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Tascam 38

去年の2月にツバメスタジオの君島さんに軽い気持ちで「使ってない機材あったら安く譲ってくれませんか」とDMしたら、「良いよ〜」と返事が来たのでやったーと思っていたら「実家に使ってないオープンリールもあるけどいる?」という提案をいただき喜びの舞いを踊っていた。
オープンリール。しかも8トラック。夢。
たとえばバンドの1発録りだったなら、DAWで録ったあとサミングトラックなどを使い8トラックにまとめれば、それをテープに録って戻す。そしてもう一度ミックスする。アナログとデジタルのハイブリッド。やれる。
もちろんそんなことせずにごまかし無しのテープ一発録りとかもやってみたい。
kumagusuとのスプリットこれで作ろう!
などと妄想を膨らませていました。
そうこれは2019年2月の出来事。

27kgもあるそれを家に運び入れた時はついに、ついに。と思い一緒に寝ようかと思いましたが重過ぎるのでやめました。ヤフオクで買った空リールが届くまでの間、テープのセットの仕方などをYouTubeで予習し、スネークケーブルを作り(これもケーブルはいただきました)
空リールも届き、これで俺はランダムアクセスメモリーズくらい良い音でスプリット盤を作る!と思い電源を入れ再生ボタンを押すがリールが回らない。
早送りも巻き戻しも出来ない。
もちろん録音も出来ない。
何か初歩的なミスをしているんだろうと思い君島さんに確認のDMを送るも、どうやら使い方は合っている。

.........

そうか、俺にはまだ早かったか、と思うのと同時に、こんなに簡単に手に入っちゃダメな気がしてたんだよなーと心のどこかで思っている自分もいました。
タダで貰ったCDって聴かないんだよなー。

そこから僕は頑張りました。
これまでエフェクターの改造やちょっとした修理をする時に色んな親切な人たちがネット上に残してくれた情報を参考にしてきましたが、今回は僕がその種類のソレを書き記そうと思います。
Tascam 38という機種のある1つの故障パターンについての記載。
一体誰に需要が?

はい、まずは分解を試みましたがフロントパネルのはずし方すら分かりません。
これは、多分誰がやっても最初は分かりません。見えてるネジ以外にもう一箇所、テープスピードを調整するノブの根本を留めている「ナットとネジが一体になったようなもの」を外さないといけないからです。気づくのに1ヶ月くらいかかりました。

外したは良いものの、中はメカ部で機械部は無く、
じゃあと思いバックパネルを外すと大きい基盤が現れたので、恐る恐るその基盤を留めているネジを外すとヒューズが10本くらい並んでいました。

その中の1本、マニュアルによるとF502という場所のヒューズが切れていることに気付いたときによーし勝ったと思いました。これを交換すれば直ると思ったからです。
早速ヒューズを買って差し替え、電源を入れる。するとそのヒューズが一瞬で溶断していきました。もう1回ヒューズを交換して電源を入れる。結果は同じ。
無知ですね。

ヒューズというのはその機械を守るために身代わりに切れるもので、何から守るのかというと過大電流からです。過大電流がなぜ流れるかと言うと回路のどこかがショートしているからです。
つまり問題の原因はヒューズが切れていることではないのです。

でもこれにより情報が増え、Tascam 38 F502 Fuse Blown で検索が出来るようになりました。こういうのはほぼ海外フォーラムにしか情報がありません。

そしてなんと同じ不具合に困っている人を見つけられました。(いるんですねー)

そこで「電源ボードの電解コンデンサーが古いから交換した方が良いよ。液漏れしてない?」とか「テープスピードをコントロールしてるポットが良くない」とか「テンションアームの調整がうまくいってないとそのヒューズ切れますよ」などの情報を得たので、電源ボードに乗っている全ての電解コンデンサーを買いに行きました。秋葉原に。
いやー何回行っても秋葉原は楽しい。

帰って全て交換してみましたが、原因は電解コンデンサーではありませんでした。
じゃあテンションアーム見てみるかと思いましたが、メカ部が原因でヒューズが切れるなんてことがあるのか?とちんぷんかんぷんすぎて何を調べれば良いのかすら分からず、とりあえず一通り目視で断線とかハンダ浮きとか焦げとか爆発してるコンデンサーが無いかなどを調べましたがよく分からず半年くらい放っておきました。勝手に直るかもしれないし。

