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2022年2月末に農場を辞めた時に書いた手紙。

 1年前の2022年2月末、僕は移住してから5年間お世話になった、てんとうむしばたけ(梅本農場)を辞めました。丹後での移住生活=農業の日々、でったので、本当に色んな思いと葛藤しながらの決断で、それからあっという間に1年が過ぎたな、という感覚です。

 農場メンバーやお世話になったお客さん向けに書いたお手紙を、今になって振り返ってみた。書き残した思いは、1年前と変わらずまだしっかりと残っていて、改めて自然と繋がる生活の大切さというか、自分の根本である価値観を見直すことができました。

 この内容は1年前にFacebookにも投稿した内容ですが、改めてnoteにも残しておきたい内容だと思ったので、改めて書き残していきたいと思います。葛藤につぐ葛藤の中から生み出した文章なので多少読みづらさもあると思いますが。笑


(2022年2月、雪の降り続く、ある日の朝に書きました) 

 みなさん、こんにちは!井上健吾です。唐突ですが、2月末でてんとうむしばたけを離れることになりました。移住してから5年間、初めての農業をやりながらカフェができたり、メンバーが増えたり、色々な経験をさせてもらいました。

 寂しさはありますが、一昨年生まれた子どもとの時間や自分らしい生活を実現するために、離れることを決意しました。なので今回は最後のお手紙として、僕自身が5年間で経験した「自然とつながる」という事について書かせていただきます。

 移住前、僕はIT企業で営業をしていました。よくある都市部で忙しく働くサラリーマンみたいなイメージです。1年目には働き過ぎてうつ病にもなり、3ヶ月ほど休職も経験しました。当日の食生活は荒れており、3食すべてコンビニorファストフード。

 仕事の忙しさ、上司からのプレッシャー、荒れた食生活と、ストレスにまみれた結果、眠れなくなる、上手く喋れなくなる、といった症状が出ていました。休職後もその会社に復帰し、働くことになったのですがうつ病になって以来、仕事に意欲を持てず何年か過ごしていました。

 そして2017年の1月に移住をして、てんとうむしばたけでの生活が始まります。自席もなければパソコンも持たず、作業場に朝集まってから畑へ向かい野菜を収穫するところから1日がスタート。

 朝日を浴びながら野山の空気を感じ、野菜や土に触れ、しゃきっと起き上がった新鮮な野菜をたまに口にして、仲間と楽しく会話をしながらの収穫です。作業場に戻ってからは野菜を洗ったり、パック詰めをします。時には珍しい形や色の野菜が出てきて皆で面白がったり、休憩タイムにお茶をしながらハナ(柴犬)と遊んだり。

 お昼休みは家に帰ってご飯&昼寝。午後からは畑に出て、種まきや野菜のお世話に汗を流します。日暮れと共に仕事を終えて帰路につき、美味しいごはんを食べてぐっすり眠り、また次の日を迎える、そんな生活でした。

 1年ほど経った頃からでしょうか、体力も筋力もついてきて身体が生き生きしてきた感覚がありました。農作業終わりは疲れて家に帰るのが当たり前だったのが、友達の家に遊びにいったり、イベントに参加したり、とにかく元気になりました。笑

 都市部にいた頃は、漠然とした不安やストレスで心がざわついていましたが、今では落ち着いたなと。お手紙を書いているこの瞬間も、家の外では雪の降る凛とした空気が僕の周りで流れています。気持ちの落ち着きと共に集中力や思考力も増した感覚があり、企画や経営に携わる仕事ができるようになったり、友人から肌ツヤが良くなったと言われたり、小さな変化がたくさん生まれていました。

 「自然とつながる」とは、どういうことなのでしょう?野菜を食べる、土に触れる、農業をやってみる、ここ数年色々と考えをめぐらせてきました。その中で僕は「自然の摂理に従う」ということだと今は思っています。少し言い換えると「自然の流れに逆らわずに生きる」ということ。

 有機農業は春夏秋冬で育てる野菜もやることも変わります。当たり前ですが夏には夏野菜を、冬には冬野菜を育てるし、それに応じた作業や生活があります。今年のように雪の多い年は味噌の仕込みにちょうどよく、いい味噌が来年には食べられるでしょう。

 農業に当てはめた季節の流れだけでなく普段の生活でも、晴れた日に気分が良くなったり、雨の日に少し落ち込んだり、早起きして外を散歩している時間が心地よかったり、夜遅くまで働く時間がしんどかったり。1日の中にも自然の流れが存在しています。

 上向くこともあれば下降することもある。いわゆるバイオリズムというものが、自然界にはもちろん、僕らの身の回りには大小たくさん存在していて、それらに逆らわず生きる、ということが大切だと学びました。それが「自然とつながる」ということなんじゃないかと、農場での経験を通じて思っています。

 今回、てんとうむしばたけを離れると決断したことも、子育てをしたい気持ち、農場で僕ができることの限界を感じた気持ち、新しいことに取り組みたい気持ち、色んな想いが作った流れに逆らわずに決めたことです。

 僕の決断は個人的ですが、自然のながれを意識することは、世の中の色々なことに通じると感じてます。仕事で一緒に働くメンバーの調子が悪い日もあれば良い日もあって、変化していく流れに合わせながら仕事を進めていくと上手くいったり。高校時代は仲の良かった友人と大学生になってから合わなくなったのに、30代になって再会したら意気投合して一緒に仕事をすることになったり。

 流れを感じ続けるには、農業でいえば、自然の些細な変化に気づくこと、自分の事であればやりたいことや本音と向き合うこと。そしてそれが自然の流れに合っているのか、反しているのか、上向いてるタイミングなのか、下降しているのか、考えてみる。最後は結局分からなくなって身を任せちゃうんですが。笑

 そんな事を感じながら生活していたら、僕はめっちゃ元気になりました。もちろんその中心には農場での生活とお野菜がありました。てんとうむしばたけを離れることに寂しさはありますが、僕らの住む丹後では同世代が地域を活気づけようとしている流れがあります。

 僕は、僕自身が農場で得た経験をその流れに乗りながら生きていこうと決めました。なので丹後での生活は続いてゆきますし、農場の近くでの生活に変わりはありません。

 てんとうむしばたけも、僕自身が学んだような「自然とつながる」ということを、お野菜であったり、カフェやツアーで皆さんにお届けし続けていきます。僕は離れますが、みなさんが「自然とつながる」きっかけを作り続けていきますので、これからもよろしくお願いいたします。

 てんとうむしばたけで働き始めた5年前から、お野菜を食べ続けてくださったり、農場へ遊びにきてくれたり、マルシェでお会いできたり、皆さんにはたくさんお世話になりました。直接お会いできた方は限られていますが、美味しい野菜を届けることで、自然とつながるきっかけを作れていたと思いますし、それがあったからこそ僕も頑張る事ができ、農場で成長することができました。

 5年間支えてくださり、本当にありがとうございました。いつか丹後でお会いできる日を楽しみにしています。それでは、また。

 2022年2月28日 井上健吾


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