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「Made in」はKing&Princeの現在地──向かう先とは

どうして今、King&Princeは「和」を打ち出してきたのか

King&Princeの4thアルバム「Made in」が先日発売された。

このアルバムのリード曲は「ichiban」。和楽器が響き、MVでは日本文化を彷彿とさせるセットが組まれている。なぜ今、彼らは「日本」をコンセプトにあげたのか。

その答えは、この楽曲を聴いた若い世代がとても分かりやすくSNSで導きだしてくれた。

「キンプリの新曲、KPOPみたい」
「キンプリかぁ、KPOPかと思った」

私たちの世代からすると、90年~2000年代を彷彿とさせるジャパニーズHIPHOPも、彼女たちにとっては「KPOP」と解釈され、それをほめ言葉として使っている層もいる。それほど、日本は今JPOPの肩身が狭い。

自国文化を卑下するのは以前から日本人のお家芸ではあるけれど、かつてアメリカ文化にコンプレックスを抱いた世代の孫たちが、今まさに「韓国文化コンプレックス」に陥っているように見える。時代はメビウスの輪のようにひねりながら同じ道をたどっているのだろうか。

そんな2022年初夏に、一石を投じるように、ジャニーズのアイドルが、自ら話し合いを重ね、「日本」をコンセプトに掲げてアルバムを制作したことは、非常に驚くべきことであり、そしてその意義に震えてしまう。

しかし、この「コンセプトの本来の意図」はきっと明かされはしないだろう。なぜなら彼らはアイドルだからだ。

だからこそ彼らは「和がやりたかった」という曖昧なニュアンスでわれわれに届けてくる。

それでいい。
私の深読みであっていい。それがアイドルのいいところだ。

それが深読みだろうと、彼らは1曲目の「ichiban」から世間に「日本のジャニーズですけどなにか?」とド直球で胸を打ち抜いてくるのだから。

▼「Made in」曲順に筆者の感想をお届け。

1.KREVAのトラックが唸る「ichiban」

「TikTokで日本のアーティストとして最速で3億回再生達成」というニュースが飛び込んできた「ichiban」。

この曲はオープニングで和楽器の音が流れたあと、

~ナンバワーン、イチバーン!

と、ド直球の歌詞を真正面から全力投球で投げてくる(笑)。

これこそがTikTokでそれほどの再生回数を稼いだ理由でもあるけれど、このちょっと間違えれば衝撃的にダサくなるだろう「一番」という歌詞を、King&Princeに歌わせようと思ったKREVAがとにかくすごい。

実は、この「ichiban」という曲は、KREVAが、King&Prince側からの「KUREVAの『神の領域』のような曲を」という希望を汲み取って作られている。

……とはいえ、ド直球に「勝負させよう」と、誰が思うだろうか(笑)。こんな荒ワザ、正直KREVAにしかできないのではないか…と心底思う。

そして、この曲を受け取ったKing&Princeが見事に、この難曲をかみ砕いて消化し、自分たちの声とリズムにのせて「ジャニーズ以上のジャパニーズHIPHOP」に仕上げているのも贔屓目なしに衝撃だった。

これぞ、ジャニーズ。これぞジャパニーズHIPHOP。

さて、これがKPOPに聴こえるあなた。
あなたにひとこと言いたい。あなたの耳は、KPOPしか知らない。
もっと視野(耳)を広げて、もっといろんな音楽に出会う旅に出てもいいのではないだろうか。

個人的には「アンプを通して」聴くのが超おすすめ。重低音の響きにしびれます…!KREVAすごすぎ!


