明治大学構法計画(門脇耕三)研究室
学びとあそび あそびに学ぶ -2020年度研究室会議総括レポート-
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学びとあそび あそびに学ぶ -2020年度研究室会議総括レポート-

明治大学構法計画(門脇耕三)研究室

0.はじめに

こんにちは、M1の村上です。2月22日に行われた研究室振り返りゼミをもって2020年度の構法計画研究室の研究室会議は最後でした。本来は研究室会議のレポートを書く場ですが、今回は2020年の門脇研を振り返り、村上の視点で総括してみようと思います。


1.激動の1年

今年1年は僕自身、関西の大学から明治大学院に進学した初めの1年であり、学部時代から志していた構法計画の具体的な研究をスタートする1年であり、また入学前からのあこがれの先生や、先輩方といろんな話をしてみたい1年だ! などと勇み立っていた4月に緊急事態宣言が発令されると、少なくともその期間は大学に入校する事もままならず、出鼻から大きな肩透かしにあった春でした。ともあれ、部分的な不便は確かにあるもののオンラインとオフラインを併用した研究室運営はこの1年でずいぶん僕個人にも、門脇研にもなじんできました。


2.オンラインコミュニケーションが我々から奪ったもの

今年はオンラインの利点を生かし建築以外に文系の授業にもたくさん潜っていた村上ですが、中でも門脇さんの授業が印象的でした。オムニバス形式で1回限りの授業、ここでは内容は割愛しますが

「配布資料しません、スライド作りません、今日は雑談します!」

と衝撃的な宣言で始まった授業でした。この宣言の背後にあった問題意識は「オンラインコミュニケーションが我々からうばったもの」でした。


-zoomには「あそび」が設計されていない-

ここで、門脇さんが指摘したのはzoomに「あそび」が設計されていないということです。たしかに、zoomなどのオンラインコミュニケーションによってミーティングは場所に縛られないものとなり、友人や家族といつでもつながれる状況はこの1年ずいぶん世間に浸透したわけですが、一方でそれらのコミュニケーションはすべて個人の「あの人と話したい」「あの授業を聞きたい」という主体的な要求に依存せざるを得なくなりました。
つまり、オンライン下におけるコミュニケーションは個人が選んだ範囲内でしかおこらず、また、議題以外の雑談を限りなく排除しました。
このような偶然のコミュニケ―ションや、無目的な雑談はそのほとんどが直接的に役立つものではありませんが、そのうちの1握りがまれに思いもよらないクリエイティビティを含んでいることを門脇さんは指摘します。大学が成す役割として、このような「偶然」を担保することが多分にあると痛感しました。振り返ってみると今年1年、僕自身の「偶然」は門脇研の活動によってかろうじて支えられていた事に気づかされます。



3.門脇研の1年

大学の規定で予定より1月程遅れてオンラインでのスタートを余儀なくされた2020年度の門脇研ですが、この状況をできるだけ楽しもうと始まったオンライン企画が構成員の部屋紹介でした。


-部屋紹介-

手始めに自称ミニマリスト女子大生 が自室のものを減らす工夫や、おすすめ商品をyoutuberさながら饒舌かつ赤裸々に公開すると、毎週次々に構成員の自室と生活に対する視座が明らかになっていくのがおかしくもあり、何やってんだろうという戸惑いも少なからずありましたが、最後には念願の門脇邸にお邪魔して先生にお家を紹介していただきました。

20200827_先生宅訪問_210224



-研究室ステッカー制作-

「研究室のステッカーほしいよね」という鶴の一声で始まった、研究室のステッカー制作プロジェクトstkですが、「男の子的カッコよさ」と「門脇研のあり方」の親和性について議論が盛り上がりました。

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「ヘッドロココ」(男の子的かっこよいビックリマンチョコシール)
http://kaitori-gp.com/hinmoku/post_1827.htmlより

「男の子的カッコよさ」とは過剰で洗練・統制されない、デザインが持つカッコよさ

を指しますが、一方で

「門脇研のコンセプト」はヒエラルキーを持たない個が自由にふるまいながら、それらが朧げな全体像を成している様

この2つを橋渡しするデザインとして、研究室にあるガジェットの集合体が選ばれました。張り方や並べ方に余白があるステッカーの特性をうまく使って、ガジェットの集合体としての全体像やヒエラルキーを規定しないデザインは、B4ながらよく考えられていて大変勉強になりました。

