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TVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』1期(2016)感想




23/6/11~24/6/30


2023/6/11

1話
沼津市の海沿いの田舎というロケーションは最高だし、水着・スウェットスーツは非常に性嗜好に刺さるし、これでアイドルさえやらなければマジで完璧なアニメだったかもしれない。ファンいっぱいのライブステージとかより海辺の風景を映してくれよ!と言うと思う、のちのち。
あまりにも記号的かつ伝統的な各キャラ付けには苦笑してしまうが、しかしキャラの表情や動作でかわいさを魅せることに関してはラブライブのアニメは本当に高水準だなぁと感心させられる。
ライブシーンの3DCGはやっぱり厳しいですね。『プリパラ』に劣るのは言わずもがな、これと比べるとニジガクやスーパースターアニメでのライブ演出は相当に進化していたんだと感銘を受ける。
3年の果南先輩、高校で休学してるってすげぇな。休学キャラには個人的な理由で惹かれてしまうけれど、さすがに高校は行かせてあげて。。

2話 桜内梨子さん勧誘回
っていうか、主人公が温泉旅館の娘で「私、輝きたいんです!」って思いっきり『花咲くいろは』(2011)じゃねぇか!!! どっちも高2だし。



2024/6/2(日)

1年越しに3, 4話みた
きっかけは監督・シリーズ構成が同じコンビの『ガールズバンドクライ』が面白いから。


2016年かぁ~ 今見るとすごく古さを感じる コテコテなかんじが。コメディのノリが全体的にキツイです。コンテ演出はそこそこ上手い(酒井監督ではない)
花丸ちゃんかわいい 「ずら」の使い方は変だけど。ポケモンの鳴き声みたいになっとる
会長(ダイヤさん)とルビィさん姉妹だったのか。

部室が体育館に併設の体育用具室みたいなところなのが良い。背景に体育館のバスケットゴールが見えるのとかワクワクする。学校のなかで「体育館」とはどんな空間なのか。3話では初めてのステージとなった。入学式などの行事/イベントが行われる場所。校舎(日常空間)とは渡り廊下(半-外)で繋がっている場所。

Googleマップで舞台を調べたけど、沼津市のなかでも市街地からは南に下った、西伊豆の海岸沿いなんだな めっちゃ行きたい 以前伊豆半島に行ったときは駿河湾フェリーで土肥に着いて南下したから、見事に通ったことのない場所だった。伊豆三津シーパラダイスってこの辺なんだ。


6/3(月)
5話 ヨハネ加入回
善子=ヨハネさんってこういうキャラだったんだ…… ニコ生なのも時代やなぁ
スクールアイドルランクが5000位から一気に1000前後まで上がった。どうやって換算されているんだ…… てか、大会じゃなくてこんなに常時順位が測られるんだな。
ひと学年3人ずつで3×3=9人組なのか~


6話
廃校で草  でも確かに浦の星女学院のモデルは小中一貫学校で、高校はないので沼津の高校と統廃合は非常にリアリティがあるのがまた笑う。初代の舞台は東京の街中の高校だったよな。
しかも、統廃合を喜ぶ人が複数名いるというのが面白い。μ's狂のチカちゃんは置いといて、田舎の高校だったら街の高校と統廃合されることに肯定的なのは自然だ。初代の伝統を形骸的に引き継ぎながらも、そこには本作ならではの滋味が生まれている。
果南さん、まるでスポーツ漫画によくいる部活を休部中の復帰が望まれる実力者みたいな感じで休学/復学が扱われているのに笑う。休部と休学では重みが全然違うのに! しかし、学校とスクールアイドル部を同一化する視座は全体の脚本にも合っている。
東の山間部をチャリで登って伊豆長岡まで行くのヤバい 前話での沼津マラソンもそうだけど、地域一体の推しスポットを登場させるためにキャラの移動距離がとんでもないことになっている。
異邦人がその土地の魅力を「発見」する展開
絵コンテ酒井和男だけど特にすごく上手いとは感じなかった


6/5(水)
7話 東京回
のっぽパンってローカル製品なの!?
アニメキャラがシリーズ前作の聖地巡礼をする展開
そういやリコさんは音乃木坂出身だったな
曜ちゃんはコスプレ好きなんだっけ 毎回の衣装も彼女が用意してるのかな


