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今期アニメ感想メモ①『江戸前エルフ』『スキップとローファー』『山田くんとLv999の恋をする』


今期(2023年春クール)アニメもそろそろ終わりそうなので、最終話まで完走した作品の感想メモをぼちぼち投稿していこうと思いまーす

1作品で1記事にしても良いんですが、なんとなく3作品抱き合わせにしてみました。感想がとても短いものもあるので。


・『江戸前エルフ』

原作漫画未読

ウェルメイドなゆるゆる日常系の良作だったが、だんだんと飽きてきてしまったのが正直なところ

1話を観終えた時点での期待値は今季トップだった。
どのキャラクターも可愛いんだけど、「刺さる」ものはなくて、回を重ねるごとに、その平凡で尊い日常が退屈に思えてきた。エルフと人間の寿命・時間感覚のギャップでほろりと切なく泣かせる要素も、何度も擦られるとウザったらしく思えてくる。

がっつり神社・神道モノであり、エルダが江戸時代の記憶・豆知識しか話さずに、なぜか明治~大正~昭和の近代への言及は避けられていたりと、宗教や政治的な方面で批評オタクにはむしろ評判がいい(解釈し放題だから)のはわかるが、その前段階で乗れなさがあった。

風景オタクとしては、本作の背景美術が優れていることは疑いようがないのだけれど、そんなに築島に行ってみたいとは思えなかった。田舎じゃなくて街中だからというのもあるけど、撮影処理の問題なのか、全体的に "美麗すぎる" のが合わない。

OP/EDの曲はどちらも今季トップクラスに素晴らしく、日常的にリピートしていた。

とくにエンディング曲「おどる・ひかり」を担当したCody・Lee(李) という若手バンドを知れたのは良かった。

ニコ動ではBメロで男性ボーカルが「たまにはぁ~~」と入ってくるところで毎回「!?」コメントを流すのが様式美となっていたけど、本家のフルver.だとそもそも男性(高橋響さん)がメインボーカルなんですよね。

そして、↑の公式MVでは、それとはまた別の「そっちが歌うんか~い!」を味わえて二重に「!?」案件でした。

このバンドの他の曲もいくつか漁ってみたんですが、「drizzle」という曲がめっちゃ好きです。

「drizzle」には音源化してるだけでも3バージョンくらいありますが、この2020版を最初に聴いたのでいちばんしっくりきます。

歌詞はCody・Lee(李) の他の曲と同様にめちゃくちゃしゃらくせぇですが(市原仁奈口調)、メロとオケが良いのでぜんぶ許せちゃいます。




・『スキップとローファー』

原作漫画既読

青春の眩しさを、そこから目を逸らしてしまう人々の存在まで丁寧にすくい取って描き切った傑作学園青春アニメ。出合小都美監督、P.A.WORKS、ありがとう……


4/28(金)
3話まで観た。PAだってこと知らなかったのでビビった。PAがこんな良いアニメをつくるなんて…… 出合監督まじサンキュー
でも、美術の良さとかはまさにPAの良さって感じなんだよな……。


5/2(火)
4話観た。生徒会長回
ほんとうにいい。アニメーションの「風景」ってこういうことなんだよな……としみじみ感じさせてくれる。
これは東京の高校生の物語だけど、みつみの心にはいつも故郷の石川の風景があって、その記憶とともに東京での新鮮な高校生活の風景をまなざしていく。その手付きがしっかりと、画面の美術と作画の融和によって表現されている。中学時代の回想シーンでの餃子を食べるアニメーションや、憧れの先輩と乗るバスから見える夕暮れの街並みといった、なんでもないような日常風景にこそ宿る温かみ。原作漫画の物語の魅力をそのままに、背景美術が必要なアニメという媒体だからこそ、『スキップとローファー』という作品の核をより深く描けている。(これは原作漫画よりアニメのほうが優れているということでは勿論ない。原作至上主義者なので。)
あと、地味にエンディングでのスタッフロールで、キャストよりも先に絵コンテや脚本などのメインスタッフ陣が出るところも好き。そんなに珍しくないかもだけど。


5/15月
6話みた。志摩くんとの仲直り回
篠原俊哉!! 篠原俊哉画コンテじゃないか!!! 天気・気温・湿度による演出ももちろん良かったし、校舎内を舞台にしたドラマとしてすごく良かった。やや広めの廊下の無機質さ、だだっ広さとか、仲直りシーンでの階段の踊り場の使い方とか。