数ヶ月に一回思い出したように修理を試みましたが、何も新しい発見が出来ず完全に諦めて、別のオープンリールをヤフオクで物色したりもしました。今思うとテスターを持ってなかったのがよくなかった。(使い方がよく分からなかったので敬遠していた)

しかし、今年に入りある予感がありました。

「多分近いうちに直るな」

まだ何も原因は見つけていません。

でももうすぐ俺誕生日だし。

その思い込みからもう一度海外フォーラムを調べつつ、テスターを注文し、そしてダメ元で名古屋のエフェクターメーカーELECTROGRAVEの小池さんにDMで聞いてみました。
症状とマニュアルPDFは添付したものの、実物も見せず触らせずに故障箇所を教えてくれなんて、なんてナンセンスなDMなんだろうと恥ずかしかったのですが、

小池「あー、これ多分電源ボードのトランジスタがショートしてますね」

先人ってすげぇ!

調べた結果トランジスタはショートしていなかったので、その結果を伝えると今度は
「基盤の14番から伸びてるケーブルを切って電源を入れてみてヒューズが切れたら電源ボードがおかしい。ヒューズが切れなかったら電源ボードは正常で、ケーブルが伸びてる先に原因があります」

かーっけぇ

14番からケーブルを外し電源を入れる。ヒューズは切れない。
ヒューズが切れない....!
今まで電源を入れるのと同時にヒューズが切れていたので、電源を入れてもヒューズが切れないという新しい挙動に鳥肌が立ちました。
電源ボードに原因は無い...!
この助言がなければ一生原因を見つけられず、直せなかっただろうなと思います。

ただそのケーブルが伸びてる先が入り組み過ぎていてよく分からない。唯一追えた先にあったのはテープスピードをコントロールする可変抵抗。そうだ海外フォーラムにも書いてたな、これか...? 調べ方が分からない。交換すれば分かるだろう、でも完全に分解しないと交換出来ないところに付いてる....多分違う。これは多分原因ではない!そうであって欲しい!

そうこうしているうちに誕生日を迎え、いよいよ、これはもういよいよ直る気がするわと再度海外フォーラムを調べていると、ある人がこう書いていました。

「アウトプットセレクトボード内のトランジスタQ204もしくはQ203がショートしているとF502のヒューズが切れます。このマシーンが急に動かなくなった場合はまずこの2つを調べてみてください」

ぴっしゃーーー!!ゴロゴロダーーン!!ダーン!!

っしゃおらぁああ!

このアウトプットセレクトボード。見つけにくいところにあります。
普通に外装を外しただけでは見えないところ、マシーンの底蓋を外し、各チャンネルボードを全て外してやっと見つけられる場所です。

各トラックボードが並んでいる様子
全部外すと下の写真みたいになります。

非常に分かりにくいと思いますが奥に見えるのがセレクターボードです。

導通モードでQ203にテスターを当ててみる。正常。
Q204にも当ててみる。


「ピーーーーーー」

長い戦いが終わりました。
長かった。。

実は「なんか直る予感するなー」と思った今年の3月頃、即行動と思って
Tascamのサポートセンターに電話して「Tascam 38の直し方を教えてください」と聞いてみたことがあったのですが、
「それはちょっと技術者じゃないと....」「そうですよね、ちなみに修理は...」「オープンリールは1年半待ちです....」というやりとりをしたのですが、どうですか、1年2ヶ月...! オフィシャルより早かったじゃないか....!

でもまだ油断は出来ないな、故障箇所はここだけじゃないかもしれないし。
さて、注文したトランジスタは届いたけどまだ浮かれないぞ。
お前浮かれてたら半田ごてで全ケーブル焼き切っちゃうかもしれないかんな?

交換し、組み立て直し、電源を入れる。

動くんだなこれが。

直ったんだな〜。

見よ。この雄姿。
ただラッキーで貰ったオープンリールだったらこんなに自慢げに写真を撮ったりしなかっただろう。これはやっと俺の物になった。

いやーもしホントに修理目的でこの記事にだどりついた人がいたら無駄に物語調ですみませんね。

君島さんこんな最高な機材を譲ってくれてありがとうございました。
小池さん何時間もDMで一緒に原因を探してくれて本当にありがとうございました。






あの時助けていただいたJolt! Recordingsです