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ハワイとボディポジティブ

ダニエル・K・イノウエ(ホノルル)空港に到着して、一番最初にハワイで感じる喜びは「ルッキズムからの解放」かもしれない。
さまざまな国からの移民が暮らすハワイには、多様性があふれ、日本のステレオタイプ的な美を一気に忘れ去ることができるのだ。

飛行機を降りる。出迎えてくれる現地の空港スタッフ。小麦色に日焼けをした人、プラスサイズでもボディラインが出る服を着る女性、みな笑顔で3本の指を折り曲げて私に向かって振ってくれる。一緒に飛行機を降りた客だって、おもむろに纏っていたものを脱ぎ始め、年齢関係なく肌を出し始める。その瞬間が、私はとても心地いい。

もちろん日本にも良いところはたくさんある。それでも未だ蔓延るホモソーシャルとミソジニー、特にそこから派生している「ルッキズム」は窮屈でしょうがない。電車に溢れる脱毛の広告、やたらと美白をおしてくるCM、細いモデルばかりで、修正も加えられているであろう雑誌。そしてこれらを無意識のうちに目にし続けている男性たちからの「美」の押し付け。
「ルッキズム」に溢れた日本では、気軽に短パンだってはけないし、タンクトップを着るのも最近ちょっと気が引ける。下着が透けてないかとか、肩紐が見えてないかとか細かいところまで常に意識をしてしまうのだ。

空港からワイキキに向かい、ビーチ付近に到着する。もう安心。みんな人目も気にせず水着で歩いている。私も完全に解放される。
ボディポジティブに溢れたハワイのビーチは本当に心の栄養ドリンクだ。おばぁちゃんだってビキニを着てくつろいでいるし、もちろん私の母親世代の人もビキニを着て、自信に満ちあふれた様子で横たわっていたりする。日本では考えられるだろうか。もはや、おばあちゃんのしわにも心地よさを感じ、太陽に照らされた肌のシミにもなんだかうっとりしてしまう。

日本にいるときは、100グラムでも体重が増えると気になってしまうのに、もうちょっと肉をつけた方がステキなんじゃないか、なんて気分にもなってくる。ハワイの大自然と対峙すると、自分の身体にパワーをしっかりと蓄えておかないと、なんだか飲み込まれてしまいそうな気がしてしまうから。

こんなことを言っておきながら、帰りの飛行機に乗って機内食を食べながら、「絶対太ったからこれは残そう」だとか「あぁ日焼けしすぎたかな」とかそんなことを考えてしまうのだから、この解放はハワイ限定の幻に終わっってしまうのだった。
女友達に本当に配りたいハワイからのお土産は「ルッキズムからの解放」なのになあ。


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