見出し画像

Boris Australia Tour Report

KKV Neighborhood #138 Tour Report - 2022.07.01

2022年はこのコロナ禍に沈んだ2年間の憂さを晴らすように世界中のフェスティバルが開催されている。4月のコーチェラを皮切りにバルセロナのプリマベーラ、先週にはついにグラストンベリーも開催し、いよいよ本格的なフェス・シーズンがスタートした。そんな状況の中Borisが2年ぶりとなる海外公演を行なった。海外での活動の比重が大きいBorisとしてはやっと本来の姿に戻るための最初のステップとなったのではないだろうか。とはいえ、この日本に釘付けにされた2年間もバンドは動きを止めたわけではない。音源のリリースはこれまでと変わることなく、いや、むしろ加速したと言っていい。そして今年、バンド結成から30周年というアニバーサリー・イヤーには最新の『Heavy Rocks』を含めBorisらしく数々のリリースと北米ツアーが控えている。その最初のアクセルともいうべくオーストラリア・ツアーの記録をチェックしてほしい。

Australia Tour Report by TAKESHI

今年の6月シドニー、メルボルン、タスマニアの各都市で開催されたフェスに招聘され、Borisは約2年半ぶりに海外ツアー&ライブを行なった。最初から結論を言ってしまえば「最高」の一言に尽きる。新型コロナによって長らく分断や停止を強いられてきた状況から日常を取り戻し、以前と同じように、いや、さらにホットな空気に包まれライブを楽しみ、オーディエンスと交歓することができた。自分たちもファンもお互いが待ち焦がれていた新たな始まりだった。以下、簡易ではあるが現地の雰囲気などを書き記して行こうと思う。

(尚、渡航・帰国にあたっての申告や検査などは現状も厳格なプロセスを経て行われています)

2022年は結成30周年ということで、いくつかのスペシャルな企画を計画している。
その一つが、国内屈指のベーシストTOKIEさんを迎えた特別編成で、2002年のアルバム『Heavy Rocks』フルセットを新たな音像でプレイするというものだ。TOKIEさんのGrooveが全ての曲を新しく生まれ変わらせ、Borisメンバーを更に覚醒させる。日本では既に5/15にライブを行なっており、今回のオーストラリアで初めて海外にて披露する形となった。

6/5に参加したVivid Sydnyは、毎年5~6月かけて開催されているフェスティバルで(2020, 2021年はコロナ禍のため中止)街全体と複数の会場を使ってのインスタレーション、プロジェクションマッピング、音楽を含む総合的なアートの祭典だ。いわゆるロックフェスとはだいぶ趣が異なる。

今回どのフェスも、複数会場で同時開催の形式をとっておりBorisのワンマン、もしくはヘッドライナーとして会場が用意されている。Vivid Sydnyではオペラハウス内にある「Studio」での公演、ソールドアウトのショウだった(Vivid Sydneyに出演するのは2回目で、2010年のルー・リードによるキュレートでも招かれている)。

Photo by Daniel Boud


Photo by Daniel Boud
Photo by Daniel Boud


Photo by Daniel Boud


Photo by Daniel Boud


Photo by Daniel Boud


ライブが始まり、ステージからの風景にまず驚く。フロアーは人数制限はなく2階席までパンパンの状態で、そして観客はほとんどがマスクを着用していなかったこと。
確かにオーストラリアに着いた時点で、街ゆく人々はマスクをしておらず、自分たちだけが取り残された古い人間のような気がして、慣れるまで不思議な気分を味わった。
ライブが始まれば「そうだよな、元々これが当たり前の風景だったんだよな」と2年ぶりのあの感覚を身体が取り戻していく。決して大げさではなく、困難な状況を乗り越えた、新しい時代が始まろうとしているのだと実感したのだった。

30th anniversary “Heavy Rocks” set with TOKIE
2022/06/05 @VividSydney
1. Heavy Friends
2. Korosu
3. Dyna-Soar
4. ワレルラド
5. Soft Edge
6. Rattlesnake
7. Death Valley
8. 孤映
9. 鐘
10. 1970
encore
11. Dronevil
12. Reincarnation Rose
13. 決別



次のメルボルンのフェスまで数日空きがあったので、シドニーからドライブしてブルーマウンテンを観にいったり、夜のビーチを散策したり、動物園でコアラを間近で観察したりと、久しぶりの海外でのオフを堪能した。連日移動の慌ただしいツアーも今となっては懐かしいのだが、コロナ禍で疲弊した精神に今必要なのは、こういった潤いを高める時間なのだ。