6/7(金)
8話 敗北&回想&再起回
(主人公の名字、「たかみ」なんだ……「たかうみ」だと思ってた……)
展開がおおあじだなぁ 挫折展開好きだからボロ泣きはするが、「あんまり良くはないなぁ」と思いながら泣いている。
0票という得票数も、そもそもパフォーマンスの審査方法・基準が曖昧なので、逆にご都合主義だと感じてしまうのが根本の原因か。スクールアイドル部という架空の部活の王道スポ根モノをやる上で、アイドルのライブをどう評価するか、という点は特に描かれずに、舞台に立つ側の頑張りとお気持ちにばかり焦点を当てているので、土台が不安定で、感動しようにも心許なさがつきまとう。現3年生ズは「声が出なかった」て! 挫折の展開が大振り過ぎるだろうさすがに。

理事長と果南さんの関係が当時と反対になっているやつは安直に良かったです。
そして、やっと泣けたチカさんを抱きしめて慰めるのが、幼馴染の曜さんじゃなくてリコさんなのは意外だった。ここの3人の関係、はじめの2話をもうほとんど覚えていないので正直分からないまま観ている。


9話 3年生加入回
挫折を経験して関係がこじれている上世代の回想エピは、呪術廻戦の「懐玉・玉折」みたいで雰囲気がいいね。夏だし。

いつもの安易なエセ外国人枠だと思っていた理事長(マリさん)がかなり良い役回りのキャラで驚いた。果南とマリ、相互巨大感情すれ違い百合やね…… 怪我ってなんだよ、とか、本人の気持ちを無視して留学行かせたいってなんだよ、とか、冷静に考えると色々と粗さが目立ってくるが、まぁ巨大感情百合に全乗りするのが正しい見方なのだろうな。雨中疾走シーンの映像良かったし。

ダイヤさん思ったより蚊帳の外でワロタ、とか言ってたら最後の最後で見事に回収してくる脚本。これはさすがに上手い

果南さんとマリさんがあまりに相思相愛で強いので、ダイヤさんには頑張ってもらってなんとか三角関係に持ち込んでもらいたい。妹ルビィとの姉妹カップリングのほうに傾いてしまうと雲行きが怪しくなるのでやめてもろて。

夏祭りの海上ライブステージの後ろの織物に、千手丸の卍解「娑闥迦羅骸刺絡辻」とコメント付いててワロタ アニメ2期2クール目最終話のあとのコメントじゃん。

チカちゃんと果南さんも幼馴染なんだっけ 曜ちゃんとどっちが付き合い長いんだ

学校の教室ベランダの2階と3階を使っての制服キャッチシーン、学校空間の垂直性を上手く使った演劇のようで良かった。



10話 海の家合宿&千歌梨子回
一連のコメディはマリさんがサボってるのだけ面白かった。
千歌さんと梨子さんのおはなしはよく分からないが、未明の堤防というシチュエーションだけで満足した。
曜ちゃんが嫉妬して王道に拗れる話になるのか? あんまり面白くなさそうだが……


6/30(日)
11話 曜-千歌回
本家dアニメストアに再登録して観た。スクショが出来ないストレスがえぐい。特に今話は背景美術も舞台演出もめっちゃ良かっただけに……。

曜ちゃんそういう感じの幼馴染キャラだったのね。曜-千歌-梨子の関係は、古典的な「不遇幼馴染ヒロイン-主人公-運命の出会いヒロイン」という馴染み深いもので、こういうの好きだよ、ええやん……となった。泣いた。
これまで千歌とその隣の梨子の家はけっこう映してきたけど、あまり映らなかった曜ちゃんの自宅をここで舞台にするのが良い。千歌と曜の家の位置関係・距離感の設定もうまい。それでいて、どれもすべて「海」沿いの堤防で繋がっている、という内浦の地理的バックグラウンドをうまく利用していることに……興奮する!! こういうのがいい「ローカル」アニメなんだよなぁ!最高!!

