見出し画像

対話型鑑賞スケッチ

森永先生にお誘い頂き、参加した対話型鑑賞体験会。

終始暖かい雰囲気の中で、沢山のモヤモヤと気づきを得られました!

今回は対話型鑑賞のレポートをお届けます。

対話型鑑賞とは?

そもそも対話型鑑賞というものを知らずに参加しましたが、その意味から分かりやすく解説してくださりました。

作品に関する知識偏重のアート教育への疑問から1980年代に米ニューヨーク近代美術館(MoMA)で開発された,参加者同士の対話による気付きや感じ方を重視した鑑賞法である。
医学界新聞2020/7/13:対話型鑑賞座談会の記事より)

とても固い説明ですが、、、美術作品の知識(作品の意味や技法、作者などの情報)をもとに作品と向き合うのではなく、作品を見た時の率直な感想や、想像されることをグループで話し合いながら、作品を楽しむ体験を共有する手法です。

森永先生自身、対話型鑑賞を医学教育に取り入れる第一人者として、「ミルキク」を創業して体験活動を広めています。


お試し〜脳はサボっている!〜

最初にスライドで提示されたのは、コンビニのロゴマーク。

30秒ほどで隠され、
「セブンイレブンのロゴは大文字でしょうか?小文字でしょうか?」
と尋ねれらました。

正直、全く思い出せませんでした(笑)

そもそもSevenもElevenも書いてあったっけ?
「7」という数字が書いてあったような。
色は緑と・・・?

ほぼ毎日見ているし、30秒前も見たはずのマークが全く思い出せない。

「脳はパターン認識すると詳細まで観察することをサボってしまう」

というメッセージをとても分かりやすく示して頂きました。
皆さんは下のロゴマーク、しっかりイメージできましたか?
大文字と小文字の表記がバラバラな理由は調べてみてください!

画像1

次に示されたのは、1枚の絵画。

西洋風の油絵で、中心に女性が描かれ、周りに瓶や果物が飾られ、さらに背景には無数の人が描かれています。

2分ほどでスライドは移り、感想を共有しました。

感想の内容は見えているものや感じたこと、何でも大丈夫です。僕は上に書いたような内容や、女性が憂鬱そうな顔をしていること、料理が豪華なのでパーティーの光景だと話しました。

しかし、絵画の端っこに描かれていたものを森永先生に聞かれると誰も答えられません。そこからこの絵画のシーンを意味づける重要な意味が明かされます。

大きく描かれた人物やその周りの物体には目が行くけれど、端っこに重要なメッセージがあることには、なかなか気付けない。

✔ 短時間で全体を観察する能力
✔ 描かれている事実と、自分なりの解釈を区別して理解する能力
✔ それらを自分の言葉で表現すること

対話型鑑賞では、これらの能力が得られることが分かりました。


医療にどう活かすの?

先程あげた項目を聞いて、医師であればハッとさせらる方は多いと思います。

日常の臨床現場、特に限られた時間で診断を急ぐ外来では、短時間で患者全体の情報を過不足なく把握する必要があります。

さらに、患者さんが語る病歴を客観的に把握することで病気の診断ができますが、医師は「これかな?」と病気の候補を上げてその可能性が高くなるほどに、他の病気の可能性をほとんど考えなくなってしまいます。
病歴や検査所見の中の事実と、自分の中での解釈を常に分けて、整合性を確かめ続けなければなりません。

他にも、患者さんの病気ばかりに目が行ってしまう中で、社会背景や家族本人の想いまで考えられる思考を養います。
他職種や患者さんにも分かる言葉で伝える能力や、コミュニケーションで生じた感情をメタ認知する能力も身につくそうです。(例えば「嫌な人だな」と患者さんに対して感じた自分が「なぜそう思ったか?」を考えられる思考回路です)


いざ体験!

体験本番前にはもう十分納得できる説明をして頂き、いざ対話型鑑賞の本番になりました。

スライドに示された絵には何の説明もなし。
とりあえず2分間、くまなく眺めてくださいとのこと。

その後に自由な発言タイム。
今回の参加者は全員ドクターでしたが、何でも良いですと言われると途端に黙ってしまうのは、やはり答えがほしい理系人間の性でしょうか。

ファシリテーターの森永先生に何人か当ててもらう中で、描いてある事実とそれについての解釈を分けて話していきましたが、
事実の着眼点も解釈も人によって全く異なることに驚きました。

様々な解釈によるストーリーが挙がりましたが、森永先生は否定も肯定もせず、どの意見もただ受け入れてそれぞれの意見をゆっくりと絡めていきます。

一通り参加者が発言し尽くしたところで終了となり、答えのない議論に慣れていない僕にはモヤモヤが残りましたが、なぜか今までにない温かい気持ちになりました。

今回の体験会の記事と感想はこちらにまとまっています。

まとめ

大学の医学教育では「診断が分からなければ負け」という試験を何回も受け、治療法も教科書やガイドライン通りでなければ訴訟で負けると教え込まれました。

研修医1年目の僕が参加するには恐れ多すぎるベテラン医師ばかりの会で、これが症例検討会などであれば、ひたすら聞きに徹して勉強させてもらっていたと思います。

しかし最年少の僕でも臆することなく自由な解釈を発言できたのは(たぶん参加者の中で1番話しました笑)、
雰囲気を整えてくれた森永先生のファシリテーション能力と、正解のない答えを批判せず受け入れてくれた参加者の方々のお陰だと思います。

対話型鑑賞を通して、相手に伝わる言葉の能力も高まりますが、
相手に伝えようとする心のハードルを下げるだけで大分息がしやすくなると分かりました。

次回も体験会が企画されているため、スライドの絵は提示しません。

少しでも気になった方は、11月23日、12月16日に申し込んでみてください!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?