i ,scream
コンビニでパンと冷凍フルーツを買うつもりが、かごにアイスも入れてしまっていた。
アイスにもいろいろある。
"アイスクリーム"しか相手にしない。
ラクトアイス、アイスミルク、氷菓、これらは同じ冷凍庫にいても取らない。
口溶け、濃厚さの問題。
同じ糖質を摂ってしまうならば、官能に働いてくれるものがいい。
冬の終わりの雨が降る18:30はもう暗い。
外はまだ充分寒いし、傘をさしている。
にも関わらず、あたしはさっき買ったアイスの箱をパリパリと開け、器用にひとつ取り出して個包装フィルムを破いて口に運ぶ。
コーティングされたチョコレートをパキッと噛む。
中のアイスクリームが溶け出し、真ん中の洋梨のソースが弾き出され、鼻から脳天へ抜ける。
はぁ、これこれ。
家までの5分、ひと粒食べて虹の中を通るような気持ちになったらそれが最高。
って思って口に放り込んだが最後。
パキッからはぁ、までをもう1回やりたい。
クリーミー、ジューシー、あまいを繰り返す。
あたしたちの間の大きな水たまりを越えてはくれなかったあの子に会った最後の日。
コンビニの駐車場であの子の口に押し込んで食べさせた光景がフラッシュバックする。
あたしが傲慢だったに決まってる。
あたしを知ってる人はここらへんに何人もいる。
顔だけ、家ごと、あるいは誰のママなのか。
そんな人たちに、こんなことしてるのを見られたら。
エコバッグに隠して片手で探る箱には6粒あったのに、もうあとふた粒。
背徳感と雨に加速させられた歩幅と、口に入れてから喉に落ちるまでのスピードが合わない。
もう家が見えている。
このまま家に入れば、どのみちおかえりのキスで娘に匂いを嗅ぎつけられる。
立ち止まって、ぜんぶ食べてしまおう。
そんなに悪いことじゃない。
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