とんがったアホ
ビジネスの世界で「合理」「不合理」というのは、「前例があるか・ないか」で決まることがある。前例があって、それが望ましい結果を出しているのを知っていれば、「合理」となる。
たとえば、アマゾン。
いまでこそアマゾンは情報テクノロジーの雄、強みはテクノロジーだとわかっているが、創業当時90年代末や2000年代初頭は
「ECだから身軽だと思って投資したのに、ジェフ・ベゾスのやることと言ったらバカでかい倉庫を作ることばかり。
物流センターひとつ作るのに5000万ドル、それを動かすのに同額の投資が必要って・・・ばっかじゃないの?」
これがウォール・ストリートの偽らざる本音だった。
ところが、時間が経つにつれ、ベゾスの戦略、的を射ていることが判明した。
同じ頃、大手書店バーンズ&ノーブルがネット通販を始めたが、使えなかった。
「自社の倉庫にある本をネットに乗せるだけだろう」というノリでやっていたのだが、そもそも「自社の倉庫の在庫が本当にあるのか、ないのか」がわからない。なので、オーダーしても届かなかったりする。こうなると昔ながらの「棚卸し品質」の世界であり、そこを疎かにして、ネットへ移行したところで、うまくいくはずがない。
ニューヨークに住んでいた頃、何回か届かなくて困ったことがある。メールで聞いても答えが返ってこないのだ。そりゃそうだよ。「わからない」のだから(笑)
バーンズ&ノーブルの不調はアマゾン・エフェクト(アマゾンに蹴飛ばされた)という表現をよく見るが、ぼくに言わせれば、自業自得なのである。
さて;
この図は尊敬する楠木建さんの図(部分合理性と全体合理性、『ストーリーとしての競争戦略』所収図5・2)を阪本風にアレンジさせていただいたもの。
ヨコが全体、タテが部分。
たとえば、「タクシーをスマホで呼べるよ」というGOは、タクシー数の増加を急ぐあまり、ユーザーが本当に求めている「快適な移動空間」から離れてしまっている。おじいちゃんドライバーは決済時にまごまごしたり、若いドライバーは道を知らなかったり、部分では非合理極まりない。
ところがGO運営会社としては「手軽にタクシーをスマホで呼べるよ。決済も車内で済ますことができるよ」と合理を訴えている。つまり、部分「不合理」な全体「合理」であり、右下「合理的なアホ」といえる。お断りしておくが、「アホ」というのは愛情表現であり、一度大阪弁の女の子に「アホやなあ・・・」と言われてみてください。トロトロになりますから(笑)
非合理というのは、「前例がない」「わからない」ということだ。「前例がない」「わからない」からダメかというと、そうではないところにビジネスの面白さがある。
たとえば、「知ってもらってナンボ」のJOYWOWでは、ウェブサイトはこれ一枚だ。
ほんと、人をバカにしているのだが、でも、JOYWOWのように「動きが激しい」場合、静止画のウェブサイトはなじまない。SNSでの発信が一番しっくりくる。なので、こうしてる。
「とんがったアホ」というのはここだ。部分は合理的だが、全体として見た時、「非合理」。
可能性が大きいのは、左上の「とんがったアホ」なのである。
大企業から面白い商品が出なくなってしまうのは、「部分」も「全体」も「合理」にしようとするから。結果、「優等生」は生まれるが、簡単にコピーされる。そして、似たような商品が棚に並ぶことになる。そもそも優等生はつまらない。
ぼくの周辺でブレイクしたビジネスはどれも、「全体として見たときは非合理」な「とんがったアホ」だ。
たとえばネコリパブリック。
個々の施策は合理的で、理解しやすい。猫助けだよねー・・・でも、全体として、ビジネスモデルとして見た時、「お金はどこから来て、どう循環しているのか」がよくわからない(笑)非合理なのである。でもそこがとんがりになって、みんなの支援を集めている。
ネコリパブリックは創業者あさか(河瀬 麻花)を始め、スタッフ皆さんのネコへの愛が溢れている。そこが「非合理」を突き抜け、「とんがり」になっているのが強みだ。
とんがったアホを目指しましょう!
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