帰ろう(下ろう)としたみつみの腕を志摩くんがとって引き留めるんだけど、(ふつうの?)少女漫画だったらそこで顔と顔が近づいたりなんかしそうなところで、すぐにサッと手を離して距離を取るのがこの作品って感じでいい。そのあと大げさに仲直りしたことに「ツボった」志摩君が踊り場の内側の手すりにもたれかかってみつみとカメラに背を向ける。

ここのカットの構図が、背景に上の階段の踊り場の壁が見えるような角度で、意外と珍しい構図というか、吹き抜け感と、でもしっかり「閉じている(逃げていかない)」感じがなんだかとても良かった。うまくいえないけれど。

光の陰影・・・みつみのほうを振り向いたときに光が当たるように逆算して内側の手すりに顔を伏せたのだろうけれど、それ以外にもこの背景の踊り場の壁?と窓の奥行きがなんか良いんだよな。


6/5月 9話 夏休み帰省回

最高アニメーション。「帰郷」に弱い気がする。サマーウォーズ×夏のソラ案件
でも、「ずっと田舎でやっててくれ」と言わせないほどに、帰省から再び東京へと戻ってきたあとの二学期のソワソワした雰囲気を描くのも上手いところが素晴らしい。石川と東京、田舎と都会の交感こそが主題であるのだから。
今季の石川県アニメ3つすべてに能登さん出てて草(水星も能登半島なら4本)
お祖母ちゃんの前でしゃがみ込むみつみの動作とか、浜辺でみつみの肩にふみが両手を置いて、みつみが見上げる動作とか、そうした細やかな仕草の作画がほんといい。


6/28水
11話 文化祭前編
中学の友達にまこっちゃんが村重結月さんを紹介しようとするくだりめっちゃ泣ける
みつみ・江頭ミカさんも含めた友達4人組のシーンが本当に尊い
二次創作でゆづ×まこは百合的にめっちゃ人気なのはわかるが、ペアじゃなくてこの4人組が至高だと思います!
(ペアでいうならミカさんとナオちゃんの関係、あとみつみとふみの幼馴染親友コンビがすき)


12話 最終回
いい最終回だった…… 学校空間・学校生活というものを、京アニとはまた違ったやり方で本当に魅力的に描き切ることに成功している。そのうえで、志摩くんがみつみ達への複雑な気持ちの正体を「嫉妬」だと気付いたように、その尊い学校空間の眩しさに目を逸らしてしまいたくなる/逸らさずにはいられない人間の存在までをもちゃんと描いているのがマジで素晴らしいところ。

この作品の「悪役」を一身に引き受けてきた西城梨々華が最終話であの慟哭をすることで、単なるヘイト役から一気に、『スキップとローファー』を影の側から支える、ある種みつみと対になる超重要キャラになった。
「高校生活って素晴らしい!」というのを、ほんとうにそれだけで称揚していたら流石にウザったらしくて鼻につくところを、梨々華とか、志摩くんの描写によってバランスをとる──というよりも、より一段と広く深いところまで読者をすくいあげて引き込んでいく内容になっている。

これだけ様々な人間模様を映してきて、最後の最後に画面に映すラストカットが、夕暮れの薄雲がたなびく空の美術であったということが、とても嬉しい。出合小都美監督、P.A.WORKSスタッフ陣、スタジオイースター、ありがとう。


出合監督の初監督オリジナル作品『ローリング☆ガールズ』の感想はこちら



・『山田くんとLv999の恋をする』

いちばん好きなアニメである『ちはやふる』のスタッフ陣──浅香守生監督×濱田邦彦キャラデザ/総作監×マッドハウス制作──だと知り合いから教えてもらったので観始めました。


随所に変わった遊び心のある演出を盛り込みながらも、それらが見事に調和して前衛性を主張し過ぎずに見易いアニメになっている手腕に脱帽。浅香監督には名作少女漫画をたいへん質の良いアニメにする仕事を今後とも続けていただきたい。


1,2話みた。
少女漫画原作のラブコメアニメ。いろいろと駄目人間でツッコミどころのある女子大生主人公を見ているのがとても楽しい

3話視聴後、漫画アプリで原作を最新話まで一気読みしてしまった。その感想はちょっと長くなるのでここでは割愛

4/30(日)
5話「詳しく聞かせてもらおうか」観た。
前話から思ってたけど、なーんかテンポ悪くないかこのアニメ。1カットごとに溜めの時間がすげぇ長い。確かにこの回ではあそこまででキリが良いのは分かるが、だからって間延びした演出にしてしまっては本末転倒では。