「嫉妬(ファイヤー)」していると鞠莉に指摘されながらも、私が危惧していたように曜ちゃんはいわゆる重いヤンデレ系幼馴染ではなく、むしろ自分の(個人としての/千歌にとっての)凡庸さに自覚的(卑屈)で、自分なんか……と(梨子に対して)"後ろに引いて" しまうキャラだったので、とても好感が持てた。
だからこそ、(深夜なのか未明なのかようわからん)自宅のベランダから、曜が外(下)にいる千歌に駆け寄るときに、玄関から後ろ向きで歩んで千歌のほうへ後ろ手に手を伸ばす仕草に感動する。

その前の、自分と千歌の関係に悩んでいた曜に「第三者」たる梨子から電話がかかってきて千歌の真意を聴いて救われる展開も好き。三角関係のライバル同士でやり取りをしてほしいので。(『WA2』雪菜TRUE)


「嫉妬ファイヤー」の渡り廊下シーンで、曜は「鞠莉ちゃん」と親しげに呼んでたけど、ここのふたりも付き合い長いんだっけ。なにもわからん。アクア9人全員の付き合いの履歴表がほしい。誰と誰がいつ知り合ったんだ。

幼馴染の千歌のことが大事な曜と、もちろん曜のことも大事だけど基本的に「みんな」に愛を開いていく(天性のアイドルの)千歌、という非対称な関係であるとこの11話から読んだけれど、それを踏まえると、ふたりが堤防沿いの道路で抱き合ってからの感動の流れではじまるライブステージはかなり残酷だなぁと思った。

はじめ8人のフォーメーションが、千歌を中心(センター)として同心円状にほか7人が後ろを囲む構図だったこと、そして東京でピアノコンサートの舞台に立っている梨子とのクロスカッティングなどからは、「千歌にとって曜は大切な友達/仲間のひとりに過ぎない」(曜にとって千歌はそうではないのに……)という、あまりにも気の毒な事実を揚々と歌い上げているようにしか見えないので。それもふくめて、悲恋の幼馴染キャラの話としておいしく消費はできるんですが。

あと、今に始まったことではないけれど、『ガルクラ』など、最近のアニメと比べて、ラブライブは美少女キャラクターをとにかく可愛く煽情的に見せるのがうまく、そういう映像トーンと共に「青春!感動!」というスポ根ノリのおはなしをされるので、ヒヤヒヤするというか、後ろめたさがすごい。ノースリーブで腹チラ・背チラが多発する夏服とか、太ももの主観カットとか、ライブシーンのローアングルのカットとか……。そういう演出ゆえに、自分はサンシャイン!!アニメのキャラ達をポルノとして性的に消費せざるを得ず、それはそれでいい(嬉しい)んだけど、本筋の「感動」ストーリーに乗るためにはどうしてもノイズになってしまうのも偽らざる真実なので……。

もっとポルノ性をストーリー面でも押し出してくれれば素直に受け取れるんだけど。『このすば』や『変人のサラダボウル』のようなライトノベル・コメディとか。でもラブライブってラノベでもないんだよな。エロゲでもない。それらは90~00年代の2次元美少女ジャンルだから。たほうラブライブやアイマスのアニメは、「萌えアニメ」と青春スポ根を組み合わせて2010年辺りに生まれたオリジナルなジャンル。初代のアイマスアニメが2011年。初代ラブライブアニメが2013年。それ以前のアイドルアニメって何があっただろうか。

なるほど。2010以前はマクロス系列や魔法少女モノの亜流ジャンルとしてアイドルアニメがあったっぽいな。今敏『パーフェクトブルー』(1998)なんかは思いきり女性アイドルを対象とした歪な欲望(ストーカー)を主題にしているわけで、やはりアイマス・ラブライブ以降のキラキラした(かつ熱血な)「アイドルアニメ」とはまったくジャンルが異なる。

こうしてみると、同じく2011年の『プリティーリズム・オーロラドリーム』もまた重要だろうなぁ。セラムン・おジャ魔女・プリキュア等の女児アニメ文脈のなかで出てきているから、深夜アニメのアイマス/ラブライブとはまたちょっと違うけれど。

2011年には『うた☆プリ』もあって、まじでここを境に一気にアイドルアニメが華開いていることがわかる。男性/女性アイドル問わず。大人向け/子供向け問わず。やっぱり3次元アイドル……AKBの流行がデカいのかなぁ。(2012年には『AKB0048』アニメ化)

80年代のアイドルアニメはアイドルに憧れる女児向け作品であり、実在のアイドルとタイアップしたアニメや、魔法少女ものと組み合わせたアニメが中心だった。
近年ではソーシャルゲームやアーケードゲームからの『メディアミックスの一つとしてのアニメ化』が増え、大きなお友達向けが半数近くを占めるほか、女性向けの「男性アイドルもの」も増えている。
また、近年のアイドル事情(おニャン子→モーニング娘。→AKB)からグループアイドルが多い。

