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知り得ないけど、知りたくて。

澱みを押し流すように、疲れ切った体に琥珀色の液体を流し込むひとときが好きだ。

古代エジプトで、ピラミッドを作る人たちに報酬として与えられたもの。これがビールの由来だと初めて知った。ついこの間のこと。
それを聴いたとき、何かがわたしの琴線に触った。見たことも聞いたこともないはずなのに、土埃と汗と、灼熱の日差しを感じた。苦しい。あと一歩進めば、力尽きて倒れてしまうかもしれない。朦朧とするような暑さの中、太陽はなかなか沈まない。
わたしにとって異国の観光地、ランドマークでしかなかったピラミッドが、いつのまにかぐんと目の前に立ちはだかったような気がした。

遠い時間や空間に思いを馳せるのが好きだ。
自分がこの世に存在できる時間も空間も限られているから、その外側に思いを馳せてみたい。

知り得ないけど、知りたくて。
自由に思いを巡らせられるのは、きっと人間に生まれた醍醐味なのだろう。

動物とは違って人間に生まれたのはなぜだろう。
どうして人間なんだろう。
なんでこんなに苦しいんだろう。

自分の中に暗闇がぽっかりある。 
暗闇には何もかもがあり、何もかもがない。
でもその暗闇を見ないふりで生きていくことができない。
その輪郭を捉えたくて仕方ないわたしがいる。

秘密も嘘も喜びも
宇宙を産んだ神さまの子どもたち

時を超えて変わらない人の営みや苦しみ、喜び。
そういうものに触れたときに、心が震える。
わたしの体に刻み込まれた、いのちの名前。


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