ぼくたちの脳内にある「安さ=善」という皮肉エラーをきれいさっぱり拭い去ること
早稲田実業vs大社高校
9回裏1アウト走者2塁3塁
1打出ればサヨナラ。
早稲田実業は、レフトの選手をサードの前、ピッチャーの左横(打者から見て)に置いた。
バッターは左打者。
ライトでもレフトでも外野へ飛ばせば確実にサヨナラ。
ところが;
「打っちゃいけない」と思うと、目の前にいるレフトの選手真正面に打ってしまう。これ、練習でもなかなかできないこと。でも、やってしまう。
これを皮肉エラーと呼ぶ。
スポーツにおいて、成功につながるポイントを意識せず、してはいけないポイントを意識してしまうこと。
飛び箱が飛べる子は
・踏切板を強く踏む
・両手をつく飛び箱の上を意識する
をやっている。
逆に、飛び箱を苦手としている子は
「失敗して、両膝を飛び箱にぶつけてしまうんじゃないか」
と考え、考えた通りになる。
スポーツだけの話ではない。
日本は人類史上初の急速な人口減少社会へと突入した。
ビジネスモデルを更新しなければならない。
戦略を転換する必要がある。これをピボット(pivot)という。
ところが、ついつい「昨日の延長」をやる。
大きな組織ならなおさら。
「これを続けたらアウトだなあ」わかっていて、つい続けてしまう。
セブン&アイグループを買収するよ、とカナダのアルメンテーション・クシュタール社が言ってる。
Genspark(AI)の分析やさまざまな記事を読むに、クシュタールサイドの言い分としては「セブンさん、いつまで同じ場所をなぞってんの?」ということだろう。
夜セブンとかね。ピボットしようとしていない。
デフレが身体に染み込んじゃってる。安くするのが目標、みたいな。
思えば、日本経済が傾いて、転げ落ちる時期と、ネットショップが隆盛を極めた時期は重なっている。
おかげで
「送料無料」「即日配達」が「皮肉エラー」になってしまった。
送料無料ってのは日本へ進出するにあたり、強みが何もないアマゾンが破れかぶれで打ち出した実質値引きなわけで、それを資本力の弱いネットショップも良かれと真似しデフォルトになった。
そもそも医療品ではない限り「即日配達」なんてのは必要ない。お目当ての本が今日読めない、というのは仕方ない話だ。
誰かが運んでくれて、遠くまで持ってきてくれる。玄関ドアまで。無料ってのはあり得ない。
ところがこの皮肉エラー、B2B、企業間取引の担当者、たとえば購買部や調達部担当の脳内にまで刺さってる。
工場で生産される製品で「納期急ぐ」なんてのは本来ない話だ。
ぼくがヘーベル販売していた頃も、「短納期」ってのはよく依頼された。
でもね。ビル建てるのに「うっかりしてた! 明日ヘーベル100枚持ってきて」なんてのはあり得ない。トイレットペーパーじゃないんだから。
これらの皮肉エラーで何が起こったかというと、
日本が安くなった
The Economistがアメリカ都市の家賃についてレポートしている。
「スタジオ(日本でいうワンルーム)の家賃を賄うためには収入がいくら必要か」で「住みやすい・住みにくい」都市をグラフ化した。
「ブラッドショー」とは、ドラマ『Sex and the City』に由来。
ニューヨークの家賃3,675ドル(56万円)ワンルームに住むためには14万7,000ドルの年収が必要。およそ2,200万円。この時点で、多くの日本人が外れる。
「年間わずか2万6,000ドルを稼ぐだけで済みます。」と書かれているが、日本円では390万だ。たいていの日本人はこのレベルかもう少し下だろう。
つまり、日本人は貧しい。
なぜこうなってしまったのかというと、「安くなければならない」という皮肉エラーから。
このnoteでも繰り返し書いているさまざまな業界のビジネスモデルの劣化を乗り越えるためにはピボット、戦略転換が必要。そしてその出発はぼくたちの脳内にある「安さ=善」という皮肉エラーをきれいさっぱり拭い去ることだ。
昔の日本はこんなクリエイティビティがあった。
上半身だけ撮影時のゴジラさん(笑)
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?