
オオウチ「そうなんだ、うちらはレコーディングでそれが出来なかったんだけどそこはクランと共鳴する部分としてあったと思う」
澁谷「でも話聴いてると面白いほど正反対な部分があるなと思った。俺はギターをエフェクトで歪ますし、ソリッドっていう要素もあるんだけどそれよりもローミッドのファットさっていう要素があって、ゆったりしたビートも好きだし滲み出る人間的なビートの方が好きなんだよね」
オオウチ「あぁでも聞いてて思ったけどクランは整った上で制御不能を目指してるのかなって、俺らは整ってなくて制御不能だったから笑 」
澁谷「笑」
オオウチ「だからルートが違うだけで目指してる場所は一緒だったのかなって。音作りとかは確かに違ったけど」

澁谷「俺はBurghのソリッドに特化させるんだっていうスタンスに凄い憧れた。曲をコントロールしとかなきゃっていう強迫観念があるから、全部は投げ出せないと思う俺は。そういう感覚はあった?バンマス的な」
オオウチ「それは無くてむしろ崩すくらいの感じで演ってた」
澁谷「ドラムはいるけどメトロノームは自分だみたいな感覚は無いってこと?」
オオウチ「それは無い。どれだけ意識してたかもう覚えてないけど、理想としてはどの曲も初めてやるみたいに演奏したいから、だからライブ前とかあえて練習しなかったりした」
竹山「へー」
オオウチ「適度に忘れるように。即興とまではいかないけど、そこに慣れが生まれるともうダメだから、新鮮な気持ちでやろうっていうのが大事だったからそういう意味でメトロノーム的な感覚は消そう消そうとしてた」

アマチュアイズムと初期衝動

澁谷「そういえばBurghはポストパンクって言われるけど、そのジャンル分けはどの程度的を得てると思う?」
オオウチ「ポストパンクって言われることは別に外れてないし、しょうがないかなって思うんだけど、特に2人でやってた時期はJoy Divisionを引き合いに出されることが多くて。Joy Divisionは俺の中でそこまで的を得てないなと思ってて」