2.もはや彼らの世代が道を作る「Last Train」


「ichibanの次の曲はどんな曲がくるんだろう」とめちゃくちゃ楽しみにしていた。

「Last Train」は、冒頭、聴き馴染みのあるシティポップ調と思いきや、そのまま髙橋海人くんの流れるようなラップパートに移り、そして今までに聴いたことのないような声で歌う平野紫耀くんのハスキーラップが響く(このハスキーラップが最高)。正直、この曲は全体を通して、入口とは違うその怪音にハッとさせられることの多いエモ曲だった。

「鈴虫の歌 まとってさ」の髙橋海人くんの声は至福で、その後しばらくしてから鈴虫のリリリリという音に似た電子音が鳴り響き、まるで終電を知らせるベルの音にも聴こえてくる。

大御所が作った「ichiban」で最高潮に熱された脳のまま、いろいろ考えこんでしまう大人に、若い世代が「脳みそで考えても仕方ない」と、胸をトントンとノックしているようだ(笑)。

聴き馴染みあるキャッチーなシティポップかと思って聴き始めると、Z世代のミュージシャンが作る「チルい」シティポップだった。

そう、これはきっと「Made in King&Prince’s generation」。


3.悩める大人よ「 踊るように人生を。」

カテゴリーが違うとはいえ、2曲連続で“世間的に言う”「King&Princeらしさ」から離れた曲が続いたことに正直震えながらの、3曲目。ここにきて、少しホッとさせてくれる「踊るように人生を。」。

神宮寺勇太くんの初主演ドラマ「受付のジョー」の主題歌であるこの曲は、ジャニーズらしい応援歌でありつつ、老若男女問わず聴きやすいミュージカル調のリズミカルなブラスがとても心地がいい。

ドラマのストーリーは「社会人なら誰もが経験するだろう一人一人が立ち向かう問題」が数多く描かれており、想像以上に胸に刺さるドラマだった。

そしてこの曲はその数々の問題の解決方法を歌い上げている。正直、問題をさけることも問題に立ち向かい続けることも、人は難しい。だがらこそ

「生きる自分を褒めてあげたい」

この一言に救われる人が一体どれほどいるだろうか。2曲目で「脳で考えてもしょうがない」ときてのこの3曲目。流れのメッセージ性が強い。

4.彼らはMade in ジャニーズ「My Fair Lady」

「恋はとめられないよ もう止まらないよ Baby」

…と、その甘さにとろけそうな岸優太くんの声ではじまり、さらに甘い髙橋海人くんの声が続き、しょっぱなから「丸ごとザ・アイドルポップ!」と万歳したくなる極上のジャニーズソング「My Fair Lady」。

その作詞作曲は、嵐を通ってきた人なら誰もが知っているあの「youth case」。One Love (作詞)やLove so sweet(作曲)を作った人といえば、きっと世間の人もわかるはず。(筆者的には嵐の「ROCK YOU」の作詞が響ている…)

シングル「Lovin' you/踊るように人生を。」のカップリングとして「Endroll」を提供(作詞作曲)し、King&Princeはこの曲で2曲目だ。ティアラの間では、このカップリングもかなり人気が高かった。

余談はさておき、「My Fair Lady」は昭和生まれなら聞き覚えのある、ちょっと懐かしい甘い歌詞とメロディーが特徴だ。そこに全体的に甘い傾向のあるKing&Princeの声が重なり、最初から最後まで間違いなく「王道ジャニーズ」を演出してくる。

そして、きっとichibanを聴くまでの、あなたのKing&Princeのイメージはまさに「これ」だったのではないだろうか。

そう、これぞ、王道アイドルKing&Princeの真骨頂、「Made in Johnny's」 ど真ん中だ。

ちなみに、こういう曲のPrince(岸・神宮寺)の声、最高で最強!

5.ハーモニーの心地良さ「僕の好きな人」

平野紫耀くん、髙橋海人くん、岸優太くんの3人のユニットソング。

比較的高く甘い声の神宮寺勇太くんと永瀬廉くんがいないだけで、声の響きがいつもと全然違って聴こえるから不思議だ。

「いつもと雰囲気が違う」と思う理由はまだある。
実は、ユニゾンが多いKing&Princeにおいて、サビ3人がKing&Princeではめずらしくハモっているのだ。

今までの楽曲だと、King&Princeは二人で歌ってる時にハモることが多く、5人で歌うとほぼユニゾン(同じ旋律を歌う)。もしくは1人がフェイクであることが多いのが特徴である。

しかしまぁ、このハモりがとても新鮮で心地よかったのでぜひ5人でもどんどんやってもらいたいなぁ。

また、この曲は平野紫耀くんが作詞作曲陣に「高2をイメージした作文」を提出して書いてもらったという裏話も。平野くん曰く「妄想」だそうだが、一体どんな作文を書いたのか……気になるのでぜひ見せてほしい。

