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初心者が初心者に大学数学(集合論)を教えるために授業ノートを作った


数学ガールを読んだりりりむ&グウェル配信を観たりして「初心者に数学を教えたい」欲が高まっていたのですが、幸運なことに「教えられてみたい」という大学1年生(文系)のフォロワーさんが現れて、1対1で教えることになりました。ツイッターも捨てたもんじゃねぇな。

といってもわたしだって初心者です。数学科の授業に潜ってたりはしましたが、測度論は5回目くらいで挫折しました。(独学で再挑戦したい)

わたしは数学のなかでも、高校までの「問題を解く」「試験で良い点を取る」ための数学よりも、大学以降の「概念や理論体系を理解して使えるようにする」ための数学のほうがずっと好きです。(本当は中高の数学だってそれが目的のはずですが)

したがって、「初心者に数学を教える」うえで具体的に思い描いていたのは、「高校までの数学すらあまり知らないひとに、いきなり大学数学から教える」ことでした。そんなの無理無理!お前の独りよがりな夢に他人を巻き込むなよ!と思われるかもしれませんが、これにはちゃんとした理由があります。

よく言われるように、数学とは積み重ねの学問です。そもそも学問全般にそうした性質がありますが、なかでもいちばん"積み重ね"なのが数学だと思っています。哲学よりも、物理学よりも、数学のほうが積み重ねの学問です。

それは「定義や公理から始める」ことに端的に現れています。数学は「何もない」ところから、定義や公理を自分で置いて、つまり世界を創って、そこから一歩一歩、推論や証明を重ねて定理を積み上げていく学問です。

他の学問分野はそうではありません。すでに「何かがある」状態から議論がスタートします。哲学なら「なぜ自由意志はあるのか?またはないのか?」とか、倫理学なら「なぜ道徳が存在するのか?または存在しないのか?」とか、社会学なら「なぜ社会は成り立っているのか?どのようにして生じ、動いているのか?」など、われわれの生きる現実世界にあるように思われる"何か"(自由意志・道徳・社会など)の存在をいったん認めて、その言葉が何を指すのかもすでに何となくみんな知っているところから学問が始まります。

文学だってそうです。学問としての文学は、われわれの現実世界に(なぜか)存在する詩や戯曲や小説などの「文学作品」について研究する分野です。小説を書くことはひとつの世界を創り出すことかもしれませんが、学問としての文学は、やはり"現実の一部"である文学作品を前提として、そのうえに成り立っています。

人文学だけではありません。自然科学……たとえば物理学だって、物理的な意味での「世界(=自然)」の存在を疑ったりは(ひとまずは)せず、自然にはどのような法則があるのかについて探求します。

数学だけが、0から世界を創るのです。「0」を創るのも数学なので、これは文字通りの意味です。

義務教育を思い出してこう反論するかもしれません。「数学だって、最初は算数でりんごの数を数えるところから始まってたじゃん。りんごは現実世界にあるモノじゃないか!」と。あるいは「図形はどうなのさ。円とか三角形とか球とか直線とか、わたしたちの身の回りにあふれているじゃん!」と言うかもしれません。

これは大事な指摘です。高校までの数学だけでは、たしかにこうした数学観をもってしまっても仕方ありません。専門的な学問としての数学を学ぶというよりは、社会のなかで大人として生きていくための教養という面も強いので、どうしても社会や現実世界と対応させながら教えているからです。

大学以降の「本物の」数学は違います。数学のはじまりにはそれ自身しかありません。現実での対応物とか、常識とか、そうした前提知識はいっさい必要としません。それどころか、前提知識をもっていると純粋な数学の理解にとって邪魔になる場合さえあります。

数学が「積み重ねの学問」というのは、こういう意味です。積み重ねなので、逆に言えば自分で積み重ねなくても最初から使える知識なんてあってはいけないのです。数学では「自由意志」とか「社会」とか「道徳」とか「自然」とかいった、なんか知らんけど自分の許可もとらずにのうのうと存在しているっぽい概念にイラつくことはありません。数学のすべては、これから、あなた自身が創るのです。

「いきなり大学数学から教えたい」のも、こうした理由からです。むしろ下手に高校までの数学を知ってもらっていては困る。本物の数学は0から始める学問なので、それにしたがって0から教えてみたい。そういう想いがあります。

