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サカナクションと「夜」についての統計的考察


夜の国のみなさんこんばんは。

先月末、サカナクションが初のベストアルバム『魚図鑑』をリリースしましたね。映画「曇天に笑う」とのタイアップ曲でもある待望の新曲『陽炎』movie ver. を含め、歴代の名曲がたくさん詰まったこのアルバム。多くの人が鬼リピートしていることでしょう。曲目が非常によく練られていますね。

と言いつつも私は誠に恥ずかしながら、完全生産限定版の予約を怠ってしまい、Apple Musicの配信でしか聴けていない状況です。ファンの風上にも置けませんね。

さて、今回はこの『魚図鑑』にちなんで、サカナクションの過去の名曲をざっと振り返っていこうと思います。

しかし単に振り返るだけでは面白くありません。そこで、サカナクションの世界観を象徴する”ある1単語” に着目しようと思います。

サカナクション好きなら誰しも一度は思ったことがあるでしょう。

サカナの曲、『夜』って単語がよく登場するけど、実際どのくらい入ってるの?

と。

あまりにサカナの歌詞には「夜」が出て来るので、もはや全曲に入っているのではないかと思ってしまうほどです。

そんなに夜が出て来る理由は、全ての歌詞を担当しているギターボーカルの山口一郎さんが大好きな言葉だから。

twitterのプロフィール欄を観ても、位置情報に「夜の国」と書いてありますね。

実際歌詞の通り、サカナの曲は夜に聴きたくなる曲が非常に多い印象です。(といっても、夜に散歩しながら聴きたい曲、ベッドの中で眠りにつく前に聴きたい曲などバラエティがありますが)

ということで、今回はサカナクションの既存楽曲(全82曲)のうち、歌詞に「夜」という単語が含まれているのは何曲か、調べていきます。

細かなルールとしては

・「夜(よる)」という単語のみカウントする。
・「今夜」「夜中」などの熟語はカウントしない。
・カタカナで「ヨル」はカウントする。

・インスト曲を含めた曲の合計数を、( )の中に示す

1曲のうちで「夜」が何回登場するかも数えます。そこで、
・繰り返し部分でも、その都度カウントする。

以上の項目に従って数えます。

なお、基本的にアルバム単位で1stから6thまで数えます。
そしてシングルのカップリング曲はカップリング集「懐かしい月は新しい月」収録曲としてまとめて扱います。
それ以降の「グッドバイ/ユリイカ」から「陽炎」までの曲は最後にまとめて扱います。

それでは1stアルバムから順にご覧下さい。



1st『GO TO THE FUTURE』

1stアルバム収録曲の中で「夜」を歌詞に含む曲は

以上の表のような結果となりました。

歌詞に夜が入ってるのは8曲中4曲。意外と少ない

「三日月サンセット」とか絶対入ってると思っていましたが、よく考えたらこれは夜じゃなくて夕暮れ時の曲でしたね。


「あめふら」には2回登場します。まずは冒頭

僕はひとり 淋しいをひらり肩透かしました

の「淋しい夜」、そして少しあとの

嘘がほらの海のよう 揺れる揺れる正しい言葉

の「夜の海」で出てきます。「こと〜ばぁ〜↑」のファルセット好き


「開花」では

今はまだ煙のようだ 揺れるが帰ってくるよ

が二度繰り返されるので、「揺れる夜」で2回です。


「白波トップウォーター」では冒頭

淋しいの中で蹲って泣いてたろ

1,2サビ終わりの

悲しいが明ける

の計3回登場します。

全体的に「淋しい」とか「悲しい」とか、ネガティブな形容詞とともに多用されています。

この曲は個人的にはサカナクションのなかでベスト3に入るくらい大好きです。


そして最後の「夜の東側」では冒頭の印象的な詞

テレビの灯りだけでを読んでた

1サビ前の

立ち止まったに話しておこうか

そして1,2サビの冒頭

さよならするの東側

の計4回登場します。さすがに曲名から夜が入っているだけあって多いですね。
「夜を読む」とか「立ち止まった夜」とか、この曲における夜は何か親しみやすさ距離感の近さを感じます。一郎さんの独特のセンスが光っています。