6/10、メルボルンで開催のRISINGに出演。このフェスティバルもVivid Sydney同様、音楽だけに限らず、演劇、パフォーマンス、映像、インスタレーションなどのアートを州政府がバックアップしているフェスだ。このフェスにはBoris以外にもBuffalo Daughterなど複数の日本人アーティストが出演していた。
メルボルンまでの移動はフライトが遅延したり、スーツケースが一つ届いていないことが判明するなど、中々にストレスフル。まだまだコロナの影響で空港業務は正常に機能していないようだ。

自分たちがライブを行なったのはMax Wattsという会場で、以前はHi-Fiという名前で、2007年にSUNN O)))とのオーストラリアツアーで演奏したことがある。Max Wattsになってからの2017年にもPINK10周年ツアーでショウを行なっていて、その写真が会場入り口に大きく掲げられている。この日もソールドアウト。


たくさんのオーディエンスがこの数年間自分たちを待ち望んでいてくれたのだと思うと、とても感慨深い。Borisのライブにはシュガー吉永さんはじめBuffalo Daughterのメンバーも観にきてくれ、海外での”Boris本来の姿”を現地で楽しんでもらえるというのはとても重要なことだ。メルボルンは観客のノリは毎回ワイルドで、観客とのコールアンドレスポンスに自分たちもアツくなっていく。曲間ではTOKIEコールも飛び出し、祝福感、祝祭感溢れるこのステージ上こそが自分たちがいるべき場所、これからもずっと残して行かなければならない場所なのだと実感する。

翌日はタスマニアに向けて移動。オーストラリアツアーは、主要都市があまりにも離れているため、アメリカやヨーロッパのように近隣の街を車や列車移動して、連日細かく繋げていくことができない。よって全体のツアー期間は短くなるが、毎晩ショウが終わると機材と私物をホテルでパッキングし、翌朝空港から次の都市へと毎日フライトすることになり、移動に関しては非常にタフだ。

今、オーストラリアは冬だが、タスマニアはさらに南下するためかなり寒い。
緯度のせいか太陽光線が強く感じられ、空気が綺麗なこともあいまって、風景の解像度が異様に高く見える。サングラスなしでは目が灼かれ、疲れてしまう。
ここで開催されるDARK MOFOも州政府がバックアップする総合アートフェスティバルだが、そのタイトル通りダーク&ヘヴィが通底したテーマで、そういった作風を持つアーティスト、バンドが多数出演する。
自分たちは2013年に出演していて、今回は2度目だ。
ホテルには旧知のアーティストも多く同宿していて、お互いコロナ禍を乗り越えての再会を喜び合った。初めて会う人も多かったが、話してみると実は知り合いの知り合いだったりして、結局出会うべき人とは必然と繋がっていくのだなと改めて認識。


会場のOdeon Theatreは入り口はこじんまりとしているが、地下へ進むとバルコニーもある大きなフロアが広がっている。会場外の壁にはWataのアーティスト写真バナーが他のフェス出演者と共に飾られていて、やはり海外でのWata人気はメンバー自身驚くものがある。この日もソールドアウト、外の寒さが嘘のような熱気溢れるショウだった。久しぶりの海外で、新しい試みを新しい編成で行なった今回のツアーは自分たちにとっても新鮮尽くしのものだった。まだまだ困難な状況の中、コラボレーションに協力してくれたTOKIEさん、帯同してくれたスタッフには本当に感謝したい。この体験は明らかに自分たちを次のフェーズへ押し上げ、2年ぶりに吸収したオーディエンスからのパワーが次作への糧となるのは間違いない。新しい世界への第一歩として大きな意義を持つツアーだった。


Boris30周年記念アルバム第二弾『Heavy Rocks』発売決定!
国内盤限定スペシャルブックレット封入
Boris / Heavy Rocks
8月12日発売
KKV-148
CD
2,800円税込
1. She is burning
2. Cramper
3. My name is blank
4. Blah Blah Blah -お前は間違っていて俺も間違っていてそれは正しさ-
5. 光 -Question 1-
6. Nosferatou
7. Ruins -瓦礫の郷愁-
8. 形骸化イマジネーション -Ghostly imagination-
9. 幸福という首輪 -Chained-
10. (not) Last song

予約受付中!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?