澁谷「Joy Division自体は2人の中でどのくらいなの?好きランクで言うと」
オオウチ「凄い好き。でも自分たちのやってることと近いかって言われたら全然違うかなって思う」
ヤマシタ「俺はNew Orderの方が好き笑」
澁谷「俺、Joy Divisionがいつまでたっても分からないんだよね笑 好き?」
竹山「俺もまったく分からないんだよね笑 でもまっちゃん(澁谷のあだ名)mixiのニックネーム イアンカーティスだったじゃん」
全員「笑」
澁谷「あれ凄いテキトーにつけたから笑 本気で教えて欲しいんだよねJoy Divisionってどう聴けば良いのか」
ヤマシタ「Joy Divisionはやっぱライブじゃない?」
オオウチ「いや音源もめちゃくちゃカッコ良いよ。あのギターの音は真似できないなって思う」
ヤマシタ「本質とズレるかもだけどライブだとマジで弾けてないんだよ。さっきの上手い下手論じゃないけどこの人は本気レベルで弾けてない笑 なんでこの人はただの下手じゃなくて音楽になってるんだろうって思う」
澁谷「それで言ったらキース・レヴィンとかは?」
オオウチ「PILよりはJoy Divisionの方が好きかも。でもいわゆるポストパンクって言われるバンドの中で常に聴いてたのはThe Fallかな」
澁・竹「フォールかー!」
オオウチ「あれこそアマチュアイズムの体現というか笑 いつまで経っても上手くならないし」
澁谷「ちょうどさっきスタジオで聴いてたんだよね、フォール。もうこれはSyd BarrettからFat White Familyまで連綿と続く薬中のイギリス人の音楽だなと」
オオウチ「笑 さっきのメトロノームの話でいえばマーク・E・スミスはもう「俺がルールだ」みたいなところがあって、一回だけドイツでライブ観れたことがあって、それがホントに強烈な体験で、ある程度即興のパートがあるんだけど多分マーク・E・スミスの判断でというか彼が歌い出したら曲に戻るみたいな、で多分メンバーもビクビクしてる」
全員「笑」
オオウチ「ある意味ジャズみたいな感じで。マーク・E・スミスが全てをコントロールしてて、ステージうろうろしてベースアンプのボリューム勝手に上げたり」
澁谷「笑 そこまでワンマンなんだ?」
オオウチ「ワンマン。しかも目指してる場所が客の満足とかじゃなくて俺が満足すれば良いみたいな、客のこと一切考えてなくて笑 それがホントにかっこよくて、音源でもそれが出てるしだからスタンス含めてずっとカッコ良いなと思えるのはフォールなんだよね」
澁谷「今回のライブ盤に未発表曲が3つ入ってるけどこれは『テクノナルシス』以降に出来た曲だよね?」
オオウチ「以降だから2016年に出来た曲」
澁谷「当時ファンの人が撮った動画とか観て、「おー新曲だ」っていう感じで漠然と次のアルバム楽しみだなーくらいに思ってた」
オオウチ「Untitledの1、2は前よりも踊れる感じっていうのをちょっと考えてた感じがあって、1の方はダブとかを少し目指したというか。モロじゃないんだけど」
澁谷「この曲がほんとに今回の音源でしか聴いたことなくて」
オオウチ「これがBurghの最後の曲だね」
澁谷「そうなんだ。作曲方法はずっと変わらず?」
オオウチ「うん。4人になってからも基本はジョジョと2人でスタジオに入ってセッションで作って固めて、ある程度出来てからバンドで合わせる」
澁谷「セッションはその場で「今の良い」とか言って広げていくの?それとも録ったやつを聴き返して?」
オオウチ「聴き返してだね、スタジオではただひたすらやる」
澁谷「どのくらい?」
オオウチ「大体いつも3時間くらい入ってずっと」
澁谷「ずっと笑」
オオウチ「ずっと笑」
竹山「リズムは?」
オオウチ「リズムマシンずっと流して、テンポ変えたりしつつ即興的に2人でギターで合わせていく」
竹山「歌も?」
オオウチ「そうだね、歌もその時一緒に」
澁谷「歌まで入ってるんだ、俺はこの前その話聞いてたから、俺らもやろうと思って2時間ジャムやってみたけど何も生まれなかったね」
竹山「生まれなかった笑」
オオウチ「でも、そういう目的じゃなくスタジオでなんとなく鳴らしてて出来たみたいなのは無いの?」
澁谷「それはある。そういうのは全然あるけど狙って入ったら出来なかった笑」
オオウチ「それはあるよね狙って入ると出来ないっていう笑」
澁谷「普通にライブ前のセットリスト通す練習なんだけど、ウォーミングアップでタケヤンが叩いてるのに合わせてたら10分くらいやれて「今の良かったね」みたいなのはある」
オオウチ「その後の話にも通じると思うんだけど、なんでバンドを続ける気が無くなったかっていうところで、最初の頃スタジオ入ってたときには新鮮な気持ちでやってたから意図せず良いものが出来てたんだけど、それが無くなってきて。初期衝動って言って良いのか分からないけど、でもBurghイコールそれだったから、そういうのが無くなったらもうおしまいだなっていう」
澁谷「あぁ、それは2人で曲作りしてるときから感じてた?もうBurghの曲出来ないみたいな」
オオウチ「そうだね、まぁバンドで入った時もどっちもかな。とりあえず満足のいくアルバムが出来て、この次ってなったときにあんまり思い浮かばなかった。EP何枚か作ってたときは大体すぐ次の方向性があったんだけどそれがアルバムの後は無くて」
澁谷「じゃあ割と完全燃焼なんだね」
オオウチ「うーん、まぁ、「やりたいことあったけど挫折した」とかではないかな。さっきの上手くなったらダメっていうのもあったし、初期衝動がなくなってもダメだし、こういうバンドって続ければ続けるほど勢いは無くなっていくものだし、だからそこがフォールは凄くて発展させない美学みたいなさ。人間誰しも上手くなりたい、良くなりたいって思うけど。でも俺らがあのまま続けてても普通に上手くなるか、無理やりアマチュア感にしがみつくかになっちゃったと思うから」
澁谷「それは悲しいね」
オオウチ「このライブ盤に入ってるライブとかも当時はアルバム出して1年経ってて、結構葛藤しか無かった時期なんだけど、聴き返すとその葛藤が良い感じに突き放した感じになってて」
澁谷「曲への愛着の無さが?」
オオウチ「そう笑」
澁谷「初期衝動が無くなったからっていう理由で辞めるの凄いな、凄くない?」
竹山「凄い笑 あるべき姿って感じ笑」
澁谷「でも初期衝動って復活するよね?モードが変わるとバンドのモード変わったわ、っていうのでそれでなんとかやってる感じだよな俺らは」
竹山「そうね笑」
オオウチ「元々全員友達だったし、なんとなく始まってなんとなく終わったっていう感じ。でも4年位経つのにまだ聴いてくれる人がいるということは嬉しい。意外とまだ忘れ去られてないんだなって。」

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フジロック、ROOKIE A GO-GO出演後



Jolt! Recordingsは東京のインディレーベルです。Klan Aileenの澁谷亮と竹山隆大が運営しています。日本のアンダーグラウンドシーンのロックバンドの作品をリリースしています。ワンコードと即興と世界中の民族音楽とポップソングが好きです。

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