なおカウントはされませんが、ラスサビ前の

間飛行の続きは夢の中

で熟語としても「夜」が使われています。


続いて2ndアルバムです。

2nd『NIGHT FISHING』

「マレーシア23」はインスト曲なので、それを覗いた9曲中5曲の歌詞に「夜」が含まれていました。

1曲目「ワード」には実に13回も夜が登場します。というのも、

が が僕らを試してるな
が このが僕を試してるな

という印象的なパートが3回も繰り返され、さらに

透き通る君の声 の風に消えた

でダメ押しするためです。1曲辺りの「夜」の個数で言えば、全曲のうち最多です。そりゃそうだ。

「この夜が僕を試してる」ってフレーズ、印象に残ります。そう思ってしまうような夜は私たちの人生で何度あるのでしょうか。


ここで残念ながら、ライブ化けすることで有名な「サンプル」は夜0回でした。「息をしていた」というだけのサビでこんなにも盛り上げられるのはサカナクションだけ!



またしても名曲。「ナイトフィッシング」は夜7回です。歌い出し

いつかさよなら僕は に帰るわ 何もかも忘れてしまう前に

これはサビなので3回繰り返されます。そして1サビ前

何もないに 何かあるような気がして 君に電話してしまうんだ いつも

一気に曲調が変わるコーラス部分(2回繰り返し)

ラララ きっと僕が踊り暮れる の闇に隠れ潜む

そしてラスサビの締めくくり

このが明け 疲れ果てて眠るまで まだまだ

一郎さんにとって夜とは「帰る場所」であり「遊ぶ場所」、いわば心の拠り所なのだろうな、という気がします。

夜釣りを意味する「NIGHT FISHING」は2ndアルバム名にも、それからサカナクションが立ち上げた音楽レーベル名「NF Records」にも使われています。


「雨は気まぐれ」:4回

嘘か罠 見きれず 浮かれられないの秘密
技は罠 優しく 手招きするの隙間
何もかも忘れて 息を飲むのさ の隙間
離れられないはすぐに過ぎて すぐ過ぎ去っていくけど

初めの3つはメロディ的に同じ位置に使われています。

最も盛り上がるラスサビに「夜」が登場することも多いですね。それだけ切り札的にこの言葉を扱っているのでしょう。


余談ですが、アルバムでの「雨は気まぐれ」から「マレーシア23」への繋ぎは素晴らしいので是非聞いてみて下さい。


「新しい世界」:2回

が忍び足 すり寄る

すーりよーるぅ〜⤴⤴ 好きです。

でもやっぱり やっぱりの光が凍りつけば

6thで顕著ですが、サカナクションのアルバムの最後の方の曲は、"夜明け" 的なイメージがちらつくものが多い印象です。1アルバムを通じて夜の始まりから終わりまでを表現しているのでしょうか。


「アムスフィッシュ」:1回

僕の心はを泳いで 歩き疲れた君の隣にたどり着くよ

とても落ち着いた曲調のアムスフィッシュですが、じわじわと盛り上げていき、コーラス前の最後の詞で満を持して「夜」が登場します。大好きな歌詞です。


3rd『シンシロ』

ファンの間でも屈指の名盤と名高い『シンシロ』ですが、なんと「夜」を含む曲の割合も全アルバム中最高の"9/10”!

「黄色い車」とインスト曲「minnanouta」以外の全曲に夜が入っています。

サカナクションは「夜」の多いアルバムほど名盤の法則でもあるのでしょうか。


「Ame (B)」:9回

アメ フルヨル

1曲目から非常にプログレみのある攻めたアルバムです。「夜」ではなくカタカナで「ヨル」表記ですが、繰り返しによって数を稼ぎました。


「ライトダンス」:1Aメロを2回繰り返すので計3回です。

手に不安 握り見た景色がデジャヴした が来た 街の裏
手に不安 握り見た空には落ち葉焚 が来た 街の向こう

サビのコーラス \でも明日が〜見えなくて〜/ がライブだとめっちゃ楽しい曲ですね。


「セントレイ」:2回

サカナ初のシングル曲「セントレイ」にもやっぱり夜は入っていました。

まずは冒頭

汚れた机を僕はに片付けた 何かが変わるかな

(たしかに深夜ほど部屋の掃除が捗るのは何故でしょう)