ちなみに、個人的に岸くんの「勝てっこないよ!」が大優勝。トロフィーを差し上げたい。

6.普通の幸せの尊さを歌う「Lovin’you」

このシングルが発表されるまで、King&Princeが「次はどんな戦略で行くのか」非常に楽しみにしていた。

昨年末から、King&Princeの公式YouTubeではダンスプラクティスがいくつか解禁され、「キンプリはこんなに踊れる」という流れが生まれていたので、筆者は「次はえぐいダンプラがあがるような曲で一気にファンを増やして…!」と期待していたのだ。

しかし、リリースされたのは、一つ前に出した「恋降る月夜に君想ふ」同じく、またもや王道ラブソングのこの曲、「Lovin’you」だった。

いや、この路線が嫌いなわけじゃない。

しかし、この流れを切るなんてもったいない、今はダンス曲にすべきだったのではないか……と、ただのファンながら悔しい想いが芽生えてしまった。

だが、このころ、時代の流れが一変する。

世界情勢が急変し、とある戦争がはじまった。

私たちはここ数年、新型ウィルスの対応に振り回され、したくもない我慢を繰り返し、打ちたくもないものを打ち、たくさんの機会を失ってきた。
その上、この戦争で毎日のように「本当にこれが2020年代の出来事なの?」という信じられない情報と惨状がテレビやネットにあふれかえるようになる。

虚無感に包まれるとはこのことだ──。でもわれわれは泣けない。日常を淡々と生きるために負の感情に支配されるわけにはいかない。

そんな時に舞い降りてきたのが、Lovin’youだ。

春らしさをまといながら、少し切ないメロディで「いろいろあったけれど、やっぱりきみじゃなきゃだめだ」と愛する人への想いに気づいた男性側の視点で歌われる。

このMVを見ていると、涙腺がゆるみ涙が流れてしまう…そんなコメントがSNSでは何度か見受けられた。

そうなのだ。彼らが歌っているのは、われわれが心底求めている「日常の愛、日常の幸せ」なのだ。

出会うべく人に出会い、
どこにでも手をつないで旅行ができて、
気兼ねなく食事をして談笑し、
「今年の夏、海外いかない?」と提案し、
自由に言語を学び、自由に貿易し、自由に生きる。

失ったからこそ、知る、大事な大事な日常。その尊さに、いつのまにか涙がこぼれてくる、「Lovin’you」はそんな曲だった。


7.お嬢様、誰を選びます?「バトル・オブ・バトラー」

ヒャダイン作詞作曲──、そう聞いたらティアラ(King&Princeのファンの総称)はもう「……きた!」と言うしかない。

3rdアルバム「Re:Sense」ではそのタイトルが発表された途端Twitterトレンド上位に入ってきた「フィジャディバ グラビボ ブラジポテト!」もヒャダイン作詞作曲だったからである。

この「フィジャディバ グラビボ ブラジポテト!」は、“幼馴染の王子たちが城を抜け出してはしゃぐ”姿がコミカルに歌われていたのだが、この「バトル・オブ・バトラー」は、なんとKing&Princeが城から下りて「執事になって、お嬢様(ティアラ)をとりあう」のだ。

設定からもう、まるでアニメの世界なのだが、曲自体もヒャダインらしく、オープニングはクラシカルで、急激にコミカルでリズミカルでストーリー性のある楽曲に展開する。間違いなく、これはコンサートで映える(笑)

なんなら、これは冠番組「King&Princeる」で、観客をいれずにテレビの向こうのお嬢様に歌ってくれないだろうか

このアルバムツアーも入れない人も多いので、ぜひお願いしたい。


8.あのハンカチはこれのため!?「Sunshine Days」

夏の海でぜひ聴きたいと思わせるトラック「Sunshine Days」。タッカラタカラ、タッカラタカラ…とサンバのリズムが軽快に鳴る、ライブで間違いなく盛り上がるパーティーチューン。

実はKing&Princeのアルバムにパーティーチューンは必ず一曲入っている。1stだと「Super Duper Crazy」、2ndは「Heart & Beat」、3rdなら「サマーデイズ」。どの曲も、ライブで確実に盛り上がるアッパーなサウンドで、ライブの最高潮を迎える。

30代以降の人なら「湘南乃風」を思い出して、懐かしくなるかもしれない。このアルバムはそこかしこに、そんなJPOPのにおいが漂っている。

今回のツアーグッズには、タオルがなく、なんとハンカチが入っている。(Mrドームコンではタオルを振り回す演出があったようだが、隣にあたるのでタオル回せず……それでハンカチに?)

