Kkatano

コンテンツとメディアの変容と革新について探究するオタク大学研究者です。 特に最近はボカ…

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コンテンツとメディアの変容と革新について探究するオタク大学研究者です。 特に最近はボカロを初めとする音楽動画やVTuberのコンテンツ(ユーザー生成コンテンツ:UGC) を実証研究しています。  これまでに発表してきたものを紹介しつつ、進行中の調査結果を書いていきます。

最近の記事

バーチャルYouTuber研究10:     キズナアイさんの分裂でファンは離反したか?(バーチャルYouTuber調査6)

1年ぶりの投稿です! これまでの記事をお読みくださった読者の皆様に感謝します。  人気バーチャルYouTuberキズナアイさんが,2022年2月で無期限活動休止を発表しました。 その前,2019年5月には「キズナアイが4人いるって言ったら信じますか?」という動画を公開して大きな話題となり,私もそれに便乗して「初音ミク」との比較記事を書きました(このシリーズ1本目)。     そこで今回は,SNSのTwitterに投稿された「キズナアイ AND 分裂」をキーワードとするツイー

    • バーチャルYouTuber研究9:      バーチャルYouTuber調査⑤      注目・交流成果と経済的成果

       バーチャルYouTuber「中の人」調査の報告5回目です。この調査は、大手インターネット調査会社の協力を得て登録モニターのうち、東京、大阪在住の男女、20代・30代を対象にスクリーニングをかけ、対象者に質問紙調査を2020年12月に配信・回収を行ない、有効回答数141名から得たデータの単純集計を紹介しています。  今回は、バーチャルYouTuberの活動成果について回答の集計を紹介していきます。活動の成果は、大きく経済的な成果(直接・間接に金銭的な収入がある)と非経済的な

      • バーチャルYouTuber研究8:      バーチャルYouTuber調査④      目的や動機づけ

         今回は、バーチャルYouTuberが活動する目的や心理的な動機に迫ります。バーチャルYouTuberとして活動する人は、どのような目的や動機を持っているのか、調査としてぜひ知りたい回答でした。 1.活動の目的(承認・称賛、社会性)  バーチャルYouTuberが活動を始める際の動機や目的にはさまざまであり、生活や収入のためという経済的理由もあると思いますが、今回は「承認・称賛、社会性」、つまり、知人や企業、社会から認められたいか。また必要な情報や知識、スキルを増やしたいか

        • バーチャルYouTuber研究7:      キズナアイさんにみる仮想世界の拡大

           調査研究を紹介している途中ですが、今回は箸休めで「キズナアイ」さんにみる仮想世界の拡大について、支援企業が考えるプランを私自身が取材した結果を中心に紹介してみます。 1. バーチャルタレントの活動領域 2019年夏、キズナアイさんの分裂騒動が話題になっていた時期に、当時彼女が所属していたマネジメント会社、Activ8株式会社の執行役員に取材して、所属する学会で報告していただいた内容です。1年半ほど前の話ですが、最近の展開にもつながる路線が当時から計画されていたようです。最

        バーチャルYouTuber研究10:     キズナアイさんの分裂でファンは離反したか?(バーチャルYouTuber調査6)

        • バーチャルYouTuber研究9:      バーチャルYouTuber調査⑤      注目・交流成果と経済的成果

        • バーチャルYouTuber研究8:      バーチャルYouTuber調査④      目的や動機づけ

        • バーチャルYouTuber研究7:      キズナアイさんにみる仮想世界の拡大

          バーチャルYouTuber研究6: バーチャルYouTuber調査③アバターと複合現実

           調査結果の3回目はアバターについてです。中の人と使うアバターの外見的性別の関係は?。アバターを使う理由は?。そして仮想世界の中でアバターを使うバーチャルYouTuberの生きる世界について考察します。 1.アバターと中の人回答者が創作して動かすアバターの外見的特長は次のようなものでした。              図1アバターの外見的特長  女性と男性がそれぞれ4割強で、動物や架空の創造物の使用は少ないという結果でした。  続いて回答者の性別と年代です。男性90名(

