Shopify for SaaSとは (3分で読める最新スタートアップ情報と新規事業へのヒント)
今週の紹介企業Kindeとは
今週ご紹介するのは、オーストラリアで2021年に設立されたばかりの会社Kinde(カインド)です。3月14日に、シード資金として10.6百万オーストラリアドル(約9.6億円)の調達を発表しました。
創業者兼CEOのChaldecott Ross氏は元アトラシアンで、その時に抱いていた課題感がきっかけでKindeが生まれたそうです。またアトラシアンの前はCampaign Monitorというメールマーケの会社、さらにその前はShopifyにいたそうです。それもあってかもしれませんが、今回のプロダクトは「Shopify for SaaS」と形容しています。
Kindeはこのプロダクトを通じて実現したいこととして、「アイデアからリリースまでの距離を縮めることで、世の中に起業家を増やす」を掲げています。
では、どんな課題感がきっかけとなったのか?
それをどう解決することで、SaaSのアイデアからリリースまでの距離を縮められるのか?
そして「Shopify for SaaS」とはどういう意味なのか?
誰のどんな課題を解決するのか
CEOのRoss氏がアトラシアン時代に抱いた課題感というのが、「SaaSに不可欠だがプロダクトの差別化要素にならないインフラ部分の開発に、各社とも多大な時間を費やしている」ということでした。
もう少し具体的に言うと、
SaaSにはユーザーマネジメントや認証コントロール、リリース管理、請求などのインフラ部分が不可欠で、現状では各社ともそれらを自社でゼロから開発しているケースが多い
しかしこれらはコモディティであり、プロダクトの強み/差別化要素につながるものではない
それにもかかわらずコストと時間をかけるのはもったいない
という主張です。
Ross氏はじめ創業者達は前職で、SaaS企業に対して同じアーキテクチャの構築を何度も繰り返し提供する中で、課題感を募らせていたそうです。
どう解決するのか
この課題解決のために開発しているのが、SaaSに不可欠なインフラを提供するためのプロダクトです。ここで言うインフラとは、繰り返しになりますが、ユーザーマネジメントや認証コントロール、リリース管理、請求などの機能です。
Kindeのサイトを見ただけだとフワッとしているのですが(というかぱっと見何のサービスかよく分からないようなサイトですが)、ウェブやモバイルアプリのフロントはKindeのユーザーであるSaaS企業自身が準備し、インフラのバックエンド部分をKindeが提供する、ということのようです。
例えば、Kinde指定のApp Keyをユーザー自身のアプリケーションに追加したりすることで、Kindeの提供するインフラにアクセスできるようになります。
これにより、ユーザーはインフラ開発に必要だった時間をプロダクトのコアな部分の開発に充て、起業家がプロダクトをよりスピーディ且つ低コストにリリースできるようにしたい、という思想です。
ShopifyのおかげでECが始めやすくなったように、KindeのおかげでSaaSを始めやすくする、というアナロジーです。
なお競合に見据えるのは、SaaSの企画からローンチを支援するコンサル会社だそうです。
現時点では無料で提供しており、アクセラプログラム等と連携してユーザーを開拓していく意向のようです。
今後の展望
リリースまでステルスで進めてきて、現在はMVPができた段階です。
ターゲット市場は、数字を見るまでもないかもしれませんが好調で、グローバルのSaaS市場は成長を続けていて年平均で18%程度あります(2019年〜2022年で計算。ソースによってはもう少し低いが2桁はありそう)。
コロナの影響もあってまだまだ伸びているEC市場でも同期間は16%なので、それと比較しても高い成長率と言えると思います。
何はともあれ、成長市場なら企業数も増えていくと推測されますので、Kindeにとっては良い環境と言えます。
なお国別のSaaS企業数で見ると、アメリカがダントツで多く(15,000社)、2位のイギリス(2,000社)の7.5倍です(企業数の集計方法は未確認ですが、創業したてのSaaS企業まで含めるともっと多い可能性はあります)。
同じ英語圏なので、早々にアメリカで広めたいんだろうなとは思いますが、英語圏の大きさを改めて感じます。
ただ前述しましたが、まだMVPの段階なので、実際にユーザーにどこまで受け入れられるのかはこれからと言えます。開発すべき機能もUXの磨き込みもタスク盛りだくさんのようですし。
新規事業立ち上げへの示唆
B2Bサービスではよくありますが、現行の業務/開発プロセスの内、コモディティ化できる部分があるのではという視点は有効です。特にレガシーな領域ではそういう部分がありますが、SaaSのように比較的新しい領域でもコモディティ的なプロセスがある、というのが分かります。これを開発やコンサルを受託する側としても、事業を行う当事者としても、意識することで課題が見えてくるかもしれません。
また、ユーザーがSaaSを利用しやすくするためのSaaSとして、SaaS for SaaSと呼ばれるツールが増えていますが、開発企業を助けるツールという視点も、成長市場だからこそあると思います。
当社では新規事業の立ち上げ支援コンサル、およびユーザー候補へのアンケート/ヒアリング用プラットフォームを運営しております。
ご質問などございましたら、こちらか、下記サイトの問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
https://bizplat-req.mystrikingly.com/
今回の参照サイト
Kinde社HP内のリリース https://kinde.com/blog/news/announcing-our-10-million-seed-round-led-by-blackbird
調達関連の記事 https://www.smartcompany.com.au/startupsmart/news/kinde-atlassian-alumni-startup-more-founders/、https://www.businessnewsaustralia.com/articles/sydney-based-tech-startup-kinde-raises--10-6m-in-seed-capital.html、https://www.localogy.com/shopify-for-saas-kinde-raises-10-6m/
SaaS市場環境 https://www.statista.com/statistics/505243/worldwide-software-as-a-service-revenue/
EC市場環境 https://www.statista.com/outlook/dmo/ecommerce/worldwide#revenue
SaaS企業数 https://www.statista.com/statistics/1239046/top-saas-countries-list/
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