あと、今話は変なトランジション演出が2,3個あった。次のカットの一部のセル画を先行して前カット上に重ねる手法、あんま見たことないぞ。それも、茜のトイレ→山田が瑠奈宅のドアを開けるカットの繋ぎで、山田の手だけを先に映すのは、茜の恐怖感を表現するという意図が分かるけど、その後の鴨田さんの車で急行する場面で店の看板の一部だけを先に出すのとかは全く意味がわからない。

あと、冒頭の山田のマウスセンシ調整シーンで補足文字をマウスの上に立体的に重ねる演出とか、終盤瑠奈視点での茜の足を映すカットの3DCGっぽい謎演出とかもヘンテコだった。なんなんだ一体・・・

調べたら、1,2話は監督の浅香守生さんが絵コンテを描いているが、3,4,5話はそれぞれ別の人。演出は毎話違う人。うーむ……そういうことなんかなぁ…… 絵コンテ/演出=澤井幸次/内野宮晃希

おはなしの内容に関しては、原作読んだときもヒヤヒヤして「これアニメ化して大丈夫なやつ?」と思ったが、実際アニメを観てもめっちゃ恐ろしかった。『かげきしょうじょ』でも主人公の過去のトラウマとしてやべぇ男に襲われるエピソードがあったが、あれは回想だったからまだよかった。これは現在時制で、しかも下手にコメディ調も入れてきてるからたちが悪い(Cパート!)。

1~4話ではかなり問題のある人間として描かれていた主人公の茜が、ここから急激に聖人君子の良い奴になっていく。そのギャップに戸惑う原作未読のオタク達をみて楽しむとするか(愉悦部)


5/7(日)
6話「個人的にはラブコメ展開希望」みた。前回とは打って変わってめちゃくちゃ良かった!!! これは浅香守生監督が絵コンテ切っただろうと予想したが違った。3話と同じ佐々木美和さん絵コンテ、2話の小林彩さん演出。とりあえず4話の人ではなかった。
おはなし的にも、瑠奈ちゃんが茜にすっかり懐いてただの激かわワガママ美少女になり、平和な雰囲気になるところで、このようにアニメーションとしても素晴らしいクオリティにしてくれて嬉しいよ……

前回と同じような、インターホンを押す手のセルだけ前カットに早く映す演出を今回もやっていた。あと、教室で瑠奈が「つーん」としている、そのオノマトペが、次の画角が変わったカットでは裏から見たように反転していたり、あとは風呂上りの瑛太がリビングを歩くときの「ばくはつって…」という文字がそのまま彼に付いていくのとかも凝っている。
現実世界での文字演出に凝ることは、おそらくFOSのゲーム中でのコマンド表示と響き合うところがある。

また、セルの重ね表示をズラす演出は他にもちょくちょくあって、マンガ的な、背景がキラキラしたりカラフルな抽象的なものから、手前の人物のセルはそのままに、背景を現実の美術に切り替えるカットが幾つか見られた。また、FOS内の映像表現も相変わらず非常に良いし、キャラのデフォルメ表現と通常表現の行き来が絶妙だし(瑛太からの電話で起こされる山田のシーンよ!)、ベランダ→桃ちゃんの上向き顔の引きカメラワーク演出も凄かった。マジでなにもかもがほのぼのラブコメアニメとして完璧な出来だった。めちゃくちゃ派手なことはしていなくとも、手が込んでいて、手数が多くて、すべてが作品の平和な雰囲気づくりに貢献している・・・。

毎話、観終わるたびに 人間が大好き さんのツイートを検索して見に行って、「ほんとそれな・・・」と頷いていました。


5/14(日)
7話「安心したいですか?」みた。諸々の処理&準備回。今回もすごく良かった!
3話連続でインターホン押す手の先行描写演出。コンテは5話と同じ澤井幸次さん。
髪留めを外したときの髪の作画は原画スタッフが本気を出していて凄かった。



ここ、デフォルメした頭部・口をこういう風に立体的に見せる構図をあまり見たことがないのでびっくりした。すばらしい

遂に椿ゆかりさんがちゃんと登場した! ダウナーで独特な声質。土屋李央さんってシャニマスの樋口円香の人なんだ。
Cパートでtakezoさんのアバターの真の姿、もう見せちゃうのかと思ったらギリギリ見せなくて笑ったw 原作だともっと後だったよね。