          バーチャルYouTuber研究6: バーチャルYouTuber調査③アバターと複合現実

          バーチャルYouTuber研究5        バーチャルYouTuber調査② 提供コンテンツ

           バーチャルYouTuber調査(東京、大阪在住のサンプル141人)の回答データの集計2回目は、その活動内容です。バーチャルYouTuberが収入を得ているのは全体の46.8パーセントでしたが、YouTubeプラットフォームからの収入源は、広告掲載、サブスクリプション(ユーチューブプレミアムと呼ばれる有料サービス)、そしてスーパーチャット(投げ銭)やチャンネル課金であるチャネルメンバーシップなど幅広くなっています。 1. プラットフォーム内外のビジネス活動は:  まずプラ

          バーチャルYouTuber研究5        バーチャルYouTuber調査② 提供コンテンツ

          バーチャルYouTuber研究4:        バーチャルYouTuber調査① 中の人プロフィール

           今回からバーチャルYouTuber調査の結果を書いていきます。2020年12月にインターネット調査会社のモニター(東京と大阪に在住、20代~30代)に対するサンプリングを行ない、「バーチャルYouTuberの中の人として活動する人」を抽出して質問紙調査の配信・回収を行ないました。結果141名の有効回答です。当初は全国在住で3万人程度にスクリーニングをかけましたが、出現率が1%にも満たず、地域と年齢を絞り込みました。今回は回答者のプロフィールを紹介します。なお、ここで「バーチ

          バーチャルYouTuber研究4:        バーチャルYouTuber調査① 中の人プロフィール

          バーチャルYouTuber研究3: N次創作とボカロPのパワー

           なかなかタイトルの本題に入らない投稿ですが、今回までバーチャルYouTuber登場の社会基盤の紹介です。「初音ミク」がユーザー創作の世界で生きてきた現実、また「重音テト」がコミュニティの熱い支持で生きてきた現実から、これらのユーザー生成型のコンテンツの成長にはコミュニティの存在が大きく関わっており、コミュニティなくして、特定企業の著作権コンテンツだけではここまでの社会現象にならなかったと思います。そこで今回はコミュニティの中で起きていたユーザー創作の行動をマクロ、ミクロから

          バーチャルYouTuber研究3: N次創作とボカロPのパワー

          バーチャルYouTuber研究2:     重音テトの偶発と創発

           バーチャルYouTuberの登場を説明する上で、「初音ミク」と「キズナアイ」をつなぐ「重音テト」(かさね・てと)の存在に注目します。  1.嘘から生まれたバーチャルシンガー 2007年8月のボーカロイド・ソフトウェア「初音ミク」発売を契機としてUGCが爆発的にコミュニティに増殖する過程で、2008年4月1日(エイプリルフール)にバーチャルシンガー「重音テト」が登場する。ボーカロイド・ソフトウェアを発売するクリプトン社では、バーチャルシンガーのシリーズソフトをすでに3作リリ

          バーチャルYouTuber研究2:     重音テトの偶発と創発

          バーチャルYouTuber研究1     器の「初音ミク」と生身の「キズナアイ」

          「初音ミク」を初めとするボカロ音楽・動画の社会学的、マーケティング論的な研究を続けてから、現在はバーチャルYouTuberの行動を研究しています。序論として、2019年に『器の「初音ミク」と生身の「キズナアイ」』という雑誌記事を書いたのがきっかけです。双方のファンから多くの意見がSNSで寄せられ、これは本格的にバーチャルYouTuberについて研究してみようか!、と思い立ちました。この記事では人格をもたない器、人形浄瑠璃を源流にもつ「初音ミク」と、魂と呼ばれる中の人が存在する

          バーチャルYouTuber研究1     器の「初音ミク」と生身の「キズナアイ」