そして1サビ

今煙の中を歩き続けて 淋しくなるを抜けて

他にも熟語としては「夜間飛行疲れの僕は宇宙」や「僕は行く 夜中を目で追い続けて」で夜が出てきます。

最近とは全くイメージの違う初期のMVも、また違った味わいがあって良いですね。


「ネイティブダンサー」:1回(2サビ前)

言葉が何遍も 何遍も繰り返しに流れた

みんな大好きネイティブダンサー。1サビでは何遍も繰り返し回り始めていた言葉が、最後にはやっぱり夜に流れています。お得意様なんでしょうね。

この辺りから、普通のバンドとは一線を画す独特なMVを作り込むようになっていきます。

余談ですが、やはりこの次のインスト曲「minnanouta」へのダンスミュージックの流れが最高です。「どこが"みんなのうた"だよ!?」という感じですが。


「雑踏」:1回(1Aメロ)

を駆け抜けていく僕はまるで最終電車 ひとりで揺れる

この曲はサビで雰囲気がストンと変わるところが最高です。


enough」:1回

それは蜃気楼 僕はの船 浮かび消える蜃気楼 聞こえてる悲鳴

ライブではマイク横の照明1つ以外真っ暗な演出をするほど静かな序盤、一気にコーラス付きのダンスミュージックになる中盤、そして上記歌詞の激しいロック調から最後にはまた静寂に戻る…という非常に豊かな展開を持つ曲です。

「嘘です」という印象的な歌詞も含めてとても好きです。


「涙ディライト」:6回

1Aメロ

それとない日々で今 に待ってる涙

3回繰り返されるサビの後半部

行けよ が僕を通り過ぎてしまう前に

2Aメロ

淋しさは静かに に鳴いてる涙

そしてラスサビ

離れ離れの 半ば過ぎのひとり言には

王道の4つ打ちダンスロックなのに、凡庸どころではない超名曲に仕上げられるのがサカナクション。3rdアルバムの曲全般に言えることですが、草刈さんのベースが格好いい。これは曲制作の方法を一郎さん主導から各メンバー主導に切替えたことによる影響ではないかと思われます。

(ベースと言えば、「夜」が入ってなかったので残念ながら飛ばしてしまった「黄色い車」ですよね。)



「アドベンチャー」:2回

盛り上がり必死のライブ定番曲。まずは1Aメロ

Utopia の檻を抜け出すための秘密

そしてラスサビに夜があります。

最後くらいに紛れて遊ぶ 鳥目のない鳥になり外を飛ぶんだ

この「鳥目のない鳥になり」という詞が好きです。


「human」:3回

1Aメロ後半

心が揺れてたのはの風に吹かれていたから

1サビ

疲れたこのの悩み 今でも確かに

2サビ

疲れたこのの中で 慰め合えたら

3rdアルバムの最後を飾るこの曲では、「夜」とはなんだか雑然とした扱い難い存在になっているように感じます。



4th『kikUUiki』

「アルクアラウンド」のヒットもあり、いよいよメジャーシーンで注目され始めた4thアルバムでは、半数の曲に「夜」という言葉が使われていました。


「YES NO」:1回(サビ前)

もっと悩めるに 帰りたくても帰れないから

ここだけ切り取ると超過労働の曲みたいですが、違うと思います、多分。

「あ⤴いことば代わりの」というサビのファルセットが癖になる曲です。


「アルクアラウンド」:4回

さて、この斬新な長回しMVでサカナクションを一気に有名にした代表曲「アルクアラウンド」の登場です。一郎さんが"売れる曲を狙って"書いたシングルだけあってか、切り札「夜」が4回も使われています。

歌始まりの冒頭でまず2回

僕は歩く つれづれな日 新しい 僕は待っていた
僕は歩く 新しいを待っていた

そしてサカナの曲では珍しいBメロでももう1回(2Bで繰り返し)

覚えたてのこの道 の明かり しらしらと

以上、「夜」を含む部分だけ抜き出しても分かるように、まさに大衆受けを意識的に狙っている曲です。「新しい夜」「夜の明かり」など、ポジティブな言葉と「夜」が結びつくことはサカナクションでは珍しいことです。