8話 山田の文化祭編
とても良かった。茜と山田のやり取りでドキドキときめく時のたっぷりと間を取った演出はハマっていた。


5/30 9話観た。椿も入れた三角関係匂わせが本格化

風邪重傷でゾンビのように自室を這いまわる茜のシーンとかほんと素晴らしい。夕暮れの公園のブランコで瑠奈ちゃんと話すシーンの作画も凄い。
今のところこのアニメへの文句がDE DE MOUSEの劇伴くらいしかない。
相変わらずいちいちシーン遷移演出が変に凝っている。茜のバイト控室→椿の真っ暗な自室でネトゲ のトランジションで、茜の控室の映像をまるで監視カメラ越しに椿がみているかのようなミスリーディングで無駄にホラーな演出はやめたほうが……。


6/4 10話 看病回 みた
とんでもねぇ高クオリティアニメーションだよこれ・・・
病身で不安定な茜のコロコロ変わる感情模様とか、シリアスとコメディの切り替えとか、テンポが良すぎる。Cパートの玄関でのやり取りもそうだし、換気のために茜がベランダの窓開けるシーンの素早いカット連鎖とか、ほんと凄い。
物語も、山田のトラウマとなっていた小学時代の記憶を茜の言葉によって昇華され、決定的に惚れるきっかけとなる山場の部分で盛り上がってきた。


6/13火 11話 椿ギルド加入回
ここしばらく薄かったネトゲ描写がたっぷりで大満足の回だった。
現実生活とネトゲライフの双方がすごく対等というか、「現実か虚構か」みたいな下らない二項対立なんて(陽キャの茜っちには)無くて、めちゃくちゃフラットにどっちも全力で楽しんでいるのが良い。オタク臭くない。すごく良い意味で少女漫画してるから。
変わった演出も相変わらずてんこ盛り。「体感 五億年」シーン素材として使いやす過ぎる。
あと2話かな? 椿ちゃんの恋のほうを清算して付き合い始めるまで行けるだろうか。


6/28水 12話 椿告白回

Aパートで告白を決心した茜が山田の家のインターホンを押すカットで、「これまでの執拗なインターホン押す手先行演出は満を持してのこのためだったのか!」と感動した。今回は先行演出ではなく「ふつう」に描いている。

今期では『スキップとローファー』に次ぐ、歩道橋アニメ。原作では椿の雨中での告白シーンって歩道橋じゃなくてふつうの歩道だったような……? 
バイト先のコンビニの前で夕暮れ時に喋るシーンとか素晴らしいですね。ガラスに映った影がデフォルメ調なのとか良過ぎる。マジで変わった演出を随所に盛り込みながらも、それらがうまく溶け込んでいて、前衛性を押し出していないのがいい。


13話 最終話
おわり!! ぶらぼ~!!!
とてもいいアニメだった!!! 椿ちゃんのシリアスなパートからギルド食事会のコメディめいた雰囲気への切り替えとか、そういうところが本当に巧みなアニメだった。
浅香守生監督、良作少女漫画を延々と良アニメ化しててほしい。濱田さんとマッドハウスと組み続けて。お願いします。



あと、個人的に、キャラデ&総作監の濱田邦彦さんがコンテ描いてるエンディング映像がめちゃくちゃ好きです。序盤の茜の立ち姿で微妙に体勢や重心を変えるところとか信じられないセンスの良さだと思う

こういう、キャラの立った状態での激しくない細やかな動作で魅せていく演出といえば、同じく濱田さんが絵コンテ演出を手掛けている『俺物語!!』エンディングでの猛男の歩行アニメーションもすばらしい

なんていうんでしょう、単に人物動作のリアルな作画がすごいんじゃなくて、エンディングとしてこれを中心に据えてひとつの映像作品に仕立て上げる構成力にもっとも驚かされるというか……

じぶんの「MV=ダンス」論でいえば、濱田さんの俺物語エンディング映像なんかは、めちゃくちゃキャリアを積んだ達人の境地として、表面的な音ハメなどをいっさいせずに、堂々と、些細な動きだけで魅せていくいちばんヤバいタイプのダンスだな~と思います。『山田くんと~』のエンディングのほうはまだ割と音ハメ(や歌詞ハメ)などが多く、ふつう寄りですが、それだけに冒頭の雑踏ロトスコープやその次の茜の立ち姿パートの風格が際立っている。あと終盤の、四季の写実的な自然風景を次々に映していくくだりもすごく好きです。



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『アイドルマスターシンデレラガールズ U149』の感想は長いので単体で投稿します。

しました。

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