信頼性は不明だが、そういう意見もあるのか。昔はそもそも女児向けアイドルアニメが主流だったと。『マクロス』はSFロボットアニメ文脈(と80年代の美少女ブームの融合)だろうけど。



12話 音ノ木坂聖地巡礼回

ラブライブ!(大会)の話になると途端にどうでもよくなる……が、今話はあからさまにベタ/メタ「聖地巡礼」回だったので、聖地巡礼のオタクとしてとても面白かった。
果南さんのだぼだぼパーカー私服好き(ファッション無知並感)

こうして後継作中でキャラに前作の聖地巡礼をさせることができるのは、こういうシリーズコンテンツの強みだよなぁ。μ's 神格化されまくっててウケる。まじで神社のお参りのようにお辞儀をしていた。

「ここには……何も残ってなくて」by 音ノ木坂のモブ(CV水瀬いのり)
偉大なるμ'sの皆さんが自分たちの存在の足跡をまったく残していないのも、まさしくアニメの舞台と現実の聖地の関係を思わせる。そうなんだよ、いざ行ってみて、そこにキャラの足跡が「何もない」ことに逆説的に私たちは感動し、ますます作品を好きになるんだよ。

「わたしは良かった……ここにきてはっきりわかった。……わたし、このアニメ(学校)好きだったんだなって」←完全に聖地巡礼オタクの感想ですありがとうございました。

根府川駅もサンシャインの聖地だったのね。

あっ、降り立っていた夕暮れの海岸は根府川じゃなくて、もうちょっと東の国府津なのか……叙述トリック。根府川ってあんなに降りれるだだっ広い海岸あったかなぁとは思ってたけど。

しかも初代の聖地でもある、と。なるほど、とことん初代の「聖地巡礼」回だったわけだ。音ノ木坂とは違って、ここが「聖地」だと認識しないままに行われる聖地巡礼…… それは彼女らAqoursがμ'sの栄光を追いかけることをやめて、自分たちなりに進んでいくことを決意するプロットともきれいに噛み合っている。



13話 最終回

学校説明会への入学希望者を増やすためには、スクールアイドル活動だけでなく、もっと現実的な、通える範囲に当該年齢の中3女子が何人住んでいるのかのリサーチとか、通学インフラの整備とか、広報とか、したほうがいいのでは……?というクソマジレス

にしても、やっぱりこのアニメは学校空間の映し方がとても良い。統廃合しても沼津のもっと都会の大規模校には通えるわけで、それでも統廃合阻止を目指すということは、浦の星女学院というこの学校、この校舎、この空間、この "場所" のかけがえのなさをきちんと確かめていくことを意味する。それを、夏休みに毎日学校で練習をしてAqoursの仲間たちで時間をともにして青春を過ごす、その過程で見せていく。実に良く出来ているアニメだと思う。
静岡県沼津市内浦という土地の固有性、localityをいかにアニメとして表現するか。それに見事に成功している。

初代の「東京」との距離感、位置関係も完璧。1クール中で2度も東京に出かけていることからもわかるように、沼津ってそんなに東京から離れていない。日本全国スケールでみればかなり近い、東京(首都圏)の「郊外」といってしまってもそれほど間違いではない地域だ。そこがいい。東京から少しズレた周縁の「田舎」で物語を新たに立ち上げること。これは『ガルクラ』の川崎ともちょっと通ずるところはあるだろう。(あっちは実際のロック文脈があるからより東京に近く、こっちは「スクールアイドル」という架空の抽象的な文化がテーマだから、東京の重力圏からもう少し "自由" になれる。それでも依然として「東京」から完全に自由ではない──というのは「ラブライブ!」本選の会場が東京であることからしても重要。)

あるいは、この『サンシャイン!!』のあとのラブライブ!作品の舞台を見ていくと、『虹ヶ咲』(お台場)も『スーパースター』(原宿)も東京23区に回帰しているのは興味深い。『蓮ノ空』で金沢に飛ぶけど……。


規定で他のみんなはステージに上がれないのワロタ。そりゃそうだ。
「全校生徒」がライブ会場のこの場にいる、ということ。田舎の小規模校ならではで良い。学徒出陣・動員制っぽさ(アイドル全体主義)はちょっとイヤだけれど。。

前回までのラブライブ!サンシャイン!!を振り返る学芸会のような舞台。こうして見ると、作曲能力がなくて困っていたときに都合よく梨子が "東京から" 内浦に転校してくるのも象徴的だな。ようは才能・スキルを東京にアウトソーシングしているということ。原発の逆だ。(いや正確にはアウトソーシングではなく人材の引き抜き? 梨子視点では都落ち(貴種流離譚)でもある。)

