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最高のダンス漫画 『ワンダンス』 を読んでくれ


タイトルが紹介記事みたいですが、本記事は『ワンダンス』3巻を読んだ単なる感想メモです、題名詐欺でごめんなさい。ただしワンダンスが「最高のダンス漫画」であることは間違っていません。


いちばんの衝撃は恩ちゃん部長のメインジャンルがPOPだったこと!

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「どうせブレイクとかHIPHOPとか、画的に”映える"ジャンルしか主に取り上げないんだろうな〜」と思っていた矢先にこれだから、恩ちゃんマジ最高ワンダンスありがとう500000000000兆億点です。


初めてのダンスコンテストであっさり優勝
→団体ショーケはこの作品およびカボのダンス人生における主眼ではないんだろうな。それはそう

ショーケよりバトルに重点を置いてくれるのも個人的にポイントが高い。
湾田さんも意欲がないわけではなさそうだし、どんどんバトル出てほしい


カボも湾田さんもダンスの素養に恵まれ過ぎであまりにトントン拍子にコトが運びすぎてるのでは……?という見方も当然出てくるんだけど、あまり引っかからずに純粋に応援できるのは演出が上手いからかな(何も答えになっていない)

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ただ作中でも、カボは「恵まれている」と言及されているので、このライバルが参戦してくる次巻以降この点も更に掘り下げが進むだろう。たのしみ。


あと2人の仲がどう考えても男女のそれとしては完全に付き合ってないとおかしいだろってレベルなのにそうならない(カボは明確に気があるようだけど、湾田さんがマジで掴みどころがなくてフィクション上の都合のいい存在だと揶揄されてもおかしくない)点に関しては、

湾田さんとではないけれど、本巻の恩ちゃんとカボのダンスバトル描写で納得がいった。

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これもう実質セックスじゃん。


というか、セッ××以上にお互いがお互いの中に入り合ってぐっちょんぐっちょん(GUCCHONさんではない)じゃん。

BLEACH千年血戦篇の剣八同士の「戦い」を思い出したよ。あれもBLEACH史上最高の両思い純愛カップルによる血みどろのイチャつきだからね……

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アニメ『BLEACH 千年血戦篇』に乞うご期待!


ワンダンスの話に戻ると、ダンスバトルとは実質セッ××というか、そっちが要らなくなるほど濃厚な絡まり合いなので、仲が睦まじい割に不自然に恋愛描写が少ない点に関しては「ダンスバトル描写で十分だから」の一言で説明が出来てしまうのだ(わたしの中では)。

まぁそうするとカボ君と恩ちゃんがセッ××したことになって浮気じゃん湾田さん可哀想……と副作用も生じてしまうんだけれど、ダンスバトルにはセッ××バトルと違って貞操という概念は無いからね。都合よく解釈を切り分けていこうぜ。
いつかカボ君と湾田さんも濃厚なバトルをしてくれることでしょう。

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ちょっと待てよ、ってことは2巻の伊折とカボのバトルはそういうBL的な目線でも見れるのでは……?お腐りの皆さんにもオススメできる漫画ですね(白目)


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ダンス中にかかっている曲をいちいち明記してくれるのも「分かってる」

ダンスにおいていかに曲が大事か、ということもそうだし、ひいてはダンス漫画においても曲を聞かずに画だけを眺めるのでは片手落ち、ミュートでダンス動画を見るようなものだってことだろう。

だからいま作中でかかっている曲をApple Musicで検索して流しながら読むことでこの漫画は真価を発揮する。

じっさい、聞きながらだと、言及のある曲の特徴(ビートが特殊、ハメどころが多い、脱力しきった女性ボーカルをどう表現するかetc.)に「確かに!」と納得・共感しながら読めるし、そしてなにより圧巻のダンス描写が、単なる「ダンスの画」から、本当にカボ達が「踊っている」のだという、ダンス"そのもの”へと昇華される。臨場感なんて一言では片付けられないほどの体験ができる。

ただ、こうした点に関しては「漫画という媒体なんだから、曲を聞きながら読むのが前提なのはおかしい。外部のメディアに頼らずに、漫画だけでダンスを魅力的に表現できてないとダンス漫画としては失格じゃん」という指摘が頭をよぎってもおかしくない。