この「Sunshine Days」でハンカチを振り回す演出があるのではないか──、と筆者はひそかに妄想している。


9.唯一のバラードソング「Started」

このアルバム唯一のバラード曲。実はKing&Princeはバラードがうまい。うまいというか、この5人は非常に声に個性があり、全員もれなくバラードでその声質を活かすことができるタイプ。このことはファンの間ではよく知られているが、一般的には知る人が少ないのが非常にもったいないなぁと筆者はずっと思っている。

例えば、「宙」「別々の空」などは、ファンの間でもその歌唱に魅了されると人気が高く、筆者もかつてNHKBS「ザ少年倶楽部」で歌われたこのシーンを何度も繰り返し視聴している。特に、岩橋玄樹くんが入った6人の「King&Prince,Queen&Princess」は永遠に忘れられないだろう。

また、バラードはコンサートでは埋もれてしまうことも多く、筆者がうなった2ndアルバム収録「泡の影」が一度も歌われていないこと伝えておきたい。なぜゆえあの名曲がセットリストからすり抜けるのか…。

さて、話を「Started」に戻そう。

「Started」は特に歌割りが素晴らしく、ひとりひとり歌い上げていくマイナーコードの高音が、はかなげで失恋の痛みが伝わってくる名曲で、これまたファンから「ライブで聴きたい」という声がかなり上がっている。生で聴けば、特に失恋したての女子の心にグッサグサ刺さってしまうだろう。

しかし、「泡の影」同様、この「Started」もこのアルバムツアーのセットリストから落ちるのではないかと危惧している(予言になりませんように)。

(King&Princeさま、せめて「泡の影」と「花束」だけでもどこかで歌ってくださいお願いします…)


10.実はキンプリ得意路線「Let it out」

ギュインギュインとギターが鳴るロック調の曲のKing&Princeを初めて聴いた人の中には「まるでKAT-TUNみたい」と思う人もいるかもしれない。

しかし、King&Princeは、実はこのロック調の曲が比較的多いグループだ。

Jr時代は、どちらかというと、ロック調の曲のほうが目立っていたくらいで、「勝つんだWIN!」「MIXTURE」「Bounce To Night」などの名曲が数多く存在している。(※どれも1stアルバム初回限定盤Bに収録されており現在入手困難)

さらに2ndアルバム「L&」永瀬廉くんプロデュースの「No Limit Tonight」もこの曲と同じく、焦燥感が掻き立てられるリズムのロックナンバーだ。

彼らのロック調の曲の大きな聴きどころは「フェイク」。
この曲でも、盛り上がっていくたびに、フェイクがちりばめられ、彼らの気持ちのいいのびのいい声が耳に残り、また聴きたくなってしまう。

筆者はスマホに「キンプリロック」というカテゴリーを作ってこれらだけ聴けるように用意しているほど、実はお気に入り。


11.流れるような難解旋律が美しい「Doll」

ピアノの印象的な旋律ではじまる「Doll」。この曲は、永瀬廉くんと神宮寺勇太くんのユニットソングだ。

まるで昭和歌謡のような男性が歌う「女性視点」の世界観でありながらも、そのトラックはきちんと「今」の曲調になっていて、この作詞作曲者の凄みを感じる。

実はこの曲の作詞作曲はボカロ系アーティスト。じぐれん(神宮寺くんと永瀬くん)の2人が「二人とも好きで聴いてた」アーティストだったと公言している。

また、この曲は神宮寺勇太くんがすでに演出込みで提案し作ってもらったそうだが、想像をはるか超えた曲が届いたという2人の話もうなずける。

「閉じ込めてしまえばいい」と神宮寺くんが歌えば、「呪い殺してしまえばいい」と永瀬くんが畳みかけるのだから、昭和歌謡というかもう、突き抜けてその世界観は「演歌」だ。