あ、東海大会は名古屋でやってるんだ。気付かなかった。名古屋ガイシホールかぁ
名古屋-沼津-東京という東西の位置関係。むしろ東京から離れているのはおもしろい。

ニコ厨なので「ゼロ……」「ゼロ……」「ゼロ……」連呼シーンでカウントダウンオナサポ音声ネタのコメントが脳内に見える……見える……(←じぶんの頭で思ったしょーもないことを何でもかんでもニコ動のせいにするのは不誠実だと思う)

「0から1へ」というAqoursの気持ちの乗ったコンセプト自体はここまで観てきたから理解できるけど、とはいえ、メタに作品外のラブライブ!シリーズ内の位置付けを見れば『サンシャイン!!』は「1から2へ」をおこなっている作品なのは明白なので、作中で殊更に「0から1へ」を強調されると、それは本作が初代の大ヒットの上に成り立っているという文脈、「1」を必死に覆い隠そうとしているようにも思えてしまって少しだけモヤる。たしかに前話で初代との文脈の再確認と切断を扱ったとはいえ、だからといって「1」を完全になかったことにするのは違くない? いや、もちろん彼女たちはそういう意味で「0から1へ」と言ってるわけじゃないことは分かってるんだけど…………

クライマックスのライブパフォーマンスによって、遂に入学希望者が0から1へとカウントアップする。(『サマーウォーズ』)

舞台上で千歌が客席に必死に手を伸ばしていることからもわかるように、この作品を締めくくるライブの目的は本質的に「勧誘」である。ラブライブ!シリーズのアイドル礼賛はしばしばカルト宗教みを帯びる(なぜならアイドル産業と宗教産業は本質的に同じ構造なので)けれど、モロに自分たちの学校に「勧誘」するためにアイドル活動をおこなう、という描写をここまでやってくれると、かえって清々しい。アイドル活動の本質を突いている。

そうなんだよなぁ。アイドルって原理的に仲間を「勧誘」して自己増殖を繰り返すことで生き永らえていくミーム(文化生物)なんだよなぁ……と頷きながら観ていた。(映画『トラペジウム』然り)

ライブ会場の円型構図──中央のステージ上のアイドル(偶像)を観衆(信者)が取り囲む──もまさしく宗教的儀式といった趣である。サイリウムとかね……。浦の星の全校生徒や家族たちが席からステージ付近まで降りてきたのは笑っちゃった。

それでいうと、学芸会中にヨハネだけはステージ上ではなく観客席後方(上方)の扉からスポットライトを浴びて登場してステージへと「堕天」したのはおもしろかった。会場はすり鉢状なのでまさに垂直方向には「落ちる」動線だし、それに天使と悪魔というキリスト教的な含意を重ねているのもややセンシティブでおもろい。


お~終わった~~
「君の心は輝いてるかい」聞き覚えある~これだったんだ。

「ラブライブ!」の大会(東海大会)の結果などは一切映さずに、ただ入学希望者(=ファン)が0から1へと増えた、という点を以ってAqoursの念願の達成、ハッピーエンドとする。これは要するに、「ラブライブ!」という大会での勝ち負けは最初からどうでもよくて、統廃合阻止のための広報手段として「ラブライブ!」という大会およびスクールアイドル活動を位置付けているということ。まぁ初代だって廃校阻止が目標だったから、ラブライブ!シリーズは一貫して「アイドル」を手段として用いているということの確認に過ぎないのかもしれないが。

しかし、1話とかの時点では統廃合の話は知らず、千歌はただμ'sへの憧れから、「輝きたい」という青春の衝動からスクールアイドルを始めたはずで、たしかに「ラブライブ!」という大会そのものはハナから目的ではなかったにせよ、「スクールアイドルとして輝く」という当初の実存的な目的が、いつの間にか「(ファン=入学希望者を)0から1へ」という勧誘目的にすり替わっているのではないか?とは思うかな。

たしかに8話での「0票」=「0人」という大きな挫折をきっかけに、スクールアイドルとして輝くためにはまずはファン数を0から1にしなければならない(輝いているとは自分で納得できない)、という意識の転換が起こっているのだと読めば、それほど不自然なことではないか。目的がすり替わっているというよりも、目的に向かって進む最中に、ふわふわと曖昧だった「目的」の内実が具体化しただけの話。それは「変質した」とも言えるが、地続きの変化である。スクールアイドルとしての自己実現のためには(ひとりでもいいから)他者の承認が必要である、という、内向きから外向きへの転換。