それでも、もちろん「大衆に媚びている=質の低い曲」かと言うとそんなことはなく、どの楽器のどのパートも格好いい気合の入った曲に仕上がっています。

まさにアンダーグラウンドとメインストリームの間を自由に泳ぎ回る魚のようです。


「シーラカンスと僕」:2回

冒頭部Aメロ

眠れずにテレビをつけたら に見たニュースと同じで 淋しくなったんだ

間奏明けの2サビ

どこかへ走り出しそう さよならする深いから

個人的にサカナのなかでトップ3に入るほど大好きな曲です。

夜の街をうろつく"僕"をシーラカンスにたとえ、若さにもがく様子が鮮やかに歌われていると思います。「夜」は入っていませんが、特に以下の最後の部分は聴くたびに心を揺さぶられている大切な詞なので紹介させて下さい。

曖昧な若さを 無理に丸め ゴミだとした
どうか僕が僕のままあり続けられますように



「表参道26時」:2回

サカナクション初の、女性メンバー(とギターのモッチ)によるサビを採用した名曲。そのサビ部分に「夜」が使われています。(1サビ2サビ繰り返し)

つまらないに 話し始めたのはなぜ

歌詞として明記されていない、裏歌詞とでも呼ぶべき「2 4 6 左折 そう聞こえた」の部分も格好いいですよね。


「壁」:2回

ゆったりとしたバラード調で始まる、歌詞が意味深な曲。Bメロで2回夜が使われています。

冷たい風が吹く夜 いつも僕は塞ぎがちになる
冷たい雨が降る夜 いつも君がそばにいて見ててくれた気がしたんだ



そして4thの最後を飾る曲にして、一郎さん本人が「#サカナクションのこれ一曲」で選んだ超名曲「目が明く藍色」には夜が含まれていませんでした。

ファンクラブ会員による投票でも1位になっている、文句なしにサカナクションを象徴する曲です。まさかとは思いますが、万が一聞いたことが無い人がいたら今すぐ聴いて下さい。人生の損失です。


5th『DocumentaLy』

「夜」の割合は4/10と他のアルバムに比べて少なめ。特に先行シングル曲であり代表曲の一つ「アイデンティティ」に含まれていなかったのが痛いですね。(何が痛いのか分かりませんが)


「ルーキー」:1回

4thシングル曲であるルーキーには、1Aメロで一度使われています。

眠れない 眠れないを すり減らして爪を噛んでた

ルーキーはシングルで発表するにしては攻めた曲調ですが、歌詞が非常に文学的なことでも有名です。特に

消し忘れ 消し忘れたライト 街は花びら さよならの風
悲しみ 悲しみと同じ 君の歩幅で歩きたいのに

この部分の痛切さは一郎さんしか書けないだろうな、と思います。

なお、ラスサビ前の間奏に「夜」を含む裏歌詞

見えないの月の代わりに 引っ張ってきた青い君

がありますが、ここは歌詞表記されていないので数えませんでした。

何度も映像がループする難解なMVも必見です。


「エンドレス」:4回

歌詞を書くのに7ヶ月かかったことで有名なエンドレス、1,2サビで2回ずつ「夜」が使われています。

見えないに色を付ける デジャヴしてるな
見えないに色を付ける 声は誰だ

サカナクションの中で最も歌詞が好きな曲と言われたら、自分もやはりこの曲を選びます。

誰かを笑う人の後ろにもそれを笑う人
それをまた笑う人
悲しむ人

自分はよくインターネット上で不毛な罵り合いや議論を見てしまい、不快な気持ちになった時の抗うつ剤としてこの曲を聴きます。最後の詞にあるように「見えない色をつけるのは僕」なのだから、と一旦気持ちをリセットできます。


『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』:4回

既にタイトルから「夜」が使われていますが、タイトルそのままのサビ歌詞で4回カウントされました。

バッハの旋律をに聴いたせいです こんな心

そう言えば自分のサカナクションとの出会いは、Mステで聴いたこの曲です。あの時は「何だか攻めてて怖そうな人たちだなぁ…」と思っていました。


アルバム最後の曲の前に、「夜」は入ってないけど自分が好きな曲を紹介させて下さい。

「years」

yearsの上記MVは、5thアルバム発売時点では存在していませんでした。あとで紹介するシングル曲のカップリングとRemixをまとめたアルバム『懐かしい月は新しい月』発売時に撮り下ろされました。

