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不動産投資の特徴:固定資産税の費用化の時期によって業績がブレる(その1)

日銀の金利政策の修正によって金利が上がっています。
【不動産価格=物件純収益÷物件利回り】なので、金利が上がれば物件利回りが上がり、不動産価格は下がります。
これがJ-REITの価格が下がっている主な要因です。
 
さて、今回は物件利回り(キャップレート)の話ではなく、物件純収益に関する話をします。
 
今回の話題は、固定資産税……ちょっと地味ですね。
 
固定資産税の会計処理はちょっと特徴的で費用化の時期によって損益がブレます。
特に、J-REITや私募不動産ファンドは、固定資産税の費用化の時期によって決算数値に大きな影響がでます。
 
ということで、今回は固定資産税の費用化について、解説しようと思います。
 

1.  固定資産税の特徴


固定資産税(及び都市計画税)は不動産を保有している所有者に掛かる税金です。
 
毎年1月1日(賦課期日)現在の土地、家屋及び償却資産について、その固定資産の価格をもとに計算した税額を、その固定資産の所在する市町村が所有者に対して課税します。
 
不動産売買では、売主が支払った固定資産税を売主と買主で保有期間に応じて負担します。
不動産を購入した経験がある人は、購入時に固定資産税の精算金を支払ったことがあるでしょう。
これは、固定資産税は先払いなので売主が支払っているからです。売主が前払いした固定資産税を売主と買主の双方で負担しましょう、という趣旨です。
実務では売買代金の精算時に、固定資産税を保有期間に応じて日割り計算して、買主が売主に支払います。
 
ただ、固定資産税の精算金について注意が必要なのは、会計上、精算金相当分が取得原価に算入される点(固定資産として計上される)です。
つまり、不動産取得時に支払った固定資産税は費用計上しません。
 
取得した翌年度以降、固定資産税は費用として計上されます。なので、固定資産を取得した初年度の利益は固定資産税分だけ大きくなります。
 
固定資産税は毎年1月1日の所有者に対して課税されます。
毎年6月末、9月末、12月末、翌年2月末の納付期限(東京都の場合)となり、納付時に費用計上します。
 
図表1を見てください。
 
【図表1:固定資産税の課税時点と納税時点】

X1年1月1日に不動産を取得するとX1年度の固定資産税の精算金(売主の立替え)は取得価額に参入され(資産計上)、X2年6月の固定資産税の支払時に初めて費用として計上されます。
つまり、1.5年間固定資産税が費用計上されません。
 
固定資産税(及び都市計画税)の標準税率は1.7%なので、決して大きいわけではありません。1.5年間で2.55%です。
 
不動産の利回りは高くありませんから固定資産税の1.7%はそれなりにインパクトがあります。
 
物件利回りが3%の物件において、取得時の年度の利回りが4.7%になると大きいですよね?
 
このように、固定資産税の費用化の時期は不動産ファンドの業績に影響を与えるのです。
 


今回の説明はここまでです。
次回は事例を使って解説します。

<その2に続く>

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不動産ファイナンスについて詳しく知りたい人は下記の書籍を参考にしてください。

【金融マンのための不動産ファイナンス講座】

【金融マンのための実践ファイナンス講座】


【図解 不動産ファイナンスのしくみ】

 

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