青春モノ、萌えアニメ、アイドルものとしてはまぁそれなりに楽しめた……という感じだけれど、沼津市内浦を主な舞台としたローカルアニメとしては極めて高く評価したい。(単純にめちゃくちゃ自分好み)

シンプルに、内浦の海沿いの田舎町というロケーションが超好きなのが第一にあって、さらに「学校」という空間を称揚する(必然性のある)アニメとしても非常に良かった。スクールアイドル部の部室が体育館の中にあるのがめっっっちゃ好き。なぜなのかはうまく説明できないけど、部室でワチャワチャしてる日常シーンの背景(遠景)に常に体育館内のバスケットゴールとかステージとか、体育館外の景色が映っていることが直感的に嬉しい。興奮する。屋上シーンの背景で内浦・西伊豆の海岸線の地形がうかがえるのも同様に大好き。

ラブライブ!シリーズのローカリティ、というテーマはちょっと自分のなかで持っていたいな。金沢の『蓮ノ空』を観るときも念頭に置きたい。とはいえ、今のところ蓮ノ空はサンシャイン!!ほど地域性の表現を押し出してはいない。アニメではなく3DCGモデルでのノベルゲーム風会話劇である制約ゆえに仕方ないとはいえ……。まず金沢って内浦ほど田舎じゃねぇしな。栄えている。学校は山奥にあるっぽいけど、浦の星女学院のように明確にモデルがあるようには思えない。むしろ山の中という虚構性・ファンタジー性に立脚しているように思える。

好きなキャラは、1年生では花丸ちゃん(ずら、のっぽパン、かわいい)、2年生では曜ちゃん(幼馴染)、3年生では果南さん(ウェットスーツのエロス、私服のセンス、さっぱりした性格)です……。

学年では3年生トリオがまぁ好きだけれど、もうちょっとこの3人の過去と現在の描写欲しいなぁと最終話で思った。あと、果南-鞠莉のペアが激重両想いであるのに対してのダイヤさんの存在・ポジショニングがいまだイマイチ不明瞭なので何とも言えない。見ていると加入後はネタキャラとして使われまくっていて、あまりにそれだけだとどうしようもない。妹ルビィとの関係もいいけど同級生ふたりとの絡みをもっと見たいです。


さ~て、ではいよいよ、最終話が賛否両論だという第2期にいくか~~~~~

※最終回が賛否両論だったのは2期ではなく↑で観た1期のことだと有識者オタクから教えてもらいました。そ、そっかぁ……

(最終話がなぜ不評だったのかを聞いて)

(いきなり千歌がライブ会場から出ていくのがマナー違反だ、という意見に対して)……そこらへんは自分も「脱出しててワロタww」と見ていたけれど、少なくとも怒りとか不平の感情は抱かなかった。ニジガク2期とかは本当に怒りと虚無の感情で見ていたので……

(寸劇パートがキツい、という意見に対して)……自分たちの道程を寸劇化するのは、「前回の、ラブライブ!サンシャイン!!」という各話アバンのフォーマットもそうだけど、ようはこのアニメ自体が浦の星女学院の勧誘プロモーションビデオとして解釈できるので、茶番っぽいのを見せられる恥ずかしさはあれど、まぁそれほど間違ったことはやってない。勧誘するためにはまず自己紹介から始めなければならないのだから。〈物語〉と〈音楽(パフォーマンス)〉による動員をしている。

(オチが投げっぱなしである、という意見に対して)……オチも投げっぱなしどころか、書いた通りちゃんとまとまっていると思う。0→1になった時点で目標達成だし、その「1」はもちろん作中で映してはいけないのでAqours 9人の勝ち語りに着地するのが無難であり、PVとしても「こちら」側への呼びかけが適当だと考える。

なんか図らずも本作をめっちゃ擁護してるみたいになってしまいましたが、まぁ「そこそこ好きだった」程度です……今のところ。でもマジでこの最終話で荒れるのはよく分からない……



1期を見終わった日にちょうどデカい告知がされていた。9周年かぁ……ファイナルライブかぁ…… ほんと末永く愛されてるコンテンツなんだなぁと、今日アニメ1期を見終わったばかりのオタクなりに素朴に思います。



・追記

2期みました


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