見出し画像

バーチャルYouTuber研究9:      バーチャルYouTuber調査⑤      注目・交流成果と経済的成果

 バーチャルYouTuber「中の人」調査の報告5回目です。この調査は、大手インターネット調査会社の協力を得て登録モニターのうち、東京、大阪在住の男女、20代・30代を対象にスクリーニングをかけ、対象者に質問紙調査を2020年12月に配信・回収を行ない、有効回答数141名から得たデータの単純集計を紹介しています。


 今回は、バーチャルYouTuberの活動成果について回答の集計を紹介していきます。活動の成果は、大きく経済的な成果(直接・間接に金銭的な収入がある)と非経済的な成果(注目度や知名度が高まり交流範囲が拡大した)に分けて考えます。それぞれの成果は段階的な程度(5段階スケール、5:当てはまる~1:あてはまらない)で聴いています。最後に筆者が予測する市場規模も紹介します。

1.注目・交流成果(非経済的成果)

 まず、非経済的成果である注目・交流の成果がどれくらいあるのか、回答の単純集計(平均値)を4つの質問回答で見てみます(図1)。

        図1 注目・交流成果(非経済的成果)

画像1

相対的に高い回答は次の2つです。平均点3点を超えています。

・チャンネル登録者数は増えた

・知人友人が増えて交流の範囲が広がった

 これは活動の目的や動機にある承認・称賛欲求につながるものです。スタートするときの承認・称賛動機がチャンネル登録者数の増加や交流範囲の拡大につながったというのは一定の手ごたえがあった、つまり活動していて良かったと感じる回答者が多いということです。平均値の大きさ3.1、3.0には注意が必要であり、多くの人にこの注目交流成果が確認できたというわけではありません。回答者は、チャンネル登録者数の動きに割と敏感で数は増えましたが、注目度が高まったとは感じていないようです。交流成果では、まあまあ知人や友人が増えて交流が広がったと感じる一方、企業や団体との関係ができたとする回答は相対的に低いです。回答者の半数以上が活動1年以内なので、企業との交流までは届いていないようです。

 回答者は、活動を始めてチャンネル登録者数が増えて交流範囲がまずまず広がったという成果を感じていました。

2.経済的成果

 次は経済的成果についてです。YouTubeから得られる3つの収入の程度を5段階スケールで聴きました(図2)。3つとも平均点が3点以下なので、まずは結論としていずれも少ないという回答でした。

            図2 経済的成果

画像2

  その少ない中で相対的に高ったのは以下です。

・企業や団体からタイアップ広告などの依頼を得た

  チャンネルの広告収入よりもタイアップ広告の平均点が高いのはなぜでしょうか。企業側からみれば、一定のチャンネル登録者数と動画視聴数の人気が依頼の基準になると思いますが、広告収入がなくてもタイアップ広告の依頼を受ける。。。考えられるのは、本業で働く企業などから「社員VTuber」としてプロモーションの依頼を受けるケースです。直接の収入はないが、バーチャルYouTuberのメリットを感じる企業が従業員に依頼する可能性もあります。これはもちろん推測なので別途調べる必要がありますね。また、ライブの投げ銭収入の平均値も低いです。

 さらに経済的成果について考察しておきます。先ず今回の回答者の8割以上が1年未満の活動期間と短く、趣味で活動する人が5割でした(図3,4)

            図3 活動の期間

画像4


            図4 仕事と収入

画像3

 副業や本業として収入があったのは全体の46.8%であり、そのうち66人の回答では最近1年間のおよそのバーチャルYouTuberとしての収入(売上高)は以下のとおりでした。

 平均値 252万円、最大値 1億円、最小値 0円。100万円以下が77%。

 収入の分布では平均値252万円という数字はあまり意味を持ちません。最大値1億円に平均が引っ張られるからです。年収が1億円と回答した人が1名入っています。収入ありのうち、77%が100万円以下ですが、これを少ないか多いとみるかは解釈の視点です。100万円も稼げないのかと感じる一方、1年たらずの活動で100万円近く稼げるのか、と思う方もいるでしょう。YouTuberなどで活動していても広告収入でこれだけの額を得るのは容易でないはずです。

 この収入ありの人の年収額を合計すると1億6,600万円程度になります。つまり、今回の回答者サンプル141名の年収合計は約1億6,600万円とみることができます。

 回答者全体(141名)の年収合計は1億6千万円

  バーチャルYouTuberの動向を調査発表している株式会社ユーザーローカルの調べによると、バーチャルYouTuberの人数は2020年11月時点で13,000人を超えたと紹介しています。ここで一定の条件(サンプルの等分散)を仮定すると、筆者が回収した141名のサンプル分散特性の約100倍がバーチャルYouTuber市場全体に当てはまると推測できます。すると、バーチャルYouTuber市場が稼ぐ収入の総計は、166億円です(1.66億円×100)

バーチャルYouTuber市場全体の収入規模は約166億円

 ここでの制約はサンプルの代表性で、141名のサンプル特性の分散が13,000人の規模にも当てはまるという条件であり、中でも「1億円プレイヤー」を何人含むかで全体の市場規模が大きく変動します。ただ、こうした市場規模の調査があまり行われていない現在、追加的な詳細な調査データが表れるまで、この数字を2020年末の市場規模推計の参考値と考えることができます。バーチャルYouTuber市場は未だ200億円に届かず、今後急成長が見込めると期待したいです。




 



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?