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シンジケートローンを知っていますか(その3)

前回に引き続き、今回も資金調達に利用されるシンジケートローンについて解説します。今回はシンジケートローンの貸付人(アレンジャー)にどんなメリットがあるかです。



4.貸付人(アレンジャー)のメリット


 
シンジケートローンは、貸付人、借入人それぞれにメリットがあります。今回は、貸付人(アレンジャー)のメリットです。
 
貸付人(アレンジャー)を列挙すれば以下のような感じになるでしょう。
 

  1. クレジットリスクを分散できる

  2. 貸付金の売却が通常の金銭消費貸借契約と比較すると簡単に行うことができる

  3. 案件組成手数料を得ることができる


①クレジットリスクの分散


まず、複数の金融機関と協調融資を行うことができるため、1行で巨額の融資を行う必要がありません。借入人のリスクを参加行で分散できることがメリットと言えます。

新規に貸付すると極度額を超過する場合も有効です。
銀行には債務者(借入人)ごとに融資極度額(貸付できる上限額)を設定しています。

例えば、50億円の極度額が設定されていて既に40億円の貸付残高があるとします。新規で30億円融資すると極度額50億円を超えてしまうため、自行は10億円だけ融資し、シンジケートローンで他行に20億円参加してもらいます。そうすれば、借入人との関係を継続しながら、極度額超過を回避することができます。

②貸付金の売却が通常のローンよりも簡単


前述の通り、シンジケートローンは標準的な契約書を用います。この標準契約は貸付契約の売却を前提にしたものです。なので、貸付金の売却が通常の金銭消費貸借契約と比較すると簡単に行うことができます。
貸付金を譲渡するのは簡単ではありませんが、売却を前提としている契約書なので通常の金銭消費貸借契約よりも売却しやすいでしょう。

③手数料が高くなる

 
シンジケートローンはアレンジャーがいくら手数料を借入人から貰っているかを開示しません。アレンジャーは参加行にタームシートを配布して案件概要を説明します。そこには参加行が受取ることができる手数料(アップフロント・フィー)が記載されています。
こんな感じです。
 
<融資実行手数料>
10億円以上:1%
20億円以上:2%
 
貸付総額は50億円、借入人から受取る手数料は1億円(貸付額の2%)とします。
 
【図表1:シンジケートローン参加行の手数料率】

※A銀行の手数料=手数料総額-B銀行への支払額-C銀行への支払額=1億円-1,000万円(10億円×1%)-1,000万円(10億円×1%)=8,000万円
A銀行の手数料率=8,000万円÷30億円=2.666……%
 
シンジケートローンの参加行の手数料を抑えることによって、アレンジャーの手数料率を引き上げることができるのです。これはアレンジャーの経済的なメリットと言えるでしょう。
 

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さて、今回は貸付人(アレンジャー)のメリットを説明しました。
次回は借入人のメリットを解説します。

<その4に続く>

<過去記事はこちら>

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なお、シンジケートローンについて詳しく知りたい人は下記の書籍を参考にして下さい。

【金融マンのための実践ファイナンス講座】

【金融マンのための不動産ファイナンス講座】

 


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