※じゃあ高校までの数学を学ぶ意味はまったくないのか、大学数学でほんとに全く使わないのか、と言われたら、手のひらを返して「いや、意味はあるし、なんだかんだでそこそこ使うから知ってたほうがよい」と答えます。ただ、わたしが上で書いたことは大嘘だとは思っていません。中高で学んだ知識を使うといっても、それは具体例として出てくる場面だったり、厳密な議論を始める際の前説みたいな感じで言及されたりと、いま0から創っている数学理論のクリティカルなところには関わりません。多分。だから「まぁ高校数学しってるに越したことはないけど、知ってないと絶対に無理ということはないし、むしろ知らなくても絶対に理解可能じゃなければそれは原理的には数学とは呼べない」くらいの意味で捉えてください。



以上が「わたしがガチの初心者にいきなり大学数学から教えたい」理由の説明でした。

で、大学数学にも1年生で習う分野は色々ありますが、選んだのは集合論です。これは後述しますが、現代数学では集合論があらゆる分野の基礎となっているからです。線形代数(行列)とか微積分学とかも、突き詰めれば集合論が根底にあるので、最初に選ぶ分野としてはこれしかないと考えました。あと純粋にわたしが集合論を好き、というのもあります。まぁ好きな理由は「全ての基礎だから」なので、結局は先の理由に帰着しますが……。あと集合論が好きといっても、集合論の専門家どころか数学科ですらないので、ガチでにわかです。集合論をさらに掘り下げていくと数学基礎論になる?のかも知れませんが、そのへんについては全然知りません。勉強したいとは思っています。とにかく、わたしが認識・理解している範囲での数学の基礎は集合論なので、この分野を教えることにしました。



ここまで前置き!


前置き長っ。

あとは、初回の授業のために作った手書きの授業ノートのPDFを貼って、口頭での解説を軽〜く文字起こしして終わります。導入部の内容はいまの前置きとかなり被っています。

それから、もちろんわたしが何も見ずにノートを作ったのではありません。大学生の頃に独学のため買ったのは内田『集合と位相』です。集合論の部分はいちおう読破し、位相に入って距離空間→位相空間と進んで開基がどうこう……のあたりで挫折したような気がします。100ページも読めてねぇ。

わたしの持ってるのは新装版じゃないほう

で、今回は諸用のため↑が手元になく、またどうせ集合論をゼロからひとに教えるんなら、自分も新しい教科書で学び直そう!と思い、授業のテキストには松坂『集合・位相入門』を選びました。内田も松坂も集合論の入門書としてはめちゃくちゃ有名ですね。

こちらも新装版が出ているようですが、ハードカバーが良いので旧版を古本で購入しました。


また、集合論でも論理学の基礎はかなり大事なので、そっち方面を補うためにも補助テキストとして嘉田『論理と集合から始める数学の基礎』も参照します。

これは数学ガールの著者である結城先生が何度もオススメしていたことで知りました。大学生のときに最初の方をちょろっと読みましたが、それくらいです。


とりあえず参考文献は上の3冊で、必要になったら他も適宜参照しようと思います。


したがって、基本的にはわたしの授業ノートといっても、松坂テキストにしたがっています。何から何まで書き写していたら著作権的にもマズいですが、さすがにそこまではしていません。著作権に配慮していなくとも、いつの間にかオリジナルの解釈や寄り道、持論をどうしても書きたくなってしまうのです。これらを書いて教えるためにやっているといっても過言ではありません。



ではようやく、授業ノートを貼って軽い解説を……



するつもりでしたが……



疲れたので今回はやめます(爆)


手書きノートのPDFだけ貼ります。

電車の中で書いたのでめちゃくちゃ字がきたない上に、このノートを使いながら授業をしたので、強調の線や囲いなどで更にワケわかんなくなってると思います。それでも解読してみたい物好きがいましたらどうぞ。

それから、何度もいうように、わたしは数学の素人(謙遜でもなんでもなく単なる事実)なので、とうぜん間違いが含まれているであろうとは思います。まずいないとは思いますが、万が一、これで初めて集合論を学ぼうとするひとがいたらくれぐれも注意してください。というか、ちゃんとした教科書を読んでください。今回の授業は、わたしの「初心者に集合論を教えたい」というワガママに付き合ってくれる奇跡のような方の了承のもとでおこなっている実験です。あくまで。

もしわたしのノートの間違いを指摘して下さる親切な方がいらっしゃれば、歓迎いたします。優しく指摘してくださると大変嬉しいです。


今回はPDFを貼るだけでしたが、もしモチベと余力と時間があれば、スライド形式にまとめた解説noteを書きたいです。書く可能性はいまのところ5%くらいです。



これまでに書いた数学絡みのnoteリスト


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