正直、MV無しで聴いていたときはこの曲をそんなに好きではありませんでした。でもこのMVが非常に印象的で、また3.11を受けて一郎さんが書いた曲であることを知り、詞の内容が自分なりに解釈出来たときから、大好きな曲のひとつになりました。

僕の中の変わらないこと
僕の中で変わらないこと
多分これが変わらないことのひとつ years



「ドキュメント」:1回

疲れてるは 一人で 僕 眠るんだ

制作に長期間を費やしたエンドレスとは対照的に、わずか1日で作ったという曲。

最後の歌詞

愛の歌 歌ってもいいかなって思い始めてる

で一郎さんの心境の変化、決意を感じます。


6th『sakanaction』

6枚目にしてセルフタイトルを冠した集大成的アルバム『sakanaction』。インスト曲「INORI」とほぼコーラスのみの「ストラクチャー」を除く10曲中7曲に夜が含まれています。


「ミュージック」:4回

何度も自分語りしていきますが、一番好きな曲です。これは揺るがない。

1番では「鳥の群れ」について歌われ、2番Bメロの歌詞から「夜」が登場します。

疲れたと並び吹く風 君の頬へ

2番サビのコーラス部分で繰り返し

ヨルハナガレル)

そして大サビ

変わらないままのだって
歌い続けるよ 続けるよ

一郎さん、そしてサカナクションはこれからも良い音楽を追求していくんだ、と思わせてくれます。安心して追いかけていられる良いバンドです。


「夜の踊り子」:4回

やはりシングル曲には「夜」が比較的たくさん使われています。冒頭1Aメロ

雨上がりのに跳ねた 水切りみたいに

そして計3回ある女性パート

ヨルニニゲタダケ

サビがなかなか来ないことで有名な「夜の踊り子」ですが、それだけサビの爆発力は凄まじいです。正直そんなに好みではなかったのですが、ライブで一緒に跳ねたら楽しすぎて好きになりました。また聴きたいなぁ