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-卒計テーマ決め-

とまあ、なかなか建築の話が始まらない春でしたが5月にはB4による卒業設計のテーマ発表がありました。今年の門脇研はどんな卒計が繰り広げられるのかとても楽しみでしたが、ふたを開けてみると

「建築というか洋服の、特にステッチが好きです(真顔)」
「花様年華という映画が好きです(真顔)」
「私はミニマリストです(真顔)」

と、どうやって建築にしていくのか、アドバイスする先生や先輩の頭を悩ませる楽しい発表ばかりでした。(笑)


-家具の制作プロジェクト-

ここ数年毎年のプロジェクトとして定着してきた家具プロですが、今年は自宅での作業を余儀なくされた人に向けて、一般的な建材ではなく、市場で手に入るものを使った転用家具の制作でした。オンライン下で議論するのも難しい状況でしたが、twitter上でのインプレッションを意識した公開方法が功を奏し、建築業界内外から多くの反響をいただきました。

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-カーテン制作プロジェクト-

研究室のカーテンを作るプロジェクトkkkはテキスタイルデザインのオンデルデリンデさんのオンラインレクチャーから始まり、日暮里の問屋街で布の買い出しをしたり、1/20模型とモックアップを行き来しながら楽しく制作しています。(随時note更新中)


こうして振り返ってみると、門脇研に在籍していないと行わない(建築の研究室がプロジェクトとして扱わない)ような活動が多くありました。もちろん構成員が実施の設計に携わっていたり、個人で建築のコンペに取り組んでいたり、新建築の読み合わせや読書会を行っていたりなどここに書ききれないいわゆる建築っぽい活動も裏では行っていますが、特に今年はオンラインという状況を楽しみながら、建築という枠にとらわれず多方面に活動の幅を広げた1年だったと言えます。



4.学びとあそび あそびに学ぶ


-卒計の成果-

はたから見れば遊んでいる風に見えるくらいこの状況を全力で楽しんだ1年でしたが、同時に得た成果も大きなものでした。特に今年のB4の卒業設計の成果には目を見張るものがあります。学内外での評価ももちろんですが、それぞれ自分の興味から出発したテーマと最後まで向き合い、それらがきちんと卒業設計として着地していて

「建築というか洋服の、特にステッチが好きで(真顔)」
→建築と衣服の類似性・差異性を研究。雑誌被覆建築創刊。

「花様年華という映画が好きで(真顔)」
→香港の集団的記憶を映画手法を用いた建築群の体験としての保存。

「私はミニマリストです(真顔)」
→ミニマルな暮らしの背後に潜む、膨大な資源の浪費をアイロニカルな建築像として顕在化。

ここで触れていない構成員含め、全員が高いオリジナリティと完成度をもって「作品」として卒業設計を仕上げており、関心どころか畏敬の念さえ抱きます。

https://app.conceptboard.com/board/zud4-30ck-z8p5-mbh8-a174


-修論の成果-

修士研究の成果も同じくらい大きく、特に今年は卒業設計での興味を修士研究として昇華し、どれもB4から数えて研究室3年間の集大成として相応しい研究が並びました

・建築生産を取り巻く多様な因子と建築の現れ
・建築生産自体への新たな可能性の探求・示唆

という2軸でとらえると、どの研究も互い関係しあっていて、門脇研の修論発表は個としてのオリジナリティだけでなく、群として不思議な像を描いているのが印象的でした。



-総括(私見)-

今年の活動を通して、門脇研のフィロソフィーとして等価交換を前提とした直接的な学びではなく、間接的であれ回り道できる余白(あそび)が開かれている学びを重要視する態度を感じました。
その態度は卒業設計のテーマ決めの議論に見ることができます。門脇研では課題を解決する手段としての建築を構想するのではなく、自らの興味から出発した研究を深める中で、誰にも気付かれなかった課題を発見する過程に重きを置いていました。



-研究室としてのふるまい-

このような学びの態度を前提としたときに構成員個人は必死に学びと遊びながらたくさんの余白(あそび)を発見することが求められます。
そして、研究室ではその「あそび」を共有しそれらを客観的に評価して時には補助線を引きながら一緒になってばらまかれた伏線を手繰り寄せる場としてのふるまいが求められるのではないでしょうか。

「学びとは人生における迂回路の制作である」

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(https://twitter.com/kadowaki_kozo/status/1334854114065350659?s=20)


2021年度も、今年以上に学びとあそび、あそびに学ぶ研究室であればいいなと思います。





※これらはすべて村上個人の意見あるいは妄想です。

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