ちなみに、King&Princeはいままで「ソロ曲」というものが存在しない。

すべてユニット(3人:2人)だ。嵐育ちの筆者にとって、ソロ曲がないこと自体驚きだった。そもそも「ユニットというものは、互いの世界観が混ざるエモの境地」と信じてやまなかった筆者に、そのエモさをずっと届け続けてくれるKing&Princeの仲の良さに感謝したい。フォーエバー仲良し。


12.キンプリ史上イチの問題作!?「桜Season -restart-」

ティアラの間でも非常に話題になっているのがこの曲。実はこの曲には謎が3つあることに気づいているだろうか。

▼①二転三転とメロディもリズムも変わっていく

実は、筆者の年齢(非公開)の耳だと、この楽曲は「JPOPの歴史」が詰まっているように聴こえる。ドリカムが日本のポップシーンに持ち込んだ転調転調また転調に加え、途中はボカロっぽさが強調され、星野源のメロディが裏に隠され、「嵐の曲だっけ?」と錯覚に陥るジャニーズポップのサビに迎えられると、その後はパラパラまで入ってくる。昭和と平成と令和のJPOPの歴史が詰まっているように聴こえてきて、走馬灯が駆け巡るのだ。

▼②「出会うのか、もう出会ってるのか、今目の前にいるのかいないのか」時系列が曖昧な歌詞

桜と言ってるのに「春夏秋冬」と年を重ねていたり、とても不思議な時系列を行ったり来たりする歌詞で、聴いていると、謎に包まれてだんだん眉をしかめてしまう。

実はこれ、「日本のポップスの行方」を歌っているのではないか。

今、日本のポップシーンは「KPOP」に席捲され、「JPOPはダサい」とまで言う10代に遭遇したことさえある。JPOPを作ってきた世界の人達はどれほど苦い想いを抱えて、この昨今のKPOPブームに耐えているのだろう、われわれにずっと寄り添ってきたのはJPOPだったのに……と、筆者が勝手に思っていたことが、この歌詞にリンクしてしまった。

しかし、われわれの年齢になると経験値でわかっていることがある。それは、流行は必ずまた巡ってくる…ということだ。

われわれはまた出会いそして再びJPOPと恋に落ちるのだ、と。

▼③神宮寺勇太くんの「久しぶりだね」のイントネーションの謎

ファンの間でも話題になっていたのがこの、神宮寺勇太くんのセリフ「久しぶりだね」のイントネーションだ。本来、年数も距離も離れていた恋人が再会するならばもっと優しい声でほほ笑みながら言うだろう。しかし、彼の声は聴きなれているが、これはそんな声ではない。

「…やっとこっち向いたね?」というやや挑戦的な冷静な声にも受け取れる。①②を裏付けるような、神宮寺くんの声(大好物)を聴くだけで、筆者は「これから何かがはじまる…」とワクワクゾクゾクしてくる。

そう、要するにこれはタイトルから読み解くに、

桜=日本
Season=流行
restart=再度はじまる

を歌っているのではないだろうか。
あなたがいくら離れようとも、JPOPは再びあなたの心をつかみにくる、必ず。

※あくまでも個人の感想です

13.誰もが歌いこなせるわけじゃない「恋降る月夜に君想ふか」

実は筆者にとって、この曲はちょっと…切ない記憶がよみがえる。…というのも、「恋降る月夜に君想ふ」が発売された当初、NHKでは朝ドラ「おかえりモネ」をやっていたからだ。

りょーちん(役名)さながらの儚げな永瀬廉くんが、儚げな表情で、儚げにファンシーなラブソングを歌っているこの光景がもう「……りょーちん…幸せになって…(´;ω;`)ウゥゥ」だったため、その記憶(トラウマ?笑)がよみがえって困ってしまう(笑)。