「アルデバラン」:1回

おうし座の一等星を冠する曲ですが、猫が詞に出てきます。

しっぽ しっぽ しっぽ振ってに現れるだろう

繰り返しの韻踏みが気持ち良い曲です。


「ボイル」:6回

なかなか歌詞が書けなくて徹夜している様子を歌った曲。これまで真剣に言葉と向き合ってきた一郎さんならではの詞が光ります。2回繰り返されるAメロ部分

遠くに 遠くに投げ捨てたの言葉よ
遠くに 遠くに置き忘れたの長さよ

そしてこの曲1番の聴きどころ、2番の息継ぎが大変なパート

情景描写 嘘の意味や不安になりそうなの音

最後に再び

遠くに 遠くに置き忘れたの長さよ
正直 正直 諦められないんだ言葉を

ライブであの一気に歌うパートをやり切ってからの息継ぎを生で聴けたときは本当に嬉しかったです。


「僕と花」:3回

このアルバム3つ目のシングル曲。1,2サビで繰り返し

が手を伸ばしそっと引っ張って また何か言おうとしてるから
つまりは僕の目は花 探してた

そして微妙に歌詞を替えてラスサビでも「夜」を歌っています。

が手を伸ばしそっと引っ張って 何度も言おうとしてた言葉は
歩き出した僕の言葉 それだった

撮影を生配信したという一発撮りMVも工夫されています。サビで他のメンバー達が出てきますが、そこでめっちゃ適当にキーボード叩いてる岡崎さん好き。



mellow」:9回

ローテンポなダンスミュージック。以下の部分が計5回繰り返されることで数を稼いでいます。

絵になるよう 絵になるような

この部分に続く以下のパートは2回

探したよ の音

ラスサビも2回繰り返されます。

まるで君はの海月

アルバム発売当初はそんなに好みでなかったものの、最近になって良さが猛烈に分かるようになってきた曲です。カラオケで揺れながら歌ったら超楽しかったのでオススメです。


朝の歌」:2回

なんと「夜」に注目している中、「朝」を歌った曲に出会ってしまいました。しかし安心して下さい。朝と夜は「表と裏」。ちゃんと夜も含まれています。

歌い出しAメロ

あとどれくらい僕は深く潜れるだろう
何気なく見た窓の外はまだ

1サビ

ほら朝が 星や月を食べてく
今 がそれに気がつく

6thアルバムにはドラマやテレビ番組のタイアップ曲が多く含まれています。その一方で、映画やmellow、ストラクチャーなど、アンダーグラウンドの雰囲気が強く残る曲も同居しています。言わば表と裏、空と海、朝と夜である両極は、実は隣り合っているんだよ、とサカナクションらしい答えを提示してくれる曲です。



カップリング集『懐かしい月は新しい月』

ここに来て衝撃的な結果になりました。カップリング曲には「夜」が滅多に無い!

「外の音が鳴り止む時間」のホーリーダンスや「あと少しだけ僕は眠らずに 部屋を深い海だとして泳いだ」ネプトゥーヌス、「遠くに花火」のmultiple exposureなど、夜のイメージが強い曲ばかりなんですけどね…

ホーリーダンスは一郎さんが初めて監督を務めたMVも必見。趣味丸出しです。



スローモーション」:2回

4thシングル「ルーキー」のカップリングですが、B面にしておくのが勿体なさすぎるくらいの名曲。

サカナクションには珍しい冬の曲であることが分かる冒頭

何もないはスロー 少し黙って僕は冬を感じて

そして2番Bメロに夜が登場します。

だけど終電過ぎ自由になる は心へ僕を閉じ込めました

「夜は心へ僕を閉じ込めました」って凄い歌詞だと思いませんか。「僕は心へ夜を閉じ込めました」ならまだ分かりますが、夜が主体になるのが一郎節です。

あと夜とは関係無い、自分の好きな歌詞をひとつ

淋しいのは雪から雨に変わったせいで 意味はないけど

淋しい理由を明示した直後に「意味はないけど」と続けてしまうセンスが凄い。


また、このMVが公開されたときは驚きました。そしてブッ飛んだ内容にさらに驚きました。たしかにこの曲にはこのくらいのMVじゃないと釣り合わない気がします。



6th以降のシングル曲 〜「グッドバイ/ユリイカ」から「陽炎」まで〜

「グッドバイ/ユリイカ」から、と言っておきながら、このシングル2曲には意外なことに「夜」が入っていませんでした。おそらくMVの影響で夜のイメージが強いのだと思います。

余談ですが、「ユリイカがなんで『魚図鑑』に入ってないんや!」というのはサカナファンの総意だと思います。まぁ7thアルバムに収録されるのを期待しましょう。


さよならはエモーション」:2回

そもそも初っ端から「深夜のコンビニエンスストア」が出てきますが、熟語なのでノーカンです。

単語としての「夜」の登場は意外にもラスサビまで待たなければなりません。

さよなら 僕はを乗りこなす ずっと涙こらえ

「夜を乗りこなす」格好いいですね。乗りこなしてみたいものです。

そして最後のコーラス部分

AH ミル ヨルヲヌケ
アスヲシル ヒカリヲ ヒカリヲヌケ

にヨルが出てきます。



「蓮の花」:1回

疲れるが待ってる せめて 静かに君を妄想したいのに

movie ver. からsingle ver.になると「妄想」ではなく「想像」に詞が変わります。

サカナクションにしてはコミカルなMVも一度は観るべきです。最後らへんで蜘蛛男が一郎さんとのハイタッチに失敗してるのが笑いを誘います。



そして今やサカナクションの代表曲にまでなってしまった「新宝島」には夜は出てきません。MVの雰囲気を見てもこれは当然でしょう。


「聴きたかったダンスミュージック、リキッドルームに」:4回

その新宝島のカップリング曲には4つも夜が入っています。

2回繰り返されるサビの部分

続きましては朝に変わります

間奏前の2Bメロ

BMP120 AM5時から始まるこのを踊ろう

そしてラスサビ

続きまして 君はに混ざります

実在のクラブ名を冠するだけあって、夜から朝方にかけてのダンスフロアのリアルな雰囲気が上手く表現されている曲です。恵比寿リキッドルームはサカナクション主催のオールナイトクラブイベント「NF」の会場です。