この指摘(藁人形だけど)への反論としては、「曲を聞きながらでなくとも、じゅうぶんにダンス表現が優れている」という主張で十分だろう。

これは私の漫画に対する鑑賞眼の無さの問題なのだけれど、具体的に「ワンダンス」のダンス描写のどこがどう優れていて革新的なのかは正直よくわからない。
わからないけれども、読んでいて本当に気持ちが高揚・興奮するし、高ぶりすぎてなぜだか泣けてくる。それは、吃音を抱え「どう生きていったらよいかわからない」カボがやっと見つけた一筋の光明としてのダンス、というバックストーリーを含めてのことなのかもしれないが、少なくとも『めちゃくちゃ上手いダンス』を描こうとして滑っていることは一度もないと断言できる。

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審査員を務めるプロダンサーによる「ジャッジムーブ」

余談だけれど、ダンサーとしてはここの「ちゃんと凄いって思えるのはすごいよ」という台詞には「それな……」って共感する。楽器の素人にはアニメ『響け!ユーフォニアム』1期11話の再ソロオーディションで上手さの違いがピンとこないのと同じで、トップレベルのダンサーには「どこが上手いのか素人にはよくわからない」怪物たちがいる。

何度見ても「なんもわからん……なんもわからん……」となる沖縄の魔神


閑話休題。

それからダンス経験者が読めば「何のジャンルを踊っているか」がすぐに判断できるのも、きちんとしたダンス描写である証拠のひとつだ。恩ちゃんがポップを踊っているとすぐに分かったし、ワックもすぐに分かった。
(ヴァイブレーションやウェーブといったアニメーション系の技はかなり表現が難しそうだったけれど、それはもう仕方ない)

つまり、漫画におけるダンス表現がきわめて優れている前提で、さらに曲を流しながら読むととんでもない没入感・臨場感が実現できるというワケだ。


また、さっきも言ったように「音楽があってこそのダンス」「より音楽に”近づけた”ダンスこそが良いダンス」という作品のダンス観の根幹を、われわれ読者に「実際に曲を聞きながら読んでもらう」ことで、メタレベルでも体現しているとも言える。

つまり、曲を聞きながらダンスシーンを読んでもらえるように作られているのは、ダンス漫画という形式からの「逃げ」どころか、むしろこれ以上なく「ダンス漫画である」ことに「向き合っている」のだ。


作品のダンス熱にあてられてつい熱くなってしまった。

書店には見慣れない表紙の新装版が大量に並んでいるのを見かけ、これから更に注目されていく作品だと思うが、いい作品にはどんどん「良い」と宣伝していきたい。あの傑作女子高生ラップ漫画「Change!」が6巻で打ち切りになってしまった悲劇をもう二度と繰り返さないためにも。

「全然向いてなさそうな初心者がHIPHOPを始める」点でChange!とワンダンスは非常に近いから、片方の読者はもう片方もぜひ読んでほしい。どちらも未読!ってひとは当然どちらも今すぐ読んでほしい。


Change!の話題になってしまったが、『ワンダンス』これからも楽しみ。前巻で「世界一になりたい」(ちはやふるを連想する)、そして本巻で「どこへでも行ける気がする」と高らかに謳う湾田さんとカボ君が本当にどこまで行くのか、非常に気になる。

恩ちゃんですら(本人の希望もあるとはいえ)プロダンサーの道には進まない厳しい世界で、リアリティの水準をどの程度コントロールしながらどの規模まで到達するのか。それは何らかのスポーツ・題材を扱う漫画では一般に大きなポイントだ。

「世界一」という単語をハッキリと出してしまっているから高校規模ではとどまらないのか、それとも「大それたことを夢見る」という高校生らしい要素として回収する方向でコンパクトにまとめるのか……

後者をネガティブな言い回しで書いてしまったが、現状わたしは2人のダンス人生を(短く終わるとしても)しっかりと描き切ってくれるのであればどちらでも構わないし、当然どちらでもない可能性だってあるだろう。


最後に個人的なこと。

私はフリースタイル(即興)のダンスが趣味だけれど、他人に見られていることを意識してしまうのと、他人から評価されるために踊るのが嫌で、ダンスバトルに出るのは辞めた。(見るのは今でも好き)

だから、私と同じような悩みを持っていてもなお、無意識で踊ることを目指し、「ダンスバトルは勝ち負けじゃない」と気付き、「俺にはもうダンスしかない」と信じることができるカボは眩しくて仕方がない。

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どんどんダンスの魅力に気付いて成長していくカボを見るのは疎ましくもあるけれど、それ以上に彼が自己を確立するためにダンスの道を進んでいくのを見ると、「頑張れ!」って応援したくなる。絶妙なキャラクターだ。


ワンダンス、みんなも読もう。



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このページの湾田さん特にかわいい……好き……



↑こちらで試し読みできるようです。


『ワンダンス』を始めて取り上げたのは一年前のこの記事でした。


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