見出し画像

決算書を活用した利益とキャッシュ最大化(第7回(最終回):キャッシュフロー予測と改善事例)

第6回の続きです。第6回はこちら ↓
決算書を活用した利益とキャッシュ最大化(第6回:損益計算書編③) | 記事編集 | note

決算書活用のSTEP3は、将来のキャッシュフロー予測を行い、将来の経営状態の予測をしてみることです。

🔸将来のキャッシュフロー予測

(1) キャッシュフローとは

 「キャッシュフロー」とは、現金の流入である「キャッシュ・イン」から現金の流出を意味する「キャッシュ・アウト」を差し引いた収支、すなわち「現金の増減」のことをいいます。株式会社であれば「キャッシュフロー計算書」という書類を作成しますが、これは今年度の期首の現預金残高を基準として、1年間にどのような企業活動を行った結果、どれだけ現預金が増減して期末残高として残ったかを表す資料です。

(2) 将来のキャッシュフロー予測

 しかし、ここで問題とするのは今年度の現金の増減ではなく、将来の現金の増減です。下のグラフは、会社の現在の売上と利益が今後5年間継続した場合の現金の増減を表しています。現在は、手元に2400万円ある現金が4年後にはマイナスになってしまうことを予測しています。
 作成方法は簡単で、下の表のように作成します。まず、税引後利益に減価償却費を足し戻した数値を「営業キャシュフロー」とします。厳密には運転資本の増減を加算しますが、ここでは運転資本は一定していて増減しないと仮定すればよいでしょう。「投資キャシュフロー」は設備投資などへの投資を記入する項目で、もし予定している設備投資があればその数値をマイナスで記入します。「財務キャッシュフロー」は、財務活動による現金の収支で、例えば借入金の返済があれば現金の減少としてその数値をマイナスで記入します。
 そして、現預金残高=営業CF+投資CF+財務CF として算出します。

🔸キャッシュフローの改善事例

(1) プロダクトミックスの変更

 キャッシュフローを改善する最良の方法は言うまでもなく、売上・利益の拡大です。しかし、それ以外にも方法はあります。下の表は、会社全体の売上は同じでもプロダクトミックスを改善した結果、限界利益の額および限界利益率を改善した例です。限界利益率の低いA商品の売上構成比率を低下させる一方で、限界利益率の高いB商品とC商品の構成比率を高め、会社全体の限界利益率を50%から63%に向上させています。

 その結果、下のグラフのようにキャシュフローを改善し、現預金残高を増加させています。

(2) 売上債権回収サイトの短縮

 あるいは、取引先と交渉して製品を納入したあとの売掛金の決済期日の短縮、あるいは受取手形の振出日から支払期日までの手形サイトを短縮するなど売上債権の回収サイトを変更することもキャシュフローによい影響を与えます。下のグラフは、売掛金2000万円を計上した会社が、売上債権回収サイトを73日から50日に短縮した場合、毎年630万円相当分の効果があることを表しており、その結果、5年後まで何とか現預金残高をプラスに保てることを表しています。

(3) 借入金の一本化と返済条件の見直し

 また、複数の借入金がある場合、をれを長期借入金に一本化するよう金融機関と交渉し、毎年の返済額を削減することもキャッシュフローの改善という視点からは有効な方法でえしょう。下のグラフは、借入金を一本化したうえで1年以内の借入金返済額を1500万円から800万円に削減した場合の、現預金残高の5年間の推移を予測したものです。

 つまり、キャッシュフロー最大化の王道は売上拡大なのですが、それと併せて、プロダクトミックスの改善や売上債権回収の短期化、借入金コントロールを上手に行うことで、その効果は一層高まるわけです。

詳しくは、動画「利益とキャッシュの最大化セミナー(CF編)」をご覧ください。
リンク先はこちら↓

(4) おわりに

 7回にわたって掲載しました「決算書の活用による利益とキャッシュの最大化も今回で終了です。ここまで閲覧まことにありがとうございました。皆さんもぜひ、自社の決算書を活用して、①現在の経営状況の把握、②5年後のシミュレーション、③5年後に向けた経営改善の方向性の検討をしてみましょう。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?