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子供の未来のために考えるべきは、政治でも、教育でも、環境でもない

Facebookのタイムラインで、【ご報告】の文字が見えた。
会社の同僚の投稿だった。
第一子の誕生を告げるひとつ前の投稿から1年半程経過していた。

同僚の間ではベビーラッシュで、毎月のように出産報告の投稿が流れていた。
だから彼の投稿もてっきりそうだと思った。
「年子で2人目か」と思いながら投稿の【もっと見る】をクリックした。

驚いて息が止まった。

そこには、彼の妻が亡くなったという内容が綴られていた。


結婚する前から、彼女のことは同僚の間で有名だった。
可愛らしくて、確か随分と年下だったから、亡くなった時もまだ20代だったはずだ。

わざわざFacebookに投稿した彼は、誰かからの助けを持っている気がした。
文面に迷いながらもお悔やみのメッセージを送った。
彼からはすぐに返信がきた。

『健康診断、絶対に行けよ』、と。


子供を産んでから、病院に行くことが増えた。
予防接種、検診、発熱、下痢。
毎月のように病院には行く。
しかし、自分のために病院に行ったのは一体どれくらい前のことだろう?

親になってからは、体調不良になんてなったことがない。
いや、嘘だ。気付かないフリができるようになっただけだ。
38度台の熱なんかじゃ寝込んでられないし、咳はのど飴で治せるようになった。
自分の体調なんて顧みずに子供に尽くしてこそ親でしょ?
そんな思い込みが、私を強くしてしまった。


彼女が亡くなった原因は、肺がんだったと聞いた。
きっと、変な咳をしていただろう。
胸も痛かったに違いない。

でも、彼女の側には片時も離れられない小さな赤ちゃんがいた。
旦那は出張ばかりのワンオペ育児で、病院に行く時間なんて無かったのだろう。
母乳育児だから薬をもらったってどうせ飲めないし、と思ったのかもしれない。
「大丈夫。そのうち治る」と、自分の不調をみて見ぬふりをしている間に、あっという間に病魔は彼女を飲み込んでしまった。


子供を産んでから、考えることが増えた。
政治も、教育も、環境問題も、子供達が将来生きる世界に不安は沢山だ。

でも親が子供のために考えるべきは、それだけではない。
子供を守るために、親はまず生きなくてはならない。

新聞はちゃんと読まないし、環境破壊は気にせずおしりふきを使いまくる。
それでも、隙間のない仕事と育児のスケジュールの中で、私は今年も意地でも時間を作って人間ドックを予約する。

それが親として、子供の未来を守るためにできることだと信じて。


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