余談はさておき、この曲は平野紫耀くん主演映画「かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~ ファイナル」の主題歌だ。ようするに前回の主題歌「koi-wazurai」の続きのような曲であり、作詞作曲陣も同じ方々である。

何度か繰り返し聴いていると、この曲がキャッチーでファンシーで「王道」だとすんなり受け入れられるのは、これを歌うのがKing&Princeだからだと気づく。すべてのジャニーズがこの曲を歌えると思ったら大間違いだ。

きっとあなたも気づくはずだ、何度か聴いた後に。この曲を歌えるのはKing&Princeだけだということに。

そして聴き終わったあとは、申し訳ないけれどハッピーエンドなかぐや様より、儚げなりょーちんを思ってちょっと切なくなるのだ。

何度でも言う…りょーちん、幸せになってくれよ…(´;ω;`)ウッ…


14.彼らはあなたに寄り添いたい「気楽にやろうよ」

King&Princeはこのアルバムがはじめて…という人は、思ったよりファンシーなラブソングが少なく「応援歌」が多いことに面食らったのではないだろうか。

彼らは、ジャニー氏が亡くなった後の2ndアルバム「L&」から、アルバムに収録されている楽曲を選んでいて、曲によってはプロデュースまでしている。(作詞作曲もある)

思えば、L&から「応援歌」が多かった。ぱっと思い出すだけで「Focus」「Laugh &…」「君がいる世界」、3rdアルバムでは「幸せがよく似合うひと」「花束」と2曲以上は必ず入っている。

そしてこの4thアルバムでは、シングルの「踊るように人生を。」と、この「気楽にやろうよ」と次の「A Little Happiness」の3曲が応援歌だ。これは、彼らが常々伝えてくる、「ファンに寄り添いたいという気持ちの強い現れ」であると筆者は捉えている。

「ファンに寄り添う」、それこそが「ザ・ジャニーズ」であり「アイドル」であり、彼らが目指すKing&Prince像でもあるのだ。

ジャニー氏との約束「世界デビュー」をするにはどうしたらいいか、をきっと彼らは話し合っているだろう。そしてそれは結局のところ、「目の前の人を幸せにする」と「新路開拓(今回のゴリゴリHIPHOPのような)」の2つが答えだと、彼らから出ているのではないだろうか。

話を「気楽にやろうよ」に戻そう(長っ)。

この曲の作詞作曲は1stアルバムに収録されている永瀬くん、岸くん、神宮寺くんのトリオが歌った「letter」と同じ人である。あの曲もとても柔らかい旋律で、優しい歌だった。等身大の日常のちょっとしたつまづきや、悲しみを乗り越えようと歌うのは「Focus」にも似た世界観がある。

ただ、ひとつ違うのは最後「僕ら頑張り屋さん」と、君だけでなく僕らも頑張ってる仲間だよと岸優太くんが歌うところだ。

遠い存在になりたくない、彼らの心の声のようだ。

15.歌えばわかる難しさ「A Little Happiness」

「気楽にやろうよ」の次に続くのはさらに“小さい幸せ”の喜びを歌う「A Little Happiness」。

この曲は、筆者からするとまさに「THE・King&Prince」だ。
彼らの得意分野といっていい、「それぞれの声を活かした」Jポップならぬ“KPポップ”。

ユニゾンの美しさ、フェイクの心地よさ、かぶせるように彼らの声が重なりそれは流れるようにとても心地よく耳に届く。

最初は心地よさに身をゆだねているが、何度も聴いていると、この曲はボーカルアレンジがかなり複雑な構成になっていることに気づくのだ。

試しに、この曲をアカペラやカラオケで歌ってほしい。聴いてる時はそんなに難しさを感じさせないが、歌ってみるとかなりの難曲だとわかる。うっかりカラオケで手を出すと痛い目にあう曲だ(笑)。

応援歌でありながら「King&Princeはボーカリストである」ということを魅せつけるこの曲は、とにかく何度も聴いてほしい。

16.彼らの現在地と約束「Dream in」

King&Princeが作詞作曲した初の楽曲が、この「Dream in」。

彼らが想いをしたため、それを髙橋海人くんがまとめて歌詞にし、そしてギターが弾ける神宮寺勇太くんが曲を作った。それを、「作詞:髙橋海人、作曲:神宮寺勇太」にしないところに、この曲が「King&Princeでできてるんだ」という主張を強く感じる。サビもド直球にユニゾンで、ハモりなどの技術をいれない旋律が、さらに彼らのまっすぐな想いが届く。