次のシングル『多分、風。』には夜は出てきません。田舎の畦道を唄っているので、どちらかと言えば昼間の曲ですね。



「SORATO」:1回

「多分、風。」のカップリングインスト曲「moon」を更に進化させて歌詞も付けたのが「SORATO」です。そもそもmoonが「Ame (B) -SAKANATRIBE × ATM version」の一部を大きく引き継いでいるため、この辺りの曲の関係性がややこしいことになっています。

流線 に伸びた

5thアルバムの「流線」を思い出す詞です。ライブでDJ体制になって歌います。


「陽炎」:2回

さて、「夜」をひたすら追いかけていくツアーもいよいよ最新曲までたどり着きました。2度のサビ後半にちゃんと夜が入っています。締めくくりに相応しいので安心しました。

一気に泣くわ はこない
いつになく煽る紅

中華風の印象に残るイントロ、「あめふら」を彷彿とさせるがなりを用いた力強いボーカルパート、そして安定の女性コーラスとまさにこれまでのサカナクションを詰め込んだような曲です。それでいて新しさもある。(流れを切るような2番の間奏の入りは斬新だと感じました)

このバンドはどこまで進化を続けるのでしょうか。

公式MVが出るまでは、タイアップ映画のダンスPVで我慢しましょう。曲は『魚図鑑』に収録されている他、各音楽配信サービスで配信されています。




<集計>

お疲れ様でした。ここまでの歌詞は、基本的にUta-Netを参考にさせて頂きました。

それでは総まとめに入ります。「夜」という単語が歌詞に含まれる曲リストは以下のようになりました。

サカナクションの2018年4月現在の全82曲のうち、歌詞に「夜」が入っていた曲はなんと40曲!ほぼ半数に入っています。

割合は、インスト曲を含めれば40/82=0.4878=約49%、インスト曲を除いた割合は40/73=0.548=約55%にも及びます。

アルバム単位では『シンシロ』が最も「夜」を含む曲数・その割合ともに最高で、カップリング曲を除けば『GO TO THE FUTURE』と5th『DocumentaLy』が曲数ではともに最低、割合では後者が単独で最低という結果になりました。

「夜」と歌っている回数の合計は128回。熟語や裏歌詞を含めれば更に増えます。

アルバム単位では『sakanaction』が最も多く29回、次に『シンシロ』そして『NIGHT FISHING』がそれぞれ28・27回と迫りました。



<総評>

・サカナクションの約半数の曲の歌詞に「夜」という単語が含まれる。

・最も含まれる曲数が多いアルバムは3rd『シンシロ』。

・歌詞に含まれる「夜」の全曲の合計は現時点で128回。

・最も「夜」を多く含むアルバムは6th『sakanaction』。


以上のことが分かりました。また統計的な分析はしていませんが、全曲を調べてみて「シングルやアルバムの最後の曲など、特に力の入った曲のほうが夜を含む割合が高い」気がします。

また、実際に「夜」が出て来るのはサビ、特に最後のサビに出て来やすい印象を受けました。同じく曲の冒頭、Aメロにも多く含んでいるように感じました。

そして、「夜」と結びついて登場しやすい単語が幾つかありました。例えば「疲れた夜」「淋しい夜」など。これらをさらに掘り下げることで、一郎さんの歌詞の世界観が見えてくる気がします。

この辺りの正確な分析には追加調査が求められますね。誰か物好きはやってみて下さい、自分はもうやりません。(疲れた…)


<感想>

・ほぼ全曲に「夜」が出て来るかと思っていたが、流石にそこまでではなかった。しかし半数以上とは十分に高い割合だと思う。他のアーティストではこうはならないでしょう。

・とにかく疲れた。正直自分でもどうかしていると思う。あと万が一、既にこのようなことを調べて公開している人がいたらとても虚しくなるので教えないで下さい。いや知りたいけれども。



それでは皆さん、これからもよいサカナクションライフを。

おやすみなさい



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