さすがと言おうか、この曲には実はティアラ(King&Princeのファンの総称)しか気づかないような魔法がかかっている。

歌詞の中に、隠された魔法をあなたは気づいているだろうか。

それに気づいていないあなたは、これからシンデレラガールからたどって、その散りばめられた宝石のような魔法に少しずつ気づいていくといい。なので、ここでは多く語らない。ぜひみつけてほしい。

この曲には肝歌詞が多いが、その中でも筆者は、神宮寺勇太くんの「君でできた僕だけの魔法で」強火担。そして、その歌詞を作った髙橋海人くんは天才だと思ってる強火担です。


17.これから向かう先は…「Ring Ding Dong(※通常盤のみ)」

「なんだこの激エモは!!」

これが筆者の「Ring Ding Dong」ファーストインプレッションだ。この曲は初回限定盤ABどちらにも入っていない。通常盤のみ入っているトラックで、まずは、「特典なんていらない、曲だけ聴きたい」というKing&Prince音楽ファンと「3形態全部買う」という強火ティアラに届けられる曲だ。

実は、King&Princeは1stアルバムから通常盤には1曲多く入っている。

そしてその1曲が“今の彼らを示す”肝曲となっているので、コアなファンであればこの1曲は絶対に外せないのだ。

1stは「King&Prince,Queen&Princess(通称:KPQP)。これはKing&Princeの土台、一番ど真ん中にある曲と言っていい。ティアラにとっても特別な曲だ。

2ndは「Bounce」。全編英語詞で、CDTVライブライブで、&Loveの後に披露された時は度肝を抜かした。コレオは髙橋海人くんの師匠であるs**t kingz(シットキングス)のNOPPO氏によるもので、これまたエグいダンス曲。これが2ndに入っていたことに今さらながら驚く。

3rdは「Dear My Tiara」。この曲は、岩橋玄樹くん脱退して数か月後に発売されたタイミングでの発表で、多くは語らない彼らの想いが紡がれていたのでは…と見ている。なぜならタイトルにもあるファン総称の「ティアラ」の名付け親は、岩橋玄樹くんだからだ。

そして4thアルバムに収録された「Ring Ding Dong」。オープニングを飾った和楽器の音が再び鳴りはじまり「譲れぬものを背負い、新時代へ」と歌う。 

彼らはこの曲を今後どう展開させていくのだろうか。
ただただ期待で胸がふくらむ一曲だった。長生きせねば。


最後に

King&Princeは顔もいいけど「ダンスがうまい」が浸透してきた今、ぜひ次に浸透してもらいたいのは「5人とも声がいい」「5人とも歌がいい」である。

それを示すのはなにもバラードだけではない。「Ring Ding Dong」のような斬新でリズミカルな曲でも、彼らの声が武器になっていることをより知ることになった。短い曲ながら、彼らの声がまるで「鈴」のようにシャンシャンと耳で鳴り、実に心地よく明るい。暗い曲でもどこか救われる明るさがある。

実際、Dream inの曲を作った神宮寺勇太くんも、その曲を作る時にあえてマイナーコードを選んだといい、King&Princeの声は「前向きになれる声」と公式Twitterで語っている。

まさに彼らの武器は顔やバラエティーやダンスだけではない、「声」もまた大きな武器なのだ。

筆者は、このアルバムを通して、何度ひとりひとりに「声がいい」をつぶやいたかわからない。今までのアルバムの中で、一番「トラック」と「声」の強さを感じた1枚だった。

とりあえず、今後のKing&Princeのアルバムのために、家の音響効果を高めて、スマホやPCだけでなく、「アンプ」を通してアルバムを聴けるようにしていく準備が必要だ。

Made inは「アンプ」を通すと世界が変わる。きっと次のアルバムは、さらに──。

▼King&Prince 4thアルバム「Made in」発売中!


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